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【発明の名称】 管路の内面成形用基材
【発明者】 【氏名】鈴木 精二

【氏名】木村 雅人

【要約】 【課題】管路内へ挿入後の膨張性がよく、成形後にしわが発生することがなく、しかも、円周方向の強度に優れた管路の内面成形用基材を提供する。

【解決手段】複数の強化繊維基材を積層した強化繊維積層体に樹脂を含浸してなる繊維強化樹脂積層体からなる管路内を補修するための内面成形用基材であって、上記強化繊維基材の少なくとも一層が一方向に配列された長繊維からなる強化糸条に形態保持糸条を絡ませて形成されかつ形態保持糸条に対する強化糸条の重量比率が10以上である一方向強化織物からなり、一方向強化織物の強化糸条の配列方向が補修すべき管路の軸方向に対して30度〜85度の角度になるように配置されてなる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の強化繊維基材を積層した強化繊維積層体に樹脂を含浸してなる繊維強化樹脂積層体からなる管路内を補修するための内面成形用基材であって、上記強化繊維基材の少なくとも一層が一方向に配列された長繊維からなる強化糸条に形態保持糸条を絡ませて形成されかつ形態保持糸条に対する強化糸条の重量比率が10以上である一方向強化織物からなり、一方向強化織物の強化糸条の配列方向が補修すべき管路の軸方向に対して30度〜85度の角度になるように配置されてなることを特徴とする管路の内面成形用基材。
【請求項2】 上記一方向強化織物が緯糸を強化糸条とし、経糸を形態保持糸条として製織されてなることを特徴とする請求項1記載の管路の内面成形用基材。
【請求項3】 上記一方向強化織物と不織布とを積層してなることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の管路の内面成形用基材。
【請求項4】 上記一方向強化織物の強化糸条がガラス繊維及び炭素繊維の少なくとも一方からなることを特徴とする請求項1、請求項2又は請求項3記載の管路の内面成形用基材。
【請求項5】 上記一方向強化織物の形態保持糸条がガラス繊維、合成繊維及び天然繊維のうちの少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3又は請求項4記載の管路の内面成形用基材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は上下水道管、ガス管、石油輸送管等の管路の内面成形用基材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】上下水道管、ガス管、石油輸送管等は長期間の使用による老朽化によって強度が低下したり、使用環境による破損によって管路内の輸送物が漏れるなど強度的な問題が生ずるおそれがある。このような強度的な問題が生じた場合は、新設と同様の管で敷設替を開削工法で行うか、非開削工法で管路内の部分補修を行う方法又は管路内に新設管と同程度の強度の新らたな管を成形する方法が採用されている。これらの方法のうち、開削工法は埋設された既存管の地上の交通量が多い地域や複数の配管が埋設されている場所などではしばしば制限を受ける。そのため、近年、非開削工法が採用されるようになり、その1つとして、繊維強化樹脂複合体を管路内に成形する方法が知られており、この方法は既存の管路内へ強化繊維に樹脂が含浸された円筒状の繊維強化樹脂複合体を挿入し、この円筒状物の内側に圧力をかけて膨張させ、樹脂を硬化させて管路内に新たに円筒状成形物を成形するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記の円筒状の繊維強化樹脂複合体を管路内に成形する方法において、この円筒状物の外径が既存の管路の内径に近い設計の円筒状物を挿入して成形すると、管路内の内径が多少変形して上記円筒状物の外径よりも小さくなっている部分があれば、この部分では成形後に円筒状物にしわが発生するおそれがある。一方、円筒状物の外径が既存の管路の内径よりもやや小さく設計した円筒状物を挿入して成形すると、円筒状物の内側に圧力をかけて膨張させたときに、膨張が不十分であると、円筒状物の外層と管路内面に隙間が発生し、この隙間が大きい場合には補修後でも外圧に対して管路及び成形物の強度が不十分になるおそれがある。そのため、この円筒状物の外径は予め管路内径よりやや小さく設計し、円筒状物の内側から圧力をかけて膨張させるときに、十分膨張させて円筒状物の外層面を管路内面に十分接触させて成形することが望まれる。
