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【発明の名称】 可撓管およびその製造方法
【発明者】 【氏名】前田 重雄

【氏名】江刺 正喜

【氏名】芳賀 洋一

【要約】 【課題】優れた機械的性質を有し、細径化及び薄肉化が図られた可撓管、およびそれを容易に製造するための製造方法を提供することにある。

【解決手段】最初にコイル1の外側にチューブ2を被せ、次にチューブの少なくとも内側およびコイル1を樹脂3で被覆し、更にチューブ2を除去して可撓管を作製する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 コイルの外側にチューブを被せる工程と、チューブの少なくとも内側およびコイルを樹脂で被覆する工程と、チューブを除去する工程とを少なくとも有することを特徴とする可撓管の製造方法。
【請求項2】 上記樹脂による被覆が蒸着によって行われている請求項1記載の製造方法。
【請求項3】 樹脂で形成された管壁内にコイルが埋設された構造を有する可撓管であって、管壁の内面のみにコイルに沿って形成された螺旋状の凸部を有していることを特徴とする可撓管。
【請求項4】 上記可撓管の外径が、コイルの外径+(0μm〜25μm)となっている請求項3記載の可撓管。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、可撓管、特には内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤー等を構成するための可撓管およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、血管や内臓等に挿入して身体の検査や手術を行うため、内視鏡やカテーテル、ガイドワイヤーといったものが盛んに利用されている。これらは血管や内臓等にスムーズに挿入する必要があるため、その先端部又は全体には、血管や内臓等の形状に応じて屈曲する首振り部が設けられている。一般に、首振り部は可撓管等で構成されている。
【0003】ところで、内視鏡やカテーテル、ガイドワイヤーといったものは血管や内臓等の内部と接触するものである。そのため、これらを構成する可撓管には、円滑に曲がること(柔軟性に優れること)が要求されている。また、これらの外径をできるだけ小さくするため、管壁が薄肉であることも要求されている。これらの要求を満たすため、従来においては、押し出し法で形成した薄肉のゴム系チューブや、金属線を合成樹脂チューブで被覆してなる金属線編組チューブ等が可撓管として用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記ゴム系チューブは、可撓性に優れるものの、座屈や捩れ(キンク)が生じやすいという問題を有している。これに対し、上記金属編組チューブは、座屈や捩れが生じにくいという長所を有するものの、細径化や薄肉化が難しいという問題を有している。
【0005】一方、上記のゴム系チューブや金属編組チューブの問題を解消するものとして、蛇腹チューブが知られている。蛇腹チューブは、樹脂で形成された管壁内に金属製のコイルを埋設してなる構造を有しており、この構造により上記の問題点の解消を図っている。通常、蛇腹チューブは、金属製コイルを溶融樹脂に浸漬し、引き上げてチューブとするディッピング法や、コイルの外周に樹脂テープを螺旋状に巻いて又は縦沿えして円筒状のチューブとするテーピング法等により作製される。なお、テーピング法によって作製されたチューブにおいては、コイルはチューブ内側に露出した状態にある。
【0006】しかしながら、上記のディッピング法においては、蛇腹チューブの管壁の厚みの均一化や、管壁の薄肉化が難しいという問題がある。更に、上記のテーピング法においては、コイルの外径が小さくなるとテープを巻いたり縦沿えするのが難しくなるという問題がある。このため、従来においては、外径が数mm以下といった細径の蛇腹チューブを作製するのは非常に困難であった。
【0007】本発明の課題は、優れた機械的性質を有し、細径化及び薄肉化が図られた可撓管、およびそれを容易に製造するための製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の可撓管の製造方法は、次の特徴を有するものである。
