トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 膨張弁
【発明者】 【氏名】広田 久寿

【要約】 【課題】弁体をパワーエレメントと反対側から付勢するスプリングの調整を、冷媒漏れ等を起こすおそれなく確実に行うことができる膨張弁を提供すること。

【解決手段】圧縮コイルスプリング17を、一端が外部に開口するように本体ブロック11に形成された孔19内に配置すると共に、圧縮コイルスプリング17の固定端側を受けるスプリング受け部材18を孔19内に開口端側から圧入固定し、それによって孔19の開口端側が気密に塞がれるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】蒸発器に送り込まれる高圧冷媒が通る高圧冷媒流路の途中を細く絞って形成された弁座孔に対向して本体ブロック内に弁体を配置し、軸線方向に進退自在に配置されたロッドを、上記蒸発器から送り出された低圧冷媒の温度と圧力に対応して動作するパワーエレメントと上記弁体との間に挟設すると共に、上記弁体を上記パワーエレメントの反対の方向から圧縮コイルスプリングにより付勢した膨張弁において、上記圧縮コイルスプリングを、一端が外部に開口するように上記本体ブロックに形成された孔内に配置すると共に、上記圧縮コイルスプリングの固定端側を受けるスプリング受け部材を上記孔内に上記開口端側から圧入固定し、それによって上記孔の開口端側が気密に塞がれるようにしたことを特徴とする膨張弁。
【請求項2】上記孔内における上記スプリング受け部材の固定位置が調整可能である請求項1記載の膨張弁。
【請求項3】上記スプリング受け部材が、一端側が塞がった筒状に形成されている請求項1又は2記載の膨張弁。
【請求項4】上記スプリング受け部材がバネ性のある材料で形成されている請求項1、2又は3記載の膨張弁。
【請求項5】上記スプリング受け部材が上記本体ブロックより低硬度の材料で形成されている請求項1、2又は3記載の膨張弁。
【請求項6】上記スプリング受け部材が上記本体ブロックと同じ材料で形成されている請求項1、2又は3記載の膨張弁。
【請求項7】上記スプリング受け部材と上記本体ブロックとが、共にアルミニウム合金で形成されている請求項6記載の膨張弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、冷凍サイクルにおいて蒸発器に送り込まれる冷媒の流量制御を行いつつ冷媒を断熱膨張させるための膨張弁に関する。
【0002】
【従来の技術】膨張弁には各種のタイプがあるが、蒸発器に送り込まれる高圧冷媒が通る高圧冷媒流路の途中を細く絞って形成された弁座孔に対向して弁体を配置し、蒸発器から送り出される低圧冷媒の温度と圧力に対応して弁体を開閉動作させるようにした膨張弁が広く用いられている。
【0003】そのような膨張弁においては、蒸発器から送り出される低圧冷媒の温度と圧力に対応して動作するパワーエレメントと弁体との間に軸線方向に進退自在にロッドを挟設すると共に、弁体をロッドと反対の方向から圧縮コイルスプリングで付勢し、パワーエレメントによりロッドを介して弁体を開閉動作させるようにしている。
【0004】図3に示されるように、弁体16を付勢する圧縮コイルスプリング17は、一端が外部に開口するように本体ブロック11に形成された孔19内に配置され、圧縮コイルスプリング17の固定端側を受けるネジ棒状のスプリング受け部材118が孔19内に開口端側からねじ込まれている。
【0005】したがって、スプリング受け部材118のねじ込み量を調整することにより、組み立ての際に圧縮コイルスプリング17の状態を調整することができる。また、その部分からの冷媒漏れを防止するために、スプリング受け部材118と孔19との間にシール用のOリング21が装着されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上述のように本体ブロック11に形成された孔19にネジ棒状のスプリング受け部材118をねじ込むと、その際に本体ブロック11が削られ(スプリング受け部材118の方が柔らかい材料で形成されている場合には、逆にスプリング受け部材118が削られ)、その切り粉によりOリング21が傷つけられて冷媒漏れが発生する場合があった。
