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【発明の名称】 耐焼き付き性の優れた管継手及びその加工方法
【発明者】 【氏名】丸山 和士

【氏名】津留 英司

【氏名】永吉 治之

【要約】 【課題】油井管や土木杭等に用いられる管のテーパネジ継手において、締結時に焼き付きを起こし難くする。

【解決手段】管の先端部の外周面にテーパ雄ネジ部1を形成したピンPと、短管の両端部の内周面にテーパ雄ネジ部1に螺合するテーパ雌ネジ部2を形成したボックスBとで構成されるテーパネジ継手において、ピンPを鉛直方向にボックスBに差し込み、ねじ込み開始するスタビング時、両ネジ山3のスタビングフランク面4が互いに重なり合う状態で、ボックス入り口付近とピン先端付近の一方または双方のネジ山3について、両スタビングフランク面4の間に隙間をもたせた管継手。ネジ切り加工の最終パス又は最終数パスのみピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、スタビングフランク面を削り込む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 管の先端部の外周面にテーパ雄ネジ部を形成したピンと、短管の両端部の内周面に前記テーパ雄ネジ部に螺合するテーパ雌ネジ部を形成したボックスとで構成されるテーパネジ継手において、前記ピンを鉛直方向に前記ボックスに差し込んでねじ込み開始し、前記テーパ雄ネジ部および前記テーパ雌ネジ部のネジ山のスタビングフランク面が互いに重なり合う状態で、ボックス入り口付近のネジ山について、両スタビングフランク面の間に隙間をもつことを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手。
【請求項2】 請求項1の管継手において、前記ボックスのテーパ雌ネジ部は一様なネジ山幅で形成され、前記ピンのテーパ雄ネジ部は、ロードフランク面が一定のピッチで、ネジ山幅がピン先端からピン根元に向かって徐々に狭く形成されるか、またはピンネジ列の途中からピン根元に向かって徐々に狭く形成されていることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手。
【請求項3】 請求項1の管継手において、前記ピンのテーパ雄ネジ部は一様なネジ山幅に形成され、前記ボックスのテーパ雌ネジ部は、ロードフランク面が一定のピッチで、ボックス入り口付近のネジ山幅が狭く形成されていることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手。
【請求項4】 管の先端部の外周面にテーパ雄ネジ部を形成したピンと、短管の両端部の内周面に前記テーパ雄ネジ部に螺合するテーパ雌ネジ部を形成したボックスとで構成されるテーパネジ継手において、前記ピンを鉛直方向に前記ボックスに差し込んでねじ込み開始し、前記テーパ雄ネジ部および前記テーパ雌ネジ部のネジ山のスタビングフランク面が互いに重なり合う状態で、ピン先端付近のネジ山について、両スタビングフランク面の間に隙間をもつことを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手。
【請求項5】 請求項4の管継手において、前記ピンのテーパ雄ネジ部は一様なネジ山幅で形成され、前記ボックスのテーパ雌ネジ部は、ロードフランク面が一定のピッチで、ネジ山幅がボックス入り口からボックス中央に向かって徐々に狭く形成されるか、またはボックスネジ列の途中からボックス中央に向かって徐々に狭く形成されていることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手。
【請求項6】 請求項4の管継手において、前記ボックスのテーパ雌ネジ部は一様なネジ山幅に形成され、前記ピンのテーパ雄ネジ部は、ロードフランク面が一定のピッチで、ピン先端付近のネジ山幅が狭く形成されていることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手。
