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【発明の名称】 断熱材および複合断熱材
【発明者】 【氏名】石尾 博明

【氏名】中 裕之

【要約】 【課題】広い温度領域で断熱保温材あるいは断熱保冷材として使用でき、断熱材を配置する外壁面が凹凸を有する断熱対象構造物に対しても、優れた断熱性能を示す複合断熱材を提供する。

【解決手段】金属製シートまたは無機質繊維シートから成る包囲体(12a)に、多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体(12b)を、包囲体内の空隙率が30〜85%となるように含んで成る断熱材(12)を下側断熱要素(16a)とし、その上に上側断熱要素(16b)が積層されて成る複合断熱材(10)を、断熱対象構造物の外壁面(100)に配置させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属製シートから成る包囲体内に、多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体を、包囲体内の空隙率が30〜85%となるように含んで成る断熱材。
【請求項2】 金属製シートが少なくとも一方の面が高い熱反射率を有するものであり、熱反射率の高い面が外側に位置する請求項1に記載の断熱材。
【請求項3】 金属製シートがガス不透過性であり、包囲体内に不活性ガスが充填されている請求項1または請求項2に記載の断熱材。
【請求項4】 金属製シートがガス不透過性であり、包囲体内が減圧または真空状態になっている請求項1または請求項2に記載の断熱材。
【請求項5】 無機質繊維シートから成る包囲体内に、多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体を、その空隙率が30〜85%となるように含んで成る断熱材。
【請求項6】 無機質繊維シートが、1つあたりの開口面積が80〜10000μm2である開口部が100〜12000個/cm2の割合で形成されているものである請求項5に記載の断熱材。
【請求項7】 多孔質セラミクス系粒状体が、100〜1000メッシュの粒状体であり、複数の小孔が合わせて1つの粒状体の体積の30〜70%を占めるように形成されているものである請求項1〜6のいずれか1項に記載の断熱材。
【請求項8】 中空セラミクス系粒状体が、100〜1000メッシュの粒状体であり、1または複数の独立した中空部が1つの粒状体の体積の20〜60%を占めるように形成されているものである請求項1〜7のいずれか1項に記載の断熱材。
【請求項9】 請求項1〜8のいずれかに記載の断熱材が下側断熱要素であり、その上に上側断熱要素が積層されて成る複合断熱材。
【請求項10】 上側断熱要素が、断熱板と無機質繊維シートとを積層した積層ユニットを断熱板が下側となるように複数積層してなるものである請求項9に記載の複合断熱材。
【請求項11】 断熱板がマイカ質断熱板である請求項10に記載の複合断熱材。
【請求項12】 積層ユニットを4以上積層して成る請求項10または請求項11に記載の複合断熱材。
【請求項13】 積層ユニットの無機質繊維シートが複数の無機質繊維シートセグメントと空隙セグメントとから成り、各無機質繊維シートセグメントは他の無機質繊維シートから空隙セグメントによって面方向に隔てられて存在している請求項10〜12のいずれか1項に記載の複合断熱材。
【請求項14】 空隙セグメントに硬質スペーサが挿入されている請求項13に記載の複合断熱材。
【請求項15】 各無機質繊維シートセグメントが帯状体であり、これらは互いに平行となるように配置されており、当該帯状体の厚さをHSとし、硬質スペーサの高さをHU、長さをLUとしたときに、HS/HUが1であり、HS/LUが1〜10である請求項14に記載の複合断熱材。
【請求項16】 下側断熱要素の下に、厚さ方向より面方向に相対的に大きい熱伝導率を有する熱伝導異方性シートが配されている請求項9〜15のいずれか1項に記載の複合断熱材。
【請求項17】 最上面に、厚さ方向より面方向に相対的に大きい熱伝導率を有する熱伝導異方性シートが配されている請求項9〜15のいずれか1項に記載の複合断熱材。
【請求項18】 熱伝導異方性シートの面方向の熱伝導率と厚さ方向の熱伝導率の比が4:1〜10:1である請求項16または請求項17に記載の複合断熱材。
【請求項19】 熱伝導異方性シートが、面方向の熱伝導率が400W/(m・K)以上1000W/(m・K)以下であり、面方向の伝導率と厚さ方向の熱伝導率の比が4:1〜10:1であるグラファイト系シートである請求項16または請求項17に記載の複合断熱材。
【請求項20】 請求項9〜19のいずれか1項に記載の複合断熱材を被覆材が被覆している被覆型複合断熱材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えばプラズマディスプレイ、ブラウン管およびセラミクス基板等の電気製品部品の焼成等に用いる焼成炉、ならびに鉄鋼分野、化学材料加工および食品加工で用いられる乾燥炉、焼成炉、冷蔵容器、保冷用機器もしくは容器等の高温構造物もしくは低温構造物を断熱保温するための断熱材料に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、乾燥炉および焼成炉のように高温となる構造物あるいは保冷容器のように低温となる構造物の断熱保温は、鉱物綿およびセラミクックスファイバー等の無機質繊維からなる綿状シート、フェルト状シート、あるいはモールド成形されたブロック状材料を断熱材とし、これを高温もしくは低温構造物を画成する壁の外側、すなわち構造物と周辺雰囲気との間に配置することにより実施していた。例えば、無機質繊維シートを配置させて断熱する場合、無機質繊維シートは製造上の制約によりその厚さが3〜100mmに制限されるため、有効な断熱作用を得るには積層して200mm以上の厚さにする必要がある。また、外観を良くするため、断熱材の周辺外気に触れる面、すなわち断熱保温の対象である高温構造物と接する面から最も離れた面(この面を「外側表面」とも呼ぶ)には、外観を良くするために化粧板のような板状物を配することが多い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一般に、高温炉のような高温構造物または保冷用機器のような低温構造物の本体を構成する壁の外側表面(この面を「外壁面」とも呼ぶ)は、構造物を構成する部材に起因して凹凸を有し、平坦でない場合が多い。例えば、凹凸は、ボルトの頭部が外壁面から突出することによって形成され、あるいは、冷却水を通過させるための、または電気的な配線を保護するための配管もしくはコの字型の鋼材を外壁面に付設することによって形成される。また、設計上の制約により配管が構造物内部から外壁面を経由して外側に延在する場合もある。
【0004】凹凸が形成されている部分の高低差が小さければ、無機質繊維シートの圧縮弾性によって凹凸は吸収されるため、断熱材の外側表面の平坦性は確保され、従って化粧板を問題無く配置させることが可能である。しかし、凹凸の高低差が大きく、例えば凸部の高さが20mmを超えると、無機質繊維シートによる吸収は困難となり、その結果、外壁面の凹凸が断熱材の外側表面にも現れるため、化粧板を配置させることができなくなる。また、断熱材が凹凸に追従せず、断熱材と外側壁面との間で隙間が生じると、当該隙間からの放熱により断熱効果が低下する場合もある。
【0005】そこで、例えば、凹部にロックウールを詰める等して凹凸の高低差を無くす、あるいは小さくしてから、無機質繊維シートを配置させることが行われている。しかし、ロックウールを詰める作業は効率の点で必ずしも有利ではない。また、施工時にロックウールから発塵が生じ、作業環境を悪化させるという問題もある。
【0006】別法として、無機質繊維シートから成るブロック状断熱材を適当な形状寸法にカットし、これを凹凸形状に合うように組み合わせて配置し、外側表面を平坦にする方法がある。しかし、カットしたブロック状材料の組み合わせでは、例えば凹部が曲面を有する場合のように凹凸形状如何によっては、断熱材と外壁面との間に隙間が生じる可能性がある。隙間に起因して生じる問題は前述したとおりである。また、凹凸に合わせて施工の都度、断熱材をカットすることは煩雑であって施工効率を悪くする。更に、カット時の断熱材からの発塵が作業環境を悪化させるという問題もある。
