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【発明の名称】 油井管用ねじ継手の製造方法
【発明者】 【氏名】前田 惇

【要約】 【課題】特願平10−193119号により提案した発明にかかる油井管用ねじ継手を現実に製造するために各部の寸法を設計することは、多大な労力を要する。

【解決手段】図2に示す油井管用ねじ継手の設計手順にしたがって、油井管用ねじ継手の各部寸法を設計し、製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成る雄ねじを有するピン部と、ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成り、前記雄ねじ部に噛合する雌ねじを有するボックス部と、前記ピン部に設けられたメタルシール部形成用のねじ無し部と、前記ボックス部に設けられて前記メタルシール部形成用のねじ無し部に当接するメタルシール部形成用のねじ無し部とにより構成されたメタルシール部と、前記ピン部の先端に設けられたトルクショルダ部形成用のねじ無し部と、前記ボックス部に設けられて前記トルクショルダ部形成用のねじ無し部に当接するトルクショルダ部形成用のねじ無し部とにより構成されたトルクショルダ部とを備える油井管用ねじ継手を製造するに際して、下記第1工程から下記第5工程までを行うことにより、各部寸法を決定することを特徴とする油井管用ねじ継手の製造方法。
第1工程:前記ピン部を有するパイプの管外径(OD)および管肉厚(t) を決定し、決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、ねじピッチ(P) を決定すること。
第2工程:決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、前記ピン部と前記ボックス部との完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲を仮決定し、仮決定した完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲に基づいて前記完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定し、決定した前記管外径(OD)および前記管肉厚(t) と、仮決定した前記完全噛合ねじ長さ(L) と、仮決定したピン部リップ外径(DB)とに基づいて、ねじテーパ(Tt)および前記完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定すること。
第3工程:決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、前記ピン部のリップ内径(D2)を決定し、決定した前記ピン部のリップ内径(D2)に基づいて前記ボックス部の内径(D1)を決定し、決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、リップ厚比(X) を仮決定し、仮決定したリップ厚比(X) に基づいて、前記ピン部のリップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)を仮決定して、仮決定した前記ピン部のリップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)に基づいて、ピン部リップ外径(DB)を仮決定するとともに、リップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) および前記リップ厚比(X) を、関数f>1.2 となるように仮決定し、前記関数fと前記ピン部のリップ内径(D2)とに基づいて、リップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) および前記リップ厚比(X) からなるピンリップ形状を決定し、決定した該ピンリップ形状に基づいて、(i)ピン部シール先端R(R2)を決定し、該ピン部シール先端R(R2)に基づいてボックス部シール先端R(R3)を決定し、(ii) ピン部シール部R(R1)を決定し、(iii)リップ部先端径(Papex) を決定し、該リップ部先端径(Papex) に基づいてボックス部シール先端径(Bapex) を決定し、(iv) ピン部ねじ切りはじめベベル部角度 (θ2 ) およびピン部内面削成角度 (θ3 ) を決定し、(iv) 前記ピン部のリップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)を決定して、該リップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)に基づいて、ボックス部ねじ平行部径(DA)を決定するとともに、ねじテーパ(Tt)および前記完全噛合ねじ長さ(L) を決定し、該ねじテーパ(Tt)および前記完全噛合ねじ長さ(L) に基づいて、ボックス部ピッチ径位置(LBt) を決定し、(v)ボックス部シール長さ(SB ) を決定すること。
第4工程:決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、ねじ噛合高さ(h) を決定し、該ねじ噛合高さ(h) に基づいてピッチ径(Dp)を決定し、該ピッチ径(Dp)に基づいて、(i)ボックス部外径(W) およびピン部ピッチ径位置(LPt) を決定し、(ii) ねじ干渉量(It)を決定し、(iii)ボックス部ショルダ深さ(LB)およびボックス部ショルダ長さ(IRes)を決定し、該ボックス部ショルダ深さ(LB)およびボックス部ショルダ長さ(IRes)に基づいてボックス部全長(NL)を決定すること。
第5工程:ロード面角度 (α) 、スタブ面角度 (β) 、スタビング面隙間 (δ) およびねじ山頂部隙間 (γ) を決定すること。
【請求項2】 ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成る雄ねじを有するピン部と、ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成り、前記雄ねじ部に噛合する雌ねじを有するボックス部と、前記ピン部に設けられたメタルシール部形成用のねじ無し部と、前記ボックス部に設けられて前記メタルシール部形成用のねじ無し部に当接するメタルシール部形成用のねじ無し部とにより構成されたメタルシール部と、前記ピン部の先端に設けられたトルクショルダ部形成用のねじ無し部と、前記ボックス部に設けられて前記トルクショルダ部形成用のねじ無し部に当接するトルクショルダ部形成用のねじ無し部とにより構成されたトルクショルダ部とを備える油井管用ねじ継手を製造するに際して、前記ピン部を有するパイプの管外径(OD)および管肉厚(t) を決定し、決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、前記ピン部と前記ボックス部との完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲を仮決定し、仮決定した完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲に基づいて前記完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定し、決定した前記管外径(OD)および前記管肉厚(t) に基づいて前記ピン部のリップ内径(D2)を決定し、決定した前記ピン部のリップ内径(D2)に基づいて前記ボックス部の内径(D1)を決定し、リップ厚比(X) を仮決定し、仮決定したリップ厚比(X) に基づいて、前記ピン部のリップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)を仮決定して、決定した前記管外径(OD)および前記管肉厚(t) に基づいてねじ噛合高さ(h) を仮決定し、決定した管外径(OD)と、仮決定した前記ピン部の前記リップ外径(DB)および前記完全噛合ねじ長さ(L) とに基づいて、ねじテーパ(Tt)および前記完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定し、仮決定した前記ピン部のリップ厚(lt)および前記ピン部の前記リップ外径(DB)に基づいて、リップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) および前記リップ厚比(X) を、関数f>1.2 となるように仮決定し、仮決定したリップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) およびリップ厚比(X) に基づいて、ピンリップ形状を決定して、ピン部ねじ切りはじめベベル部角度 (θ2 ) およびピン部内面削成角度 (θ3 ) を決定するとともに、前記ピン部のリップ厚(lt)および前記ピン部リップ外径(DB)を決定し、さらに、リップ部先端径(Papex) 、ピン部シール部R(R1)およびピン部シール先端R(R2)を決定し、決定した前記ピン部のリップ厚(lt)および前記ピン部リップ外径(DB)に基づいて、ネジテーパ(Tt)および完全噛合ねじ長さ(L) を決定するとともに、ボックス部ねじ平行部径(DA)を決定し、また、ロード面角度 (α) 、スタブ面角度 (β)、スタビング面隙間 (δ) およびねじ山頂部隙間 (γ) を決定し、決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいてねじピッチ(P) を決定し、ピン部シール長さ(Sp)およびピン部各部寸法に基づいてボックス部シール長さ(SB ) を決定し、決定した管外径(OD)、管肉厚(t) およびねじ噛合高さ(h) よりピッチ径(Dp)を決定し、ボックス部外径(W) およびピン部ピッチ径位置(LPt) を決定し、決定したピッチ径(Dp)に基づいてねじ干渉量(It)を決定し、ボックス部ショルダ深さ(LB)を決定し、ボックス部ショルダ長さ(IRes)を決定し、決定したボックス部ショルダ長さ(IRes)とボックス部ショルダ深さ(LB)とに基づいてボックス部全長(NL)を決定し、完全噛合ねじ長さ(L) およびピン部シールリップ長さ(l) によりボックス部ピッチ径位置(LBt) を決定するとともに、決定したリップ部先端径(Papex) に基づいてボックス部シール先端径(Bapex)を決定し、決定したピン部シール先端R(R2)よりも小さくなるようにボックス部シール先端R(R3)を決定することにより各部寸法を決定することを特徴とする油井管用ねじ継手の製造方法。
【請求項3】 前記ピン部と前記ボックス部との完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲は、{管肉厚(t)/管外径(OD)}が0.096 以上の場合には3以上、{管肉厚(t)/管外径(OD)}が0.084 以上の場合には4以上、{管肉厚(t)/管外径(OD)}が0.052 以上の場合には5以上、{管肉厚(t)/管外径(OD)}が0.052 未満の場合には5以上であって、前記ピン部のリップ内径(D2)≦管内径(lD)として設定される請求項1または請求項2に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【請求項4】 前記ピン部のリップ厚(lt)は、下記(1) 式により求められる請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数1】

