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【発明の名称】 鋼管用ネジ継手
【発明者】 【氏名】山口 正男

【氏名】魚住 一裕

【要約】 【課題】本発明は、施工時に、圧縮ばかりでなく引張や曲げが負荷されても、流体漏れの生じない鋼管用ネジ継手を提供することを目的としている。

【解決手段】先端に向けて外径が小さくなり、外周面に雄ネジ、先端にシール面を形成するリップ部を有するピンと、内周に前記ピンの雄ネジに螺合される雌ネジ、内周奥に前記リップ部と接する肩部を有するボックスとを備えた鋼管用ネジ継手において、前記雄ネジと雌ネジとが形成する荷重面は互いに接触し、挿入面に0.035〜0.170mmの隙間を形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 先端に向けて外径が小さくなり、外周面に雄ネジ、先端にシール面を形成するリップ部を有するピンと、内周に前記ピンの雄ネジに螺合される雌ネジ、内周奥に前記リップ部と接する肩部を有するボックスとを備えた鋼管用ネジ継手において、前記雄ネジと雌ネジとが形成する荷重面は互いに接触し、挿入面が0.035〜0.170mmの隙間を形成してなるとを特徴とする鋼管用ネジ継手。
【請求項2】 前記雄ネジ及び雌ネジのネジ山が台形であることを特徴とする請求項1記載の鋼管用ネジ継手。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼管用ネジ継手に係わり、特に、外圧、引張力、圧縮力及び曲げ応力等が作用しても、流体漏れが生じない技術に関する。
【0002】
【従来の技術】今日、深さ数千mにも及ぶ天然ガス田や原油田等の探査生産に使用される鋼管(例えば、油井管)を接続する技術としてネジ継手が広く用いられている。このネジ継手は、油井管(以下、単に管ということあり)が高圧,高荷重及び悪環境下で使用されるため、接続された管の自重による軸方向の引張力に耐え得ること、外圧に耐え得ること、数十回の繰り返し使用ができること等の性能が要求されている。また、このネジ継手には、管の一端に雄ネジを有するピン部を,他端に雌ネジを有するボックス部を設けて、それらを介して管同士を接続するインテグラル方式と、図3に示すように、両端に二つのボックス部1を設けたカップリング2を使用して、両端にピン部3を設けた油井管4を互いに接続するカップリング方式とがある。
【0003】このボックス部1の内周は、先端から軸線方向に沿い奥へ進むにつれ、テーパをもって内径が減少し、図4に示すような雌ネジ5が刻設され、内奥の周壁には、図5に示すように、軸心に向かって突出した環状の肩部6(ショルダという)が形成されている。他方、該ボックス部1に螺合されるピン部3には、前記雌ネジ5に螺合される雄ネジ7が刻設されていると共に、該雄ネジ7の先にネジのない部分(リップ部8という)が設けられている。このリップ部8の外周面も、テーパ状になっており、図5で明らかなように、その突端はオーバハング状になっている。従って、このリップ部8が、前記ボックス部1の内周奥と接すると、そこに突き当てによるシール面(金属面対金属面のシールと称される)が形成される。
【0004】一方、ネジは、図4に示したように、雄ネジ7と雌ネジ5の締結時の噛合いにより、雄ネジ7及び雌ネジ5が互いに接触する面をそれぞれの荷重面9といい、該面9の傾斜を管軸線と垂直な線を基準にして、ロード・フランク角α(反時計方向を負)と称している。また、雄ネジ7と雌ネジ5との間に隙間13が生じる側の面を、それぞれの挿入面10といい、この面10の傾斜は、スタッビング・フランク角θ(反時計方向を正)という。さらに、締結時のネジ面の接触状態は、前記図4に示したように、荷重面9で接触、挿入面10で非接触、頂面11及び底面12の少なくとも一方で接触となり、これらネジ面の接触でもシールが確保できる。つまり、かかるネジ継手は、ピン部3及びボックス部1のネジ同士の接触と突き当てシール面の接触によって、高い機密性を保持するようになっている。
【0005】しかしながら、最近は、油井管4の施工時に、該油井管4やネジ継手の軸方向に圧縮力の負荷される頻度が高くなってきた。この場合、圧縮後、さらに油井管4の自重でネジに引張力あるいは曲げ力が負荷されることになる。そのためか、前記したシール性に優れたネジ継手でも、内部流体(天然ガス、原油)が外部に漏れるという不具合が生じることが多い。また、この現象が生じている状態で、接合を緩める方向にトルクが作用すると、継手が外れ、油井管4が井戸の中に落ち込むことがある。そのようになると、継手の再接続は極めて難しいので、開発中あるいは生産中の井戸掘りをあきらめることになる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情に鑑み、油井管の施工時に、圧縮ばかりでなく引張や曲げが負荷されても、流体漏れの生じない鋼管用ネジ継手を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者は、上記目的を達成するため流体漏れの原因を検討し、「強力な圧縮力が加わった時に、ネジ継手の前記シール面に変形が生じ、次に引張力が加わっても元に戻らず、隙間として残ることにある」と結論した。つまり、油井管(ピン側)に大きな圧縮力がかかると、ピン先端とボックス内周奥との突合せたシール面を境にして力が反発し合い、材料自体の移動が起きて、ピン側及びボックス側のシール面がともに塑性変形する。その後、引張力がかかると、塑性変形された部分はそのまま保持されているので、隙間13が形成される。そこで、発明者は、引き続き流体漏れの対策を鋭意研究し、ネジ山の刻設位置の変更で解決できることを見出し、それを本発明に具現化したのである。
