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【発明の名称】 管路の内張り材
【発明者】 【氏名】瀬下 雅博

【氏名】上田 泰裕

【氏名】石川 雅敏

【氏名】斉藤 均

【氏名】東 克彦

【要約】 【課題】高い強度を有し、かつ、特に大口径管路に適用した場合においても、製造過程や管路内への引き込み時に偏肉が生じず、また、管路径ごとに製造設備を必要とせず、更に径膨張可能で種々の状況の管路に対してその内周面に密着させることのできる管路の内張り材を提供する。

【解決手段】幅寸法が管路の内周長よりも若干短いシート状不織布1の表裏両面に、幅寸法が管路の内周長よりも若干長い高強度のシート状織布2a,2bを配置し、シート状不織布1についてはその幅方向両端部どうしを接合一体化して筒状体10を形成する一方、各シート状織布2a,2bについては、その幅方向両端部どうしを重ね合わせることにより、伸び率の大きなシート状不織布1からなる筒状体10の径膨張時に、シート状織布2a,2bが重ね合わせ部21a,21bにおいてスライドしてその径膨張に追随して、内張り材全体としての径膨張が可能なように構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 既設管の内周面を被覆すべく、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させて既設管の内周面に密着させた後、熱硬化性樹脂を硬化させる管路の内張り材であって、幅寸法が管路の内周長よりも若干短いシート状不織布の表裏両面に、幅寸法が管路の内周長よりも若干長い高強度のシート状織布が配置されているとともに、上記シート状不織布はその幅方向両端部どうしが接合一体化されて筒状体を形成し、かつ、上記各シート状織布の幅方向両端部どうしは重ね合わされていることを特徴とする管路の内張り材。
【請求項2】 既設管の内周面を被覆すべく、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させて既設管の内周面に密着させた後、熱可塑性樹脂を硬化させる管路の内張り材であって、所定幅寸法のシート状不織布の表裏両面に、当該シート状不織布よりも幅寸法の長い高強度のシート状織布がその幅方向両端をシート状不織布の幅方向両端部から突出するように配置されてなる複合シートの複数枚からなり、各シート状不織布はその端部どうしが相互に接合一体化されて全体として筒状体を形成し、各シート状織布はその幅方向両端部どうしが重ね合わされているとともに、一体化されたシート状不織布の全体の幅寸法が管路の内周長よりも若干短く、かつ、シート状織布の合計の幅寸法が管路の内周長よりも若干長いことを特徴とする管路の内張り材。
【請求項3】 請求項1または2に記載の管路の内張り材であって、シート状不織布と各シート状織布との間に、熱硬化性樹脂により硬化した後の曲げ弾性率が当該シート状不織布とシート状織布のそれぞれの略中間値を有するシート状中間材が介在していることを特徴とする管路の内張り材。
【請求項4】 最内層に薄肉の不織布層が配置されていることを特徴とする請求項1、2、または3に記載の管路の内張り材。
【請求項5】 最外層に薄肉の不織布層が配置されていることを特徴とする請求項1、2、3、または4に記載の管路の内張り材。
【請求項6】 シート状不織布とその表裏のシート状織布を含む各層の部材が、相互に仮止めされていることを特徴とする請求項1、2、3、4、または5に記載の管路の内張り材。
【請求項7】 最外周面がチューブで覆われていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、または6に記載の管路の内張り材。
【請求項8】 最内周面がチューブで覆われていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、または7に記載の管路の内張り材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、下水道管などの主として地中埋設管を内張りするための内張り材に関し、特に、大口径管路の補修に適用して、良好な作業性のもとに高い強度を発揮することのできる管路の内張り材に関する。
