トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 鋼管およびそのねじ切り方法
【発明者】 【氏名】辻村 琢也

【要約】 【課題】不完全ねじ部におけるかえりの発生に起因して、締め付けトルクのハンピングやねじ部での焼き付き、さらには、前加工機と仕上げ加工機との2台の加工機を用いた場合の芯ずれが、発生する。

【解決手段】鋼管21の管端面から管軸方向へ向けて外削加工を行うことにより外削加工部24を設けた後に、外削加工部24に、テーパ雄ねじ部23に隣接する不完全ねじ部22の少なくとも一部を設ける。これにより、管端部外面に不完全ねじ部22を備え、不完全ねじ部22の少なくとも一部が、外削加工を行われた外削加工部24に設けられた鋼管が得られる。この外削加工部24は、テーパ雄ねじ部23の形成領域における管外径の最大値d2 と同じ値で略一定である管外径d3 を有するように、形成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 管端部外面に、テーパ雄ねじ部に隣接する不完全ねじ部を備え、該不完全ねじ部の少なくとも一部は、外削加工を行われた外削加工部に設けられることを特徴とする鋼管。
【請求項2】 前記外削加工部は、前記テーパ雄ねじ部の形成領域における管外径の最大値と同じ値で略一定である管外径を有するように、形成される請求項1に記載された鋼管。
【請求項3】 鋼管の管端面から管軸方向へ向けて外削加工を行うことにより外削加工部を設けた後に、該外削加工部に、テーパ雄ねじ部に隣接する不完全ねじ部の少なくとも一部を設けることを特徴とする鋼管のねじ切り方法。
【請求項4】 前記外削加工部は、前記テーパ雄ねじ部の形成領域における管外径の最大値と同じ値で略一定である管外径を有するように、形成される請求項3に記載された鋼管のねじ切り方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば油井管やガス井管等の鋼管およびそのねじ切り方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば油井や天然ガス井等(以下、単に「油井」という。)の使用環境は、年々厳しくなっており、油井に用いられる油井管やガス井管等の鋼管を相互に連結するためのねじ継手には、強大な軸力に耐え、かつ高い気密性を有することが、ともに要求される。このねじ継手には様々な種類がある。図7および図8は、いずれも、この種のねじ継手の一例を部分的に示す説明図である。
【0003】図7に示すねじ継手は、API(米国石油協会)規格のSTD5Bに規定された台形ねじを有するバットレス継手1である。同図に示すように、バットレス継手1は、鋼管2の先端にテーパ雄ねじ3および不完全ねじ部4を有するピン部5と、カップリング6の両端内部に設けられたテーパ雌ねじ部7を有するボックス部8とからなる。テーパ雄ねじ3は、外削加工を行われた平滑な外削面に形成される。
【0004】また、図8に示すねじ継手は、いわゆる特殊継手9である。この特殊継手9は、鋼管10の先端にテーパ雄ねじ11および不完全ねじ部12を有するピン部13と、カップリング14の両端内部に設けられたテーパ雌ねじ部15を有するボックス部16とからなる。テーパ雄ねじ11は、外削加工を行われた平滑な外削面に形成される。さらに、ピン部13の先端にはトルクショルダ用ねじ無し部17が形成されるとともに、ボックス部16の内奥にはトルクショルダ用ねじ無し部17が当接して過剰な締め付けを防止する受け面18が形成される。また、トルクショルダ用ねじ無し部17に連続するメタルシール部19およびこれに当接するボックスメタルシール部20によりメタルタッチのシール面が形成され、これにより気密性が高められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの従来のねじ継手1、9には、以下に列記する課題1および課題2がある。
(課題1)図7に示すバットレス継手1のピン部5における不完全ねじ部4や、図8に示す特殊継手9のピン部13における不完全ねじ部12に設けられたねじ山には、ねじ切りに伴って、かえりが発生する。