【請求項5】 前記ピン部のリップ外径(DB)は、下記(2) 式により求められる請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数2】

【請求項6】 前記ねじ噛合高さ(h) は、パイプの管外径(OD)、若しくは、パイプの管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて設定される請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【請求項7】 前記ねじテーパ(Tt)は、下記(3) 式により求められる請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数3】

ただし、符号Cは、リップ根元位置におけるねじ底とリップ外径との間の許容度を示す定数であり、符号εはリップ根元位置におけるネジ頂部とネジベベル頂部との半径差である。
【請求項8】 前記完全噛合ねじ長さ(L) は、下記(4) 式により求められる請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数4】

【請求項9】 前記関数fは、下記(5) 式により求められる請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数5】

ただし、5°≦θ1 ≦20°、0.52≦X≦0.75、6≦l≦30、3≦Sp≦10、1≦Ts≦16である。
【請求項10】 前記Papex は、下記(6) 式により求められる請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数6】

【請求項11】 前記ピン部シールR(R1)は、下記(7) 式または(7')式により求められる請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。ただし、(7) 式はピンリップ部のシール部以外が平行である場合、(7')式はシール部の隣接部分がテーパ(TD ) 付きの場合を示す。
【数7】

【請求項12】 前記スタブ面角度βは、下記(8) 式により求められる請求項1から請求項11までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数8】

ただし、5>α>−20℃、γ:極力小さい値、25°<β<45°、δ:コストおよび性能を考慮し、加工者のできる範囲で極力小さい正の値【請求項13】 前記ねじピッチ(P) は、パイプの管外径(OD)、若しくは、パイプの管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて設定される請求項1から請求項12までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【請求項14】 前記ボックス部シール長さ(SB ) は、SB >SP の場合には、SB >SP +2.0 であって、かつ下記(9) 式により求められ、SB ≦SP の場合の場合には、下記(10)により求められる請求項1から請求項13までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数9】

【数10】

ただし、符号Isはシール干渉量を示し、符号 TD はピンリップテーパ部のテーパを示し、符号θ5 はボックスシール部入口角度を示す。
【請求項15】 前記ピッチ径Dpは、下記(11)式により求められる請求項1から請求項14までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数11】