【0004】このような膨張性に適した基材として不織布が使用されているが、不織布のみを基材とした場合は、強度の方向性のバランスには適しているものの、管路の成形物に要求される円周方向の強度を得るには成形物の肉厚を厚くする必要がある。しかし、成形物の肉厚を厚くすると、補修後の管路の断面積が減少し、それによって管路内の流量能力の低下が避けられないことから、補修後の肉厚をできるだけ薄く仕上げることが望まれる。
【0005】また、強度に優れたバイヤス状織物を基材にすると、汎用されている構成の織物では、織物を構成している交錯した相互の糸条の重量比率の差が少ないので、膨張をさせるときに相互の糸条が擦れ合う現象が起こり、膨張させるのにかなりの圧力を要することになる。また、通常の平織織物を管路の軸方向に対して斜めに配置させても上記バイヤス状織物と同様に膨張をさせるときに相互の糸条が擦れ合う現象が起こり、膨張させるのにかなりの圧力を要することになる。さらに、平織織物の経糸が管路の軸方向に対して0度又は90度の角度になるよう配置させると、管圧に対する強度は得られるが上記の膨張については期待できない。
【0006】そこで、本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、管路内へ挿入後の膨張性がよく、成形後にしわが発生することがなく、しかも、円周方向の強度に優れた管路の内面成形用基材を提供することを課題とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】このような課題を解決するための本発明は、複数の強化繊維基材を積層した強化繊維積層体に樹脂を含浸してなる繊維強化樹脂積層体からなる管路内を補修するための内面成形用基材であって、上記強化繊維基材の少なくとも一層が一方向に配列された長繊維からなる強化糸条に形態保持糸条を絡ませて形成されかつ形態保持糸条に対する強化糸条の重量比率が10以上である一方向強化織物からなり、一方向強化織物の強化糸条の配列方向が補修すべき管路の軸方向に対して30度〜85度の角度になるように配置されてなるものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の内面成形用基材は、複数の強化繊維基材を積層した強化繊維積層体に樹脂を含浸してなる繊維強化樹脂積層体からなる管路内を補修するための内面成形用基材であるが、補修すべき既存の管路内に挿入され、この円筒状物の内側に圧力をかけて膨張させ、上記樹脂を硬化させて管路内に新たに円筒状成形物を成形するために使用される。この内面成形用基材は円筒状又はシート状などに形成されており、円筒状に形成されている場合は、そのままの状態で補修すべき既存の管路内に挿入されて上記のようにして成形され、また、シート状に形成されている場合は、シート状物の端部と端部とを合わせて円筒状にして補修すべき既存の管路内に挿入されて上記と同様にして成形される。
【0009】本発明においては、強化糸条によって内面成形用基材の強度を保持するのもであるから、形態保持糸条には特に強度は要求されず、強化糸条に絡ませて一方向強化織物の形態を保持できればよく、むしろ、内面成形用基材を後工程で膨張させるときに強化糸条の角度移動が容易な細い太さの糸条が好ましい。したがって、形態保持糸条に対する強化糸条の重量比率を10以上とするものである。また、内面成形用基材を後工程で膨張させるときに強化糸条の角度移動をし易くするために、一方向強化織物の強化糸条の配列方向が補修すべき管路の軸方向に対して30度〜85度の角度になるように配置するものである。さらに、上記のように、形態保持糸条に対する強化糸条の重量比率を10以上とするすなわち形態保持糸条の重量比率を強化糸条の重量の1/10以下とするとともにこれを強化糸条に絡ませることにより、上記の強化糸条の配置と相俟って、膨張時の強化糸条がより一層角度移動をし易くなる。
【0010】本発明の内面成形用基材は、強化繊維基材として、一方向強化織物の強化糸条の配列方向が補修すべき管路の軸方向に対して30度〜85度の角度になるように配置されてなるので、これを円筒状物となして、管路内に挿入して膨張させるとき、強化糸条と形態保持糸条との交点でそれぞれの糸条が擦れ合う力が通常の平織織物よりも極めて低く、容易に膨張する。すなわち、補修すべき既存の管路内に上記円筒状物を挿入し、この円筒状物の両端を塞いでその内部に圧力を加えると、強化糸条が管路の軸方向に対して角度が大きくなるように角度移動し、それにより円周方向に膨張し、既存の管路内に円筒状物の外層が十分に接触する。したがって、既存の管路と円筒状物とが一体化され、また、管路内径の変動による膨張度合の変化に対しても強化糸条が弛むことがないので、円筒状物が管路内に接触し、それによって補修すべき管路に要求される強度を与えることができるとともに成形後のしわの発生を抑えることができる。
