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【発明の名称】 管路の補修方法
【発明者】 【氏名】八木 伊三郎

【氏名】石川 雅敏

【氏名】槇本 太司

【要約】 【課題】開削をすることなく、水替えを行うことなく、しかも既設の下水道管の流れを長時間にわたって止めることなく、人間が作業を行うところと下水の流れるところを隔離した状態で既設管を補修して更生することのできる管路の補修方法を提供する。

【解決手段】補修対象管路P0 の上流側に位置するマンホールH1 に近接して、内側に弁機能を有する止水プラグ1を配置し、その下流側の端部には筒体2を取り付けることにより、少なくともマンホールH1 内において下水を筒体2の内側で硫化させ、筒対2の外周に下水の流れない隔離領域Wを形成し、その隔離領域Wにおいて組立式ライニング材を組み立てていくことで、一時的に下水を止めるだけで、下水に対して触れることなく既設管路の内面のライニングを可能とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 既設管路の補修方法であって、補修対象管路の上流側に位置するマンホールに近接してその上流側の管路に、外周が当該管路内面に水密に当接し、かつ、内周に開閉自在の弁機能を有してなる止水プラグを配置するとともに、その止水プラグの下流側端部に、補修対象管路の内面に対して周方向に略一様な空隙を介して挿入可能な位置で筒体を取り付けることにより、少なくとも上記マンホール内において下水を筒体内部で流下させ、その筒体外周に形成される下水に対する隔離領域で、組立式のライニング材を組み立てていくことを特徴とする管路の補修方法。
【請求項2】 上記組立式のライニング材が、樹脂板の1枚もしくは複数枚からなるライニング表面材と、そのライニング表面材と既設管内面との間に設けられて当該ライニング表面材に一体化されるリング状の金属製補強材を含むことを特徴とする請求項1に記載の管路の補修方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は既設の下水道管路、または雨水、農水管路等の補修方法に関し、更に詳しくは、人が管路内に入って作業可能な口径800mm以上の下水道大口径管の補修に際して、下水道内の下水の流れを止めずに、下水道管路内に下水に対して隔離されたライニング材の組立のための作業場所を確保し、流速の速い下水道管路や水量の多い下水道管路でも、安全性を確保しながら容易に補修を行うことのできる管路の補修方法に関する。
【0002】
【従来の技術】下水道大口径管を開削することなく補修する方法として、従来、ホース状ないしはチューブ状の柔軟なライニング材を反転や引込みなどによって管内に挿入してライニングするソフトライニング工法や、塩化ビニル製の帯状のプロファイルを管内で螺旋状に巻回して製管する工法、あるいは樹脂板状物を管内で融着して製管する工法などが知られている。
【0003】柔軟なライニング材を反転や引込みなどによって既設管内に挿入してライニングするソフトライニング工法では、補修しようとする下水道管に止水プラグを設置して下水の流れを止め、その上流側からバイパスホースを回して地上での水替えをするのが一般的である。
【0004】帯状プロファイルを管内で製管する工法や樹脂板状物を管内で製管する工法では、人間が管内に入って製管していく工法と、製管機を管内に持ち込む工法とがある。人間が管内に入って製管していく工法では、下水の流れが多いと作業が危険であり、流れを止めないと作業ができない。また、下水の流れを止めるにしても、その流量によって不可能とされる場合が多い。一方、製管機を管内に持ち込む工法は、下水の流れを止めないで施工できると言われているが、実際には、下水の流れが速いところや水深が管の三分の一程度以上あるところでは、工事自体が不可能である。すなわち、流速が速いところに製管用の装置を持ち込もうとすると、その装置が堰となって上流側の水面が上昇し、作業ができなくなってしまうというのが実情である。