【0002】
【従来の技術】下水道管をはじめとする地中埋設管等を補修すべくその内周面を被覆するための内張り材においては、その強度を高くするためには、強度の高い熱硬化性樹脂と、炭素やアラミド、ガラス等の高強度繊維、特に安価なガラス繊維を使用することによって対応することができる。このような高強度繊維と熱硬化性樹脂を組み合わせた管路の内張り材として、従来、以下に示すものが実用化ないしは提案されている。
【0003】すなわち、特許第2736368号には、ガラスチョップドストランドを不飽和ポリエステル樹脂(熱硬化性樹脂)に分散させ、その樹脂を増粘させた、いわゆるシートモールディングコンパウンド(以下、SMCと称する)を使用したものが開示されている。
【0004】また、特公平6−92122号、特表平500277号には、高強度繊維(ガラス繊維)を筒状に編んだり、あるいは織ったりした布帛による筒状体を用いるものが開示されている。
【0005】更に、特開昭63−254033号、米国特許第4836715号には、ポリエステル繊維等の有機繊維からなる不織布に、ガラスクロスを一体化して筒状としたものが開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、以上のようなガラス繊維等の高強度繊維と熱硬化性樹脂とを組み合わせた高い強度の内張り材であっても、大口径の管路への適用に際しては、外水圧や土圧が大きくなる関係上、曲げ剛性を高くする必要があり、そのためには厚みを増大させなければならず、その厚みの増大によって以下に示すような問題が生じる。
【0007】前記した提案技術のうち、SMCからなる内張り材は、SMCはそれ自体がプレス成形材料であるため、熱硬化性樹脂の流れ性を高めており、未硬化状態における引張強度が相当に低いという特性を有し、ある程度以上の厚みとすると、その製造過程で幅方向に折り畳む際に内外周の寸法差で外周側のSMCが伸ばされてしまうばかりでなく、厚みの増大に伴う重量増に起因して、補修対象管路内への引き込み時における摩擦抵抗力が大きくなって、その引張方向(筒長方向)にSMCが伸ばされる結果、偏肉を生じやすいという問題がある。
【0008】また、ガラス繊維等の高強度繊維による布帛を筒状に編み、もしくは織ったものを用いる内張り材では、管路径ごとに製造設備を必要とし、種々の大口径管路に適用するためには、その口径の数だけの膨大な製造設備を用意しなければならず、多額の設備投資が必要となるという問題がある。
【0009】更に、有機繊維からなる不織布とガラスクロスとを一体化した内張り材では、補修対象管路の内周面に正確に密着させることができないという問題がある。すなわち、ガラス繊維等の高強度繊維は、その繊維自体の伸び率が小さく、内張りを施す際に加える応力(例えば内圧0.1MPa程度)では、ガラスクロスは殆ど伸びることができない。一方、内張りを施す既設管路は、腐食したり段差が生じていたり、あるいは折れ曲がりが存在しているなど、種々の状況を呈しているため、内張りを施すにあたっては、一般に、内張り前の内張り材の外径、つまり初期外径を既設管内径より数%程度小さくしておき、内張り材に対して内圧を付与して径膨張させることにより、既設管内周面に沿わせた状態で硬化させる方法が採用されている。従って、内張り材としては径方向に伸びることが必要であるが、不織布にガラスクロスを一体化した従来の提案に基づく内張り材では、径方向に殆ど伸びることができないので、内張り材の初期外径を既設管内径よりも小さくした場合は、既設管内周面と内張り材外周面の間に隙間が生じ、また、内張り材の初期外径を既設管内径よりも大きくした場合には内張り材に皺が生じ、管路内部流体、例えば下水道管の場合には汚水の流れを阻害してしまう。