【0007】外壁面から配管が延在している場合には、断熱材に配管の断面形状に対応する開口部を設け、この開口部に配管を貫通させることにより、配管部分を除く外壁面全体を断熱材で間隙無く覆うことが行われている。しかし、断熱材の開口部と配管との間には隙間が生じやすく、当該隙間が断熱効果を低下させる場合がある。そこで、この隙間にロックウール等を詰めることも行われているが、かかる作業の問題点は前述したとおりである。
【0008】このように、断熱対象となる構造物の外壁面が平坦でなく凹凸等を有する場合において、断熱材を、断熱効果および施工効率を低下させることなく配置させることは困難である。かかる実状に鑑み、本発明は、断熱対象となる構造物の外壁面の構造の如何に拘わらず、良好な断熱効果を発揮し得るように設置可能な断熱材を提供することを第1の課題とする。
【0009】また、例えば高温炉に関していえば、外壁面においては局所的に温度の高い部分と低い部分とが一般に生じる。先に例示した無機質繊維から成る断熱材料の熱伝導率は温度依存特性を有し、温度が高くなるほど、その熱伝導率は高くなり断熱効果は低下する。従って、炉の外壁面に生じる温度差は、その周囲に配置される断熱材がもたらす断熱効果の均一化を阻害し、その結果、断熱材の外側表面において温度の高い部分と低い部分とが生じる場合がある。このことは、設計外側表面温度、すなわち断熱材の外側表面の予定温度を例えば40℃以下に設定して断熱材を構成したとしても、ある箇所では70℃近くになって所定の断熱効果が得られず、断熱性能を均一にすることができないという問題を招いていた。
【0010】そこで、本発明は、高温炉の外壁面において温度のばらつきが大きい場合に、断熱材料の熱伝導率の温度依存性に起因して炉の外壁面を覆う断熱材料の外側表面温度がばらつくという断熱性能の不均一性をなくし、従来の無機質繊維からなる断熱材料よりも優れた断熱特性を示す保温もしくは保冷用の複合断熱材を提供することを第2の課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】前記第1の課題を達成するために、本発明は、金属製シートまたは無機質繊維シートから成る包囲体内に、多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体を、包囲体内の空隙率が30〜85%となるように含んで成る断熱材を提供する。
【0012】この断熱材は、可撓性または柔軟性を有するシート状物から成る包囲体の中に、断熱作用を有する多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体が、包囲体内に空隙を残した状態で、即ち適度に疎らな状態で充填されていることを特徴とする。この特徴により、断熱材全体は適度に変形可能なもの、即ち、可変形性を有するものとなる。
【0013】断熱材を構成する「包囲体」とは、その内部に、形状が変化し得、場合によりその体積も変化し得る空間を画成し、当該空間内に多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体を収容することができ、それらが当該空間の外へ漏れ出すことのないように封入されたものを指す。この包囲体を構成するシートは、金属製シートまたは無機質繊維シートであって、可撓性を有するものであることが好ましい。
【0014】金属製シートを用いる場合、金属製シートは、例えばステンレス製シートであって、例えば0.01〜0.18mmの厚さを有するものであることが好ましい。金属製シートはガス不透過性であるから、これを用いて包囲体を形成し、シート間の接合部を溶接等によって気密的にすれば、包囲体内にはガスの出入りをも実質的に許容しない、外部から隔離された密閉空間を形成できる。その場合、断熱材は包囲体内に存在する気体(例えば空気)の体積の圧縮または膨張、ならびに包囲体内における多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体の流動によって変形し得るものとなる。
【0015】無機質繊維シートを用いる場合、無機質繊維シートは不織布、織布、フェルトもしくはメッシュ等であって、アルミナ繊維、シリカ繊維、または炭素系繊維等から成るものであることが好ましい。特にアルミナ繊維は、その耐熱温度が1000℃と高いため、高温の断熱対象構造物を断熱する場合に、都合良く使用できる。また、無機質繊維シートの厚さは0.5〜1.6mmであることが好ましく、その目付は200〜1500g/m2であることが好ましい。
【0016】無機質繊維シートには、包囲体内に収容する多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体が漏出しないことを条件として、1つ当たりの開口面積が80〜10000μm2である開口部が100〜12000個/cm2の割合で形成されていることが好ましい。無機質繊維シートは、ガス透過性を有するものであるから、包囲体は周囲のガス(例えば空気)が包囲体内に出入りし、包囲体内の多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体が流動することにより変形し得る。従って、無機質繊維シートを包囲体とする断熱材は、金属製シートを包囲体とする断熱材よりも可変形性が大きくなる。
【0017】包囲体内には、多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体(これらを総称して「セラミクス系粒状体」と呼ぶ場合がある。)が充填される。
【0018】セラミクス系粒状体を構成するセラミクス材料は、例えば、シリカ(SiO2)を80〜95重量%およびアルミナ(Al23)を20〜5重量%含有するものであることが好ましい。また、粒状体は100〜1000メッシュの寸法のものを用いることが好ましい。
【0019】多孔質セラミクス系粒状体とは、1つの粒状体の表面ならびに内部に多数の孔が形成されたスポンジ状の粒状体である。孔の殆どは互いに連通して連続気泡状になっているが、一部においては孔と孔とが壁で隔てられている。多孔質セラミクス系粒状体においては、1つの多孔質粒状体に占める孔全体の割合が30〜70体積%(即ち、空隙率が30〜70%)であることが好ましい。また、多孔質セラミクス系粒状体に形成される孔は、1つあたりの孔の容積が1×10-9mm3〜5×10-1mm3であることが好ましい。多孔質セラミクス系粒状体は、例えば、溶融したセラミクスの滴を大気中で落下させるときに、高速で流れる気体フローに接触させ、セラミクスの滴を泡状化または球状化させた後、これを急速に冷却させることにより得られる。
【0020】一方、中空セラミクス系粒状体とは、例えば発泡中空セラミクス系粒状体であって、1つの粒状体に中空部が独立して一もしくは複数形成されており、当該中空部が外部と連絡していないものである。従って、中空セラミクス系粒状体の中空部へは流体が実質的に浸透できない。また、中空セラミクス系粒状体においては、複数の小孔が繋がって1つの中空部が形成されている場合がある。
【0021】中空セラミクス粒状体に占める中空部の割合は20〜60体積%(即ち、空隙率が20〜60%)であることが好ましい。中空セラミクス系粒状体に存在する中空部はその一つあたりの容積が1×10-9mm3〜3×10-3mm3であることが好ましく、1×10-9mm3〜1×10-6mm3であることがより好ましい。中空セラミクス系粒状体は、例えば、特開昭63−252982号公報、もしくは特開平7−330459号公報等に記載の微孔性断熱材を粉砕して粒状物にすることにより得られる。粉砕により得られる粒状物は、中空セラミクス系粒状体が個々の粒子に解離せず、粒子が結合した塊状物である場合があるが、当該塊状物が100〜1000メッシュの寸法を有する限りにおいて、そのような塊状物も使用できる。また、中空セラミクス系粒状体は、ハリマセラミクス社からWDSボード(商品名)として販売されているボードの前加工品に相当し、あるいは日本アエロジル社よりマイクロサーム(商品名)の粉体として販売されている。