【請求項7】 管の先端部の外周面にテーパ雄ネジ部を形成したピンと、短管の両端部の内周面に前記テーパ雄ネジ部に螺合するテーパ雌ネジ部を形成したボックスとで構成されるテーパネジ継手において、前記ピンを鉛直方向に前記ボックスに差し込んでねじ込み開始し、前記テーパ雄ネジ部および前記テーパ雌ネジ部のネジ山のスタビングフランク面が互いに重なり合う状態で、ボックス入り口付近のネジ山およびピン先端付近のネジ山について、両スタビングフランク面の間に隙間をもつことを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手。
【請求項8】 請求項2の管継手のピンをNC旋盤でネジ切り加工する際、ネジ切り加工の最終パスあるいは最終数パスのみピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅をピン先端からピン根元に向かって徐々に狭くするか、または前記最終パスあるいは最終数パスのみピンネジ列の途中からピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅をピンネジ列の途中からピン根元に向かって徐々に狭くすることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手の加工方法。
【請求項9】 請求項5の管継手のボックスをNC旋盤でネジ切り加工する際、ネジ切り加工の最終パスあるいは最終数パスのみピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅をボックス入り口からボックス中央に向かって徐々に狭くするか、または前記最終パスあるいは最終数パスのみボックスネジ列の途中からピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅をボックスネジ列の途中からボックス中央に向かって徐々に狭くすることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手の加工方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油井管や土木杭などに用いられる管のテーパネジ継手において、締結時に焼き付きを起こしにくいネジ形状とした管継手及びその加工方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】油井掘削作業では、管端にテーパネジ継手をもつ油井管を掘削坑上で鉛直に次々に締結し降下させる。テーパネジ継手は、油井管先端部の外周面にテーパ雄ネジ部を形成したピンと、短管両端部の内周面に前記テーパ雄ネジ部に螺合するテーパ雌ネジ部を形成したボックスとで構成され、締結時には潤滑剤としてグリースを使用するか、固体潤滑コーティングが適用される。締結作業では、図1(a)のように、油井管先端部のピンPを矢印で示す鉛直方向にボックスBに差し込み、ついでねじ込み、ピンPのテーパ雄ネジ部1をボックスBのテーパ雌ネジ部2に螺合させる。
【0003】ねじ込み開始すると(以下、ねじ込み開始する前の差し込み状態をスタビング時という)、図1(b)の拡大図に示すように、ピンPのネジ山3がボックスBのネジ山3の間に嵌まり込み、ネジ山3のスタビングフランク面4がたがいに重なり合って螺合していく。wはネジ山幅を示し、5はロードフランク面である。スタビング時は、図1(b)のようにネジ山3同士の嵌合が浅いため、図1(a)に示すように、ピンPは中心線Cに対してぶれながら、すなわち円錐面に沿った回転運動をしながら嵌まり込んでいく。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記のような油井管の締結作業において、スタビング時、重なり合ったネジ列端、図1(a)のネジ山 No.1,2,3、および11,12,13の部分では、図2の実線で示す例のように、スタビングフランク面4に懸かる荷重分担が他の部分より大きくなる。また上記のように、ピンPは中心線Cに対してぶれながら嵌まり込んでいく。このためネジ列端では、図1(b)のように重なり合ったスタビングフランク面4、およびそれと隣合うネジ山山頂部コーナ6に、焼き付きが起こる場合がある。