(1) コイルの外側にチューブを被せる工程と、チューブの少なくとも内側およびコイルを樹脂で被覆する工程と、チューブを除去する工程とを少なくとも有することを特徴とする可撓管の製造方法。
【0009】(2) 上記樹脂による被覆が蒸着によって行われている上記(1)記載の可撓管の製造方法。
【0010】また、本発明の可撓管は次の特徴を有するものである。
(3) 樹脂で形成された管壁内にコイルが埋設された構造を有する可撓管であって、管壁の内面のみにコイルに沿って形成された螺旋状の凸部を有していることを特徴とする可撓管。
【0011】(4) 上記可撓管の外径が、コイルの外径+0μm〜25μmとなっている上記(3)記載の可撓管。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図を用いて詳細に説明する。図1(a)〜(c)は、本発明の可撓管およびその製造方法の一例を示す図であり、断面で示している。
【0013】最初に、図1(a)に示すようにコイル1の外側にチューブ2を被せる工程が行われる。図1(a)の例では、チューブ2の内径とコイル1の外径とは同一に設定されているが、本発明ではこれに限定されるものではない。本発明においてコイル1としては、ステンレススチール等の金属や、ポリイミド等のポリマーで形成されたものが好ましく用いられる。本発明においてコイル1は、可撓管の全体にわたるものであっても良いし、可撓管の一部において部分的に用いられるものであっても良い。本発明では、一本のチューブ2に対して複数のコイル1を用いることもでき、この場合、管壁にコイルが埋設された部分を複数有する可撓管を得ることができる。
【0014】コイル1の外径、全長、線径、コイルピッチ、巻き数等といった仕様は、内視鏡やカテーテル、ガイドワイヤーといった可撓管の用途や、これらの内部を構成する部材の大きさ等に応じて適宜設定すれば良い。
【0015】例えば、用途が内視鏡の場合であれば、外径が1mm〜10mm、全長が1m〜1.5m(部分的に用いる場合は、5mm〜30mm、特には10mm〜20mm)、線径が0.01mm〜0.2mm、コイルピッチが0.02mm〜1mmのものが好ましく用いられる。用途がカテーテルの場合であれば、外径が0.5mm〜3mm、全長が1m〜1.5m(部分的に用いる場合は、5mm〜30mm、特には10mm〜20mm)、線径が0.01mm〜0.2mm、コイルピッチが0.02mm〜1mmのものが好ましく用いられる。用途がガイドワイヤーの場合であれば、外径が0.3mm〜0.5mm、全長が1m〜1.5m(部分的に用いる場合は、5mm〜30mm、特には10mm〜20mm)、線径が0.005mm〜0.1mm、コイルピッチが0.01mm〜0.2mmのものが好ましく用いられる。
【0016】チューブ2としては、シリコーンチューブ、各種のゴム材料で形成されたチューブ、樹脂材料で形成されたチューブ等が挙げられるが、このうち、伸縮性や柔軟性に優れ、更にウエットエッチングにより簡単に除去する事ができる点からシリコーンチューブが好ましく用いられる。チューブ2の内径や長さは、要求される可撓管の外径や長さ、コイル1の外径や長さに応じて適宜設定すれば良い。但し、チューブ2の肉厚は、チューブの除去にかかる時間の短縮化等を図る必要があるため、0.01mm〜0.5mm程度、特には0.1mm〜0.15mm程度とするのが好ましい。チューブ2の内径とコイル1の外径との差は、得られる可撓管の肉厚の薄肉化を図るため、0μm〜100μm、好ましくは0μm〜20μmとするのが良い。
【0017】次に、図1(b)に示すように、チューブ2の少なくとも内側およびコイル1を樹脂3で被覆する工程が行われる。本発明における被覆の方法としては、真空蒸着法といった蒸着法や流動浸漬法等が挙げられる。このうち、複雑な形状に対しても均一な薄膜を形成でき、薄膜の厚みを精密に制御可能な点から、真空蒸着法が好ましく用いられる。なお、同図(b)の例では、被覆を真空蒸着法により行っているため、チューブ2の外側にも樹脂3による被覆層が形成されている。本発明はこの例に限定されるものではない。