【0011】また、一方向強化織物と膨張時の繊維間移動が容易な不織布を交互に配した積層構成にすると、上記と同様の優れた膨張性と強化糸条が弛るまない作用が得られ、さらに最内層に不織布を配置させることにより内面の平滑性の良好な成形物を形成することができる。また、一方向強化織物と不織布とを積層すると、一方向強化織物の一方向強度方向特性と不織布の剛性とが相俟って補修すべき既存の管路内の損傷状況、補修目標強度に応じた積層構成を設計することができ、さらに、不織布単独の場合よりも成形物の肉厚を薄くすることができ、それによって補修後の管路断面積の低下を少なくすることができ、ひいては管内輸送能力の低下を防ぐことができる。
【0012】以下、本発明の実施態様を図面に基づいて説明する。図1は本発明の一実施態様を模式的に示した平面図であって、補修すべき既存の管路1内には円筒状の内面成形用基材2とこれに含浸された樹脂が硬化してなる硬化樹脂との成形物からなる新たな管路が形状されている。上記内面成形用基材2は外層から順に一方向強化織物4、不織布6、一方向強化織物5及び不織布7が積層されて円筒状に形成されている。上記一方向強化織物4の強化糸条4aは管路1の軸方向に対して30度から85度の間の所定の角度で配置され、一方向強化織物5の強化糸条5aは上記一方向強化織物4の強化糸条と対称になる角度で配置されている。なお、この内面成形用基材2からなる円筒状物の最外層と最内層には図示されていないが、合成樹脂フィルムの層がそれぞれ形成されている。
【0013】上記内面成形用基材を構成する一方向強化織物は、強化糸条として例えばガラスロービングを用い、形態保持糸条として例えばポリエステル糸を用いたものであって、上記ガラスロービングの織密度を5本/25mmとし、上記ポリエステル糸の織密度を0.5×2本/25mmとして上記ガラスロービングに絡ませて織ったからみ織物であり、上記ポリエステル糸がこの織物の織組織を保持できる程度に上記ガラスロービングに絡まっているのもである。上記ガラスロービングとしては具体的にはユニチカグラスファイバー(株)製の商品名DWR1150F165等が挙げられ、また、ポリエステル糸としてはユニチカ(株)製の製品名250/48−E721等が挙げられる。
【0014】次に、上記の不織布としては、例えば樹脂補強用に一般的に使用されているガラスチョップドストランドマットが好ましく使用され、その他合成繊維などからなる不織布、フェルトなどを用いることもできる。上記ガラスチョップドストランドマットとしては具体的にはユニチカグラスファイバー(株)製の商品名EM450SS等が挙げられる。
【0015】強化糸条としてはガラス繊維の他、炭素繊維、アラミド繊維などからなるものが挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。また、形態保持糸条としてはポリエステル繊維などの合成繊維のほか、ガラス繊維、天然繊維などからなるものが挙げられる。本発明の管路の内面成形用基材を製造する方法の一例を図2〜図6に基づいて説明する。図2に示すように、一方向強化織物3とすべきヨコスダレ織物をまず通常のヨコスダレ織物と同様にして製織する。すなわち、経糸を形態保持糸条3bとすべき糸条とし、緯糸を強化糸条3aとすべき糸条とし、ポリエステル糸からなる経糸が50mm間に1箇所の割合で2本配置させ、ガラスロービングからなる緯糸が密度25mm間に5本の割合で構成され、織り方としては経糸が緯糸に絡ませたいわゆるからみ織りとして製織し、織物1m2当りの重量を例えば強化糸条3aとすべきガラスロービング230gに対してポリエステル糸(太さ250d)を1gとする。
【0016】次に、上記ヨコスダレ織物の形態保持糸条3bに張力を与えて、図3に示すような強化糸条4aとすべき緯糸の角度が45度の一方向強化織物4となし、次いで、図5に示すように、この一方向強化織物4と不織布6とをポリエステル糸を縫糸8として縫合せる。なお、図3における4bは一方向強化織物4の形態保持糸条である。
【0017】また、図2に示すヨコスダレ織物の形態保持糸条3bに張力を与えて、図4に示すような、図3のヨコスダレ織物の緯糸の角度と対称すなわち強化糸条5aとすべき緯糸の角度が−45度の一方向強化織物5となし、次いで、図6に示すように、この一方向強化織物5と不織布7とをポリエステル糸を縫糸8として縫合せる。なお、図4における5bは一方向強化織物5の形態保持糸条である。
【0018】このようにして得られた一方向強化織物4と不織布6とからなる強化繊維積層体に熱硬化性樹脂、紫外線硬化樹脂などを含浸し、同様に一方向強化織物5と不織布7とからなる強化繊維積層体に上記と同様の樹脂を含浸し、次いでこれらを積層し、しかる後に、円筒状物に成形して管路の内面成形用基材となし、円筒状物の最内層と最外層に合成樹脂フィルムを被せる。最外層に合成樹脂フィルムを被せると、その平滑性によって補修すべき既存の管路内により容易に挿入することができる。なお、内面成形用基材への樹脂含浸は管路内に内面成形用基材を挿入後に行ってもよい。