【0005】最近の油井掘削作業では、油井管の締結に際して、環境保護の観点から重金属を含まないグリースの適用、さらに進んで、グリースまで省略した固体潤滑継手の導入、または油井管の締結および降下作業のスピードアップ、さらには締結作業の自動化などが指向されている。しかしこのような指向は、グリースの潤滑機能の低下、締結作業における注意力不足などをもたらし、テーパネジ継手の締結時、焼き付き発生を助長する要因となっている。係る状況下において、本発明が解決しようとする課題は、油井管や土木杭などに用いられる管のテーパネジ継手において、締結時に焼き付きを起こしにくいネジ形状とした管継手及びその加工方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための本発明の第1発明管継手は、管の先端部の外周面にテーパ雄ネジ部を形成したピンと、短管の両端部の内周面に前記テーパ雄ネジ部に螺合するテーパ雌ネジ部を形成したボックスとで構成されるテーパネジ継手において、前記ピンを鉛直方向に前記ボックスに差し込んでねじ込み開始し、前記テーパ雄ネジ部および前記テーパ雌ネジ部のネジ山のスタビングフランク面が互いに重なり合う状態で、ボックス入り口付近のネジ山について、両スタビングフランク面の間に隙間をもつことを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手である。
【0007】第1発明管継手の第1の態様は、前記ボックスのテーパ雌ネジ部は一様なネジ山幅で形成され、前記ピンのテーパ雄ネジ部は、ロードフランク面が一定のピッチで、ネジ山幅がピン先端からピン根元に向かって徐々に狭く形成されるか、またはピンネジ列の途中からピン根元に向かって徐々に狭く形成されていることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手である。
【0008】第1発明管継手の第2の態様は、前記ピンのテーパ雄ネジ部は一様なネジ山幅に形成され、前記ボックスのテーパ雌ネジ部は、ロードフランク面が一定のピッチで、ボックス入り口付近のネジ山幅が狭く形成されていることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手である。
【0009】第2発明管継手は、管の先端部の外周面にテーパ雄ネジ部を形成したピンと、短管の両端部の内周面に前記テーパ雄ネジ部に螺合するテーパ雌ネジ部を形成したボックスとで構成されるテーパネジ継手において、前記ピンを鉛直方向に前記ボックスに差し込んでねじ込み開始し、前記テーパ雄ネジ部および前記テーパ雌ネジ部のネジ山のスタビングフランク面が互いに重なり合う状態で、ピン先端付近のネジ山について、両スタビングフランク面の間に隙間をもつことを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手である。
【0010】第2発明管継手の第1の態様は、前記ピンのテーパ雄ネジ部は一様なネジ山幅で形成され、前記ボックスのテーパ雌ネジ部は、ロードフランク面が一定のピッチで、ネジ山幅がボックス入り口からボックス中央に向かって徐々に狭く形成されるか、またはボックスネジ列の途中からボックス中央に向かって徐々に狭く形成されていることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手である。
【0011】第2発明管継手の第2の態様は、前記ボックスのテーパ雌ネジ部は一様なネジ山幅に形成され、前記ピンのテーパ雄ネジ部は、ロードフランク面が一定のピッチで、ピン先端付近のネジ山幅が狭く形成されていることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手である。
【0012】第3発明管継手は、管の先端部の外周面にテーパ雄ネジ部を形成したピンと、短管の両端部の内周面に前記テーパ雄ネジ部に螺合するテーパ雌ネジ部を形成したボックスとで構成されるテーパネジ継手において、前記ピンを鉛直方向に前記ボックスに差し込んでねじ込み開始し、前記テーパ雄ネジ部および前記テーパ雌ネジ部のネジ山のスタビングフランク面が互いに重なり合う状態で、ボックス入り口付近のネジ山およびピン先端付近のネジ山について、両スタビングフランク面の間に隙間をもつことを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手である。