【0018】被覆は樹脂3による層の厚みTが1μm〜25μm、特には2μm〜10μmとなるように行うのが好ましい。厚みTが1μm未満であると、可撓管が強度不足となるからである。厚みTが25μmを越えると、アクチュエータ等を収容するスペースの確保のため、可撓管の外径を大きくせざるを得ないからである。被覆する樹脂3の具体例としては、ポリパラキシリレン、(蒸着重合による)ポリイミド、(ディップコートによる)ポリウレタン等が挙げられるが、このうち試料を加熱する必要がなく、室温でのコーティングが可能で、殆どの溶剤に対して耐性を有する点からポリパラキシリレンが好ましく用いられる。
【0019】最後に、図1(c)に示すようにチューブ2を除去する工程が行われて本発明の可撓管が得られる。可撓管10は管壁4によって構成されており、管壁4は図1(b)において被覆が行われた樹脂3で形成されている。可撓管は、樹脂3で形成された管壁4内にコイル1が埋設された構造を有している。可撓管において、管壁4の外面は平坦に形成されているが、管壁4の内面には螺旋状の凸部5がコイルに沿って形成されている。
【0020】チューブ2を除去する方法としては、研磨、ウエットエッチングやプラズマによるドライエッチングといったエッチング、これらの組み合わせ等が挙げられるが、チューブのみを完全に除去できる点からはエッチングが好ましい。但し、同図(c)の例では、エッチングに耐性を有するチューブ2の外側の樹脂3を除去するため、研磨とエッチングとの組み合わせによって除去が行われている。
【0021】また、同図の例では、完成した可撓管は、チューブ2の内面に接触していたコイルの表面部分が樹脂3による被覆層から露出する態様となっているが、本発明ではこの態様に限定されるものではない。本発明においては、可撓管の用途等に応じて露出部分のない可撓管を作製することもできる。例えば、コイル1の外径よりも大きい内径を持つチューブ2を用いたり、樹脂の再蒸着などにより、露出部分のない可撓管を作製できる。また、後工程によって、この露出した部分を被覆しても良い。但し、本発明において可撓管の外径は、コイルの外径+(0μm〜25μm)であるのが好ましい。
【0022】このように本発明の製造方法によれば、コイルの外径と同一又は略同一の外径を有する可撓管を作製することができる。即ち、従来の蛇腹チューブでは作製不可能であった外径が数mm以下の細径のチューブであっても、その外径に合わせたコイルを用いるだけで容易に作製することができる。例えば、図1の例において内径1mm、線径0.05mmのコイルを用いれば、外径1.1mmの可撓管を容易に作製することができる。また、作製された可撓管は、管壁にコイルが埋設された構造を有しているので、被覆する樹脂の厚みを薄くして十分な薄肉化の達成も可能である。さらに、管壁の厚みの均一化を容易に図ることもできる。
【0023】図2は、本発明の可撓管で首振り部を構成した一例を示す図であり、断面で示している。図2の例に示すように、首振り部Sは、本発明の製造方法によって製造した可撓管6によって、先端保持具7と基端側保持具8とを連結してなる構造を有している。可撓管6の内部には、複数のマルチルーメン輪切体14が軸方向に所定ピッチで配設されている。互いに隣り合うマルチルーメン輪切体14と14との間、最も先端側のマルチルーメン輪切体14と先端保持具7との間、更に最も基端側のマルチルーメン輪切体14と基端側保持具8との間には、形状記憶合金で形成された圧縮コイル15a、15bが設置されている。
【0024】基端側保持具8の基端側には金属パイプ9が連結されており、さらに金属パイプ9の基端側にはベース金具10が取り付けられている。金属パイプ9の内部には、形状記憶合金で形成された一対の引張コイル(11a、11b)が設置されている。引張コイル11a、11bの基端側の端部はベース金具10に連結されており、先端側の端部は牽引ワイヤ13a、13bにそれぞれ連結されている。牽引ワイヤ13a、13bは、基端側保持具8に設けられた挿通孔12、圧縮コイル15a、15bの内部、及びマルチルーメン輪切体14に設けられた孔に、摺動可能に挿通され、先端保持具7に連結されている。このため、圧縮コイル15aと引張コイル11a、および圧縮コイル15bと引張コイル11bとは互いに拮抗する状態にある。