【0005】また、既設の下水道管路を補修する工法として、本出願人は、補修すべき管路の上流側のマンホールよりも上流部分に、内周側に開閉自在の弁機能を有する止水プラグを挿入し、その止水プラグの弁機能を閉塞して止水した状態で、既設管内にバイパス管を挿入してその基端を当該止水プラグに接続するとともに、そのバイパス管の先端を、補修すべき管路の下流側のマンホールよりも下流部分にまで至らせて支持した後、止水プラグの弁機能を開放することにより、2つのマンホール間において下水をバイパス管内でのみ流下させ、バイパス管と既設管との間の環状空間において下水を流さない状態で既設管内面にライニング材を組み立てる方法を提案している(特開平10−141574号)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】日本の下水道は戦後に普及したと言われているが、コンクリートの耐用年数と言われている50年を経過したものが大都市では出現し始めており、下水道管は地震や地盤沈下でクラックが生じたり管ずれが生じたりしてきている。また、コンクリートは下水の中で発生する硫化水素や、硫化水素から変化した硫酸によって化学反応を起こし、内面の劣化が進んできている。こうした問題に対応するために、下水道管内面を耐薬品性に優れる熱硬化性樹脂などでライニングする管路更生工法が採用されている。
【0007】しかし、大口径管の場合、水量が多く物理的に水替えができない。前項で述べたように、水替えをしないで管渠の中で新しい管を組み立てていく方法も提案されているが、前記した本出願人による提案も含めて、いずれにおいても流速が速いところでの作業は流れにのみこまれる危険が伴い、安全性の点で大きな問題を内包している。
【0008】以上のことから、現実には、大口径下水道管の更生には手が着けられていない状況である。また、更生工法の採用についても相当の費用を要することから、その補修方法については、更生後の管が耐久性のある強度の高い管となる更生工法が強く望まれている。
【0009】本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、その主たる目的は、開削することなく、しかも既設の下水道管の流れを止めることなく、かつ、水替えを行うことなく、人間が作業を行うところを下水の流れから隔離した状態で、既設管を補修して更生することのできる管路の補修方法を提供することにあり、また、他の目的は、更生された管の強度を従来に比して大幅に高くすることのできる管路の補修方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の管路の補修方法は、既設管路の補修方法であって、補修対象管路の上流側に位置するマンホールに近接してその上流側の管路に、外周が当該管路内面に水密に当接し、かつ、内周に開閉自在の弁機能を有してなる止水プラグを配置するとともに、その止水プラグの下流側端部に、補修対象管路の内面に対して周方向に略一様な空隙を介して挿入可能な位置で筒体を取り付けることにより、少なくとも上記マンホール内において下水を筒体内部で流下させて、その筒体外周に形成される下水に対する隔離領域で、組立式のライニング材を組み立てていくことによって特徴づけられる(請求項1)。
【0011】ここで、本発明においては、上記組立式のライニング材として、樹脂板の1枚もしくは複数枚からなるライニング表面材と、そのライニング表面材と既設管内面との間に設けられて当該ライニング表面材に一体化される金属製補強材からなるものを好適に採用することができる(請求項2)。
【0012】本発明は、マンホールを含む既設下水道管の構造を考慮して、大口径下水道管の修復に際しては、開削することなくマンホールの鉛直のストレート部分を通過させるべく、ライニング材を既設の管路内で組み立てる方式を採用するとともに、その管路内におけるライニング材の組立作業を、管路内の下水の流下を停止させず、かつ、水替えを行うことなく、しかも下水と隔離した状態で行うことを可能とするものである。
【0013】すなわち、下水道におけるマンホールの蓋は一般に600mmが使用されている。また、1号人孔(マンホール)の場合、蓋部よりも下方の鉛直方向へのストレート部分の口径が900mmとなっており、大口径管渠の場合なども1号人孔の下に大きな空間を伴う構造物を構築しているものが多い。こうした理由から、マンホール内で作業する場合には口径600mmもしくはそのマンホールの蓋の部分を取り除いたとしても口径900mmを通る装置や材料しか下水道管渠に入れることはできないのが実情である。マンホール部の開削だけであっても大口径管渠の場合、その埋設深さが深いので大変な工事となる。
【0014】本発明はこうした既設管並びにマンホールの構造を考慮し、口径数mにも及ぶ大口径管であっても、管渠内に挿入する部材は最大でも口径900mmの孔を通る大きさとし、従って既設管の内周面を覆うライニング材は組立式のものとするとともに、その組立式のライニング材を既設管内で組み立てて既設管内面にライニングする。そして、その組立作業を下水から隔離した領域において行うことを可能とするために、内周側に開閉自在の弁機能を有してなる止水プラグと、その止水プラグの下流側の端面部に取り付けられて既設管の内周面に対して周方向に略一様な空隙を介して配置される筒体からなる下水隔離装置を用いる。