【0022】なお、場合により、多孔質セラミクス系粒状体には、例えばその製造過程において偶発的に形成された中空セラミクス系粒状体が含まれることがあり、反対に中空セラミクス系粒状体に多孔質セラミクス系粒状体が含まれることがあり得る。あるいは、両者のいずれかに区分することが難しい粒状体、例えば、複数の独立した中空部が形成された粒状体において、1つの中空部が外部に通じていて僅かに流体浸透性を有するような粒状体が形成される場合もあり得る。従って、本明細書において、「多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体」なる語に含まれる「および」は、両者を意図的に混合して使用する場合のみならず、前記のように両者が偶発的に混在する場合を含み、また、両者のいずれとも区別し難い粒状体を使用する場合をも含む趣旨において用いられる。
【0023】包囲体内における多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体の疎らさは、空隙率で表される。空隙率は、前記包囲体内に画成される空間に含まれる多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体の占める体積を、前記空間の最大体積で除すことによって算出できる。空間の最大体積は、包囲体が金属製シートで形成されている場合には、包囲体が液密であることを考慮して、包囲体の中にシートの伸びが生じない条件にて、例えば水を最大限に充填し、その体積を測定することにより求められる。また、包囲体が無機質繊維シートで形成されている場合には、シートが金属製シートに置換されたと仮定した場合に包囲体内に例えば水を最大限に充填できる体積が、空間の最大体積に相当する。包囲体を構成するシートに実質的に伸びが生じなければ、同形状・寸法の金属製シートの包囲体内と無機質繊維シートの包囲体内には、実質的に同じ大きさの最大体積を有する空間が形成されることとなる。
【0024】本発明の断熱材は、外壁面の凹凸形状に合わせて形状および寸法の異なるものを複数個組み合わせて配置させることにより、外壁面の上に略平坦な面を形成できる。細かな粒状体を内包する本発明の断熱材は、粒状体の流動性によって変形できるため、外壁面の凹凸形状に追随させやすい。従って、本発明の断熱材と外壁面との間の密着性は非常に優れたものとなる。
【0025】本発明の断熱材は、多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体が包囲体内に存在する構造となっており、当該構造は粒状体の飛散による発塵を有効に抑制する。従って、本発明の断熱材を使用すれば、断熱材を施工する際の作業環境の悪化を防止できる。特に、包囲体が金属製シートで形成される場合には、それが有する気密性のために優れた発塵抑制効果が得られ、金属製シートを用いて形成した断熱材の発塵レベル(20m/秒の気流を断熱材に吹き付けた場合に、気流の下流部における1m3あたりの空気に含まれる寸法が1μm以上のダストの個数)は0〜100個/m3程度に抑制できる。一方、無機質繊維シートで包囲体を形成する場合、断熱材の発塵レベルは1000〜5000個/m3と大きくなるが、無機質繊維シートから成る従来の断熱材の発塵レベルが10万個以上であり、これを切断する際には発塵レベルがより大きくなることに鑑みれば、包囲体が無機質繊維シートである断熱材もまた、優れた発塵抑制効果を発揮するものといえる。
【0026】実際の施工に際しては、形状寸法が異なる複数種の断熱材を予め用意し、断熱対象構造物の外壁面の形状に応じて適当なものを選択できるようにしておけば、効率良く断熱材を施工できる。
【0027】上記本発明の断熱材は、そのサイズを大きくする、あるいは多数積層して、それのみで断熱対象構造物を断熱することも可能である。しかし、多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体が高価であること、包囲体の作製に時間を要すること等を考慮すれば、それのみで構造物を断熱することは経済的でない場合がある。従って、上記本発明の断熱材は凹凸を有する外壁面上に平坦面を形成するために主として用い、当該平坦面上に、平坦面上に施工可能な別の断熱材を配置させることが好ましい。一般に、平坦面上に施工可能な断熱材、例えば、板状またはブロック状の断熱材の使用は、コスト面において有利である。即ち、上記本発明の断熱材を下側断熱要素とし、その上に適当な上側断熱要素を積層することによって、経済的で施工性の良い複合断熱材を得ることができる。
【0028】なお、本明細書において、「下側」および「上側」という用語は絶対的な上下を示すものではなく、「下側」および「下」という語は対象構造物の外壁面に近い側を、「上側」および「上」という語は外壁面に遠い側を示すために使用される。
【0029】上記複合断熱材を構成する上側断熱要素は、例えば、断熱板と無機質繊維シートとを積層した積層ユニットを断熱板が下側となるように複数積層して成るものであることが好ましい。断熱板は、例えば金属板およびマイカ質断熱板であってよく、無機質繊維シートは、耐熱性および/または耐低温性を有する無機材料から成る繊維を用いて形成される多数の空隙、好ましくは微細空隙を有するシート状物であり、例えば不織布、織布、フェルトもしくはメッシュ等である。但し、上側断熱要素は前記積層ユニットに限定されるものではなく、常套的に使用されている断熱材を上側断熱要素として採用してよい。
【0030】本発明の第2の課題は、上記複合断熱材に、厚さ方向よりも面方向に相対的に大きい熱伝導率を有する熱伝導異方性シートを配することによって達成できる。熱伝導異方性シートは、高温である断熱対象構造物を断熱保温する場合には、下側断熱要素の下に配され、低温である断熱対象構造物を断熱保冷する場合には、複合断熱材の最上面に配する。
【0031】熱伝導異方性シートはこれに加えられた熱を、厚さ方向よりも面方向に優先的に伝導させる性質を有する。したがって、この熱伝導異方性シートを例えば、高温炉の外壁面に接するように配すると、炉の外壁面温度がばらついている場合でも、面方向で熱が伝導するためにシート全面の温度のばらつきが低減し、好ましくは実質的に均一になる。その結果、熱伝導異方性シートの上に設けられる断熱要素は表面温度が実質的に均一となった熱伝導異方性シートに対して断熱作用を奏し得るので、複合断熱材の外側表面、すなわち熱伝導異方性シートから最も遠い側の表面においても温度のばらつきが低減することとなる。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、本発明の断熱材および複合断熱材を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の複合断熱材の一実施形態を示す断面図である。この複合断熱材(10)は、下から順に熱伝導異方性シート(11)、下側断熱要素(16a)および上側断熱要素(16b)を含み、その最外層(S1)として化粧板が積層された構造となっている。下側断熱要素(16a)は、シートから成る包囲体(12a)に多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体(12b)を含んで成る本発明の断熱材(12)であり、上側断熱要素(16b)は、断熱板(13)と無機質繊維シート(14)とを積層した積層ユニット(15)が4層積層されて成るものである。そして、図1は、熱伝導異方性シート(11)が断熱保温の対象となる高温構造物、例えば高温炉の外壁面(100)に隣接するように配置されて断熱保温を行っている様子を模式的に示している。
【0033】断熱材(12)は、シートから成る包囲体(12a)に多孔質セラミクス系粒状体および/または中空セラミクス系粒状体(12b)を、包囲体(12a)内の空隙率が所定範囲内となるように含んで成り、可変形性を有する。包囲体(12a)を構成するシートは、金属製シートまたは無機質繊維シートであって、可撓性を有するものであることが好ましい。
【0034】包囲体(12a)を金属製シートで形成する場合、当該金属製シートは前述のとおり、例えばステンレスから成り、厚さは例えば0.01〜0.18mmであることが好ましい。厚さが0.01mm未満では強度が小さく耐久性の点で劣り、0.18mmを超えると可撓性が小さくなって、断熱材全体の可変形性が低下し、断熱材を外側壁面の凹凸に追随させることが困難となる。金属製シートは、強度を向上させるために複数枚積層して用いてもよい。
【0035】金属製シートを用いる場合には、その一方の面が鏡面仕上げ等によって高い熱反射率を有し、当該熱反射率の高い面が包囲体の外側面となるようにすることが好ましい。包囲体の外側の熱反射率が高い場合、炉からの輻射熱が断熱材(12)によって反射され、断熱材(12)の断熱性能が向上するという利点が得られる。なお、本明細書においては、面の「熱反射率が高い」ことは、その面の「熱放射率が低い」ことに対応している。したがって、金属製シートの熱反射率の高い面は、その熱放射率が0.1以下である低い熱放射率を有するものであることが好ましく、そのような熱放射率は、鏡面仕上げ等によって、面の平均粗さRaを4μm以下、好ましくは0.2μm以下にすることによって達成できる。