【0013】また上記課題を解決するための本発明の第1発明法は、第1発明管継手の第1の態様におけるピンをNC旋盤でネジ切り加工する際、ネジ切り加工の最終パスあるいは最終数パスのみピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅をピン先端からピン根元に向かって徐々に狭くするか、または前記最終パスあるいは最終数パスのみピンネジ列の途中からピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅をピンネジ列の途中からピン根元に向かって徐々に狭くすることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手の加工方法である。
【0014】第2発明法は、第2発明管継手の第2の態様におけるボックスをNC旋盤でネジ切り加工する際、ネジ切り加工の最終パスあるいは最終数パスのみピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅をボックス入り口からボックス中央に向かって徐々に狭くするか、または前記最終パスあるいは最終数パスのみボックスネジ列の途中からピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅をボックスネジ列の途中からボックス中央に向かって徐々に狭くすることを特徴とした耐焼き付き性の優れた管継手の加工方法である。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明管継手は、図1(a)に示すような、管の先端部の外周面にテーパ雄ネジ部1を形成したピンPと、短管の両端部の内周面にテーパ雄ネジ部1に螺合するテーパ雌ネジ部2を形成したボックスBとで構成されるテーパネジ継手において、ピンPを鉛直方向にボックスBに差し込み、ねじ込み開始するスタビング時、図1(b)のように、両ネジ山3のスタビングフランク面4が互いに重なり合う状態で、ボックス入り口付近とピン先端付近の一方または双方のネジ山3について、両スタビングフランク面4の間に隙間をもたせたものである。
【0016】このような本発明管継手は、締結するためのスタビング時、螺合するネジ列の端部に位置する数山のネジ山、図1(a)の例では No.1,2,3又は/及び No.11,12,13のネジ山3のスタビングフランク面4を、ネジ列中央のネジ山 No.6,7,8の方向に向けて段階的に徐々に接触させていくことができる。このため、ピンPまたはボックスBの当該部位、ネジ山 No.1,2,3又は/及び No.11,12,13のスタビングフランク面4にかかる過大な荷重増加が緩和され、焼き付きを回避することができる。
【0017】スタビング時、ネジ列の各ネジ山3のスタビングフランク面4に懸かる荷重分布をFEM(有限要素法)にて計算した結果を図2に示す。実線は前述のように従来の継手の例である。先端部にピンPを形成したAPI油井管(外径9-5/8in.,単重53.5lbs/ftのバットレス継手)を上から9m吊るしてボックスBに差し込み、スタビング時の荷重分布を示す。この図から、ネジ列端部のネジ山に懸かる荷重はネジ列中央部のそれに比べ著しく大きくなっていることが判る。
【0018】破線が本発明管継手の例で、下記第1発明の第2の態様に相当する管継手の場合である。この例は、ボックス入り口のネジ列端から奥に向かって、スタビングフランク面4を、0.04mm、 0.035mm・・・と5μmずつ減らしながら削り落としたボックスBに、上記従来の継手と同様の、通常のネジ列を有するピンPを差し込み、スタビング時の荷重分布を示す。この例はボックス入り口付近のネジ山について、たがいに重なり合うスタビングフランク面の間に隙間をもたせたもので、スタビング時、ネジ山3がたがいに嵌まり込む瞬間の隙間が、ネジ山 No.13で0.04mm、 No.12で 0.035mm、 No.11で0.03mm・・・となる。このため、スタビング時、ボックス入り口の著しい荷重増加が解消されていることが判る。なお、ピン先端付近のネジ山について隙間をもたせた場合の荷重分布は示していないが、スタビング時、ピン先端の著しい荷重増加が解消される。またボックス入り口付近とピン先端付近の双方について隙間をもたせた場合は、ネジ列両端の著しい荷重増加が解消される。
【0019】第1発明管継手は、スタビング時、両ネジ山3のスタビングフランク面4が互いに重なり合う状態で、ボックス入り口付近のネジ山3について、両スタビングフランク面4の間に隙間をもたせたものである。第1発明管継手の第1の態様を図3に示す。この例はネジ形状を誇張して示している。ボックスBのテーパ雌ネジ部2は一様なネジ山幅のネジ山3で形成され、ピンPのテーパ雄ネジ部1は、ネジ山3のロードフランク面5が一定のピッチで、ネジ山幅wがピン先端8からピン根元に向かって徐々に狭く形成されている。これにより、ボックス入り口7付近のネジ山3について、重なり合う両スタビングフランク面4の間に隙間9をもたせている。