【0007】そこで本発明は、弁体をパワーエレメントと反対側から付勢するスプリングの調整を、冷媒漏れ等を起こすおそれなく確実に行うことができる膨張弁を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の膨張弁は、蒸発器に送り込まれる高圧冷媒が通る高圧冷媒流路の途中を細く絞って形成された弁座孔に対向して本体ブロック内に弁体を配置し、軸線方向に進退自在に配置されたロッドを、蒸発器から送り出された低圧冷媒の温度と圧力に対応して動作するパワーエレメントと弁体との間に挟設すると共に、弁体をパワーエレメントの反対の方向から圧縮コイルスプリングにより付勢した膨張弁において、圧縮コイルスプリングを、一端が外部に開口するように本体ブロックに形成された孔内に配置すると共に、圧縮コイルスプリングの固定端側を受けるスプリング受け部材を孔内に開口端側から圧入固定し、それによって孔の開口端側が気密に塞がれるようにしたものである。
【0009】なお、孔内におけるスプリング受け部材の固定位置が調整可能であってもよく、スプリング受け部材が、一端側が塞がった筒状に形成されていてもよい。また、スプリング受け部材がバネ性のある材料で形成されていてもよく、本体ブロックより低硬度の材料で形成されていてもよい。
【0010】また、スプリング受け部材が本体ブロックと同じ材料で形成されていてもよく、スプリング受け部材と本体ブロックとが、共にアルミニウム合金で形成されていてもよい。
【0011】
【発明の実施の形態】図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の実施の形態の膨張弁を示している。図中、1は蒸発器、2は圧縮機、3は凝縮器、4は、凝縮器3の出口側に接続されて高圧の液体冷媒を収容する受液器、10は膨張弁である。これらによって冷凍サイクルが形成されており、例えば自動車の室内冷房装置(カーエアコン)に用いられる。
【0012】膨張弁10の本体ブロック11には、蒸発器1から圧縮機2へ送り出される低温低圧の冷媒ガスを通すための低圧冷媒流路12と、蒸発器1に送り込まれる高温高圧の冷媒液を通して断熱膨張させるための高圧冷媒流路13とが形成されている。
【0013】低圧冷媒流路12は、入口側の端部が蒸発器1の出口に接続され、出口側が圧縮機2の入口に接続されている。高圧冷媒流路13は、入口側の端部が受液器4の出口に接続され、出口側が蒸発器1の入口に接続されている。
【0014】低圧冷媒流路12と高圧冷媒流路13とは互いに平行に形成されており、これに垂直に本体ブロック11に穿設された貫通孔14が、低圧冷媒流路12と高圧冷媒流路13との間を貫通している。また、低圧冷媒流路12から外方に抜けるように、貫通孔14と同じ向きに形成された開口部には、パワーエレメント30が取り付けられている。
【0015】高圧冷媒流路13の途中には、流路面積を途中で狭く絞った形の弁座孔15が中央部に形成されていて、その弁座孔15に上流側から対向して球状の弁体16が配置されている。
【0016】その結果、弁体16と弁座孔15の入口部との間の隙間の最も狭い部分が高圧冷媒流路13の絞り部になり、そこから蒸発器1に到る下流側の流路内において、高圧冷媒が断熱膨張する。
【0017】弁体16は例えばステンレス鋼等の金属により形成されており、弁体16が面する弁座孔15の開口端は、テーパ状の面取りがされて外側へ広がった形状に形成されている。
【0018】弁体16は、弁体16側へ次第に巻き径が細くなるテーパ状に形成された圧縮コイルスプリング17によって、弁座孔15に接近する方向(即ち、閉じ方向)に付勢されている。
【0019】その圧縮コイルスプリング17の径の細い方の端部に、弁体16が溶接等(接着、半田付けその他)によって直接固着されている。圧縮コイルスプリング17をテーパ状に形成することにより、その端部に弁体16を直接固着することができ且つ適切なバネ定数を得ることができる。