【0006】図9(a) は、かえり4b(12b) が発生したねじ山4a(12a) を示す説明図であり、図10(a) はかえり4b(12b) がテーパ雌ねじ部7(15)と干渉する状況を示す説明図である。図9(a) に示すように、不完全ねじ部4(12)に設けられたねじ山4a(12a) にはかえり4b(12b) が発生する。また、図7に示すバットレス継手1のピン部5や、図8に示す特殊継手9のピン部13には、いずれも、テーパ雄ねじ3、11が形成されている。このため、かえり4b(12b) が発生した不完全ねじ部4(12)のねじ山径は、管外径を超えてしまう。発生したかえり4b(12b) は、図10(a) に示すように、特に、海上油田等の鋼管2、10が安定しない状況での使用中にテーパ雌ねじ部7(15)と接触、干渉するため、締付けトルクの異常な上昇や、ねじ部の焼き付きを発生させてしまう。このため、図9(a) に示すようにかえり4b(12b) が発生した場合には、バフ砥石等を用いてこのかえり4b(12b) を研削除去する必要がある。図9(b) は、バフ砥石等を用いてかえり4b(12b) の研削除去が行われた後のねじ山4a(12a) を示す説明図であり、図10(b) はかえり4b(12b) がテーパ雌ねじ部7(15)と干渉する状況を示す説明図である。しかし、この手段でも、図9(b) に示すように、かえり4b(12b) が管長手方向へ倒れ込んでしまうため、図10(b) に示すように、テーパ雌ねじ部7(15)との接触、干渉がかえって強まってしまう。また、不完全ねじ部4、12のねじ切りの際、鋼管2、10のこのねじ切り部は外削加工を行われていないために真円ではなく、周長方向への切削負荷が不均一となる。このため、径方向へのかえり4b、12b の大きさが不均一となり、バフ砥石等を用いてもかえり4b、12b を完全に除去することは困難であった。
【0007】従来のねじ継手1、9では、このように、かえり4b、12b とテーパ雌ねじ部7、15との接触・干渉を完全に防止することは不可能であったため、締め付けトルクのハンピング (波打ち) が発生する。
【0008】図11は、ねじ山にかえり4b、12b が発生した不完全ねじ部4、12を有する継手について、発生トルク (締め付けトルク) に及ぼす締め付け回数の影響を示すグラフである。同図にグラフで示すように、不完全ねじ部4、12にかえり4b、12bが発生すると、締付けトルクのハンピング(波打ち状の増減現象)が発生し、締付けトルクにばらつきが発生して不完全締め付けとなり、ねじ部での焼き付きが発生することがあった。この焼き付きは、ねじ継手性能を低下させるため、焼き付きの有無を確認するために締め付けたねじ継手を一旦締め戻す必要もあった。このため、かえりの発生に起因して、油井での降管作業時間が長時間化していた。
(課題2)ねじ継手1、9のピン部5、13の加工は、ねじ切り加工工具を回転させずに鋼管2、10を軸線上に回転させるか、または鋼管2、10を回転させずにねじ切り加工工具を回転させることのいずれかの手段により、行われてきた。しかし、前者の鋼管2、10を回転させる手段は、同時に加工を行うことができるねじ切り加工工具数に制限があるために加工パス回数が増加し、かつ、管の回転始動や停止等に多くの時間を必要とするため、後者のねじ切り加工工具を回転させる手段が多用されるようになってきた。近年、これらの加工では、加工能率向上を図るため、内面加工、外削加工およびシール部粗加工をいずれも行う前加工機と、ねじ切り、外削加工およびシール部仕上げ加工をいずれも行う仕上げ加工機との2台の加工機を用いて行われるようになってきた。この仕上げ加工機には芯出しチャックが附帯して設けられており、この芯出しチャックにより鋼管2、10の先端側の傾斜部を掴持することにより、前加工機の回転軸と仕上げ加工機との回転軸とを一致させている。しかし、前加工機と仕上げ加工機との2台の加工機でねじ継手1、9のピン部5、13を加工すると、例えば、芯出しチャックと加工される油井管との間にねじ切削の切粉等が噛み込んで管本体チャックが芯ずれした状態でチャックされてしまうことがある。この場合、前加工機で加工した際の鋼管の芯と、仕上げ加工機で加工した際の鋼管の芯とがずれて配置されてしまう。また、これまで、芯ずれ精度を管理する方法は存在せず、またその管理値も規定されていなかった。このため、この状態で加工された油井管継手は、上述したテーパ雄ねじ部3、11や不完全ねじ部4、12に対する加工が不十分になる可能性が高く、油井で使用された場合に気密性能が確保されなくなって加工不良率を増加させてしまう。また、何とか加工できたとしても、シール部を有する管端肉厚が不均一になり、やはり気密性能を低下させてしまう。