【0036】包囲体(12a)が無機質繊維シートである場合、無機質繊維シートに存在する間隙を介して空気が包囲体(12a)内の空間へ供給され、あるいは空間から排出される。従って、断熱材(12)は、空気の出入りにより変形し、その可変形性は包囲体(12a)が金属製シートであるものよりも大きい。無機質繊維シートは、前述のとおり、アルミナ繊維、シリカ繊維、または炭素系繊維等から成る不織布、織布、フェルトもしくはメッシュ等であることが好ましい。
【0037】また、当該シートには、1つ当たりの開口面積が好ましくは80〜10000μm2、より好ましくは1000〜5000μm2である開口部が、好ましくは100〜12000個/cm2、より好ましくは1000〜6000個/cm2の割合で形成されている。開口部が小さい或いは開口部の数が少ないと、包囲体内で空気の円滑な供給・排気が行われず、可変形性が小さくなる。開口部が大きい或いは開口部の数が多いと、セラミクス系粒状体の一部が開口部より漏出するという問題がある。包囲体(12a)の形成に適した無機質繊維シートとしては、ニチアス社製の「シルテックスクロス(商品名)」がある。無機質繊維シートは複数枚積層して用いてもよい。また、無機質繊維シートと金属製シートとを積層して使用してもよい。
【0038】断熱材(12)は、上記金属製シートまたは無機質繊維シートを用いて、図2に示すような角柱形状または円筒形状の容器状物であってセラミクス系粒状体の投入口を有するものを作製して、これを包囲体(12a)とし、空間内の空隙率が30〜85%となるように、セラミクス系粒状体を充填し、最後にセラミクス系粒状体の投入口を封止して形成する。
【0039】セラミクス粒状体(12b)は、十分に乾燥して包囲体(12a)に充填する。セラミクス粒状体(12b)の水分含有量は、具体的には8重量%以下とすることが好ましい。セラミクス系粒状体は、前述のとおり、好ましくはシリカおよびアルミナを含有してなるセラミクス材料で形成され、その寸法は好ましくは100〜1000メッシュである。粒状体の寸法が1000メッシュより小さいと、包囲体から粒状体が漏出するおそれがあり、また、発塵により作業効率および作業環境の悪化という問題が生じる場合がある。さらに、細かな粒状体は、移送容器の外壁または隅に付着または滞留しやすいために、移送容器を汚染しやすく、また、例えば計量後の粒状体を別の容器等に全て移すことができず目的とする量の粒状体を正確に包囲体内に充填できないといった、運搬移送の際の作業効率の悪化を招くおそれがある。寸法が100メッシュよりも大きい粒状体を用いると、粒状体と粒状体との間で大きな空隙が生じ、当該空隙において空気の対流が発生し、それにより断熱材全体の断熱性能が低下する場合がある。
【0040】断熱材(12)には、空隙率が30〜85%となるようにセラミクス系粒状体(12b)を充填する。85%を超えると、断熱材(12)内においてセラミクス粒状体が疎らになりすぎ、包囲体内で空気の対流が生じて熱伝導率が高くなり断熱性能が低下するいう問題があり、30%未満では、セラミクス粒状体が密となりすぎて断熱材(12)の可変形性が殆ど無くなり好ましくない。セラミクス系粒状体が前述したようにシリカ80〜95重量%とアルミナ20〜5重量%を含む材料で形成されている場合には、上記空隙率は充填密度(包囲体内のセラミクス系粒状体の質量/包囲体の空間の最大体積)を80〜300kg/m3とすることにより達成できる。
【0041】包囲体(12a)におけるシートの継ぎ目(封止部)は、シートが金属製シートである場合には、リベットのような機械的締結手段、耐熱接着剤、あるいは点溶接もしくは線溶接によって封止し、粒状体(12b)が漏出しないようにする。接着剤または溶接による封止は気密的であり、従って、包囲体内を隔離された空間にすることを可能にする。また、シートが無機質繊維シートである場合には、耐熱性糸による縫合、または耐熱接着剤により封止するとよい。あるいはセラミクス系粒状体が漏出しない限りにおいて、両端が開放された筒状体の中間部分にセラミクス系粒状体を収容し、両端を耐熱性の糸で縛ったものを断熱材としてもよい。
【0042】包囲体の形状および寸法は、断熱対象構造物の外壁面の形状に応じて選択することができる。荷重が加えられた場合に断熱材(12)が座屈することを防止し、また、断熱材(12)の作製を容易にするために、断熱材(12)を例えば図2の(a)に示すような角柱状とする場合、幅Wおよび奥行きTはそれぞれ、例えば30〜200mm、高さHは例えば30〜150mmとすることが好ましく、図2の(b)に示すように円筒形状とする場合、例えば、直径Dは30〜200mm、高さLは30〜150mmとすることが好ましい。
【0043】断熱材(12)の包囲体(12a)が金属製シートのようなガス不透過性材料から成る場合には、断熱材(12)内にアルゴン、二酸化炭素、ヘリウム、および窒素のような不活性ガスを充填してもよい。不活性ガスは、空気よりも断熱効果が高いため、そのような断熱材によればより優れた断熱性能が得られる。
【0044】また、断熱材(12)の包囲体(12a)が金属製シートのようなガス不透過性材料から成り、断熱材(12)に大きな可変形性が要求されない場合には、断熱材(12)内を、100Torr以下、好ましくは10Torr以下の真空状態、あるいは450Torr以下の減圧状態とし、断熱材(12)の断熱性能をより向上させることもできる。そのような断熱材は固いブロック状体となるので、例えば、炉の外壁面の平坦な部分において使用できる。
【0045】断熱材(12)は、外壁面の凹凸形状に合わせて、形状および/または寸法の異なるものを配置させる。図3に示すように、外壁面(200)が凸部を有する場合には、凸部において高さの小さい断熱材(12)を配置し、それ以外の部分には高さの大きい断熱材(12)を配置し、また、凸部が傾斜面を有する部分には、傾斜面と接する断熱材の面を傾斜面に沿うように変形させる、または断熱材を傾斜した面を有する形状とすることにより、断熱材(12)全体が平坦な上面を有する下側断熱要素(16a)を構成するようにする。断熱材(12)は可変形性を有するため、相互に密着するように配置でき、例えば円筒形状の断熱材(12)を配置させた場合には、上から見た形態が正六角形を敷き詰めた形態(ハニカム)に近い下側断熱要素(16a)を得ることができる。
【0046】断熱材(12)は断熱対象構造物の外壁面上に平坦面を形成するために用いるだけでなく、補助的な断熱材として用いることもできる。例えば、一定の形状寸法を有する断熱材を外壁面に配置させたときに、その形状寸法の制約により当該断熱材で外壁面全体を全体覆うことができず、外壁面に露出した部分(断熱材で覆われない部分)が生じた場合に、その部分を埋めるために用いることができる。
【0047】その例を図3に示す。図3においては、後述するように形状寸法が一定の上側断熱要素(16b)を配置させているが、上側断熱要素(16b)を間隙無く敷設した結果、外壁面の端部において上側断熱要素(16b)では覆いきれない部分(200a)が僅かに残る。そこで、その部分(200a)に断熱材(12)を積層して他の部分と同じ厚さとし、その側面の外観を整えるために板状の断熱要素(17)を配している。このように、断熱材(12)は、広い意味において調節部材的な役割を果たす断熱材として使用でき、その有用性は極めて大きい。
【0048】本発明の複合断熱材は、断熱材(12)から成る下側熱要素(16a)の上に上側断熱要素(16b)を積層して成るものである。図1において、上側断熱要素(16)は、断熱板(13)と無機質繊維シート(14)とを積層した積層ユニット(15)が4層積層されて成るものである。
【0049】断熱板(13)は断熱性を有するもの、即ち高温側の熱を低温側に伝導しにくいものであれば特に限定されない。そのような断熱板としては、例えばマイカ質断熱板がある。マイカ質断熱板は、それ自身の熱伝導率が0.67W/(m・k)と小さく、耐熱温度が約700℃と大きいため、断熱板に適している。マイカ質断熱板を使用する場合、その厚さは200〜3500μmであることが好ましい。200μm未満であると、高温下において強度および保形成が低下するおそれがあり、3500μmを超えると、面方向(厚さ方向に垂直な面方向)に伝導してマイカ質断熱板の縁部(側面)から放出される熱量(放熱量)が大きくなり、複合断熱材の断熱性能を低下させるおそれがある。
