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【発明の名称】 合成樹脂製継手及び合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法
【発明者】 【氏名】伊藤 良輔

【氏名】小口 貴士

【氏名】原田 浩次

【要約】 【課題】接合部に摩擦によって生じる、所謂ビードと称される粉末状樹脂、或いは溶融流出樹脂が生じる恐れがなく、流路内面に段差が生じる恐れのない合成樹脂製継手及び合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法を提供する。

【解決手段】両端に受口部11を有する合成樹脂製継手であって、合成樹脂製管状部材2、2を双方の受口部11、11に挿入したときの合成樹脂製管状部材2、2の先端部同士の突き合わせ面近傍の内面に、凹部12が周方向に沿って設けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】両端に受口部を有する合成樹脂製継手であって、合成樹脂製管状部材を2個の受口部に挿入したときの合成樹脂製管状部材の先端部同士の突き合わせ面近傍の内面に、凹部が周方向に沿って設けられていることを特徴とする合成樹脂製継手。
【請求項2】請求項1記載の合成樹脂製継手を使用し、接合しようとする2個の合成樹脂製管状部材を合成樹脂製継手の受口部に挿入し、その後、合成樹脂製継手又は合成樹脂製管状部材のいずれか少なくとも一方を回転あるいは振動することによって合成樹脂製継手の内面と合成樹脂製管状部材の外面を摩擦溶融させ、摩擦により生じる粉末状樹脂又は溶融樹脂を合成樹脂製継手の内面の凹部に収容するようにしたことを特徴とする合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は合成樹脂製継手及び合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法に関する。
【0002】
【従来技術】合成樹脂製管状部材と合成樹脂製継手の摩擦接合方法においては、合成樹脂製管状部材と合成樹脂製継手との一方もしくは両方を振動、又は回転することで、接合面を摩擦溶融し、その後、振動、回転運動を停止し、冷却固化して合成樹脂製管状部材と合成樹脂製継手を接合していた。
【0003】このように摩擦接合によって接合された接合部においては、摩擦によって生じる、所謂ビードと称される粉末状樹脂、或いは溶融流出樹脂が付着し、これらによって外観を損ねたり、内部を通る物質の流れを妨げたりするので、接合部の価値を著しく低下させる原因となっていた。
【0004】そこで、このような問題を改善する方法として、例えば、特公昭53−28344号公報記載のように、接合部材の一方に容易にフープ応力変形する薄肉円筒体壁を設け、他方の接合部材に薄肉円筒体壁に対して相対的に傾斜をなす円筒体壁面を設け、溶融接合時に薄肉円筒体壁と円筒体壁面との間に形成される空間に所謂ビードと称される粉末状樹脂、或いは溶融流出樹脂が収容されるようにして所謂ビードが表面に発生するのを防止する方法が知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の特公昭53−28344号公報記載の方法によれば、接合部に薄肉円筒体壁及び円筒体壁面による段差が存在するため、ケーブル保護管等の管内面に平滑性が要求される配管では使用できない問題があった。
【0006】更に、接合前に接合部材の端面に薄肉円筒体壁や円筒体壁面を設けるために接合部材の端面を加工する必要があるため、施工現場等で長い配管を接合する場合には不便であり、更に、円筒体壁面を設けることにより接合部の断面積が少なくなるので、接合部の強度が低下するといった問題もあった。
【0007】本発明は従来の摩擦接合方法における問題に着目してなされたものであって、その目的とするところは、従来の摩擦接合方法における問題を解消し、接合部に摩擦によって生じる、所謂ビードと称される粉末状樹脂、或いは溶融流出樹脂が生じる恐れがなく、流路内面に段差が生じる恐れのない合成樹脂製継手及び合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するために、請求項1記載の本発明の合成樹脂製継手は、両端に受口部を有する合成樹脂製継手であって、合成樹脂製管状部材を2個の受口部から挿入したときの合成樹脂製管状部材の先端部同士の突き合わせ面近傍の内面に、凹部が周方向に沿って設けられていることを特徴とするものである。
【0009】又、請求項2記載の本発明の合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法は、請求項1記載の合成樹脂製継手を使用し、接合しようとする2個の合成樹脂製管状部材を合成樹脂製継手の受口部に挿入し、その後、合成樹脂製継手又は合成樹脂製管状部材のいずれか少なくとも一方を回転あるいは振動することによって合成樹脂製継手の内面と合成樹脂製管状部材の外面を摩擦溶融させ、摩擦により生じる粉末状樹脂又は溶融樹脂を合成樹脂製継手の内面の凹部に収容するようにしたことを特徴とするものである。