【0020】図3のような管継手を製造するには、たとえば、ピンPのテーパ雄ネジ部1をネジ切り加工するとき、最終仕上1〜2パスのみ、ネジ切り始めの原点、すなわちピン先端8から根元に向かう加工パスラインは変えずに、ピッチのみを若干大きくする。こうすることで、ピンPのロードフランク面5の位置(ピッチ)を変えることなく、ピンPのスタビングフランク面4を、ピン先端8から根元に向かって少しづつ削り代を大きくしながら削っていくことができ、上記のようにネジ山幅wが徐々に狭く形成される。
【0021】図3のような管継手のスタビング時、重なり合う両スタビングフランク面4はピン先端8付近のaでは互いに接触する。しかしボックス入り口7付近のbでは隙間9があり、隙間9はピン先端8側からボックス入り口7に向かって徐々に広くなっているので、スタビング時、ボックス入り口7側のスタビングフランク面4の接触が、隙間9のある状態から確実に接触する状態へと、ネジ列中央部に向かって徐々に行われるようになり、ボックス入り口7側に行くにつれてスタビングフランク面の接触が和らぐ。その結果、ボックス入り口7付近のピンPおよびボックスBの焼き付きを回避できる。また、ねじ込み時のピンPのぶれによって、従来継手ではボックス入り口7側の片当たりが大きくなるが、第1発明管継手ではこの片当りも緩和され焼き付きが効果的に回避される。
【0022】また第1発明管継手の第1の態様は、図5の誇張した例に示すように、ピンPのネジ山幅wが、ピンネジ列の途中cからピン根元に向かって徐々に狭く形成されていてもよい。このようにして、ボックス入り口7付近のネジ山3についてスタビングフランク面4の間に隙間9をもたせても、スタビング時、ボックス入り口7側に行くにつれてスタビングフランク面の接触が和らぎ、またボックス入り口7側の片当りも緩和され、ボックス入り口7付近でのピンPとボックスBの焼き付きを回避できる。図5のような管継手は、たとえば、ピンPのテーパ雄ネジ部1をネジ切り加工するとき、最終仕上1〜2パスのみ、ピンネジ列の途中cからピン根元に向かってピッチを若干大きくすることで製造することができる。
【0023】第1発明管継手の第2の態様は、ピンPのテーパ雄ネジ部1は一様なネジ山幅に形成され、ボックスBのテーパ雌ネジ部2は、ロードフランク面5が一定のピッチで、ボックス入り口7付近のネジ山幅wが狭く形成されている。このようにして、ボックス入り口7付近のネジ山3についてスタビングフランク面4の間に隙間9をもたせても、スタビング時、ボックス入り口7付近でのスタビングフランク面の接触が和らぎ、またボックス入り口7側の片当りも緩和され、ピンPとボックスBの焼き付きを回避できる。このようなボックスBは、たとえば、ネジ切り加工の仕上パスにおいて、ボックス入り口7側端部数山のスタビングフランク面をネジ加工の位相をずらすことにより得られる。また、重なり代はどんなネジでも0.5mm未満と僅かであるので、正常なネジ列を加工した後、クリーニングパスとしてスタビングフランク面のみを僅かに削る方法を用いてもよい。
【0024】第2発明管継手は、スタビング時、両ネジ山3のスタビングフランク面4が互いに重なり合う状態で、ピン先端付近のネジ山3について、両スタビングフランク面4の間に隙間をもたせたものである。第2発明管継手の第1の態様を図4に示す。この例はネジ形状を誇張して示している。ピンPのテーパ雄ネジ部1は一様なネジ山幅のネジ山3で形成され、ボックスBのテーパ雌ネジ部2は、ネジ山3のロードフランク面5が一定のピッチで、ネジ山幅wがボックス入り口7からボックス中央に向かって徐々に狭く形成されている。これにより、ピン先端8付近のネジ山3について、重なり合う両スタビングフランク面4の間に隙間9をもたせている。
【0025】図4のような管継手を製造するには、たとえば、ボックスBのテーパ雌ネジ部2をネジ切り加工するとき、最終仕上1〜2パスのみ、ネジ切り始めの原点、すなわちボックス入り口7からボックス中央に向かう加工パスラインは変えずに、ピッチのみを若干大きくする。こうすることで、ロードフランク面5の位置(ピッチ)を変えることなく、ボックスBのスタビングフランク面4を、ボックス入り口7からボックス中央に向かって少しずつ削り代を大きくしながら削っていくことができ、上記のようにネジ山幅wが徐々に狭く形成される。