ただし、符号εはパイプの管外径(OD)に基づいて設定される定数である。
【請求項16】 ボックス部外径W は、ボックス危険断面積 (ABC) がパイプ標準断面積 (APC) の所定の割合よりも大きくなるように設定される請求項1から請求項15までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【請求項17】 前記ねじ干渉量Itは、下記(12)式または(13)式により求められる請求項1から請求項16までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。ただし、(12)式または(13)式によりねじ全長にわたり計算した値のうち、最小の値をねじ干渉量Itの上限とし、その上限の5%をねじ干渉量Itの下限とする。
【数12】

ただし、符号δy は材料降伏強度(kgf/mm2) を示し、符号Eは継手材料のヤング率(kgf/mm2) を示し、符号Dはボックス外径(mm)を示し、符号dはピン内径(mm)を示し、符号dpはねじのピッチ円直径(mm)を示し、符号La2 は(dp2−d2) を示し、さらに符号Lb2 は (D2−dp2)を示す。
【請求項18】 前記ボックス部ショルダ深さLBは、下記(14)式により求められる請求項1から請求項17までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数14】

ただし、符号θ4 は、ボックス部端面内ベベル角度を示す。
【請求項19】 前記ボックス部ピッチ径位置LBt は、下記(15)式により求められる請求項1から請求項18までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数15】

【請求項20】 前記ボックス部シール先端径Bapex は、下記(16)式により求められる請求項1から請求項19までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数16】

ただし、符号Isは、シール干渉量を示す。
【請求項21】 前記ピン部ピッチ径位置LPt は、下記(17)式により求められる請求項1から請求項20までのいずれか1項に記載された油井管用ねじ継手の製造方法。
【数17】

【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、石油、天然ガス、および蒸気や熱水を探査・生産するための油井、ガス井、地熱井および産業廃棄物やガス、水等を地中に圧入する圧入井等を構成するための油井管用のねじ継手の製造方法に関するものであり、様々な外力に対し管本体と同等以上の耐力を有するねじ継手の最適な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】この種の油井管用の継手として、従来よりねじ継手が用いられている。現在最も多く用いられているのは、API 規格 (米国石油協会規格) のラウンドねじ継手やバトレスねじ継手 (以下「API 継手」という。) である。近年、油井、ガス井等の深井戸化や井戸内圧力、温度さらには腐食環境等の苛酷化が進行するに伴って、管の自重による破断に対する強度が高く、かつ気密性が優れた継手が求められてきた。
【0003】図1(a) は、その1例として、両端に二つのボックス部21、21を持つカップリング20と、それぞれの端部にピン部11、11を持つ管10、10とを接続するカップリング方式の油井管用ねじ継手25を示す管軸を含む断面図 (以下、単に「断面図」という。) である。また、図1(b) はカップリング20のボックス部21の拡大断面図であり、図1(c) は管10のピン部11の拡大断面図である。
【0004】図1(a) に示す如く、油井管としての鋼管10、10はカップリング20によりねじ接続されており、カップリング20の両端にはボックス部21、21が、そして管10、10の先端にはピン部11、11が設けられている。
【0005】図1(b) に示すように、ボックス部21の内周面には雌ねじ22が刻設されている。また、図1(c) に示すように、ピン部11の外周面には雄ねじ12が刻設されている。
【0006】このように、カップリング方式のねじ継手25は、管10の端部に設けた雄ねじ12を有するピン部11と、カップリング20の内部に設けた雌ねじ22を有するボックス部21とを互いにねじ込むことによって、2つの管10、10を接続する。
【0007】しかし、上述したように、管10の自重によって発生する引張応力に対し強度が高く、かつ気密性が高いねじ継手25の要求に対しては、例えばAPI 継手のような、単に雄ねじ12および雌ねじ22から成るねじ要素のみで構成された継手では、充分ではなかった。このため、図1(b) および図1(c) にそれぞれ示すように、ボックス部21およびピン部11それぞれに、メタルシール部13、23やトルクショルダ部14、24をともに備えるねじ継手25が用いられるようになってきた。
【0008】メタルシール部13、23は、管10の径方向の干渉量つまり、ピン部11のメタルシール部13の外径がボックス部21のメタルシール部23の内径より大であり (この差を「干渉量」という。) 、ピン部11をボックス部21にねじ込むと、この干渉量によって両メタルシール部13、23の接触面に面圧が発生し、この面圧により良好な気密性の保持が期待される。
【0009】一方、トルクショルダ部14、24は、ピン部11およびボックス部21のこの部分を互いに適切に制御した圧力で突き当てることにより、過度の塑性変形が生じるような高い接触面圧がメタルシール部13、23に発生しないようにかつ、十分なねじ込み量を確保してねじ継手25の締結を確実にするためである。
【0010】また、メタルシール部13、23のみならずねじ部12、22においても、テーパネジの場合にはその締結を確実にして容易に緩まないようにするため、メタルシール部13、23と同様の干渉量を有するものが多くあり、トルクショルダ部14、24の規制によって、このねじ部12、22の干渉量も安全域に制限され、ボックス部21に過大な応力が発生することが抑制される。
【0011】このため、図1(a) 〜図1(c) に示すねじ継手25は、腐食環境に用いるのに適した構造である。なお、トルクショルダ部14、24の垂直面に対する傾斜角度θ1はショルダー角度という。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年、井戸深さはより大きくなり、かつ開発環境や井戸環境も悪化するとともに、一方では油井やガス井の開発技術も発展し、近年では下記■〜■のような過酷な要求が継手に求められるようになってきた。
【0013】■接続された管の自重による軸方向の引張力に耐えられること■内部流体による内圧、あるいは外部流体による外圧に耐えられること■耐食材料など使用管材料も高価なものになる傾向から、何度も繰り返し使用が可能であること■井戸の開発過程あるいは井戸の操業中に、管に負荷される圧縮力やねじり力に対して充分な耐力を有すること■以上のような負荷を繰り返し受けても、内外圧シールに耐えること。
【0014】このような要求に応えるため、従来より、図1(a) 〜図1(c) に示すねじ継手25の締結状態を改善する発明が多数なされている。本出願人も、先に特願平10−193119号を提案した。
【0015】この提案は、下記4項目(イ)〜(ニ)、若しくは(イ)〜(ハ)および(ホ)を満足することにより、ねじ継手に加わると想定される全ての荷重について、管本体と同等以上の耐力および抵抗力を有することができるねじ継手を提供でき、これにより、Vom Mises の相当応力楕円で表された内圧と軸力の全領域とAPI5C3の管体コラプスの式で表された外圧と軸力の全領域を満足すると共に軸力の変動下、特に管体強度の95%という高い圧縮力の負荷を受けた後でも気密性を保ち、さらに引張・圧縮の軸力変動下でも緩みにくいという緩みトルクに対する高い抵抗力を有する油井管用ねじ継手を提供するものである。
【0016】() ねじの荷重面フランク角が−20°以上0°未満、挿入面フランク角が25°を越え45°以下で、さらに雄ねじと雌ねじのそれぞれのピッチ内直径の差で定義されるねじ干渉量が正の値を有し、継手の締結途中および締結完了時に雄ねじと雌ねじの荷重面および挿入面が相互に共に接触すると共に、ねじの頂面と底面とに共に隙間を設けること。
【0017】() 前記ねじ干渉量として下記(18)または(19)式を用いてねじ部全長について算出した値のうち、最も小さい値の2倍をその上限値とし、該上限値の5%をその下限とすること。
【0018】
【数18】