【0050】あるいは、断熱板(13)は、表裏面のうち少なくとも片面の熱反射率が高い金属板であってよい。そのような金属板は、熱反射率の高い面において、輻射熱を反射することによって断熱効果を発揮できる。従って、そのような金属板を使用する場合には、熱反射率の高い面が高温側に位置するように配する必要がある。
【0051】断熱板(13)として使用する金属板は、表裏面のうち少なくとも一方の面の平均粗さRaが1.4μm以下であり、その熱放射率が0.1以下である金属板であることが好ましい。かかる金属板は、例えば、ステンレス製平板、例えばSUS304の平板、チタン製平板、あるいニッケル製平板の表裏面のうち少なくとも一方の面を鏡面仕上げすることによって得ることができる。金属板の使用温度、すなわち金属板が曝されると予想される温度が450℃以下である場合にはアルミニウム製の平板を用いてもよい。金属板の厚さは50μm〜1500μmであることが好ましい。金属板の厚さが50μm未満であると熱により変形して形状を保持することができない場合があり、1500μmを越えると、面方向(厚さ方向に垂直な面方向)に伝導し金属板の縁部からの放熱量が大きくなり、複合断熱材の断熱性能を低下させるおそれがある。
【0052】断熱板(13)はまた、断熱材(12)と同じ構成であって、包囲体の形状を板状としたものであってもよい。その場合、包囲体内の空隙率を実質的に0にして剛性を確保する必要がある。例えば、セラミクス系粒状体が前述のシリカおよびアルミナを含んで成る材料で構成されている場合には、その充填密度を1500〜2500kg/m3とすることが好ましい。
【0053】無機質繊維シート(14)は無機質材料からなる繊維で形成された微細空隙を有するものである。微細空隙は全体で10〜75%の空隙率を形成するように存在することが望ましい。75%以上であると空隙の占める体積が大きくなって空気の対流による熱伝導が生じ、また、10%未満では密になりすぎて繊維間で熱伝導が生じ、その結果、いずれの場合においても断熱性能が低下する。
【0054】無機質繊維シート(14)は、それが使用される温度において耐熱性および/または耐低温性を有する繊維、例えば、ロックウール、ガラス繊維およびセラミクス繊維から成るグループから選択される一もしくは複数の繊維であって、繊維径が0.8〜8μmのものを用いて、繊維密度が80〜200kg/m3の範囲内にあるシートを形成することにより得られる。シートは、不織布、織物、フェルト、もしくはメッシュであってよく、これらを積層したものであってもよい。
【0055】本発明においては、無機質繊維シート(14)の厚さは5〜25mmであることが好ましい。5mm未満であると、断熱板(13)と無機質繊維シート(14)とから成る積層ユニット(15)が複数積層されたときに、より大きな荷重がかかる下側の積層ユニットにおいて、部分的に無機質繊維シートが介在することなく隣接する断熱板(13)同士が接触し、その結果、接触部で熱が伝導されて断熱性能が低下するおそれがある。25mmを越えると無機質繊維シート(14)内で空気の対流が発生し、それにより複合断熱材(10)全体の断熱性能が悪くなるおそれがある。なお、ここでいう厚さは無機質繊維シート(14)を積層する前に測定した厚さをいい、実際の複合断熱材(10)では下側にある無機質繊維シートほど圧縮されて、その厚さが小さくなる傾向にある。
【0056】断熱板(13)と無機質繊維シート(14)は、積層されて一つの積層ユニット(15)を形成する。断熱板(13)と無機質繊維シート(14)との一体化は、例えば耐熱(もしくは耐低温)性接着剤、ピン、ねじ、またはコの字形状であって積層体を挟んで固定する積層体固定用金具(例えばクランプ)等を用いて行うことができ、あるいは金属製層状要素に突起部を形成しこれを無機質繊維シート(14)に係合させることによっても行うことができる。突起部が断熱板(13)の両面に形成されている場合には、隣接するユニットの無機質繊維シートとの係合が可能となり、その結果、積層ユニット(15)間の一体化を行うことが可能となる。
【0057】積層ユニットは、図4に示すように、積層ユニットを構成する無機質繊維シートが複数の無機質繊維シートセグメントと空隙セグメントとから成り、無機質繊維シートセグメントが空隙セグメントによって面方向(積層方向に垂直な面方向)に隔てられて存在しているものであってもよい。図示した態様において、積層ユニット(35)における無機質繊維シートは、無機質繊維から成る帯状体が無機質繊維シートセグメント(34a)として存在し、各無機質繊維シートセグメント(34a)が空隙セグメント(34b)によって面方向に隔てられ存在し、互いに平行に配置されて成るものである。それ以外については図1に示した複合断熱材と実質的に同じである。
【0058】この積層ユニット(35)には、より高い伝熱抵抗を有する空隙セグメント(34b)が存在するため、図1および図3に示す積層ユニット(15)よりも優れた断熱効果を得ることが可能である。また、この態様によれば、無機質繊維から成るシートセグメント(34a)が一種のスペーサとして作用するが、無機質繊維から成るシートセグメント(34)は、先に図1を参照して説明した無機質繊維シートと同様に、それ自体で断熱性能を発揮するものであるから、これをスペーサとして用いることで中実の要素をスペーサとして用いる場合より優れた断熱効果を得ることができる。
【0059】本発明では空隙セグメントの断熱効果を良好なものとするために、無機質繊維シートセグメント(34a)の厚さをHS、無機質繊維シートセグメント(34a)が平行配置されているときのピッチをPS、および無機質繊維シートセグメント(34a)の幅をWSとしたとき、PSをHSで除した値、すなわちPS/HSは20以上85以下であることが好ましく、40以上60以下であることがより好ましい。また、WSをHSで除した値、すなわちWS/HSは2以上10以下とすることが好ましい。PS/HSが前記範囲内にある場合には、空隙セグメント(34b)内で対流による空気の流動が抑制され、その結果、良好な断熱効果が得られる。PS/HSが20未満であると、空隙セグメントが小さくなって十分な断熱効果が得られず、PS/HSが85を越えると、熱により空間の上下方向に比重の異なる空気層が発生して、対流により、低温部、例えば本発明の複合断熱材を高温炉の外壁面に配置させた場合には積層方向の上方部への熱伝達が促進され、断熱効果が低減するおそれがある。また、WS/HSが2未満であると、無機質繊維シートセグメントの保形性が悪くなり、10を超えると空隙セグメントが小さくなって十分な断熱効果を得られない場合がある。
【0060】なお、無機質繊維から成るシートセグメント(34a)は、図1を参照して先に説明した無機質繊維シート(14)と同じ構成のものを用いてよい。
【0061】無機質繊維から成るシートセグメントと空隙セグメントを有して成り、無機質繊維シートセグメントが空隙セグメントによって面方向に隔てられて存在している無機質繊維シートの別の態様を図5に示す。図5の(a)は無機質繊維シート(44)を上から見た平面図である。ここでは、積層ユニットを積層したときに空隙セグメント(44b)内の空気の流出を抑制するために枠状の無機質繊維シートセグメント(44a)が採用されている。この構造によれば、空気の対流を抑制することができるだけでなく、空気の出入りを抑えることができるので、より優れた断熱効果が得られる。図5の(b)で示すように、無機質繊維から成るシートで形成された四角形の枠状シートセグメント(44a)の中の対角線上に無機質繊維からなる帯状のシートセグメント(44a')を配置することにより、空隙セグメント(44b)の保形性がより向上する。この場合において、先述のPは図5の(b)に示すとおり、対角線上にある無機質繊維シートセグメント(44a')とそれと向かい合う角との間の距離と考えて良い。この場合もPS/HSは20以上85以下であることが好ましく、40以上60以下であることがより好ましい。また、WS/HSは2以上10以下であることが好ましい。
【0062】無機質繊維シートが上記のように空隙セグメントを有する場合には、空隙セグメントに硬質スペーサを挿入してもよい。硬質スペーサは、積層ユニットの厚さ方向に荷重が加えられたときに積層ユニットの変形を防止する役割をする。硬質スペーサを含む積層ユニットの態様を図6に示す。図6において、無機質繊維シートの帯状体(34a)が複数、互いに平行となるように配置されており、帯状体(34a)の間の空隙セグメント(34b)に中実の球形硬質スペーサ(50)が挿入されている。