【0025】従って、引張コイル11aに電流を流して加熱すれば、首振り部Sは矢印Rの方向に首振り動作し、各圧縮コイル15aに電流を流して加熱すれば元の形状へと戻る。逆に、引張コイル11bに電流を流して加熱すれば、首振り部Sは矢印Lの方向に首振り動作し、圧縮コイル15bに電流を流して加熱すれば元の形状へと戻る。
【0026】引張コイル11aと11bとの両方に同時に電流を流して加熱した場合では、首振り部Sは左右に首振り動作する代わりに軸方向に短縮するため、首振り部Sの剛性の向上を図ることができる。本発明に係る可撓管6はこのような軸方向に短縮する動作にも適応できる。なお、本発明の可撓管6は、図2に示す首振り部S以外の各種の首振り部にも適用できる。また、首振り動作のための駆動機構(アクチュエータ等)は限定されるものではない。
【0027】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を具体的に示す。実際に、図1に示す製造方法に従って本発明の可撓管の作製を行なった。
【0028】実施例1最初に図1(a)に示すように、軟質ステンレスで形成されたコイル(外径1.3mm、全長12.2mm、線径0.1mm、ピッチ0.65mm、巻き数19回を、シリコーンチューブ(内径1.4mm、肉厚0.15mm、全長15mm)内に挿入する。次に、図1(b)に示すように、樹脂としてポリパラキシリレン(スリーボンド社製、商品名「パリレン」)を用い、これを蒸着法によってコイルの表面及びチューブの内外面に層の厚みTが5μmとなるように被覆した。なお、蒸着は蒸着源加熱温度を75℃、加熱時間を30分、分解炉加熱温度を680℃、ガス状のポリパラキシリレンの分圧を0.1Torr〜0.2Torr(好ましくは0.1Torr)に設定して行なった。最後に、図1(c)に示すように、チューブの外面を被覆する樹脂層とチューブとを除去して、可撓管を得た。なお、最初に樹脂層を研磨により除去し、次にチューブをエッチングにより除去した。
【0029】上記で得られた可撓管について大きさ及び機械的性質の測定を行なった。結果、可撓管の外径は1.3mm〜1.4mm、内径は1.1mm〜1.09mmであった。この値は、本発明の製造方法によれば従来にはない細径化と薄肉化が達成された可撓管を作製できることを示している。また、最小曲げ半径は約1mmとなり、本発明の可撓管は、機械的性質にも優れているといえる。
【0030】実施例2軟質ステンレスで形成されたコイルとして外径0.35mm、全長20mm、線径0.05mm、ピッチ0.05mm、巻き数400回のものを用い、シリコーンチューブとして内径0.3mm、肉厚0.1mm、全長25mmのものを用い、蒸着の条件を蒸着源加熱温度100℃、加熱時間30分に変更した以外は、実施例1と同様にして可撓管を作製した。
【0031】上記で得られた可撓管についても大きさ及び機械的性質の測定を行なった。結果、可撓管の外径は0.35mm〜0.36mm、内径は0.29mm〜0.3mmであった。また、最小曲げ半径は約0.3mmであった。このことから、本例で作製した可撓管においても、従来にはない細径化と薄肉化が達成されており、機械的性質にも優れているといえる。
【0032】
【発明の効果】以上のように本発明を用いれば、機械的性質に優れ、さらに薄肉化および細径化が達成された可撓管を容易に作製することができる。また、この本発明の可撓管を用いれば、従来にはない細径の内視鏡、カテーテル及びガイドワイヤの作製が可能となる。
【出願人】 【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
【識別番号】000167989
【氏名又は名称】江刺 正喜
【識別番号】597086128
【氏名又は名称】芳賀 洋一
【出願日】 平成11年10月27日(1999.10.27)
【代理人】 【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
【公開番号】 特開2001−124250(P2001−124250A)
【公開日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願番号】 特願平11−305513