【0019】ここで、δ12 :半径分見掛けねじ干渉量(mm)、σy :継手材料の降伏強度(kgf/mm2)E:継手材料のヤング率(kgf/mm2) 、D:ボックス外径(mm)d:ピン内径(mm)、 dp:ねじのピッチ円直径(mm)La2:(dp2−d2) Lb2: (D2−dp2)但し、ねじ干渉量はメタルシール部の干渉量より小さい。
【0020】() ピン部の雄ねじとボックス部の雌ねじとの完全ねじの噛み合い長さが締結時に管本体肉厚の(a) 3倍以上:管肉厚対管外径比が 0.096以上のとき、(b) 4倍以上: 〃 0.084以上、0.096 未満のとき、(c) 5倍以上:上記(a) 、(b) 以外のとき、であること。ただし、管肉厚対管外径比0.052 以下のものはピン部のシールリップ部内径を可能な範囲で管内径以下とする。
【0021】() トルクショルダ部のショルダ角度をθ:5〜20°とし、かつシールリップ部のリップ部の根元厚さ(lt)と管肉厚(Wt)との間の下記式で定義したリップ厚比(X) を0.52以上とする。
【0022】(lt/DB)/(Wt/OD) ≧0.52ここで、DB:リップ部の根元の外径 OD:管外径但し、Wt/OD が小さく且つWtが薄肉の場合、管端スエージ等の前加工により上記で定めたリッブ率が≧0.52を満足させる。
【0023】() ピン部先端のねじ無し部、およびボックス部奥のねじ無し部の形状を決める各因子、リップ長さ:We(mm): シール長さ:S(mm)、シールテーパ:Ts、ショルダ角度:θ( °) 、リップ厚比(X) がそれぞれ下記の範囲にあり、かつこれ等による一次多項式である関数fがf>1.2 を満足する。
【0024】
6mm≦We(mm)≦30mm、 3mm≦S(mm)≦10mm1/16≦Ts≦1、 0°≦θ (°) ≦20°、 0.25≦X≦0.75ここでf=−3.26×10-1+3.19×10-2 (1/°) ×θ (°)+1.43×X−4.67×10-4(1/mm)×We(mm)+8.39×10-2(1/mm)×S(mm)−6.22×10-1×TsX={ (ピン側リップ部の根元の肉厚) / (リップ部の根元の外径) }/{ (管本体肉厚) / (管本体外径) }
本出願人が特願平10−193119号により提案した発明により、確かに所望の性能を有する油井管用ねじ継手を提供することができる。しかしながら、この提案にかかる油井管用ねじ継手を現実に製造するために各部の寸法を設計することは、極めて多大な労力を要してしまう。
【0025】ここに、本発明の目的は、油井管用のねじ継手、具体的には、様々な外力に対し管本体と同等以上の耐力を有するねじ継手を、当業者が容易に製造することができる方法を具体的に提供することである。
【0026】また、本発明の目的は、特願平10−193119号により提案したねじ継手、具体的には、(i) 引張力や圧縮力、さらには内圧や外圧といった油井管用ねじ継手が受けるあらゆる負荷条件 (曲げはその曲率の外側で引張力が、内側で圧縮力が生じており、断面形状が変形しない限りにおいて、一義的に軸力の負荷と同等として処理できる。) について、内圧領域関しては、Von Mises 相当応力100 %の楕円の内側全てを含み、外圧領域に関してはAPI5C3にて規定のAPI コラプス圧 (軸力考慮)100%内、またはVon Mises 相当応力100 %の楕円の内側のうち、小さい方の領域を全てを含む複合荷重条件にて、耐内・外圧リーク性を保ち、かつ継手強度も保ち得ることができ、かつ(ii)Von Mises 相当応力100 %の楕円および、API5C3コラプス値楕円の内側にどのように荷重変動が繰り返し生じてもその耐リーク性および、継手強度を充分に保持でき、さらには、何度も繰り返して再使用可能なねじ継手を、当業者が容易に設計して製造する方法を、提供することである。
【0027】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を解決するために、特願平10−193119号により提案したねじ継手を分析および再構築することにより、このねじ継手の設計手順を構築して、本発明を完成した。この設計手順にしたがって各部寸法を決定することにより、当業者が特願平10−193119号により提案したねじ継手を容易に設計することができる。
【0028】ここに、本発明は、後述する図2に示すように、ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成る雄ねじを有するピン部と、ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成り、前記雄ねじ部に噛合する雌ねじを有するボックス部と、前記ピン部に設けられたメタルシール部形成用のねじ無し部と、前記ボックス部に設けられて前記メタルシール部形成用のねじ無し部に当接するメタルシール部形成用のねじ無し部とにより構成されたメタルシール部と、前記ピン部の先端に設けられたトルクショルダ部形成用のねじ無し部と、前記ボックス部に設けられて前記トルクショルダ部形成用のねじ無し部に当接するトルクショルダ部形成用のねじ無し部とにより構成されたトルクショルダ部とを備える油井管用ねじ継手を製造するに際して、前記ピン部を有するパイプの管外径(OD)および管肉厚(t) を決定し、決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、前記ピン部と前記ボックス部との完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲を仮決定し、仮決定した完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲に基づいて前記完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定し、前記