【0008】すなわち、本発明は、先端に向けて外径が小さくなり、外周面に雄ネジ、先端にシール面を形成するリップ部を有するピンと、内周に前記ピンの雄ネジに螺合される雌ネジ、内周奥に前記リップ部と接する肩部を有するボックスとを備えた鋼管用ネジ継手において、前記雄ネジと雌ネジとが形成する荷重面は互いに接触し、挿入面が0.035〜0.170mmの隙間を形成してなるとを特徴とする鋼管用ネジ継手である。
【0009】また、本発明は、前記雄ネジ及び雌ネジのネジ山が台形であることを特徴とする鋼管用ネジ継手である。
【0010】本発明によれば、圧縮後に引っ張りが負荷されても、ネジやシール面の塑性変形が緩和されるようになるので、ネジ継手のシール性は、良好に保持される。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、発明をなす経緯も交え、本発明の実施の形態を説明する。
【0012】まず、発明者は、前記流体漏れの原因を配慮し、ネジ継手の従来の構造を詳細に調査した。そして、図4に示したように、ピン3の雄ネジ7とボックス1の雌ネジ5とが形成する挿入面9の隙間13に着眼した。着眼した理由は、そこに隙間13があると、油井管4やネジ継手に圧縮力や引張力がかかった場合、ネジやシール面に変形が生じる恐れがあるからである。調査結果は、構造が類似した多くのネジ継手は、該挿入面9に0.200〜0.350mmの隙間13があった。なかには、特許第2705506号公報に開示されている0.03mm以下という例もあったが、この寸法は、現在のネジ切り加工技術では、実施不可能なので、考慮対象にならない。また、例え製作できたとしても、そのように狭いと、油井管4の施工時にネジ山の「むしれ」(ゴーリングという)が生じ、実用し難いと考えられる。
【0013】そこで、発明者は、上記隙間13の大きさを如何にしたら、圧縮時にシール面に塑性変形が生じない、つまり材料自体が弾性限界内の変形におさまるかについて鋭意考察した。そして、現在の油井管やネジ継手の材質、寸法(外径、肉厚及び長さ)や負荷される圧縮力の大きさに基づき、材料力学的な考察を行ない、0.035〜0.170mmが好ましいことを知見した。そして、多種の材料で多くの材料試験を行い、この隙間13範囲で良いとの確証を得、本発明を完成させたのである。該隙間13が0.035mm未満のネジ継手は、塑性変形を回避する点では好ましいが、実際には製作できないので、本発明の範囲から除外し、0.170mm超えのネジ継手は、塑性変形が避けられないので、除外することにしたのである。
【0014】ネジ山の形状については、本発明では、特に限定しない。つまり、ネジには、荷重面9の傾斜(ロード・フランク角という)が、図1に示すように、負にしたものもあるが、本発明は、挿入面10の隙間13のみを問題にしているので、API(American Petroleam Institute)規格に規定された台形ネジにも有効である。
【0015】
【実施例】油井管先端に設けたピン3の外周、及びカップリング2の両端に設けたボックス1の内周に、図1に示した形状の各ネジと図2に示した各シール面とを有するネジ継手を設け、ピン3とカップリング2とを接続して流体漏れの調査を行った。その際使用した油井管4及びカップリング2のサイズは、表1の通りである。また、同じ油井管4及びカップリング2に従来通りのネジ継手(挿入面の隙間13が0.274mmと広い)を設けたものでの調査も行った。いずれの調査も、流体として原油や天然ガスに代えて高圧の水及びガスを採用し、漏れ程度の評価は、API規格別でA1クラス(最上級)に準ずる方法で行った。なお、各継手の荷重面9及び挿入面10のロード・フランク角α及びスタビング・フランク角θは、種々の値を組み合わせるようにした。
【0016】調査の結果を表2に一括して示す。表2より明らかなように、本発明に係るネジ継手は、ネジの挿入面10の隙間13が塑性変形を防止するので、いずれの場合も、施工時にシール面に隙間が生じることがない。その結果、流体(ガス及び液)漏れが生じなかった。それに対して、従来のネジ継手の場合は、やはり損傷や流体漏れが生じていた。なお、表2の損傷率、あるいは流体漏れ率は、各実施例でそれぞれ油井管の接続を50本行い、それらの発生率で示している。
【0017】
【表1】

【0018】
【表2】

【0019】なお、上記実施例では、ネジ継手をカップリング方式のものとしたが、本発明は、インテグラル方式のものにも適用できることは言うまでもない。
【0020】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により、油井管の接続時に大きな圧縮力の後に、引張りや曲げが作用しても、従来のような損傷及び液漏れは生じなくなった。
【出願人】 【識別番号】000001258
【氏名又は名称】川崎製鉄株式会社
【出願日】 平成11年10月29日(1999.10.29)
【代理人】 【識別番号】100079175
【弁理士】
【氏名又は名称】小杉 佳男 (外1名)
【公開番号】 特開2001−124253(P2001−124253A)
【公開日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願番号】 特願平11−308403