【0063】硬質スペーサ(50)は、硬質のセラミクス系材料または金属で形成することが好ましく、その形状は、中実の球形の他、図7の(a)〜(d)に示すように、中空の球形、円筒形、管状の四角柱、または三角柱であることが好ましく、また、その厚さ(TU)は1.5〜3mmとすることが好ましい。1.5mm未満では高温下(700℃以上)において荷重が加えられると変形して積層ユニット(35)の保形性が悪くなるおそれがある。3mmを超えると硬質スペーサの面方向(厚さ方向に対して垂直な方向)において熱伝導が生じるため積層ユニット(35)の断熱性能が低下する。
【0064】硬質スペーサは、空隙セグメントの厚さ(即ち、無機質繊維シートセグメントの厚さ)をHS、硬質スペーサの厚さおよび長さをHUおよびLUとしたときに、HS/HUが1であり、LU/HSが1〜10となるような寸法を有することが好ましい。なお、硬質スペーサの長さ(LU)とは、空隙セグメントに挿入したときに帯状体と平行になる方向の長さをいう。
【0065】HS/LUが1であるということは、硬質スペーサを、上側および下側の断熱板(13)との間で隙間を形成することなく、空隙セグメントに挿入することを意味する。HS/LUが10を超えると、硬質スペーサと断熱板(13)との接触面積が増え、両者の接触部分において熱伝導が生じ、それにより積層ユニットの断熱性能が低下するおそれがある。接触面積を最小にするには、硬質スペーサの形状を球形(HU=LU)とすることが最も好ましい。また、球形硬質スペーサは、断熱板との接触面積が非常に小さいため、他の形状のものと異なり中実のものでも使用できる。
【0066】硬質スペーサは、荷重による積層ユニットの変形を防止するのに十分な数を適当な間隔で配置させる。一般に、積層ユニット1m2につき積層ユニット1m2につき好ましくは9〜170個の割合で、より好ましくは40〜150個の割合で硬質スペーサを各積層ユニットに設けるとよい。
【0067】硬質スペーサは、その上側および/または下側に位置する断熱板(13)に、耐熱接着剤、ピン、または針金等によって固定し、積層ユニットをどのような方向に配置させた場合でも、硬質スペーサが脱落または移動しないようにすることが好ましい。
【0068】硬質スペーサを挿入した本発明の複合材料は、例えば、複合断熱材上に人が乗って作業することや、重い配管部品等を載置することを可能にし、従って、硬質スペーサの使用により本発明の複合断熱材の適用範囲をより広くすることが可能となる。
【0069】本発明では上記の積層ユニット(15)(35)を、複数積層したものを上側断熱要素(16b)として下側断熱要素(16a)の上に配することが望ましい。積層ユニット(15)(35)の積層数は好ましくは4以上、より好ましくは4〜40、さらに好ましくは10〜25である。積層数が4未満であると、例えば高温炉の外壁面からの輻射熱を十分に遮断することができず、十分な断熱効果を得られない場合がある。積層数が多いほど高い断熱効果を得ることができるものの、コストが高くなるため、断熱効果とコストとを考量して積層数を決定するとよい。
【0070】なお、図1に示す実施態様においては、同一の積層ユニット(15)を積層した形態となっているが、本発明においては、断熱板の種類がそれぞれ異なる、あるいは無機質繊維シートの種類もしくは厚さ等が相互に異なる、別個の積層ユニットを積層してもよい。
【0071】以上において説明した本発明の複合断熱材は、更に、厚さ方向よりも面方向に相対的に高い熱伝導性を有する熱伝導異方性シートを含むものであることが好ましい。図1に示す態様において、熱伝導異方性シート(11)は高温炉の外壁面における温度のばらつきを均一にするために、外壁面に接するように配置されている。
【0072】熱伝導異方性シート(11)は、厚さ方向よりも面方向に相対的に高い熱伝導性を有するものである。本発明では、その面方向の熱伝導率と厚さ方向の熱伝導率の比が4:1〜10:1であることが好ましく、8:1〜10:1であることがより好ましい。熱伝導率の比が4:1よりも小さい場合には面方向における熱伝導が不十分となって複合断熱材の外側表面の温度がばらつく場合があり、10:1よりも大きい場合にはシートの縁部からの放熱量が大きくなり、断熱性能が低下するおそれがある。また、この熱伝導異方性シート(11)は、複合断熱材(10)が高温構造物の断熱保温に用いられる場合には耐熱性を有する必要があり、例えば、高温構造物内部における作業温度が800℃となるような構造物の外壁温度に曝される場合でも耐え得るものであることが望ましい。
【0073】熱伝導異方性シート(11)として好ましく用いられるものとして、グラファイト系シートが挙げられる。グラファイト系シートは一般に面方向の熱伝導性が高く、また約600℃程度での使用にも十分耐え得る。本発明では特に面方向の熱伝導率が400W/(m・K)以上、1000W/(m・K)以下であって、面方向の熱伝導率と厚さ方向の熱伝導率との比が4:1〜10:1であるグラフファイト系シートを用いることが好ましい。400W/(m・K)以下であると面方向における熱伝導が不十分となって複合断熱材の外側表面における温度のばらつきが大きくなり、1000W/(m・K)以上であると面方向に伝導された熱がシートの縁部から放熱されやすくなり、複合断熱材の断熱性能を低下させるおそれがあり、好ましくない。
【0074】グラファイト系シートは、面方向の熱伝導性に優れているため、その厚さが大きいほど断熱のための熱抵抗となる。またグラファイト系シートは、高温下でも引張強度を維持し、熱変形による伸びに起因する亀裂および破断が発生しないよう十分な厚さを有することが好ましく、具体的には0.1〜0.8mm程度、好ましくは0.3〜0.8mm程度であることが好ましい。グラファイト系シートの厚さが大きすぎる場合にはシートの縁部からの放熱量が大きくなり、複合断熱材の断熱性能を低下させるおそれがある。
【0075】上記グラファイト系シートは、例えば特開平3−75211号公報に記載の方法で製造できる。特開平3−75211号公報には、ポリオキサジアゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾビスチアゾール、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾビスオキサゾール、ポリ(ピロメリットイミド)、ポリ(p−フェニレンイソフタルアミド)、ポリ(m−フェニレンベンゾイミダゾール)、ポリ(フェニレンベンゾビスイミダゾール)、ポリチアゾール、およびポリパラフェニレンビニレンのうちから選ばれた少なくとも1種類の高分子フィルムを、不活性ガス中で2400℃以上の温度で熱処理することにより得られるグラファイトを圧延処理してフィルム状のグラファイトシートを得る方法が記載されている。
【0076】熱伝導異方性シートは、断熱対象構造物が高温構造物である場合には、構造物の外壁面に接するように、断熱対象物が低温構造物である場合には、低温構造物から最も離れた位置(断熱材の外側表面)に配置させる。熱伝導異方性シートと下側断熱要素または上側断熱要素とは、耐熱接着剤、ピン、ねじ、または先に説明したコの字型積層体固定用金具等によって一体化させてよい。また、熱伝導異方性シートを高温構造物の外壁面に配置させる場合には、耐熱接着剤等によって熱伝導異方性が外壁面から剥がれないようにしてもよい。
【0077】また、高温断熱対象構造物の外壁面が凹凸を有する場合には、それに追随させて熱伝導異方性シートを敷設し、外壁面との間で空隙が生じないようにする必要がある。そのために、必要に応じて熱伝導異方性シートをカットする、または2枚以上の熱伝導異方性シートを用いてもよい。
【0078】上記において説明した複合断熱材を実際に使用するに際しては、複合断熱材を図8に示すように被覆材で被覆し、被覆型複合断熱材としてもよい。予め複合断熱材(10)全体を被覆することにより、断熱材(12)または無機質繊維シート(14)から発塵があった場合でも被覆材が塵埃を有効に遮断するため、被覆型複合断熱材は極めて発塵の少ないものとなる。被覆型複合断熱材(60)は一つの断熱ブロックとして取り扱うことができるので、施工時の施工作業時間を短縮することができ、施工性の点でも優れている。