ピン部のリップ内径(D2)を決定し、決定した前記ピン部のリップ内径(D2)に基づいて前記ボックス部の内径(D1)を決定し、リップ厚比(X) を仮決定し、仮決定したリップ厚比(X) に基づいて、前記ピン部のリップ厚(lt)および前記ボックス部の外径(DB)を仮決定して、ねじ噛合高さ(h) を仮決定し、決定した管外径(OD)と、仮決定した前記ボックス部の外径(DB)および前記完全噛合ねじ長さ(L) とに基づいて、ねじテーパ(Tt)および前記完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定し、仮決定した前記ピン部のリップ厚(lt)および前記ボックス部の外径(DB)に基づいて、リップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) および前記リップ厚比(X) を、関数f>1.2 となるように仮決定し、仮決定したリップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) およびリップ厚比(X) に基づいて、ピンリップ形状を決定して、ピン部ねじ切りはじめベベル部角度 (θ2 ) およびピン部内面削成角度 (θ3 ) を決定するとともに、前記ピン部のリップ厚(lt)および前記ピン部リップ外径(DB)を決定し、さらに、リップ部先端径(Papex) 、ピン部シール平行部R(R1)およびピン部シール先端R(R2)を決定し、決定した前記ピン部のリップ厚(lt)および前記ピン部リップ根元外径(DB)に基づいて、ネジテーパ(Tt)および完全噛合ねじ長さ(L) を決定するとともに、ボックス部ねじ平行部径(DA)を決定し、ロード面角度 (α) 、スタブ面角度 (β) 、スタビング面隙間 (δ) およびねじ山頂部隙間 (γ) を決定し、ねじピッチ(P)を決定し、ねじ形状を決定し、ボックス部シール長さ(SB ) を決定し、ピッチ径(Dp)を決定し、ボックス部外径(W) およびピン部ピッチ径位置(LPt) を決定し、決定したピッチ径(Dp)に基づいてねじ干渉量(It)を決定し、ボックス部ショルダ深さ(LB)を決定し、決定した管外径(OD)と管肉厚(t) に基づいてボックス部ショルダ長さ(IRes)を決定し、決定したボックス部ショルダ長さ(IRes)とショルダ深さ(LB)に基づいてボックス部全長(NL)を決定し、ボックス部ピッチ径位置(LBt)を決定するとともに、決定したリップ部先端径(Papex) に基づいてボックス部シール先端径(Bapex)を決定し、決定したボックス部シール先端径(Bapex) に基づいて、決定したピン部シール先端R(R2)よりも小さくなるようにボックス部シール先端R(R3)を決定することによって、各部寸法を決定することを特徴とする油井管用ねじ継手の製造方法である。
【0029】また、本発明は、別の観点からは、図3に示すように、ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成る雄ねじを有するピン部と、ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成り、前記雄ねじ部に噛合する雌ねじを有するボックス部と、前記ピン部に設けられたメタルシール部形成用のねじ無し部と、前記ボックス部に設けられて前記メタルシール部形成用のねじ無し部に当接するメタルシール部形成用のねじ無し部とにより構成されたメタルシール部と、前記ピン部の先端に設けられたトルクショルダ部形成用のねじ無し部と、前記ボックス部に設けられて前記トルクショルダ部形成用のねじ無し部に当接するトルクショルダ部形成用のねじ無し部とにより構成されたトルクショルダ部とを備える油井管用ねじ継手を製造するに際して、下記第1工程から下記第5工程までを行うことにより、各部寸法を決定することを特徴とする油井管用ねじ継手の製造方法である。
【0030】第1工程A:前記ピン部を有するパイプの管外径(OD)および管肉厚(t) を決定し、決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、ねじピッチ(P) を決定すること。
【0031】第2工程B:決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、前記ピン部と前記ボックス部との完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲を仮決定し、仮決定した完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲に基づいて前記完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定し、決定した前記管外径(OD)および前記管肉厚(t) と、仮決定した前記完全噛合ねじ長さ(L) と、仮決定したピン部リップ外径(DB)とに基づいて、ねじテーパ(Tt)および前記完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定すること。