【0010】本発明は以上の諸問題点を一挙に解決すべくなされたもので、高い強度を有し、しかも特に大口径管路に適用した場合においても、製造過程や管路内への引き込み時に偏肉が生じず、また、管路径ごとに製造設備を必要とせず、更に径膨張可能で種々の状況の管路に対してその内周面に容易に密着させることのできる管路の内張り材の提供を目的としている。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の管路の内張り材は、既設管の内周面を被覆すべく、未硬化状態の熱硬化性樹脂を含浸させて既設管の内周面に密着させた後、熱硬化製樹脂を硬化させる管路の内張り材であって、幅寸法が管路の内周長よりも若干短いシート状不織布の表裏両面に、幅寸法が管路の内周長よりも若干長い高強度のシート状織布が配置されているとともに、上記シート状不織布はその幅方向両端部どうしが接合一体化されて筒状体を形成し、かつ、上記各シート状織布の幅方向両端部どうしは重ね合わされていることによって特徴づけられる(請求項1)。
【0012】本発明においては、シート状不織布とその表裏両面に配置された高強度のシート状織布からなる複合シートは、その全周を複数枚で構成することができ、請求項2に係る発明の管路の内張り材においては、所定幅寸法のシート状不織布の表裏両面に、当該シート状不織布よりも幅寸法の長い高強度のシート状織布がその幅方向両端をシート状不織布の幅方向両端部から突出するように配置されてなる複合シートの複数枚からなり、各シート状不織布はその端部どうしが相互に接合一体化されて全体として筒状体を形成し、各シート状織布はその幅方向両端部どうしが重ね合わされているとともに、一体化されたシート状不織布の全体の幅寸法が管路の内周長よりも若干短く、かつ、各シート状織布の合計の幅寸法が管路の内周長よりも若干長い、という特徴的構成を採用している。
【0013】本発明においては、シート状不織布と各シート状織布との間に、熱硬化性樹脂により硬化した後の曲げ弾性率が当該シート状不織布とシート状織布のそれぞれの中間値を有するシート状中間材を介在させる構成(請求項3)を採用することができる。
【0014】また、本発明においては、最内層に薄肉の不織布層を配置した構成(請求項4)、および、最外層に薄肉の不織布層を配置した構成(請求項5)を採用することができる。
【0015】更に、本発明においては、シート状不織布とその表裏のシート状織布を含む各層の部材を、相互に仮止めした構成(請求項6)を採用することができる。
【0016】更にまた、本発明においては、最外周面をチューブで覆った構成(請求項7)、および、最内周面をチューブで覆った構成(請求項8)を採用することができる。
【0017】ここで、本発明におけるシート状不織布は、内張りに施す際に加える内圧で容易に伸びることができる構成のものを使用する。具体的には、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維等をニードルパンチにより不織布としたものが最適である。また、伸びを全体に均一化する目的で、寒冷紗などを積層することが好ましい。
【0018】また、本発明において高強度のシート状織布とは、シート状不織布に比べて高強度でかつ高弾性率(一定荷重に対する変形量が小さい)の織布をいい、俗にスーパー繊維、あるいはハイパフォーマンス繊維、ハイテク繊維などと呼ばれる繊維を織成した織布が使用される。繊維の例としては、ガラス繊維、アラミド(全芳香族ポリアミド)繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミック繊維、全芳香族ポリエステル繊維、超高分子量ポリエチレン繊維等を挙げることができる。また、ガラス繊維としては、Eガラス、Cガラス、ECRガラス(商品名)などがあり、適用環境に応じて適宜に選択する。
【0019】また、本発明における内張り材に対して含浸させるべき熱硬化性樹脂は、広義の熱硬化性樹脂であって、熱以外に紫外線により硬化反応を生起する樹脂をも含む。
【0020】なお、本発明は、特に大口径管路の内張りに適しているものであるが、中口径管路や小口径管路の内張りにも等しく適用することができる。