【0079】被覆材(610)は断熱保温の対象となる構造物の内部温度等に応じて適当なものを選択すればよい。例えば、複合断熱材(60)を炉内の温度が800℃である高温炉の断熱に用いる場合には、被覆材(610)を耐熱性シートとすることが好ましく、具体的には無機質繊維シートおよび金属箔を使用できる。無機質繊維から成るシートとしては、例えば公知のガラスファイバーまたはセラミクスファイバーからなる織物、不織布、およびフェルト等の繊維シートがある。繊維シートを使用する場合には、その厚さは0.2〜1.0mmとすることが好ましい。0.2mm未満では強度が小さくなり、また、複合断熱材(60)からの発塵を有効に抑制できないおそれがある。1.0mmを超えると、折り曲げ加工等をすることが困難となって保形性および取扱い性が悪くなり、例えば縫合作業が困難となる場合がある。
【0080】金属箔で被覆する場合、その金属箔は高温下で高い引張強度を有し、熱による歪および変形が小さいものであることが好ましい。そのような金属箔としては、例えばSUS316L等のステンレス系、チタン系または耐熱鋼系の金属箔がある。被覆材が曝されると予想される温度が450℃以下である場合にはアルミ箔を用いることができる。また、金属箔の厚さは0.04〜0.25mmであることが好ましい。0.04mm未満では強度が小さくなって施工中に破れるおそれがあり、0.25mmを超えると保形性および取扱い性が悪くなり、被覆・封止作業が困難となる場合がある。金属箔はガス透過性が実質的になく、複合断熱材(10)を外部から独立した系にしたい場合に用いることができる。
【0081】複合断熱材(10)の被覆は、被覆材(610)で袋状物を作り、その中に複合断熱材(10)を入れて、開口部を耐熱接着剤、もしくは耐熱繊維からなる糸で縫合することによって接合することにより行う(接合部図示せず)。あるいは2枚以上の布で複合断熱材(10)を覆い、シート同士を耐熱接着剤で接着するか、あるいは耐熱繊維からなる糸で縫い合わせて接合する。シートはピンまたはリベット等の機械的締結手段によって接合してもよい。また、例えば耐熱接着剤または溶接等によってシートを接合すれば、接合部は気密的になる。したがって、金属箔で複合断熱材を被覆して外部から独立した系を作る場合には、そのような接合方法を採用すればよい。
【0082】被覆材(610)が、ガス透過性が実質的にないシートであって、その接合部が気密的である場合には、被覆された複合断熱材(60)を、耐真空性パイプ等の適当な接続手段によって、被覆材(610)内部を減圧もしくは真空状態にし得る手段、例えば真空ポンプに接続することができる。ここで耐真空性パイプとは、パイプ内部が真空状態になったときでも変形しないものをいう。被覆材(610)内部を減圧することにより、断熱効果がより向上することとなる。好ましい被覆材(610)内部の圧力は200Torr以下であり、より好ましくは100Torr以下であり、さらに好ましくは0.001Torr〜10Torrの真空状態である。
【0083】また、上述の減圧もしくは真空状態にし得る手段のかわりに、あるいはそれに加えて、図9に示すように、被覆材(710)内部の気体を排出し、被覆材(710)内部に気体を供給することができる給排気手段(712)と被覆された複合断熱材(70)を、耐真空性パイプ等の適当な手段(711)で接続してもよい。給排気手段を用いれば、被覆材(710)内部の空気を強制的に排気させた後、例えば二酸化炭素、アルゴン、および窒素等の熱伝導率の小さい気体を被覆材(710)内部に強制的に供給して、複合断熱材(70)の断熱効果を向上させることができる。また、不活性ガスを供給すれば、高温で酸化しやすい鉄等の金属で複合断熱材(10)が構成されている場合、その酸化を防止することができる。
【0084】また、図9に示す装置によれば、例えば、高温炉での熱処理が終了した後、常温もしくは低温の空気等の気体を給排気手段(712)から耐真空性パイプ等の適当な手段(711)を介して被覆材(710)内部に送り込むことによって、あるいはそのような気体を連続して給排気することによって炉の外壁面を速やかにかつ強制的に冷却できる。炉の外壁面の熱は被覆材(710)を介して、被覆材(710)内部に送り込まれた気体に吸収され、その結果、炉の外壁面の温度が下がる。炉の外壁面の冷却が速やかに行われると、例えば、高温炉で処理する物体の出し入れに要する時間が短縮され、処理効率が良くなるという利点がある。
【0085】上記接続手段にはバルブ等を設けて、接続された装置との連絡を絶つことができるようにし、被覆材で覆われた複合断熱材が外部から独立した系になし得るようにしてもよい。
【0086】以上説明した本発明の複合断熱材は、熱伝導異方性シートを断熱保温すべき対象となる高温構造物の外壁面に隣接させて用いる。複合断熱材を被覆材で被覆した場合も、熱伝導異方性シートを高温構造物の外壁面に隣接するように位置させるが、その場合、高温構造物と熱伝導異方性シートとの間に被覆材が介在することとなる。
【0087】上述の説明は、主に、高温炉のような外壁面が高温になるものを断熱保温する断熱材として用いる場合を想定した説明となっているが、本発明の複合断熱材は低温の構造物を断熱保温(保冷)するための断熱材としても用いることができる。その場合、複合断熱材を構成する材料、例えば無機繊維等は、使用される温度に応じて耐低温性を有するものでなければならず、また複合断熱材を金属箔等で被覆する場合、被覆材は使用される温度に応じて耐低温性を有する必要がある。
【0088】このように、本発明の複合断熱材料は用いる材料に応じて、約−185℃〜700℃までの範囲の使用温度で用いることができ、その適用範囲は極めて広く、例えば、プラズマディスプレイのパネル、ブラウン管およびセラミクス基板の焼成炉の断熱保温、または液体窒素の保存容器の断熱保冷もしくは0〜−40℃程度で冷凍製品を運搬する際に用いる容器の断熱保冷に用いることができる。
【0089】
【実施例】複合断熱材を構成する部材として次のものを用意した;
1)熱伝導異方性シートぽりイミドを原料として特開平3−75211号公報に開示された製造方法に従って作製した、厚さ0.6mm、面方向の熱伝導率800W/(m・k)、面方向および厚さ方向の熱伝導率の比が8/1のグラファイト系耐熱シート;
【0090】2−1)断熱材A(下側断熱要素)
■包囲体:1つあたりの面積が625μm2である開口部が1000個/cm2の割合で形成された、厚さ0.8mm、目付650g/m2のシリカ繊維製シート(ニチアス社製;商品名 シルテックスクロス1000S)から成り、シートの接合部を直径0.8mmアルミナ繊維(井前工業社製;商品名 バルコンヤーン)で3mmピッチで縫合封止したもの;
■セラミクス系粒状体:1つ当たり1×10-5〜6×10-5mm3の容積を有する複数の中空部が1つの粒状体の体積の30〜50%を占めるように形成されて成る600メッシュの中空シリカ系粒状体(ハリマセラミクス社製 WDSボードの前加工品);
■空隙率:60%(充填密度:180kg/m3);
■断熱材の形状寸法:四角柱形状であって、幅×奥行き×高さがそれぞれ50mm×50mm×100mm、25mm×50mm×50mm、25mm×50mm×100mmのものを用意。
【0091】2−1)断熱材B(下側断熱要素)
■包囲体:厚さ0.04mmのステンレス(SUS304)製シートから成り、シートの接合部を点溶接により20mmピッチで封止したもの;
■セラミクス系粒状体:上記断熱材Aと同じ■空隙率:上記断熱材Aと同じ■断熱材の形状寸法:四角柱形状であって、幅×奥行き×高さがそれぞれ50mm×50mm×100mm。
【0092】3−1)積層ユニットA(上側断熱要素)
■断熱板:厚さ0.6mmの軟質マイカ断熱板(岡部マイカ社製;商品名 ダンマ700L);
■無機質繊維シート:厚さ6mm、密度160kg/m3のセラミクスファイバー製フェルト(イビデン社製;商品名 イビウール#1600);
■断熱板と無機質繊維シートの一体化:耐熱接着剤(イソライト工業社製;商品名 カオスティック);
■積層ユニットの平面形状:a)タテ×ヨコが455mm×605mmの長方形、およびb)455×300mmの長方形のもの。
【0093】3−2)積層ユニットB(上側断熱要素)
■断熱板:厚さ0.6mmの軟質マイカ断熱板(岡部マイカ社製;商品名 ダンマ700L);