【0032】第3工程C:決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、前記ピン部のリップ内径(D2)を決定し、決定した前記ピン部のリップ内径(D2)に基づいて前記ボックス部の内径(D1)を決定し、決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、リップ厚比(X) を仮決定し、仮決定したリップ厚比(X) に基づいて、前記ピン部のリップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)を仮決定して、仮決定した前記ピン部のリップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)に基づいて、ピン部リップ外径(DB)を仮決定するとともに、リップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) および前記リップ厚比(X) を、関数f>1.2 となるように仮決定し、前記関数fと前記ピン部のリップ内径(D2)とに基づいて、リップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) および前記リップ厚比(X) からなるピンリップ形状を決定し、決定した該ピンリップ形状に基づいて、(i)ピン部シール先端R(R2)を決定し、該ピン部シール先端R(R2)に基づいてボックス部シール先端R(R3)を決定し、(ii) ピン部シール部R(R1)を決定し、(iii)リップ部先端径(Papex) を決定し、該リップ部先端径(Papex) に基づいてボックス部シール先端径(Bapex) を決定し、(iv) ピン部ねじ切りはじめベベル部角度 (θ2 ) およびピン部内面削成角度 (θ3 ) を決定し、(iv) 前記ピン部のリップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)を決定して、該リップ厚(lt)およびピン部リップ外径(DB)に基づいて、ボックス部ねじ平行部径(DA)を決定するとともに、ねじテーパ(Tt)および前記完全噛合ねじ長さ(L) を決定し、該ねじテーパ(Tt)および前記完全噛合ねじ長さ(L) に基づいて、ボックス部ピッチ径位置(LBt) を決定し、(v)ボックス部シール長さ(SB ) を決定すること。
【0033】第4工程D:決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、ねじ噛合高さ(h) を決定し、該ねじ噛合高さ(h) に基づいてピッチ径(Dp)を決定し、該ピッチ径(Dp)に基づいて、(i)ボックス部外径(W) およびピン部ピッチ径位置(LPt) を決定し、(ii) ねじ干渉量(It)を決定し、(iii)ボックス部ショルダ深さ(LB)およびボックス部ショルダ長さ(IRes)を決定し、該ボックス部ショルダ深さ(LB)およびボックス部ショルダ長さ(IRes)に基づいてボックス部全長(NL)を決定すること。
【0034】第5工程E:ロード面角度 (α) 、スタブ面角度 (β) 、スタビング面隙間 (δ) およびねじ山頂部隙間 (γ) を決定すること。
【0035】
【発明の実施の形態】以下、本発明にかかる油井管用ねじ継手の製造方法の実施の形態を、添付図面を参照しながら詳細に説明する。図2は、本実施形態における油井管用ねじ継手の設計手順の一例を示すフロー図である。
【0036】本実施形態における油井管用ねじ継手は、特願平10−193119号により提案されたねじ継手、すなわち、(i) ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成る雄ねじを有するピン部と、ねじ形状が概ね台形状のテーパねじから成り、雄ねじ部に噛合する雌ねじを有するボックス部と、(ii)ピン部に設けられたメタルシール部形成用のねじ無し部と、ボックス部に設けられてメタルシール部形成用のねじ無し部に当接するメタルシール部形成用のねじ無し部とにより構成されたメタルシール部と、(iii) ピン部の先端に設けられたトルクショルダ部形成用のねじ無し部と、ボックス部に設けられてトルクショルダ部形成用のねじ無し部に当接するトルクショルダ部形成用のねじ無し部とにより構成されたトルクショルダ部とを備える油井管用ねじ継手である。
【0037】本実施形態では、このねじ継手を設計するに際し、以下のステップ (以下、単に「S」と記す。) 1〜S29にしたがう。
【0038】S1では、ピン部を有するパイプの管外径(OD)および管肉厚(t) を決定する。管外径(OD)および管肉厚(t) は、このねじ継手を必要とする管本体の外径とその肉厚とにより、必要とするピン部外径とそれに対応する、対象とされる管肉厚により決定される。
【0039】S2では、決定した管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、ピン部とボックス部との完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲を仮決定する。ピン部とボックス部との完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲は、例えば、{管肉厚(t)/管外径(OD)}が0.096 以上の場合には3以上、{管肉厚(t)/管外径(OD)}が0.084 以上の場合には4以上、{管肉厚(t)/管外径(OD)}が0.052 以上の場合には5以上、{管肉厚(t)/管外径(OD)}が0.052 未満の場合には5以上であって、ピン部のリップ内径(D2)≦管内径(lD)として設定される。
【0040】S3では、S2において決定した完全噛合ねじ長さ(L) の許容範囲に基づいて、完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定する。S4では、ピン部のリップ内径(D2)を決定する。この決定は、加工者がその加工能力により判断することにより、行われる。
【0041】S5では、S4において決定したリップ内径(D2)に基づいて、ボックス部の内径(D1)を、リップ内径(D2)+αとして求める。ここで、符号αはシール干渉量に関係する設定値であって、設計者が独自に決定する。
【0042】S6では、リップ厚比(X) を仮決定する。S7では、S6において仮決定したリップ厚比(X=t/OD) に基づいて、ピン部のリップ厚(lt)およびリップ部の外径(DB)を仮決定する。具体的には、ピン部のリップ厚(lt)は、下記(20)式により求められる。
【0043】
【数20】