【0009】このように、従来のねじ継手1、9のピン部5、13の加工では、かえりの発生に起因して締付けトルクのハンピングが発生したり、前加工機と仕上げ加工機との2台の加工機でねじ継手1、9のピン部5、13を加工する場合の芯ずれに起因して気密不良が発生してしまうという課題があった。
【0010】本発明の目的は、これらの課題を解決すること、具体的には、かえりの発生に起因した締め付けトルクのハンピング、ねじ部での焼き付きさらには油井での降管作業時間の長時間化をいずれも解決するとともに、前加工機と仕上げ加工機との2台の加工機でピン部を加工した場合の芯ずれ、加工不良率の低下さらには気密不良の発生をいずれも解決することができる鋼管およびそのねじ切り方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、従来にはねじ切り前における外削加工を一切行われていない不完全ねじ部の形成範囲にも、ねじ切り前に外削加工を行って外削加工部を形成し、この外削加工部にねじ切りを行って不完全ねじ部を形成することにより、(i) 不完全ねじ部の周長上におけるかえりの発生を均一化および最小化でき、かえり取りを確実かつ容易に行うことができること、(ii)かえり取りを確実かつ容易に行うことができるため、油井使用時の締め付けトルクの異常な変化やねじ部の焼き付きの発生を、いずれも防止できること、(iii) 不完全ねじ部の形成範囲には外削加工を行わない従来の加工方法では、不完全ねじ部は、鋼管肌を呈しており不連続な凹凸がある。このため、ねじ切り時にねじ切り加工工具の欠損が多発していた。しかし、ねじ切り前に外削加工を行って外削加工部を形成することにより、加工中のねじ切り加工工具に作用する負荷が安定し、工具寿命が著しく向上すること、および(iv)前加工機と仕上げ加工機との2台の加工機でねじ継手を加工する際に、仕上げ加工機でのシール部加工取り代を一定量残して前加工機で加工した後、仕上げ加工機の芯出し時には、上記の外削加工部を利用して本体チャックを行うことにより、本体チャックの芯ずれが仕上げ加工機でのシール部加工取り代以上発生した場合には前加工不良と判断して加工を中止することができ、テーパ雄ねじ部および不完全ねじ部の未加工部を解消できることという極めて有用な効果が奏されることを知見し、さらに検討を重ねて本発明を完成した。ここに、本発明は、管端部外面に、テーパ雄ねじ部に隣接する不完全ねじ部を備え、この不完全ねじ部の少なくとも一部が、外削加工を行われた外削加工部に設けられることを特徴とする鋼管である。この本発明にかかる鋼管では、外削加工部が、テーパ雄ねじ部の形成領域における管外径の最大値と同じ値で略一定である管外径を有するように、形成されることが、望ましい。
【0012】別の観点からは、本発明は、鋼管の管端面から管軸方向へ向けて外削加工を行うことにより外削加工部を設けた後に、この外削加工部に、テーパ雄ねじ部に隣接する不完全ねじ部の少なくとも一部を設けることを特徴とする鋼管のねじ切り方法である。この本発明にかかる鋼管のねじ切り方法では、外削加工部が、テーパ雄ねじ部の形成領域における管外径の最大値と同じ値で略一定である管外径を有するように、形成されることが、望ましい。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる鋼管およびそのねじ切り方法の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以降の説明では、鋼管が油井管であり、継手がバットレス継手であるとともに、ねじ切り加工工具を回転させてねじ切りを行う場合を例にとる。
〔鋼管21〕図1(a) は、本実施形態の鋼管21の不完全ねじ部22を拡大して示す説明図であり、図1(b) は、従来の不完全ねじ部22' の噛み合いを示す説明図であり、図1(c) は、本実施形態の不完全ねじ部22の噛み合いを示す説明図である。
【0014】図1(a) に示すように、本実施形態の鋼管21は、外径がd0であって、管端部外面に、テーパ雄ねじ部23と、テーパ雄ねじ部23に隣接する不完全ねじ部22とを備える。