(実施例)以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
実施例1ガラスチョップドストランドマット(ユニチカグラスファイバー(株)製の商品名EM450SS)に、ガラスロービング(ユニチカグラスファイバー(株)製の商品名DWR1150F165)の織密度を5本/25mmとし、ポリエステル糸(ユニチカ(株)製の製品名250/48−E721)の織密度を0.5×2本/25mmとして上記ガラスロービングに絡ませて織ったからみ織物からなる一方向強化織物をその強化糸条が補修すべき管路の軸方向に対して+45度になるように配置して積層し、さらにその上に上記と同様のガラスチョップドストランドマットを積層し、さらにその上に上記と同様の一方向強化織物をその強化糸条が補修すべき管路の軸方向に対して−45度になるように配置して積層した。得られた強化繊維積層体に、ガラスチョップドストランドマット(450g/m2)自体の仕上がりガラス含有量が30重量%に、一方向強化織物(230g/m2)自体の仕上がりガラス含有量が50重量%になるように、イソ系ポリエステル樹脂(昭和高分子(株)製リゴラック150HRBQTN)を加えて、上記強化繊維積層体に上記樹脂を含浸させ、さらに、硬化剤(日本油紙(株)製パーメック)を添加して上記樹脂を常温硬化させた。得られた繊維強化樹脂積層体をさらに80℃の温度で3時間アフターキュアーした。アフターキュアー後の繊維強化樹脂積層体の厚さは2.6mm、ガラス含有量は38重量%であり、曲げ強度は258N/mm2であった。
比較例1実施例1と同様のガラスチョップドストランドマットに、実施例1と同様の一方向強化織物をその強化糸条が補修すべき管路の軸方向と同方向(0度)になるように配置して積層し、さらにその上に上記と同様のガラスチョップドストランドマットを積層し、さらにその上に上記と同様の一方向強化織物を上記と同方向に配置して積層した。得られた強化繊維積層体に実施例1と同様にして樹脂の含浸、樹脂の硬化及びアフターキュアーを行った。アフターキュアー後の繊維強化樹脂積層体の厚さは2.7mm、ガラス含有量は36重量%であり、曲げ強度は178N/mm2であった。
比較例2実施例1と同様のガラスチョップドストランドマットに、実施例1と同様の一方向強化織物をその強化糸条が補修すべき管路の軸方向に対して直角方向(90度)になるように配置して積層し、さらにその上に上記と同様のガラスチョップドストランドマットを積層し、さらにその上に上記と同様の一方向強化織物をその中央部で強化糸条を2つに切断してその間隔を3cm開けて積層した。得られた強化繊維積層体に実施例1と同様にして樹脂の含浸、樹脂の硬化及びアフターキュアーを行った。アフターキュアー後の繊維強化樹脂積層体の厚さは2.7mm、ガラス含有量は34重量%であり、曲げ強度は174N/mm2であった。
比較例3不織布として目付け450g/m2のガラスチョップドストランドマット3枚を積層し、以下実施例1と同様にして樹脂の含浸、樹脂の硬化及びアフターキュアーを行った。アフターキュアー後の繊維強化樹脂積層体の厚さは3.2mm、ガラス含有量は30重量%であり、曲げ強度は196N/mm2であった。
【0019】本発明に係る実施例1と比較例1〜3とを比較すると、実施例1における繊維強化樹脂積層体は比較例1、2のそれに比べて曲げ強度が44%高く、また、比較例3のそれに比べても曲げ強度が30%高いものである。このことからも、本発明の管路の内面成形用基材は管路の補修に好適であることが分かる。上記の曲げ強度は、JIS−K−7055「ガラス繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」に準じて測定した。なお、測定は繊維強化樹脂積層体の最上層を上面にして測定した。
【0020】
【発明の効果】本発明によると、上記の構成により管路内へ挿入後の膨張性がよく、成形後にしわが発生することがなく、しかも、管路の円周方向の強度に優れる。
【出願人】 【識別番号】000115234
【氏名又は名称】ユニチカグラスファイバー株式会社
【出願日】 平成11年9月9日(1999.9.9)
【代理人】 【識別番号】100068087
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 義弘
【公開番号】 特開2001−82676(P2001−82676A)
【公開日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願番号】 特願平11−255003