【0015】止水プラグは、補修対象管路の上流側に位置するマンホールの近傍にその外周が既設管の内面に対して水密に取り付けられ、内周側の弁機能を閉じることによって下水を止めた状態で、その下流側端面部に筒体を取り付けた後、弁機能を開くことによって、下水を筒体の内部で流下させ、筒体の外周と既設管の内周面との間に下水が流れない空隙、つまり下水に対して隔離された領域を形成する。そして、その筒状の隔離領域において組立式のライニング材を筒状に組み立てつつ、その組立体を必要数だけ軸方向に順次接合して下流側に伸ばしていけば、ライニング材の組立作業を、水替えを行うことなく、また、下水の流れを止めることなく、既設管内において下水に触れずに実施することができる。従って、流速の速い下水道や水量の多い下水道であっても、流れにのみこまれるといった危険を伴うことなく、管を更生することができる。
【0016】ここで、本発明方法においては、止水プラグの内周側の弁機能を閉塞して下水の流れを停止する時間は、下水を隔離すべく止水プラグの下流側に筒体を取り付けるに要する時間とすれば足り、この間、止水プラグよりも上流側の下水管は貯水槽として働くのであるが、貯水管渠としてどこまでの管渠を利用できるのかを検討した上で、弁機能の閉塞時間を決定する必要がある。
【0017】また、ライニング材を筒状に組み立てつつ、その組立体を軸方向に接合して下流側へと伸ばしていく際、先に組み立てた筒状の組立体を下流側に移動させる必要があるが、下水隔離装置の筒体よりも下流側においては、下水は既設管の内面に沿って流れているため、この下水の流れは組立体に対して浮力を与え、また、その流れが組立体を移動させるための力として働くため、組立体の移動に要する力が少なくてすむという利点もある。
【0018】また、請求項2に係る発明を採用して、樹脂板の1枚もしくは複数枚からなるライニング表面とその外周側に一体化されるリング状の金属製補強材を備えたライニング材を用いると、リング状の金属製補強材は周方向への強度メンバーとなり、樹脂製の表面材と既設管の間にモルタル等の裏込め材を注入する際の注入圧に耐えるとともに、ライニング後には外水圧または土圧に抗する役割を担うことになり、従来の更生工法に比して更生後の管の強度を大幅に向上させることができる。そして、樹脂製のライニング表面材の材質としてポリエチレン等を選択すれば、強度並びに耐薬品性にも優れた長寿命の下水管となり得る。
【0019】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施の形態について説明する。説明に当たっては、まず、本発明方法を適用した下水道管の更生方法に用いられる装置並びに部材の例について述べた後、管路の更生手順について説明する。
【0020】図1は、本発明方法を適用した下水道管路の補修工事に用いられる止水プラグ1の全体構成を示す概略断面図であり、既設下水道管P内に装着した状態で示している。また、図2は図1のA部の詳細構造を示す拡大図であり、図3は図1のB−B拡大断面図である。
【0021】この例における止水プラグ1は、その中央部に開閉自在の弁機能を備えるものであって、金属製の円筒体からなるプラグ本体11と、そのプラグ本体11の外周面および内周面にそれぞれ設けられたアウターシール12およびインナーシール13を主体として構成されている。プラグ本体11はこの例において周方向に6分割されており、それぞれマンホールHのストレート部分SHの直径900mmを通すことのできる6個のセグメント11a〜11fを円筒状に組み合わせて、その両端面部に固定部材11gをねじ止めすることによって各セグメント11a〜11fを相互に一体化している。なお、固定部材11gについても、周方向に適宜数に分割されてマンホールHのストレート部分SHの直径900mmを通すことができるように考慮されており、固定部材11gの円周方向への接合位置をセグメント11a〜11f相互の接合部とずらせて、各セグメント11a〜11fに対してねじ止めすることによって全体として一体的な円筒体からなるプラグ本体11が形成されている。
【0022】アウターシール12は、プラグ本体11の外周面に沿った5つのドーナッツ状偏平ホース12a〜12eと、これらを外側から包みこむ外袋12fによって構成され、外袋12fがアウターシール固定部材12gによってプラグ本体11に対して固定される。各ドーナッツ状偏平ホース12a〜12eは、外袋12f内において相互の位置がずれないように固定されている。そして、各ドーナッツ状偏平ホース12a〜12eには、プラグ本体11に設けられたエア通路(図示せず)を介してその内部に対して個々にエアを供給することが可能となっており、各ドーナッツ状偏平ホース12a〜12e内にエアを供給して膨らませることにより、外袋12fが既設下水道管Pの内面に水密に当接するように構成されている。