【0015】本実施形態におけるテーパ雄ねじ部23は、公知のバットレス継手のテーパ雄ねじ部と同じであるため、説明を省略する。不完全ねじ部22は、管端部外面に、管軸方向についてテーパ雄ねじ部23に隣接して形成される。この不完全ねじ部22の少なくとも一部は、外削加工を行われた外削加工部24に形成される。すなわち、従来は、テーパ雄ねじ部23の形成範囲だけ外削加工が行われ、不完全ねじ部22の形成範囲には外削加工は行われていなかった。これに対して、本実施形態の鋼管21では、テーパ雄ねじ部23の形成範囲だけでなく不完全ねじ部22の形成範囲にも外削加工が行われている。また、この本実施形態における外削加工部24は、テーパ雄ねじ部23の形成領域における管外径の最大値d2と同じ値で略一定である管外径d3を有するように、形成される。外削加工部24は、テーパ雄ねじ部23および不完全ねじ部22を形成する前に、外削加工を行われることにより、形成される。また、図1(a) に示すように、本実施形態では、不完全ねじ部22の全域ではなく、ねじ切り上がり部25の2山手前まで外削加工を行ってある。これにより、ピン部およびボックス部それぞれのねじ山噛み合いの最終位置を、従来のバットレス継手のねじ山噛み合いの最終位置と同じにすること、すなわち継手強度≧管本体強度とすることができ、継手の引張性能を低下させない。ねじ切り上がり部25の2山手前までの部分は、継手締め付けの最終段階で、ボックスねじ部と接触するため、ピン部およびボックス部それぞれの一直線性が確保される。したがって、締め付け状態への影響が小さくなり、締め付けトルクの異常な変化やねじ部焼き付きを発生させない。また、この本実施形態のバットレス継手を油井で締め付ける際、鋼管21が傾斜配置されると、図1(b) に示す従来の不完全ねじ部22' はテーパ雌ねじ部7に干渉するのに対して、図1(c) に示す本実施形態の不完全ねじ部22は、外削加工量d1 (=d0−d2)1だけねじ山の高さ、すなわちかえりの高さが低減されるため、不完全ねじ部22はテーパ雌ねじ部7に干渉しなくなる。
〔鋼管21のねじ切り方法〕次に、本実施形態のこの鋼管21のねじ切り方法を説明する。図2は、本実施形態において、内削工具26および外削工具27を有する前加工機28により、鋼管21に内面加工、外削加工およびシール部粗加工をいずれも行う状況を模式的に示す説明図である。また、図3は、本実施形態において、ねじ切り加工工具29およびシール加工工具30を有する仕上げ加工機31により、前加工機28による前加工を行われた鋼管21に、ねじ切り加工、外削加工およびシール部仕上げ加工をいずれも行う状況を模式的に示す説明図である。さらに、図4は、本実施形態の鋼管21のねじ切り方法の工程を模式的に示すフロー図である。
【0016】図2および図4に示すように、内削工具26、外削工具27および図示しない端面加工工具を有する前加工機28により、鋼管21の外面に外削加工を行って傾斜部32と水平部33とを形成する。すなわち、傾斜部32と水平部33とは、いずれも、図1における外削加工部24を構成する。
【0017】後続して行われるねじ切り加工によって、傾斜部32にテーパ雄ねじ部23の形成されるとともに水平部33に不完全ねじ部22が形成される。また、前加工機28により、鋼管21の端面加工および内面加工が行われる。これらの加工の際、シール部の加工径を仕上げ寸法よりも一定量大きくしておくことが望ましい。なお、本実施形態では、内削加工または端面加工を前加工機28により行うこととしたが、これらの加工は、いずれも、仕上げ加工機31により行うようにしてもよい。
【0018】このようにして前加工を行われた鋼管21に対して、図3および図4に示すように、外削加工された水平部33に、仕上げ加工機31に設けられた芯出しチャック34を接触させることにより前加工機28における加工時の芯位置と、仕上げ加工機31における加工時の芯位置とを一致させる。
【0019】図5は、鋼管21を芯出しチャック34によりチャックする状況を模式的に示す説明図である。図4および図5に示すように、2基の芯出しチャック34、34の径方向移動量a、bに合わせて移動する管本体チャック35で鋼管21をチャックする際に、2基の芯出しチャック34、34の移動量a、bの差 (a−b)を求めることにより、芯出しチャック34の位置と管本体チャック35の径方向位置とが、前加工機28により前加工の際に残した仕上げ加工機31でのねじ、シール部取り代以上にずれないように、管本体チャック35の移動量を管理する。