【0021】本発明は、シート状不織布の表裏両面に、ガラスロービングクロスをはじめとする高強度のシート状織布を配置したサンドイッチ構造により、熱硬化性樹脂を含浸させて硬化させた状態で極めて薄く、強度の高い内張り材を得ると同時に、伸びが小さく高強度のシート状織布の採用によって、熱硬化性樹脂の含浸未硬化状態における折り畳み時や管路内への引き込み時に偏肉の発生を防止するとともに、この高強度のシート状織布については、その幅方向両端部を接合一体化せずに重ね合わせる構造を採用することにより、管路径ごとの製造設備を不要とし、かつ、内張り材全体としての径方向への膨張を許容して、所期の目的を達成するものである。
【0022】すなわち、伸び率の小さい高強度のシート状織布によりシート状不織布をサンドイッチした構造により、樹脂を含浸させて未硬化の状態において折り畳んだり管路内に引き込んだとき、シート状織布の経糸と緯糸の存在によって、全体としての内張り材の長さ方向および横方向への伸びが抑制され、偏肉が生じることを防止することができる。
【0023】また、内張り材の口径は、両端部どうしが例えばオーバーロックミシン等によって接合一体化されるシート状不織布によって決まり、シート状織布の両端部どうしは単に重ね合わされるだけであるから、口径ごとの製造設備が不要となる。
【0024】更に、両端部どうしが接合一体化されて筒状体とされるのは、伸び率の大きなシート状不織布のみであって、伸び率の小さく高強度のシート状織布についてはその両端部どうしが重ね合わされているだけであるから、内張り材全体としては大きな径膨張が可能であり、既設管内周面に容易に密着させることができる。
【0025】すなわち、シート状不織布による筒状体の初期外径を、シート状不織布が内張りの拡張時の圧力で生じる伸び率の範囲内で既設管内径よりも数%、例えば5%程度小さくし、かつ、高強度のシート状織布についてはその幅寸法を既設管内周長より例えば5%程度大きくしてその幅方向両端部を重ね合わせた状態とし、熱硬化性樹脂を含浸させて未硬化状態で既設管内に引き込んだ後、内張り材に内圧を付与することによって、シート状不織布が伸びて筒状体が径膨張する。このとき、高強度のシート状織布は膨張しないが、両端の重ね合わせ部分が相互にスライドして筒状体の径膨張に追随する結果、内張り材全体として自由に径膨張して既設管内周面に密着する。
【0026】また、請求項2に係る発明のように、シート状不織布の表裏両面に、高強度のシート状織布をその幅方向両端部が突出するように重ねて配置した複合シートを複数枚用意し、シート状不織布についてはその両端部どうしを相互に接合一体化して筒状体を形成する一方、高強度のシート状織布についてはその両端部どうしを重ね合わせた構成を採用すると、個々のシート状不織布およびシート状織布の幅寸法が短くても、任意の超大口径の管路の内張りに適用可能な超大口径の内張り材を得ることができる。
【0027】また、シート状不織布と高強度のシート状織布との間に、熱硬化性樹脂により硬化した後の曲げ弾性率がこれらの略中間値を有するシート状中間材を介在させる請求項3に係る発明の構成を採用すると、各層の境界部における曲げ弾性率の差が小さくなるため、内張り後の内張り材に外部応力が加わったとき、異種素材間でのせん断破壊が生じにくくなり、シート状織布の剥離現象の発生を抑制することができる。
【0028】請求項4に係る発明のように、最内層に薄肉の不織布層を配置すると、内張り後の管路の表面をより平滑にすることができ、管路特性としての流下能力を向上させることができる。また、この最内層の不織布層の材質を、耐薬品性の高いもの、例えばポリエステルやポリエチレン等、を使用することで、内張り後の管路内面の耐薬品性が向上する。更に、内張り後の検査作業時等において、管路内に種々の機器を持ち込んだときにも、弾性を有する最内層の不織布層がクッションの役割を担い、内張り材が損傷しにくくなるという利点もある。つまり、最内層に高強度のシート状織布が存在していると、弾性に劣るため、機器等の衝突によって内張り材の表面が傷つきやすいが、その問題を解決することができる。