【0010】本発明において、凹部の断面形状としては、摩擦により生じる、所謂ビードと称される粉末状樹脂、或いは溶融流出樹脂を収納できればよいものであって特に限定されないが、例えば、角溝、V字形、U字形、楕円形、半円形、三日月形などが採用できる。
【0011】又、凹部の容積は摩擦によって生じる、ビードと称される粉末状樹脂又は溶融樹脂を完全に収容する大きさが望ましい。
【0012】又、管状部材の先端突き合わせ面は、管路の中心軸に対して垂直に予め加工されているのが好ましいが、多少傾斜されていても凹部の幅より小さければ特に問題はない。即ち、ビードが発生する摩擦運動中に、継手自体が回転もしくは振動する場合には、ビードに遠心力が働き、ビードが継手の凹部に付着するからである。
【0013】継手及び管状部材に使用される合成樹脂としては、摩擦熱により溶融され接合できる熱可塑性樹脂であればよいものであって特に限定されないが、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、塩化ビニル樹脂、架橋ポリエチレン、架橋ポリプロピレン等が使用できる。
【0014】管状部材を継手に挿入する場合、継手を回転あるいは振動させた後、接合部材を徐々に挿入すると、ビードが管路内面に形成されるので、管状部材は継手を回転あるいは振動させる前に、管状部材の先端部同士が継手の凹部付近で突き合うように挿入する。
【0015】請求項2記載の本発明において、管状部材及び継手を摩擦により発熱溶融させる手段としては、回転又は振動によればよいが、エネルギーの損失が少なく、短時間で管状部材及び継手を溶融させることができ、装置の簡易化できるので、回転運動による手段が好ましい。
【0016】〔作用〕請求項1記載の本発明の合成樹脂製継手においては、合成樹脂製管状部材を受口部に挿入したときの合成樹脂製管状部材の先端部同士の突き合わせ面近傍の内面に、凹部が周方向に沿って設けられているので、使用に際しては、継手又は合成樹脂製管状部材のいずれか少なくとも一方を回転あるいは振動させた場合に、ビードと称される粉末状樹脂又は溶融樹脂が環状部材と継手の凹部で囲まれた空間に閉じこめられ、管状部材の流路内面にはビードが生じない。
【0017】又、請求項2記載の本発明の合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法においては、請求項1記載の合成樹脂製継手を使用し、接合しようとする2個の合成樹脂製管状部材を合成樹脂製継手の相背向する2個の受口部に挿入し、その後、合成樹脂製継手又は合成樹脂製管状部材のいずれか少なくとも一方を回転あるいは振動することによって合成樹脂製継手の内面と合成樹脂製管状部材の外面を摩擦溶融させ、摩擦により生じる粉末状樹脂又は溶融樹脂を合成樹脂製継手の内面の凹部に収容するようにしたものであるから、管状部材の流路内面にはビードが生じない。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面により詳しく説明する。図1は本発明の合成樹脂製継手の一例及び本発明の合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法の一実施態様を示す断面図である。
【0019】図1において、1は合成樹脂製継手であり、継手1には相背向する2個の受口部11、11が設けられ、内面中央には凹部12が周方向に沿って凹設されている。継手1は高密度ポリエチレンを使用して射出成形方法により製作したものである。2は管状部材であり、管状部材2としては高密度ポリエチレン管を使用した。
【0020】図2は本発明方法の実施に使用した接合装置の一例を示す説明図である。図2において、3は接合装置であり、31は接合装置3の継手チャック治具であり、継手1は継手チャック治具31に固定され、継手チャック治具31は更にチャック治具台32に取付けられている。チャック治具台32はタイミングベルト33を介してサーボモータ34に連結しており、サーボモータ34の回転が継手1に伝わるような構造となっている。
【0021】管状部材2は管軸と水平方向に移動できるスライドテーブル35上に固定され、スライドテーブル35に取り付けられたエアシリンダー36によって任意の圧力で軸方向に移動させることができるようになっている。サ−ボモータ34の回転速度とエアシリンダー36の圧力は、パソコン37に数値を入力することにより任意に制御ができるようになっている。
【0022】次に、図2に示す接合装置3を使用し、本発明方法により管状部材2、2を継手1により接合する態様を説明する。始めに継手1及び管状部材2、2をそれぞれ接合装置3に取り付けた後、エアシリンダー36を作動させて管状部材2、2をそれぞれ継手1の受口部11、11に挿入する。このとき、管状部材2、2を継手1の中央部で突き合わせる状態で、継手1を回転させ、摩擦熱を発生させ、溶融させ、継手1の回転を停止し、管状部材2、2を継手1を介して接合させる。
【0023】
【実施例1】図1に示す継手1を使用し、継手1の受口部11の内径D1は72mm、凹部12の内径D2は59.1mm、凹部12の幅Wは10mm、継手1の外径dは72mmであった。管状部材2としては内径50mm、肉厚3.5mmの高密度ポリエチレン管を使用し、図2に示す接合装置3を使用した。継手1の受口部11に挿入した管状部材2、2間のすき間は最大で0.5mmであった。