【0023】インナーシール13は、それ自体はホース状をしており、プラグ本体11の中央上部に位置するセグメント11aの内周面の軸方向両端部に対して、両端開口部分を円弧状の押さえ金具13aを介してボルト13bで強固に締めつけて気密に固着することによって袋状としたものであって、セグメント11aに設けられたエア通路(図示せず)を介してその内部にエアを供給することが可能となっており、このインナーシール13内にエアを供給して膨らませることによって、インナーシール13は図3に破線で示すようにプラグ本体11の内周面に水密に密着し、プラグ本体11の内側を閉塞できるように構成されている。
【0024】なお、このインナーシール13は、エアの供給による膨張時の形態を考慮して、プラグ本体11の軸方向への長さは、プラグ本体11自体の軸方向長さよりも長くしている。また、このインナーシール13は、不使用時には、取扱い性を考慮してその内部のエアが吸引されて、図2,図3に示すように折り畳まれた状態でセグメント11aに対して密着している。また、インナーシール13にエアを供給してプラグ本体11の内側を閉塞した状態から、内部のエアを抜くことによって、プラグ本体11の内側は開放状態となるが、その場合、プラグ本体11に形成されている前記したエア通路を通じてインナーシール13内のエアを積極的に真空吸引し、インナーシール13をセグメント11aに引き寄せることにより、下水はその流れが阻害されることなく速やかに流下を再開する。
【0025】以上の止水プラグ1には、図4に模式的な縦断面図を示すように、既設下水道管Pに装着された状態で、その下流側の端面部に下水隔離用筒体2が取り付けられ、これらによって下水隔離装置3が構成される。
【0026】下水隔離用筒体2は、この例において、円形断面の下水道管Pに対応させて全体として円筒形をしており、一端側にフランジ部21aが設けられた胴体部21と、その胴体部21の内周面に押さえ金具22aを介して装着されるチューブ状の遮水シート22を主体として構成されている。フランジ部21aを含む胴体部21は、マンホールHのストレート部分SHの口径900mmを通るように周方向に例えば8分割されており、その分割された部材をマンホールHないしはそれに連なる既設下水道管P内において組み立てることによってフランジ付き円筒体とされる。円筒体への組立は、分割された各部材を、胴体部21の内部に互いに適宜距離ずつ離れて配置される組立リングに対してねじ止めすることによって行われる。なお、この胴体部21は、必要に応じて軸方向にも分割して繋ぎあわせてもよい。また、この作業においては必要に応じてマンホールH内に足場Fを組むとよい。
【0027】以上の下水隔離用筒体2は、図4に示すように、フランジ部21aにおいて止水プラグ1のプラグ本体11の下流側の端面部に取り付けられる。この状態では、下水隔離用筒体2の外周面と既設下水道管Pの内周面との間に、周方向に略一定の空隙を開けた状態となる。そして、この状態で止水プラグ1のインナーシール13を開放することにより、止水プラグ1の上流から流下してくる下水は下水隔離用筒体2の内側を流れることになり、既設下水道管Pの内周面と下水隔離用筒体2の外周面に形成された筒状の空隙には下水が流れず、下水に対する隔離領域Wが形成される。なお、下水隔離用筒体2を止水プラグ1に対して片持ち構造となることを避けるために、必要に応じて下流側の端部に車輪23を取り付けることが望ましい。この車輪23は、後述する組立式のライニング材の内面側に転がり接触して、ライニング材の軸方向への移動時における抵抗を少なくする。
【0028】次に、本発明を適用した下水道管の更生方法に用いられる組立式のライニング材について述べる。図5にその例を示す。この図5は組立式のライニング材の1ユニット、つまり組立式ライニングユニット4の組立状態を示す外観図であり、図6はその剛性リング43に沿って切断した軸直交断面図である。また、図7〜図9はその組立式ライニングユニット4を構成する部品を示す図である。
【0029】この例における組立式ライニングユニット4は、ライニング表面材を形成する樹脂板41と、その樹脂板41の両端部分を突き合わせるように円筒形に丸めた状態で、その突き合わせ部分を相互に接続する筒長方向融着材42と、円筒形に丸められた樹脂板41の外周に設けられる複数の剛性リング43を主たる構成要素としている。