【0029】また、最外層に薄肉の不織布層を配置する請求項5に係る発明の構成を採用すると、内張り材を管路内に引き込む際や、管路内での内張り材の拡張・加熱時において、損傷している既設管内面と接触して強度メンバーであるシート状織布層が傷つくことを防止することができ、内張り材は設計通りの強度を発現することが可能となる。また、この最外層の不織布層は、地下水の接触面として働き、シート状織布層が地下水と直接接触して、その部分の熱硬化性樹脂が未硬化となって強度を発現できなくなるという不具合の発生を防止することができる。
【0030】請求項6に係る発明のように、シート状不織布およびその表裏両面の高強度のシート状織布を含む各層の部材を相互に仮止めしておくと、内張り材の製造時や熱硬化性樹脂の塗布・含浸時に、あるいは管路内への引き込み時等において、各層の部材間でのずれの発生を防止することができる。ここで、請求項6に係る発明における仮止めとは、特定の外力や熱を掛けない運搬時や管路内への引き込み時等においては各層の部材が相互に固定されているとともに、内張り材に内圧を付与することによる拡張時や、加熱時にその固定が解除される程度に各層の部材を相互に固定しておくことを言う。
【0031】内張り材の最外周面をチューブで覆う請求項7に係る発明の構成を採用すると、その外面チューブ内を減圧することにより、熱硬化性樹脂を塗布したときにその樹脂が不織布および織布に含浸しやすくなり、塗布作業を容易化することができる。また、最外周面をチューブで覆うと、内張り材の管路内への引き込み時における摩擦抵抗を低減することができるとともに、管路内に水が存在している場合には、内張り材が直接的に水と接触することを防止することができる。
【0032】また、内張り材の最内周面をチューブで覆う請求項8に係る発明の構成を採用すると、管路内に内張り材を引き込んだ後、その内面チューブの両端を閉塞してエアを注入することによって、直ちに内張り材を拡張させて管路内に密着させることが可能となる。
【0033】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について述べる。図1は請求項1に係る発明に対応する基本的な実施の形態の構成を示す模式的断面図である。
【0034】この例における内張り材は、ポリエステル繊維またはポリオレフィン繊維等の合成繊維からなるシート状不織布1と、その表裏両面に配置されたガラスロービングクロス2a,2bからなり、シート状不織布1は幅方向両端部が一体化部11において相互に接合一体化されて筒状体10を構成している。一体化部11は、例えばオーバーロックミシン等によって不織布を縫製一体化することによって形成することができる。このシート状不織布1の幅方向寸法は、内張りすべき管路の内周長よりも短く設定され、このシート状不織布1による筒状体10の初期外径寸法は、内張りすべき管路の内径寸法よりも例えば5%程度小さくなっている。
【0035】一方、ガラスロービングクロス2a,2bは、それぞれの幅方向寸法が内張りすべき管路の内周長よりも数%長く、筒状体10に形成されたシート状不織布1の一体化部11の近傍において、それぞれの幅方向両端部どうしが相互に重ね合わせされた重ね合わせ部21a,21bを形成している。
【0036】以上の内張り材を用いた管路の内張り施工法の例を挙げると、内張り材の全体に不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂等の熱硬化性樹脂を含浸させた後、内張りすべき管路内に引き込む。なお、熱硬化性樹脂は、適宜に増粘させておくことが、作業性を向上させるうえで望ましい。また、上記筒状の内張り材を既設管内周面に密着させるための拡張チューブは、内張り材の製造時から管路内で内張り材を膨張させる前のいずれかの時点で、内張り材の内側に反転させるなどの手段により設置しておく、而して、拡張チューブの両端部を端末金具等によって閉塞し、その金具に設けた流体吹き込み口からエアを吹き込み、拡張チューブを膨張させる。これにより、内張り材は徐々に拡張していき、やがて図2(A)に示すように、シート状不織布1からなる筒状体10は内張りすべき管路P内において円筒形に膨らみ、その外径が筒状体10の初期外径に達する。なお、図において拡張チューブはTで示される。