【0024】継手1の受口部11、11内に管状部材2、2を挿入した後、継手1を0.628m/秒の回転速度で10秒間回転させた。継手1の回転中は管状部材2、2が継手1から抜けるのを防止するために、管状部材2、2に0.8kgf/cm2 の圧力を加えた。回転停止後、圧力を0kgf/cm2 にし、この状態で1分間放置し、管状部材2、2は継手1を介して接合された。
【0025】このようにして得られた管状部材2、2の接合部の内周面には全くビードが発生しておらず、平滑な内面をもつ管路が形成されていた。この接合管にエア圧送にて光ファイバーケーブル線を通したところ、接合部で引っかかることなく送ることができた。又、通した光ファイバーケーブル線を取り出し表面を観察したところ、ケーブルの破損は全く見られなかった。
【0026】
【実施例2】図3に示す継手1aを使用した。図3に示す継手1aにおいては、内部に断面三角形の凹部12aが凹設されている。継手1aの受口部11の内径D1は72mm、凹部12の最大内径D2は62.5mm、凹部12の幅Wは10mm、外径dは72mmであった。実施例1と同様の管状部材2、接合装置3を使用して、同様の接合手順で管状部材2を接合した。このようにして接合された管状部材2、2の接合部の内周面には全くビードが発生しておらず。平滑な内面をもつ管路が形成されていた。この接合管にエア圧送にて光ファイバーケーブル線を通したところ、接合部で引っかかることなく送ることができた。又、通した光ファイバーケーブル線を取り出し表面を観察したところ、ケーブルの破損は全く見られなかった。
【0027】
【比較例1】図4に示す継手(イ)を使用し、実施例1同様の方法で管状部材2、2を接合した。このようにして接合された管状部材2、2の接合部の内面には全くビードが発生していなかったが、継手(イ)が自体のコア(ロ)が出っ張っており、管路の内面は平滑でなかった。この管状部材2、2にエア圧送にて光ファイバーケーブル線を通したところ、接合部で引っかかりケーブルを送ることができなかった。
【0028】
【比較例2】図5に示す継手(ハ)を使用し、実施例1と同様の方法で管状部材2、2を接合した。このようにして接合された管状部材2、2の接合部の内周面には管状部材2、2の突き合わせ面のすき間から、ビード21がはみ出していた。このようにして接合された管状部材2、2の接合部にエア圧送にて光ファイバーケーブル線を通したところ、接合部で引っかかることはなくケーブルを送ることができた。又、通した光ファイバーケーブル線を取り出し表面を観察したところ、ケーブルの表面が破損していた。尚、継手(ハ)の内径D1は56.1mm、外径dは72mmである。
【0029】
【比較例3】図6に示す継手(ニ)を使用し、実施例1と同様の方法で管状部材2、2を接合した。このようにして接合された管状部材2、2の接合部は管状部材2、2の端面と継手(ニ)内の凸部(ホ)とのあたり面からビード21が発生し、接合部の内面は平滑でなかった。この接合部にエア圧送にて光ファイバーケーブル線を通したところ、接合部で引っかかることはなくケーブルを送ることができた。又、通した光ファイバーケーブル線を取り出し表面を観察したところ、ケーブルの表面が破損していた。尚、継手(ニ)の内径D1は56.1mm、凸部(ホ)間の内径D3は50.0mm、外径dは72mmである。
【0030】
【比較例4】実施例1と同様の継手1、管状部材2、2、接合装置3を用いて管状部材2、2を接合した。但し、接合手順において、予め継手1に管状部材2、2を挿入せずに、継手1を回転させた後で管状部材2、2を0.5kgf/cm2 の圧力で挿入した。このようにして接合された管状部材2、2の接合部の内面に大量のビードが付着していた。この接合部にエア圧送にて光ファイバーケーブル線を通したところ、接合部でケーブル線が引っかかり、ケーブルを送ることができなかった。
【0031】以上、本発明の実施の形態を図により説明したが、本発明の具体的な実施の形態は図示の実施の形態に限定されることはなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲の設計の変更は本発明に含まれる。
【0032】
【発明の効果】請求項1記載の本発明の合成樹脂製継手においては、使用に際しては、合成樹脂製継手又は合成樹脂製管状部材のいずれか少なくとも一方を回転あるいは振動させた場合に、ビードと称される粉末状樹脂又は溶融樹脂が環状部材と継手の凹部で囲まれた空間に閉じこめられるので、管状部材の流路内面にはビードが生じない。従って、管路は円滑であり、流動抵抗を少なくすることができる。又、合成樹脂製管状部材を予め加工する必要がない。
【0033】又、請求項2記載の本発明の合成樹脂製管状部材の摩擦接合方法においては、管状部材の流路内面にはビードが生じないので、管路は円滑であり、流動抵抗を少なくすることができる。又、合成樹脂製管状部材を予め加工する必要がない。
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【出願日】 平成11年7月7日(1999.7.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−21091(P2001−21091A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−193296