【0030】樹脂板41は、例えば分子密度が0.95程度の高密度ポリエチレンを材質とし、図7に斜視図を示すように、その裏面側(ライニング時に既設下水道管Pの内面に向く面)に、丸めた状態での軸方向(筒長方向)に沿う多数のリブ41aが形成されており、その各リブ41aには剛性リング33を通すための複数の孔41bが形成されている。
【0031】筒長方向融着材42はポリエチレン製であって、図8に一部を省略した外観斜視図を示すように、その両側面に樹脂板41の両端部がそれぞれ嵌まり込む凹部42aが形成され、その各凹部42aに隣接して加熱融着用のニクロム線42bが埋め込まれた構造を有している。樹脂板41を円筒状に丸めて接合するには、その両端部を筒長方向融着材42の両側の凹部42aに差し込み、ニクロム線42bに通電することによって当該筒長方向融着材42のポリエチレンを加熱溶融させて樹脂板41に対して融着一体化させる、いわゆるエレクトリックフュージョン接合タイプを採用している。
【0032】各剛性リング43は、図9に部分断面正面図を示すように、それぞれ周方向に4分割された構造用鋼等からなる分割リング部材43a〜43dと、その各分割リング部材43a〜43dを相互に繋ぎ合わせてリング状にするための剛性リング結合材43eによって構成されている。剛性リング結合材43eは各分割リング部材43a〜43dと同等の材質からなるパイプ状の部材であって、両端面に開口した孔に分割リング部材43a〜43dの端部を挿入することによって、ノック式の抜け止め機構等によって4個の分割リング部材43a〜43dを周方向に繋ぎ合わせるようになっている。
【0033】以上の各部材を用いて組立式ライニングユニット4を組み立てるには、樹脂板41を巻回してその両端部を筒長方向融着材42の凹部42aに差し込んで筒状にしてニクロム線42bに通電して融着させるとともに、その状態で外周に位置する各リブ41aの孔41bに分割リング部材43a〜43dを通しつつ、剛性リング結合材43eで各分割リング部材43a〜43dどうしを環状に結合して樹脂板41と一体化させる。
【0034】以上の組立式ライニングユニット4は、その複数個が軸方向(筒長方向)に互いに接合されることによって、その全長が既設下水道管の補修対象部分の長さに合わせるようになっている。すなわち、図10に示すように、それぞれ筒状に組み立てられた各組立式ライニングユニット4は、その端面どうしが端面融着材5によって相互に接合されるとともに、その接合状態において各組立式ユニット4における接合位置に最も近い位置の剛性リング43どうしが、剛性リング連結部材6によって周方向複数箇所において連結されることにより、一体化される。
【0035】端面融着材5は、図11に外観図を示すように、全体としてリング状をなし、その本体部分は、下水道管渠のたるみや多少のカーブに追随するために曲げることのできる柔軟な材料、例えば分子密度が0.953の低密度ポリエチレンによって構成され、その両端部には、組立式ライニングユニット4の筒状に巻回された樹脂板41の端部を挿入するための凹部5aが形成されているとともに、全周を通じて加熱用のニクロム線5bが埋め込まれてた構造を有している。
【0036】剛性リング連結部材6は、分割リング部材43a〜43eと同等の構造用鋼からなり、図12に外観図を示すように、両端部近傍にそれぞれ剛性リング43が嵌まり込む切り欠き部6aとそれに隣接するスライド用の溝6bが形成されているとともに、ロック用のポッチ加工が施されており、スライド用の各溝6bにはスライドバー6cが摺動自在かつ回動自在に支持されている。接合された組立式ライニングユニット4の剛性リング43どうしを連結するには、図12の状態からスライドバー6cをスライドさせて各切り欠き部6aを開口させた状態でそれぞれ連結すべき剛性リング43を嵌め込んだ後、スライドバー6cを元に戻すことによって、剛性リング連結部材6が各剛性リング43から離脱できないようにすればよい。
【0037】次に、以上の下水隔離装置3および組立式ライニングユニット4を用いて行う、本発明方法を適用した既設下水道管の補修方法の例について述べる。図13〜図15は、本発明方法を適用した下水道管路の補修工事の手順を説明する模式的縦断面図である。ここでは、説明を判りやすくするために、口径2000mmの下水道管渠を更生する場合について述べる。