■無機質繊維シート;厚さ6mm、密度160kg/m3セラミクスファイバー製フェルト(イビデン社製;商品名 イビウール#1600)をカットして、幅×長さを30mm×225mmとした帯状体2つを直列に繋ぐようにして、約190mmピッチで積層ユニのヨコ方向において互いに平行となるように配置させ、帯状体間の空隙セグメントに、セラミクス材料から成る直径6mmの球(三井鉱山マテリアル社製;商品名 M−SLM)を、100〜150mmピッチで、積層ユニット1つにつき9個配置させたもの;
■断熱板と無機質繊維シートの一体化:耐熱接着剤(イソライト工業社製;商品名 カオスティック);
■積層ユニットの平面形状:タテ×ヨコが455mm×605mmの長方形。
【0094】(実施例1−1)温度が24℃である空気雰囲気下において、炉内の温度が600℃となる電子部品の熱処理装置の外壁面全体に、図1に示すように、・熱伝導異方性シート(11)、・寸法が50mm×50mm×100mmである断熱材A(12)を間隙無く(455mm×605mmの長方形の面につき108個)敷き詰めた下側断熱要素(16a)、および・平面形状が455mm×605mmの長方形である積層ユニットA(15)を16個積層し、各ユニット間を耐熱接着剤(イソライト工業社製;商品名 カオスティック)で固定して成る上側断熱要素(16b)
をこの順に積層して成る施工厚さ(h)が約200mmの複合断熱材(10)を配置した。熱伝導異方性シート(11)と外壁面(100)との間、および各部材間は耐熱接着剤(イソライト工業社製;商品名 カオスティック)により固定した。また、複合断熱材の最上面には最外層(S1)として積層ユニットAの断熱板(13)と同じ断熱板を配置させた。
【0095】(実施例1−2)断熱材Aに代えて、寸法が50mm×50mm×100mmである断熱材Bを使用したこと以外は実施例1−1と同様にして、実施例1−1と同じ熱処理装置に複合断熱材を配置させた。
【0096】(比較例1)実施例1−1と同じ熱処理装置の外壁面に、厚さ25mmのシリカ系繊維から成る密度160kg/m3のシート状断熱材(イビデン社製;商品名 イビデンブランケット#1600)を8層積層して施工厚さが200mmとなるように断熱材を配置した。最下層と外壁面との間および各層間は、耐熱接着剤(イソライト工業社製;商品名 カオスティック)により固定した。
【0097】実施例1−1、1−2および比較例1の各断熱材の断熱性能を評価した。結果を表1に示す。表1中、断熱材の表面温度は、最外層(S1)の表面において455mm×605mmの長方形内で9箇所の温度を測定し、その平均値で示した。放熱熱流束は熱流束計(京都電子工業社製:EG型)を用いて測定した。また、表面温度のばらつきは455mm×605mmの長方形の範囲内における値である。また、発塵レベルは、各断熱材に20m/秒の気流を吹き付け、ダストカウンタで1m3に含まれる1μmのダスト数を測定して評価した。
【0098】
【表1】

【0099】表1より、本発明の複合断熱材は従来の断熱材よりも優れた断熱性能を有することが判る。また、熱伝導異方性シートの存在により、表面温度のばらつきが小さくなっている。なお、実施例1で使用した下側断熱要素および上側断熱要素から成る複合断熱材であって、熱伝導異方性シートを含まないものについて、実施例1と同様にして断熱性能を評価したところ、表面温度のばらつきは±5〜±9℃となり、このことからも熱伝導異方性シートが表面温度のばらつきの低減に寄与していることが確認された。
【0100】(実施例2)温度が24℃である空気雰囲気下において、炉内の温度が600℃となる電子部品の熱処理装置の外壁面であって、凸部を有する外壁面全体に、図3に示すように、・熱伝導異方性シート(11)、・寸法が異なる3種類の断熱材A(12)を間隙無く、外壁面(200)の凸部に合わせて敷き詰め、上面を平坦面にした下側断熱要素(16a)、および・平面形状が455mm×300mmの長方形状である積層ユニットA(15)を16個積層し、各ユニット間を耐熱接着剤(イソライト工業社製;商品名 カオスティック)で固定して成る上側断熱要素(16b)
をこの順に積層して成る複合断熱材(10)を配置させた。熱伝導異方性シート(11)と外壁面(200)との間、および各部材間は耐熱接着剤(イソライト工業社製;商品名 カオスティック)により固定した。また、複合断熱材の最上面には最外層(S1)として積層ユニットAの断熱板(13)と同じ断熱板を配置させた。複合断熱材(10)の施工厚さは、外壁面の凸部上に位置する部分と外壁面の平坦部上に位置する部分とで異なるが、200mmの最小施工厚さ(h1)が確保されるように複合断熱材を配置した。この場合において、最大施工厚さ(h2)は250mmとなった。
【0101】この複合断熱材は効率良く施工でき、後述する比較例2で要した施工時間の半分の時間で施工を完了させることができた。
【0102】(比較例2)実施例2と同じ熱処理装置の外壁面に、厚さ25mmのシリカ系繊維から成る密度160kg/m3のシート状断熱材(イビデン社製;商品名 イビデンブランケット#1600)を適宜カットして外壁面に密着するように配置した。実施例2と同様、断熱材は200mmの最小施工厚さ(h1)が確保されるように配置した。また、最大施工厚さ(h2)は250mmとなった。最下層と外壁面との間および各層間は、耐熱接着剤(イソライト工業社製;商品名 カオスティック)により固定した。
【0103】実施例1と同様にして、実施例2および比較例2の断熱性能を測定した。但し、測定は、455mm×300mmの長方形の面内にて実施した。得られた結果を表2に示す。
【0104】
【表2】

【0105】表2より、実施例2の断熱材は施工厚さが200mmの部分における断熱性能は実施例1−1のそれとほぼ同じであり、本発明の断熱材を下側断熱要素として用いることにより、熱処理装置の外側壁面における凹凸の存否に拘わらず、優れた断熱効果を得られることが判る。なお、実施例2において表面温度のばらつきが実施例1よりも若干大きくなっているが、これは測定対象となった面積が実施例1のそれよりも小さかったためである。なお、比較例2については、断熱材を外壁面の凹凸に十分に密着させることができなかったために、実施例2よりも断熱性能が劣っている。
【0106】(実施例3)積層ユニットAに代えて、積層ユニットBを使用したこと以外は実施例1−1と同様にして、実施例1−1と同じ熱処理装置に複合断熱材を配置させた。そして、複合断熱材の外側表面から荷重を加え、圧縮率および断熱性能をそれぞれ測定した。圧縮率は、圧縮率=荷重を加えた時の複合断熱材の厚さ÷荷重を加えてない時の複合断熱材の厚さの式から求めた。また断熱性能の測定は、実施例1と同様にして行った。得られた結果を表3に示す。なお、表3において、荷重0.118kgf/cm2は、複合断熱材の上に人が立ったときに、人が立っている面(面積にして約800cm2)に加えられる荷重に相当する。
【0107】
【表3】

【0108】表3に示すように、硬質スペーサを挿入した複合断熱材は保形性において優れており、大きい荷重が加えらても優れた断熱性能を維持できる。なお、実施例1−1の複合断熱材に0.118kgf/cm2の荷重を加えたところ、圧縮率は0.875となり、断熱性能において低下が認められた。
【0109】
【発明の効果】本発明の複合断熱材においては、可変形性を有する下側断熱要素が、断熱対象構造物の外壁面との密着性を確保するとともに、その上に平板状の上側断熱要素が載置されることを可能にしている。更に、下側断熱要素を構成する断熱材は、発塵レベルが小さく、取扱い性において優れている。従って、本発明の複合断熱材は、外壁面が平坦でなく凹凸を有する断熱対象構造物においても、優れた断熱保温効果および/または断熱保冷効果を奏し、また効率良く断熱対象物の外壁面に施工できる。
【0110】また、本発明の複合断熱材は熱伝導異方性シートと組み合わせることで、均一な断熱効果を発揮し得る。更に、本発明の複合断熱材に硬質スペーサを挿入することによって、保形性に優れ、高荷重下においても優れた断熱性能を維持することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【出願日】 平成11年9月13日(1999.9.13)
【代理人】 【識別番号】100062144
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 葆 (外2名)
【公開番号】 特開2001−82681(P2001−82681A)
【公開日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願番号】 特願平11−258742