【0044】また、ピン部のリップ外径(DB)は、下記(21)式により求められる。
【0045】
【数21】

【0046】S8では、ねじ噛合高さ(h) を仮決定する。このねじ噛合高さ(h) は、パイプの管外径(OD)、若しくは、パイプの管外径(OD)および管肉厚(t) に基づいて、定数として設計者が独自に設定する。例えば、OD≦4−1/2'' の場合にはh=1.016 、4−1/2'' <OD≦7−3/4'' の場合にはh=1.575 、7−3/4'' <OD≦14''の場合にはh=1.982 と設定する。
【0047】S9では、決定した管外径(OD)と、仮決定した前記ピンリップ根元位置であるピンリップ外径(DB)および前記完全噛合ねじ長さ(L) とに基づいて、ねじテーパ(Tt)を仮決定する。ねじテーパ(Tt)は、例えば、下記(22)式により求められる。
【0048】
【数22】

【0049】ただし、符号Cは、リップ根元位置におけるねじ底とリップ外周との間の許容度を示す定数であり、設計者が決定する。また、符号εはリップ根元位置におけるねじ頂部径と、ネジベベル部頂部との差 (半径差) である。
【0050】S10では、完全噛合ねじ長さ(L) を仮決定する。具体的には、下記(23)式により求められ、S2における条件を満足するようにする。
【0051】
【数23】

【0052】S11およびS12では、仮決定したピン部のリップ厚(lt)およびピンリップ根元外径であるピンリップ外径(DB)に基づいて、リップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) およびリップ厚比(X) を、関数f>1.2 となるように仮決定する。具体的には、関数fは下記(24)式により求められる。
【0053】
【数24】

【0054】ただし、5°≦θ1 ≦20°、0.52≦X≦0.75、6≦l≦30、3≦Sp≦10、1≦Ts≦16である。
【0055】S13、S14およびS15では、S12で仮決定したリップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) およびリップ厚比(X) に基づいて、ピンリップ形状を決定して、ピン部ねじ切りはじめベベル部角度 (θ2 ) およびピン部内面削成角度 (θ3 ) を決定する。
【0056】S16では、S12で仮決定したリップ長さ(l) 、ピン部シール長さ(Sp)、シールテーパ(Ts)、ショルダー角度 (θ1 ) およびリップ厚比(X) に基づいて、ピン部のリップ厚さ(lt)およびピン部リップ (根元) 外径(DB)を決定する。
【0057】S17では、S16において決定したピン部のリップ厚さ(lt)およびピン部リップ(根元) 外径(DB)に基づいて、ネジテーパ(Tt)および完全噛合ねじ長さ(L) を決定する。
【0058】S18では、S16において決定したピン部のリップ厚さ(lt)およびピン部リップ外径(DB)に基づいて、ボックス部ねじ平行部径(DA)を決定する。具体的には、ボックス部ねじ平行部径DAは、下記(25)式により求められる。
【0059】
【数25】

【0060】ただし、符号dはピン平行部とボックス部ねじ平行部DAとの差を示す定数であり、設計者により、例えばd=0.2mm として決定される。S19では、ロード面角度 (α) 、スタブ面角度 (β) 、スタビング面隙間 (δ) およびねじ山頂部隙間 (γ) を決定する。具体的には、スタブ面角度βは下記(26)式により求められる。
【0061】
【数26】

【0062】ただし、0>α>−20℃、γ:極力小さい値、25<β<45、δ:コストおよび性能を考慮し、加工者のできる範囲で極力小さい正の値である。S20では、ねじピッチ(P) を決定する。具体的には、ねじピッチ(P) は、パイプの管外圧(OD)、若しくは、パイプの管外圧(OD)および管肉厚(t) に基づいて定数として設定される。例えば、ODが2''以上2−7/8'' 未満 の場合はP=8であり、2−7/8'' 以上4−1/2'' 未満の場合はP=6であり、4−1/2'' 以上8−5/8'' 未満の場合はP=5であり、8−5/8'' 以上14''以下の場合はP=4である。
【0063】S21では、ボックス部シール長さ(SB ) を決定する。具体的には、ボックス部シール長さ(SB ) は、SB >SP の場合には、SB >SP +2.0 であって、かつ下記(27)式により求められ、SB ≦SP の場合の場合には、下記(28)式により求められる。
【0064】
【数27】

【0065】
【数28】

【0066】ただし、符号Isはシール干渉量を示し、符号T D はピンリップ部のテーパ (シール部ではない) を示し、符号θ5 はボックスシール部入口角度を示す。
【0067】S22では、ピッチ径(Dp)を決定する。具体的には、ピッチ径Dpは、下記(29)式により求められる。
【0068】
【数29】

【0069】ただし、符号εはAPI に準ずる値であり、例えば、OD≦4−1/2'' の場合には0.009'' であり、OD≦14''の場合には0.016'' である。S23では、ボックス部外径(W) を決定する。ボックス部外径W は、ボックス危険断面積 (ABC) がパイプ標準断面積 (APC) よりも大きくなるように設定される。なお、ボックス危険断面積 (ABC) の定め方は、どこを危険断面にするかとの考え方により異なるため、各設計者により決定される。S24では、ピン部ピッチ径位置(LPt) を決定する。具体的には、ピン部ピッチ径位置LPt は、下記(30)式により求められる。
【0070】
【数30】