【0037】そして、更に拡張チューブT内にエアを圧入することにより、図2(B)に示すように、伸び率の大きなシート状不織布1からなる筒状体10は径膨張する。このとき、殆ど伸びないガラスロービングクロス2a,2bは、筒状体10の径膨張によって、それぞれの幅方向両端部の重ね合わせ部21a,21bにおいて相互にスライドし、重ね合わせ量が少なくなることで筒状体10の径膨張に追随し、その結果、内張り材の全体が径膨張し、その外周面が管路Pの内周面に密着する。その状態で、拡張チューブT内に蒸気や温水等の加熱流体を圧入するか、あるいは内張り材の内部に加熱装置(紫外線硬化樹脂を用いる場合にはUVランプ)を配置して、熱硬化性樹脂を硬化させる。その後、内張り材の内側の拡張チューブTの端末金具を外し、あるいは加熱装置等を除去することにより、作業を終える。
【0038】以上の実施の形態によれば、熱硬化性樹脂が未硬化の状態における内張り材は、その表裏両面に位置するガラスロービングクロス2a,2bの存在により、折り畳んだり管路P内に引き込み時において殆ど伸びない関係上、偏肉が生じにくい。しかも、ガラスロービングクロス2a,2bはその幅方向両端部が単に重ね合わせられているだけであるから、内張り材の拡張時には、伸び率の大きなシート状不織布1からなる筒状体10の径膨張を阻害することがなく、筒状体10の外径寸法を管路Pの内径寸法よりも小さくして径膨張させることにより、管路Pに腐食部分や段差、あるいは屈曲部等が存在しても、内張り材は管路Pの内周面に対して皺等を生じることなく、容易かつ確実に密着する。
【0039】次に、請求項2に係る発明の実施の形態について述べる。図3はその構成を示す模式的断面図である。この例における特徴は、先の例におけるシート状不織布1とその表裏にガラスロービングクロス2a,2bを配置してなる複合シートSの複数枚を用いて、一つの内張り材を構成している。各複合シートSのガラスロービングクロス2a,2bの幅寸法は、シート状不織布1の幅寸法よりも長くしており、各複合シートSは、シート状不織布1の幅方向両端からガラスロービングクロス2a,2bが突出した状態となっている。
【0040】各複合シートSのシート状不織布1の各両端部どうしは、オーバーロックミシン等を用いた一体化部11によって相互に接合一体化して、全体として筒状体10を構成するとともに、各ガラスロービング2a,2bについては、その各一体化部11の近傍において相互に重なり合わされて重ね合わせ部21を形成している。また、この例においても、筒状体10の初期外径寸法は内張りすべき管路の内径寸法よりも小さくし、かつ、表裏それぞれのガラスロービングクロス2aおよび2bの合計の幅寸法は内張りすべき管路の内径寸法よりも長くしている。
【0041】この実施の形態においても、先の例と同等の施工方法により、拡張チューブT内へのエアの圧入によって複数枚のシート状不織布1からなる筒状体10が径膨張し、その表裏両面の各ガラスロービングクロス2a,2bはそれぞれの重ね合わせ部21においてスライドし、高強度のガラスロービングクロス2a,2bを用いながらも、内張り材全体としての径膨張が可能で、先の例と同等の作用効果を奏することができる。
【0042】次に、請求項3に係る発明の実施の形態について述べる。図4はその構成を示す模式的断面図である。この例における特徴は、シート状不織布1とその表裏に配置されたガラスロービングクロス2a,2bの間に、それぞれシート状の中間材3a,3bを配置した点にある。各シート状の中間材3a,3bは、シート状不織布1とガラスロービングクロス2a,2bが熱硬化性樹脂により硬化した後の各曲げ弾性率の略中間の曲げ弾性率を有するものであり、シート状不織布1の素材をポリエステル繊維(不飽和ポリエステル樹脂含浸硬化後の曲げ弾性率2500N/mm2 )としたとき、このシート状不織布1とガラスロービングクロス2a,2b(不飽和ポリエステル樹脂含浸硬化後の曲げ弾性率10000N/mm2 )の間に介在させる中間材3a,3bの素材としては、例えばガラスクロス(不飽和ポリエステル樹脂含浸硬化後の曲げ弾性率5000N/mm2 )を採用することができる。