【0020】すなわち、差 (a−b)が仕上げ加工機31でのねじ、シール部取り代以上存在する場合には、まず鋼管21の水平部33における切り粉の有無を確認し、切り粉があるときには切り粉を除去して再度芯出しチャック34による芯出しを行い、一方、切り粉がないときには前加工不良があると判断して、管本体チャック35を作動させずに仕上げ加工を中断し、前加工機28により前加工に戻る。本実施形態では、このようにして、テーパ雄ねじ部23および不完全ねじ部22の加工不良が未然に防止される。
【0021】図6は、従来の仕上げ加工機に附帯して設けられた芯出しチャック34を示す説明図である。図6に示すように、従来は、鋼管21' の傾斜部32に芯出しチャック34を接触させて芯出しを行っていたが、傾斜部32は軸方向で管の外削径が変動するために芯出しチャック34が鋼管21' の傾斜部32に接触する位置が管軸方向に少しでも変動すると、芯出しチャック34の移動量の検出値も変動してしまい、芯ズレ防止装置の管理精度が低下してしまう。これに対し、本実施形態では、水平部33を用いて芯出しを行うため、芯出しチャック34が鋼管21の水平部33に接触する位置が管軸方向に変動しても、前加工機28における加工時の芯位置と、仕上げ加工機31における加工時の芯位置とを高精度で一致させることができる。
【0022】このようにして、芯出しチャック34を用いて前加工機28と仕上げ加工機31とにより鋼管21の軸芯を合わせてから、管端加工部より奥に位置する左右2個の管本体チャック35を用いて、鋼管21をチャックする。そして、ねじ切り加工工具29およびシール加工工具30を有する仕上げ加工機31により、外削加工を行われた傾斜部32と水平部33とに、ねじ切り加工およびシール加工を行う。この不完全ねじ部22を有する本実施形態の鋼管21は、以下に列記する効果(i)〜効果(iv)を奏することができる。
(i) 不完全ねじ部22におけるかえりの発生程度が均一化および最小化されるため、従来と同様にバフ砥石等を用いてかえりの研削除去を行うことにより、かえり取りを確実かつ容易に行うことができる。
(ii)かえりの発生程度が均一化および最小化されることにより、かえり取りを確実かつ容易に行うことができるため、油井使用時の締め付けトルクの異常な変化やねじ部の焼き付きの発生を、いずれも防止でき、これにより、鋼管21の取扱い性が向上する。
(iii) 不完全ねじ部22' の形成範囲には外削加工を行わない従来の加工方法では、不完全ねじ部22' は、鋼管肌を呈しており不連続な凹凸がある。このため、ねじ切り時にねじ切り加工工具の破損が多発していた。しかし、本実施形態では、不完全ねじ部22のねじ切り時には外削加工部24が形成されているため、加工中のねじ切り加工工具に作用する負荷が低減かつ安定化され、工具寿命が著しく向上する。
(iv)前加工機28と仕上げ加工機31との2台の加工機でねじ継手を加工する際に、仕上げ加工機31でのシール部加工取り代を一定量残すとともに、傾斜部32および水平部33を残して前加工機28で加工した後、仕上げ加工機31の芯出し時には、外削加工を行われた水平部33を利用して芯出しチャック34により鋼管21のチャックを行うことにより、本体チャック35の芯ずれが仕上げ加工機31でのシール部加工取り代を超えて発生した場合には前加工不良と判断して、加工を中止することができる。このため、テーバ雄ねじ部23および不完全ねじ部22の加工不良の発生率を、顕著に低減できる。
【0023】このため、本実施形態によれば、かえりの発生に起因した締め付けトルクのハンピング、ねじ部での焼き付きさらには油井での降管作業時間の長時間化をいずれも解決できるとともに、前加工機と仕上げ加工機との2台の加工機でピン部を加工した場合の芯ずれ、加工不良率の低下さらには気密不良の発生をいずれも解決できる。
【0024】
【実施例】(実施例1)海上油井において、外径:177.8 mm、厚さ:10.36 mmであって不完全ねじ部には外削加工を行っていない従来例の金属密封面付きの特殊継手と、同じ外径であって不完全ねじ部にも外削加工を行った本発明例の金属密封面付きの特殊継手とのそれぞれについて、締め付け作業を行った。なお、テーパ雄ねじ部の長さは40mm、不完全ねじ部の水平部の長さは80mmとし、仕上げ加工における加工代は0.3mmに設定した。また、芯ずれの管理値は0.6 mmとした。そして、前述したハンピングの発生率 (%) と、降管能率 (本/時)とを測定した。結果を表1にまとめて示す。
【0025】
【表1】