【0038】まず、図13に示すように、マンホールH内にセグメント11a〜11fを始めとする止水プラグ1用の部材を挿入してあらかじめ設置している足場(図示せず)上で止水プラグ1を組み立て、その止水プラグ1を、補修対象の下水道管P0 の上流側に位置するマンホールH1 に近接してその上流側に配置する。このとき、止水プラグ1は上流側のマンホールHからワイヤ7aを介して引取機7bに接続することによって、その位置決めが行われる。口径2000mmの下水道管渠の補修に際しての止水プラグ1の寸法的諸元は、組立状態におけるプラグ本体11の外径が1750mm、長さ2200mm程度とする。
【0039】次に、止水プラグ1のアウターシール12の各ドーナッツ状偏平ホース12a〜12e内に圧縮空気を導入することによって、止水プラグ1を既設下水道管Pの内面に対して水密に固定する。なお、このときの圧縮空気圧は、通常2kgf/cm2 程度とする。
【0040】その後、止水プラグ1のインナーシール13内に圧縮空気を導入し、止水プラグ1の中心部を閉塞する。これにより、既設下水道管Pを流れる下水は、補修対象の下水道管P0 の上流において塞き止められる。その状態で、マンホールH1から下水隔離用筒体2の構成部材を挿入して下水隔離用筒体2を組み立てるとともに止水プラグ1の下流側の端面部に取り付け、前記図4に示したように下水隔離装置3を完成させる。下水隔離用筒体2の軸方向長さは、マンホールH1 のインバート部の長さより長く、3000mm程度とする。なお、インナーシール13に供給する圧縮空気は、通常、1kgf/cm2 程度である。
【0041】次に、止水プラグ1のインナーシール13内のエアを吸引することにより、止水プラグ1の中心部を開放する。これにより、既設下水道管Pを流れる下水は、止水プラグ1の中心部を介して下水隔離用筒体2の内側を流れ、当該筒体2の下流側の開放端から流出して再び既設下水道管P(補修対象の下水道管P0 )に戻る。すなわち、この状態では、下水隔離用筒体2の外周面と既設下水道管Pの内周面との間の筒状の空隙には下水が流れず、下水に対する隔離領域Wが形成される。
【0042】その後、マンホールH1 から組立式ライニングユニット4の構成部材を挿入し、下水に対する隔離領域Wにおいて円筒状に組み立てる。この組立式ライニングユニット4の寸法的諸元の例を述べると、樹脂板41の長さが5500mm、幅が850mm、平板としての厚さが約3mm、リブ41aは厚さが8mm、高さ40mm、長さ750mm、相互のピッチが100mmであり、孔41bは直径28mmである。また、剛性リング43の太さは約26mmである。そして、樹脂板41を円筒形に巻回して組立式ライニングユニット4を完成した状態においては、その内径が1850mmである。
【0043】以上の組立式ライニングユニット4の組立作業を繰り返しながら、端面融着材5および剛性リング連結部材6を用いて複数の組立式ライニングユニット4を軸方向に接合していく。組立式ライニングユニット4を軸方向に接合するごとに、図14に示すように、互いに接合された複数の組立式ライニングユニット4を、補修対象の下水道管P0 の下流側のマンホールH2 からあらかじめ挿入しておいたワイヤ8aを介して引取機8bで引き取ることにより、補修対象の下水道管P0 内に挿入していく。このような手順で組立式ライニングユニット4を順次軸方向に接合していくに従い、止水プラグ1の開放状態のインナーシール13を通過して下水隔離用筒体2の内側を流れる下水は、接合された組立式ライニングユニット4の内側を流れ、その先端開口部分から下水道管P0 に流れる状態となる。
【0044】ここで、各組立式ライニングユニット4を端面融着材5により加熱融着させて軸方向に接合していく際、上記のような流路のもとに下水を流しながら行うと、加熱温度が上昇しにくいという問題が生じる場合があるが、その場合には、止水プラグ1のインナーシール13内に圧縮空気を供給して下水の流れを一時的に止めるとよい。また、組立式ライニングユニット4の筒長方向融着材42および端面融着材5による融着箇所には、融着ガンによる融着を行い、繋ぎ箇所における止水を確実なものとすることが好ましい。
【0045】さて、以上の作業を繰り返することにより、図15に示すように、補修対象の下水道管P0 の全長に及ぶ、所要数の組立式ライニングユニット4からなるライニング材40が形成される。その後、同図に示すように、そのライニング材40の両端部において補修対象の既設下水道管P0 との間に妻型枠9を取り付け、既設下水道管P0 とライニング材40との間にモルタルを充填し、修復作業を終える。
【0046】ここで、以上の工程において、止水プラグ1によって下水の流れを止めたときに、その静圧力、動圧力およびウォーターハンマーを考えた圧力に耐えるために、マンホールの壁体等にパイプサポートを設置したり、アンカーを打つなどプラグ抜け出し防止具を取付け、その防止具に止水プラグ1を固着すれば、止水プラグ1の抜け出し(流れ)を防止することができてより安全である。また、下水隔離用筒体2についても、止水プラグ1との連結だけでは安全性に欠けると判断された場合には、上記のプラグ抜け出し防止具に対して固定することが望ましい。