【0043】以上のような中間材3a,3bをシート状不織布1とガラスロービングクロス2a,2bの間に介在させることにより、熱硬化性樹脂の硬化後における内張り材は、各層間の曲げ弾性率が接近し、外部応力が作用したときにガラスロービングクロス2a,2bの層が剥離することを防止することができる。なお、中間材3a,3bは、自身の伸び率によって、シート状不織布1と同様に筒状化してもよいし、ガラスロービングクロス2a,2bのように重ね合わせてもよく、適宜選択する。
【0044】図5は請求項4に係る発明の実施の形態の構成を示す模式的断面図である。この例の特徴は、内張り材の最内層に、薄肉のシート状不織布からなる内層不織布層4を配置した点にある。この内層不織布層4の材質としては、中央のシート状不織布1と同等のポリエステル繊維やポリオレフィン繊維等を用いることができ、その幅方向両端部がオーバーロックミシン等による一体化部41によって相互に接合一体化されて、筒状となっている。この内層不織布層4を設けることにより、内張り後の管路の表面が熱硬化性樹脂を含浸硬化させた内層不織布層4で覆われることになり、管路表面の平滑化と、衝撃吸収性に優れた管路が得られるとともに、その材質をポリエステル等の耐薬品性の高いものとすれば、耐薬品性にも優れた管路が得られる。
【0045】図6は請求項5に係る発明の実施の形態の構成を示す模式的断面図である。この例の特徴は内張り材の最外層に、薄肉のシート状不織布からなる外層不織布層5を配置した点にあり、図6では、上記の内層不織布層4と外層不織布層5の双方を配置している。この外層不織布層5の素材も、中央のシート状不織布1と同等のポリエステル繊維やポリオレフィン繊維等を用いることができ、この外層不織布層5についても、幅方向両端部がオーバーロックミシン等による一体化部51により相互に接合一体化され、筒状に形成されている。この外層不織布層5を設けることで、内張り材の管路内への引き込み時にガラスロービングクロス2aの層が直接管路内周面に接触して損傷することを防止でき、また、管路内に水が存在していてもガラスロービングクロス2aの層の熱硬化性樹脂が直接的に水に曝されて硬化しないという不具合も解消できる。
【0046】図7は請求項7に係る発明の実施の形態の構成を示す模式的断面図である。この例の特徴は、内張り材の外周面を、外面チューブ6で覆った点にある。外面チューブ6の素材としては、熱可塑性樹脂を採用することができ、具体的にはポリアミド樹脂、ポリエチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂等を挙げることができる。この外面チューブ6を設けることにより、その内部を減圧することで熱硬化性樹脂を内張り材に塗布したときにシート状不織布1やガラスロービングクロス2a,2bに樹脂が容易に含浸し、その塗布作業が容易になる。また、この外面チューブ6は、内張り材の管路内への引き込み時に、管路表面との接触による摩擦抵抗を軽減する役割をも担うと同時に、管路内に水が存在している場合には、内張り材に直接水が接触して熱硬化性樹脂の硬化を妨げることを防止することもできる。
【0047】図8は請求項8に係る発明の実施の形態の構成を示す模式的断面図である。この例における特徴は、内張り材の内周面を内面チューブ7で覆った点にあり、この内面チューブ7の材質としては上記した外面チューブ6と同等のものを用いることができる。内面チューブ7は、前記した内張り施工時に内張り材を拡張させるための拡張チューブとして用いることができ、この内面チューブ7を設けることによって、内張り材を管路内に引き込んだ後に直ちにこれを拡張することが可能となり、別途拡張チューブを挿入する場合に比してその作業性が向上する。