【0026】図4のような管継手のスタビング時、重なり合う両スタビングフランク面4はボックス入り口7付近のbでは互いに接触する。しかしピン先端8付近のaでは隙間9があり、隙間9はボックス入り口7側からピン先端8に向かって徐々に広くなっているので、スタビング時、ピン先端8側のスタビングフランク面4の接触が、隙間9のある状態から確実に接触する状態へと、ネジ列中央部に向かって徐々に行われるようになり、ピン先端8側に行くにつれてスタビングフランク面の接触が和らぐ。その結果、ピン先端8付近のピンPおよびボックスBの焼き付きを回避できる。
【0027】また第2発明管継手の第1の態様は、図6の誇張した例に示すように、ボックスBのネジ山幅wが、ピンネジ列の途中cからボックス中央に向かって徐々に狭く形成されていてもよい。このようにして、ピン先端8付近のネジ山3についてスタビングフランク面4の間に隙間9をもたせても、図4の例と同様、スタビング時、ピン先端8側に行くにつれてスタビングフランク面の接触が和らぎ、ピン先端8付近でのピンPとボックスBの焼き付きを回避できる。図6のような管継手は、たとえば、ボックスBのテーパ雌ネジ部2をネジ切り加工するとき、最終仕上1〜2パスのみ、ピンネジ列の途中cからボックス中央に向かってピッチを若干大きくすることで製造することができる。
【0028】第2発明管継手の第2の態様は、ボックスBのテーパ雌ネジ部2は一様なネジ山幅に形成され、ピンPのテーパ雄ネジ部1は、ロードフランク面5が一定のピッチで、ピン先端8付近のネジ山幅wが狭く形成されている。このようにして、ピン先端8付近のネジ山3についてスタビングフランク面4の間に隙間9をもたせても、スタビング時、ピン先端8付近でのスタビングフランク面の接触が和らぎ、ピンPとボックスBの焼き付きを回避できる。このようなピンPは、たとえば、ネジ切り加工の仕上パスにおいて、ピン先端8側端部数山のスタビングフランク面をネジ加工の位相をずらすことにより得られる。また、重なり代はどんなネジでも0.5mm未満と僅かであるので、正常なネジ列を加工した後、クリーニングパスとしてスタビングフランク面のみを僅かに削る方法を用いてもよい。
【0029】第3発明管継手は、スタビング時、両ネジ山3のスタビングフランク面4が互いに重なり合う状態で、ボックス入り口付近およびピン先端付近のネジ山3について、両スタビングフランク面4の間に隙間をもたせたものである。その態様は、上記第1発明管継手の各態様と上記第2発明管継手の各態様とを組み合わせたものとすることができる。
【0030】本発明の第1発明法は、第1発明管継手の第1の態様におけるピンPをNC旋盤でネジ切り加工する際、ネジ切り加工の最終パスあるいは最終数パスのみピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面5のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅wをピン先端8からピン根元に向かって徐々に狭くするか、または前記最終パスあるいは最終数パスのみピンネジ列の途中からピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面5のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅wをピンネジ列の途中からピン根元に向かって徐々に狭くする加工方法である。ここで最終パスあるいは最終数パスは、ピン先端8から根元に向かうパスである。これらのパスでは、加工パスラインは変えずにピッチのみを僅かに大きくすることで、ロードフランク面5の位置は変えず、スタビングフランク面を少しずつ削り代を大きくしながら削っていくことができる。最終数パスは2〜3パスでよい。第1発明法を用いれば、ネジ切り刃物を変えることなく同じ刃物で加工が出来るので、これまでのネジ切りプログラムにピッチを大きくしたネジ切りパスをNCプログラムに追加するだけでよい。