【0026】表1に示す通り、不完全ねじ部に外削加工を行っていない従来例では、ハンピングの発生率が75.0%であったのに対し、不完全ねじ部に外削加工をおこなった本発明例ではハンピングの発生率は、7.6 %に約1/10に低減された。これにより、作業時間が短縮され、降管能率も約2倍に改善された。
(実施例2)外径177.8 mmの油井管それぞれ100 本を、不完全ねじ部には外削加工を行っていない従来法と、不完全ねじ部にも外削加工を行った図1〜図4に示す本発明法とにより、加工した。本発明法では、仕上げ加工機31でのシール部加工取り代(=前加工機での外削寸法と仕上げ寸法との差)は、径方向寸法で0.6 mmとした。さらに、仕上げ加工機31に設けられる芯出しチャック34は、水平部33に位置するようにした。そして、テーバ雄ねじ部23および不完全ねじ部22の加工不良の発生数を測定した。結果を表2にまとめて示す。
【0027】
【表2】

【0028】表2に示すように、不完全ねじ部に外削加工を行っていない従来方法では、シール未加工不良が発生するが、不完全ねじ部にも外削加工を行った図1〜図4に示す本発明法を使用すれば、シール部未加工不良を未然に防止することが可能であることがわかる。
【0029】また、この際に、従来法および本発明法の双方について、仕上げ加工機31のねじ切り加工工具29の寿命を測定した。結果を表3にまとめて示す。
【0030】
【表3】

【0031】表3に示すように、不完全ねじ部にも外削加工を行った図1〜図4に示す本発明法を使用すれば、ねじ切り加工工具の寿命を従来よりも60%程度向上させることができたことがわかる。
(変形形態)上記の実施の形態および実施例の説明では、鋼管が油井管である場合を例にとった。しかし、本発明はこの形態には限定されず、例えばガス井管等の油井管以外の鋼管に対しても同様に適用される。
【0032】また、実施の形態および実施例の説明では、加工工具が固定配置された鋼管の周囲を回転しながら加工を行う場合を例にとった。しかし、本発明はこの形態には限定されす、固定配置された加工工具の近傍に鋼管を回転させながら加工を行う場合であっても、等しく適用される。
【0033】また、実施の形態および実施例の説明では、継手がバットレス継手である場合を例にとった。しかし、本発明はこの形態には限定されず、例えば特殊継手等のバットレス継手以外の他の継手についても、同様に適用される。
【0034】また、実施の形態および実施例の説明では、外削加工部が、テーパ雄ねじ部の形成領域における管外径の最大値と同じ値で略一定である管外径を有するように、形成された場合を例にとった。しかし、本発明はこの形態には限定されず、外削加工を行われていれば、その加工形状は限定を要さない。すなわち、本発明は、不完全ねじ部の少なくとも一部が外削加工を行われた外削加工部に設けられたものであれば、等しく適用される。
【0035】さらに、実施の形態および実施例の説明では、不完全ねじ部のうちの2山を除いた部分に、外削加工が行われた場合を例にとった。しかし、本発明はこの形態には限定されず、不完全ねじ部の少なくとも一部に外削加工が行われたものであれば、等しく適用される。
【0036】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明により、(i) かえりの発生を最小限に抑制できるためにかえりの発生に起因した締め付けトルクのハンピング、ねじ部での焼き付きさらには油井での降管作業時間の長時間化をいずれも解決するとともに、ねじ切り加工工具に作用する負荷を安定させてねじ切り加工工具の長寿命化を図ることができるとともに、(ii)前加工機と仕上げ加工機との2台の加工機でピン部を加工した場合の芯ずれ、加工不良率の低下さらには気密不良の発生をいずれも解決することができ、これにより、シール部未加工品を油井で使用することによる油井事故を未然に防止することができる。
【0037】かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成11年10月21日(1999.10.21)
【代理人】 【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
【公開番号】 特開2001−124254(P2001−124254A)
【公開日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願番号】 特願平11−299587