【0047】また、以上の実施の形態においては、止水プラグ1のアウターシール12として、互いに独立的した複数のドーナッツ状偏平ホース12a〜12eを用いることにより、万が一いずれかのホースにエア漏れが生じても水密性を損なわないように考慮しているのであるが、本発明方法に用いる止水プラグ1はそのよう構造に限定されるものではなく、例えば口径1200mm程度の1つの偏平ホースをリング状にしたものをアウターシール12として用いてもよい。更に、止水プラグ1のインナーシール13についても、上記した実施の形態に構成に限られることなく、例えば異径チューブの両端をセグメント11aに固定した構造等を採用してもよい。
【0048】更にまた、ライニング材の構造についても、上記した実施の形態において用いたものに限られることはない。すなわち、例えば剛性リング43を用いず、樹脂板41のみを用いてもよく、あるいは、1枚の樹脂板41を円筒状に巻くのではなく、短冊状等の複数の樹脂板を屈曲自在につなぎ合わせたものを用意し、それをマンホール内で円筒状に巻く構造のものを採用することができる。また、樹脂板41の材質についても高密度ポリエチレンに限るものではなく、例えば硬質塩化ビニル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン、フッ化ビニリデン樹脂等の中で適した剛性を有しているものを選ぶことができる。また、そのときには、樹脂板41の突き合わせ部を繋ぎ合わせるための筒長方向融着材42、および組立式ライニングユニット4どうしを接合するための端面融着材5の方式も変わるものであって、接着剤等を用いることもできる。
【0049】また、ライニング材40に対する裏込め工程において、上記の実施の形態で用いた妻型枠9については、一般的な方法として例示したものであり、特にこの妻型枠9を用いる方法にこだわるものではない。また、裏込め材としてモルタルに代えて樹脂モルタルやエポキシ樹脂、あるいはビニルエステル樹脂などの適当な熱硬化生樹脂を用いることもできる。
【0050】更に、以上の実施の形態は既設下水道管が断面円形の場合について述べたが、本発明はこれに限定されることなく、矩形渠(ボックスカルバート)や馬蹄形渠(アーチカルバート)にも等しく適用することができ、その場合、ライニング材並びに止水プラグおよび下水隔離用筒体の形状を下水道管の断面形状に合わせればよい。
【0051】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、内側に開閉自在の弁機能を有する止水プラグを、その外周が既設下水道管内面に対して水密となるように配置するとともに、その止水プラグの下流側の端部に下水隔離用筒体を取り付け、これらによって下水隔離装置を構成して、下水隔離用筒体の外周面と既設下水道管の内周面との間に下水の流れない領域、つまり下水に対する隔離領域を形成し、その隔離領域内で組立式のライニング材を組み立て、その複数個を軸方向に接合して順次下流側へと伸ばしていくから、開削を要することなく、かつ、水替えを行うことなく、管路補修工程を通じて下水を止めずに一時的に下水を止めるだけで、大口径下水道管を補修することができる。また、下水道内における作業は下水と隔離した領域において行うから、下水の流れに作業員が落ち込む危険性もなく、従来の工法に比して安全性が大幅に向上する。
【0052】また、ライニング材として、樹脂性のライニング表面材と、その表面材と既設下水道管の間に配置されて当該ライニング表面材と一体化される金属製の補強リング(剛性リング)を用いたものを採用すれば、外水圧および土圧に充分に耐えることのできる高強度のライニングを実現でき、補修後の下水道管の耐久性を向上させることができる。
【出願人】 【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
【識別番号】392008884
【氏名又は名称】芦森エンジニアリング株式会社
【出願日】 平成11年9月8日(1999.9.8)
【代理人】 【識別番号】100090608
【弁理士】
【氏名又は名称】河▲崎▼ 眞樹
【公開番号】 特開2001−82673(P2001−82673A)
【公開日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願番号】 特願平11−254433