【0031】第2発明法は、第2発明管継手の第2の態様におけるボックスBをNC旋盤でネジ切り加工する際、ネジ切り加工の最終パスあるいは最終数パスのみピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面5のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅wをボックス入り口7からボックス中央に向かって徐々に狭くするか、または最終パスあるいは最終数パスのみボックスネジ列の途中からピッチを僅かに大きくすることにより、ロードフランク面5のピッチは一定に保ったまま、ネジ山幅wをボックスネジ列の途中からボックス中央に向かって徐々に狭くする加工方法である。ここで最終パスあるいは最終数パスは、ボックス入り口7からボックス中央に向かうパスである。これらのパスでは、加工パスラインは変えずにピッチのみを僅かに大きくすることで、ロードフランク面5の位置は変えず、スタビングフランク面を少しずつ削り代を大きくしながら削っていくことができる。最終数パスは2〜3パスでよい。第2発明法を用いれば、ネジ切り刃物を変えることなく同じ刃物で加工が出来るので、これまでのネジ切りプログラムにピッチを大きくしたネジ切りパスをNCプログラムに追加するだけでよい。
【0032】
【実施例】外径7in、単重29lb/ft のAPIバットレス継手を、ピンPは第1発明法により、ボックスBは第2発明法により、それぞれネジ切り加工した。ピンPの雄ネジ1は最終パスのピッチをそれまでの5.08mmから5.11mmとし、ロードフランク面5のピッチは変えず、ネジ山幅wをピン先端8からピン根元に向かって徐々に狭く形成した。ボックスBの雌ネジ2も最終パスのピッチを5.08mmから5.11mmとし、ロードフランク面5のピッチは変えず、ネジ山幅wをボックス入り口7からボックス中央に向かって徐々に狭く形成した。また、最終パスまでピッチを5.08mm一定とした従来の加工法により、ネジ山幅wが一様なピンPおよびボックスBをネジ切り加工した。
【0033】そして、上記第1発明法で加工したピンPと上記従来法で加工したボックスBを組合わせた第1発明管継手、および上記第2発明法で加工したボックスBと上記従来法で加工したピンPを組合わせた第2発明管継手について、縦型パワートングで繰り返し締込み実験を行った。実験は、ボックスBの内面に燐酸マンガン処理を施し、重金属の入っていない環境適合グリース(マルチメークホワイト)を各締込み毎にピンP、ボックスBに塗布し、実際の現場作業を想定して2mのサンプル上部に500kgの錘をつけたピンPをボックスBに差し込み、10回のねじ込みおよび緩めを行ったが、焼き付きは観察されず、実験終了後、ネジ山3のスタビングフランク面4には場所の違いによる異常は認められなかった。
【0034】一方、上記従来法で加工したピンPおよびボックスBを組合わせた従来継手についての同様の試験では、焼き付きは発生しなかったものの、スタビング時にピン先端8付近とボックス入り口7付近に相当するネジ山3の、山頂部に近いスタビングフランク面4にスクラッチ疵が入っており、焼き付きの起こりやすい状況になっていたことを示していた。
【0035】
【発明の効果】以上に説明した通り、本発明の管継手を用いることにより、油井掘削作業で油井管を締結しつつ降下させる作業、あるいは建設現場等で土木杭として使用される鋼管を締結しつつ降下させる作業において、ピンをボックスにねじ込むときのスタビング時に、ボックス入り口付近あるいはピン先端付近のネジ列端でのスタビングフランク面に懸かる集中荷重が緩和でき、ネジ込み初期の段階でみられるピンのぶれによるボックス入り口付近のネジ山片当たりも合わせて緩和できる。したがって、環境保護の観点から重金属を含まないグリースを潤滑剤に採用し、さらには管締結の自動化を行う場合のような、より過酷な条件でも焼き付き回避が可能となる。さらに固体潤滑剤をコーティングし、完全にグリースを省略した継手にも有効である。
【出願人】 【識別番号】000006655
【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社
【出願日】 平成11年7月5日(1999.7.5)
【代理人】 【識別番号】100062421
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 弘明 (外1名)
【公開番号】 特開2001−21072(P2001−21072A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−190640