【0048】また、以上の各実施の形態において、内張り材の各層を構成する部材、すなわちシート状不織布1とガラスロービングクロス2a,2b、あるいはそれに加えて中間材3a,3b、内層不織布層4、外層不織布層5を、相互に仮止めしておくことが望ましい。この仮止めの方法は、例えば物理的な方法としては熱融着、ニードルパンチ等の方法を挙げることができ、化学的な方法としては接着剤による接着等を挙げることができる。この仮止めは、内張り材の拡張時や、熱硬化性樹脂の硬化のための加熱時にその固定が解除される程度としておく。この仮止めにより、内張り材の製造時や熱硬化性樹脂の塗布時、あるいは管路内への引き込み時に各層の部材どうしがずれることを防止することができ、作業性の向上と内張り後の内張り材の品質向上を達成することができる。
【0049】
【発明の効果】本発明によれば、シート状不織布の表裏両面をガラスロービングクロス等の高強度のシート状織布によってサンドイッチした構成の採用により、熱硬化性樹脂の硬化後に薄くて高い強度を有し、しかも製造過程における折り畳み時や、管路内への引き込み時に伸びを生じることがなく、従って偏肉を生じにくい内張り材でありながら、高強度のシート状織布についてはその幅方向両端部を一体化せずに重ね合わせた状態としているから、内張りすべき管路の口径ごとの製造設備を必要とせず、また、内張り材の初期外径を管路の内径よりも小さくして、内張り時に径膨張させて管路内周面に密着させることができる。
【0050】また、請求項2に係る発明のように、シート状不織布とその両面に配置された高強度のシート状織布からなる複合シートを複数枚用いて、各シート状不織布についてはその幅方向両端部を相互に接合一体化して筒状に形成し、高強度のシート状織布についてはその幅方向両端部を重ね合わせて一つの内張り材を構成すると、任意の超大口径の管路に対しても容易に対処可能である。
【0051】請求項3に係る発明のように、シート状不織布と高強度シート状織布との間に、熱硬化性樹脂により硬化した後の曲げ弾性率がこれらの中間値を有する中間材の層を介在させると、熱硬化性樹脂の硬化後に外部応力が作用しても、高強度シート状織布が剥離することを防止でき、既設管内により強度の高い内張り材を形成することができる。
【0052】また、内張り材の最内層に薄肉の不織布層を配置する請求項4に係る発明によると、内張り後の管路表面が平滑化されてその流下能力を高めることができると同時に、管路の表面に弾性を付与することができ、内面における耐衝撃性に優れた管路が得られる。
【0053】内張り材の最外層に薄肉の不織布層を配置する請求項5に係る発明によれば、内張り材の管路内への引き込み時や拡張、加熱時に、強度メンバーである高強度シート状織布が管路内面と直接接触して損傷することを防止でき、内張り材を常に設計通りの強度のもとで機能させることができる。
【0054】また、請求項6に係る発明のように、内張り材の各層を構成する部材どうしを仮止めしておけば、製造や内張り施工時において各部材どうしがずれることを抑制することができ、作業性の向上と信頼性の向上を達成することができる。
【0055】更に、内張り材の外周面を外面チューブで覆う請求項7に係る発明によると、その外面チューブ内の減圧により、塗布された熱硬化性樹脂を容易に各層に含浸させることができるとともに、管路内への引き込み時における摩擦抵抗を軽減することができ、また、管路内に水が存在していても樹脂の未硬化状態の内張り材が直接的に水に接触して硬化を阻害することを防止することができる。
【0056】更にまた、内張り材の内周面を内面チューブで覆う請求項8に係る発明によると、内張り材を管路内に引き込んだ後、直ちにその内面チューブ内にエアを圧入することによって内張り材を径膨張させることが可能となり、迅速な内張り作業を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
【識別番号】392008884
【氏名又は名称】芦森エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成11年10月18日(1999.10.18)
【代理人】 【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
【公開番号】 特開2001−116165(P2001−116165A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−295430