【0071】S25では、ねじ干渉量(It)を決定する。具体的には、ねじ干渉量Itは、下記(31)式または(32)式により求められる。
【0072】
【数31】

【0073】ただし、符号δy は材料降伏強度(kgf/mm2) を示し、符号Eは継手材料のヤング率(kgf/mm2) を示し、符号Dはボックス外径(mm)を示し、符号dはピン内径(mm)を示し、符号dpはねじのピッチ円直径(mm)を示し、符号La2 は(dp2−d2) を示し、さらに符号Lb2(D2−dp2)を示す。S26では、ボックス部ショルダ深さ(LB)を決定する。具体的には、ボックス部ショルダ深さLBは、下記(33)式により求められる。
【0074】
【数33】

【0075】ただし、符号θ4 は、ボックス部端面内ベベル角度を示す。S27では、ボックス部ショルダ長さ(IRes)を決定する。S28では、決定したボックス部ショルダ長さ(IRes)に基づいてボックス部全長(NL)を決定する。具体的には、ボックス部全長NLは、下記(34)式により求められる。
【0076】
【数34】

【0077】S29では、ボックス部ピッチ径位置(LBt) を決定する。具体的には、ボックス部ピッチ径位置(LBt) は、下記(35)式により求められる。
【0078】
【数35】

【0079】一方、S30では、リップ部先端径(Papex) 、ピン部シール平行部R(R1)およびピン部シール先端R(R2)を決定する。具体的には、リップ部先端径(Papex) は下記(36)式または(36') 式により求められる。
【0080】
【数36】

【0081】ただし、(36)式はピンシールリップ部のシール部以外が平行である場合 (ピンシール平行部を有する場合) に適用され、(36') 式はピンシールリップ部のシール部以外にテーパを有する場合 (ピンシール平行部の代わりにテーパ部を有する場合、あるいは平行部とテーパ部とをともに有する場合に適用される。
【0082】また、ピン部シール部R(R1)は、下記(37)式または(37') 式により求められる。
【0083】
【数37】

【0084】さらに、ピン部シール先端R(R2)は、設計者のより独自に設定される。S31では、決定したリップ部先端径(Papex) 、ピン部シール平行部R(R1)およびピン部シール先端R(R2)に基づいてボックス部シール先端径(Bapex) を決定す具体的には、ボックス部シール先端径Bapex は、下記(38)式により求められる。
【0085】
【数38】

【0086】ただし、符号Isは、シール干渉量を示す。S32では、決定したピン部シール先端R(R2)よりも小さくなるようにボックス部シール先端R(R3)を決定する。S33では、必要に応じて、ボックス部シール元R(R4)を決定する。
【0087】本実施形態では、このようにして、ねじ継手の各部寸法を決定する。この本実施形態の手順にしたがって、ねじ継手の各部寸法を設定すれば、特願平10−193119号により提案した油井管用ねじ継手を、当業者が簡単かつ確実に設計して製造することができる。
【0088】
【実施例】さらに、本発明を実施例を参照しながら説明する。上述した実施の形態で説明した図2に示す油井管用ねじ継手の設計手順にしたがって、油井管用ねじ継手を設計した。
【0089】このようにして設計された油井管用ねじ継手のボックス部と、メタルシール部と、トルクショルダ部とを、図4に示す。同図において、L=5、a=0.3 、c=0.19、h=1.475 、θ1 =15°、X=0.57、l=11.0、Sp=6、Ts=4、α=−3°、γ=0.1 、β=35°、δ=0.06、P=5、d=0.3 、R2=1.0 、l Res =50.8、Is=0.60、R3=0.9 、R4=4.0であった。
【0090】この油井管用ねじ継手は、■接続された管の自重による軸方向の引張力に耐えられること、■内部流体による内圧、あるいは外部流体による外圧に耐えられること、■何度も繰り返し使用が可能であること、■井戸の開発過程あるいは井戸の操業中に、管に負荷される圧縮力やねじり力に対して充分な耐力を有すること、および■以上のような負荷を繰り返し受けても、内外圧シールに耐えることの諸特性を有し、特願平10−193119号において提示した要件を全て備えていることがわかった。
【0091】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明により、油井管用のねじ継手、具体的には、様々な外力に対し管本体と同等以上の耐力を有するねじ継手を、当業者が容易に製造することができる方法を具体的に提供することができた。
【0092】また、より具体的には、本発明により、特願平10−193119号により提案したねじ継手、具体的には、(i) 引張力や圧縮力、さらには内圧や外圧といった油井管用ねじ継手が受けるあらゆる負荷条件 (曲げはその曲率の外側で引張力が、内側で圧縮力が生じており、断面形状が変形しない限りにおいて、一義的に軸力の負荷と同等として処理できる。) について、内圧領域関しては、Von Mises 相当応力100 %の楕円の内側全てを含み、外圧領域に関してはAPI5C3にて規定のAPI コラプス圧 (軸力考慮)100%内、またはVon Mises 相当応力100 %の楕円の内側のうち、小さい方の領域を全てを含む複合荷重条件にて、耐内・外圧リーク性を保ち、かつ継手強度も保ち得ることができ、かつ(ii)Von Mises 相当応力100 %の楕円および、API5C3コラプス値楕円の内側にどのように荷重変動が繰り返し生じてもその耐リーク性および、継手強度を充分に保持でき、さらには、何度も繰り返して再使用可能なねじ継手を、当業者が容易に設計して製造する方法を、提供することができた。かかる効果を有する本発明の意義は、極めて著しい。
【出願人】 【識別番号】000002118
【氏名又は名称】住友金属工業株式会社
【出願日】 平成11年9月17日(1999.9.17)
【代理人】 【識別番号】100081352
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 章一
【公開番号】 特開2001−82644(P2001−82644A)
【公開日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願番号】 特願平11−264181