【0020】圧縮コイルスプリング17が配置された孔19は、弁座孔15と同方向に(したがって、高圧冷媒流路13に対して垂直方向に)本体ブロック11に形成されていて、一端が外部に開口している。
【0021】その孔19内には、圧縮コイルスプリング17の固定端側を受ける例えばステンレス鋼製のスプリング受け部材18が開口端側から圧入固定され、それによって孔19の開口端が気密に塞がれている。したがって、スプリング受け部材18の取り付け部に螺合部がないので、ねじ込みによる切り粉の発生がない。
【0022】スプリング受け部材18は内側の端面が塞がった筒状(正確には、圧縮コイルスプリング17の端面を受けるための太い部分と、圧縮コイルスプリング17内に嵌まり込む細い部分とを有する2段の筒状)に形成されている。
【0023】そして、圧縮コイルスプリング17のバネ力が適正値になるように、組み立て時の圧入作業の際にスプリング受け部材18の固定位置が調整され、孔19の内周面との間に隙間ができないように組み付けられている。
【0024】このように、Oリング等のシール部材を用いることなく、本体ブロック11に対するスプリング受け部材18の圧入固定部分の気密性を保証するためには、例えばネジロック又は溶接等を施してもよいが、スプリング受け部材18にバネ性の高い材料を用いてスプリングバックにより気密性を得てもよい。このように、シール用のOリング等を用いないので、切り粉等が原因となる冷媒漏れの可能性が非常に低くなっている。
【0025】なお、スプリング受け部材18を本体ブロック11より低硬度の材料で形成すれば圧入時に本体ブロック11から切り粉が発生せず、また、スプリング受け部材18と本体ブロック11を同じ材料(例えば共にアルミニウム合金)で形成すれば、切り粉の発生が全体に抑制される。
【0026】貫通孔14内に挿通されたロッド20は、軸線方向に摺動自在に設けられていて、その上端はパワーエレメント30の裏面付近に達し、中間部分が低圧冷媒流路12を垂直に横切って貫通孔14内に嵌合し、下端は、弁座孔15内を通って弁体16の頭部に当接している。なおロッド20は、弁座孔15の壁面との間が冷媒流路になるよう、弁座孔15に比べて細く形成されている。
【0027】弁体16と当接するロッド20の端面には、断面形状がV字状の円錐状の凹み22が形成されている。その結果、ロッド20の端面に対して弁体16が軽く嵌まり込んだ状態になっているので、弁体16が横方向にガタつかず、したがって弁体16が横方向に振動することによる振動音が発生しない。
【0028】パワーエレメント30は、剛性の高いステンレス鋼板製のハウジング31によって囲まれており、その外半部分は、ハウジング31と可撓性のある金属製薄板(例えば厚さ0.1mmのステンレス鋼板)からなるダイアフラム32によって気密に囲まれた気密室30aになっている。
【0029】気密室30a内には、冷媒流路12,13内に流されている冷媒と同じか又は性質の似ている飽和蒸気状態のガスが封入されていて、ガス封入用の注入孔は、栓34を溶接して閉塞されている。
【0030】ダイアフラム32の裏面に面して、大きな皿状に形成されたダイアフラム受け盤33が配置されていて、ダイアフラム受け盤33の裏面にロッド20の端部が当接している。したがってロッド20は、軸線方向に進退自在にダイアフラム受け盤33と弁体16との間に挟み付けられた状態に配置されている。
【0031】ダイアフラム受け盤33は、図2に斜視図が示されるように、三つの脚状部33aが折り曲げ形成された皿状になっており、板材からプレス加工により形成されている。
【0032】ダイアフラム受け盤33の裏面の中央部分には斜面36が形成され、脚状部33aは、ハウジング31の内周面に緩く嵌合してダイアフラム受け盤33の姿勢を安定させる機能を有している。また、脚状部33aが折り曲げられることにより切り欠かれた部分が冷媒通路40になっている。
【0033】ダイアフラム受け盤33に形成された斜面36に当接するロッド20の端面は、滑らかな曲面状に丸められている。ただし、斜面36に当接するロッド20の端面形状は円錐形その他各種の形状をとることができる。
【0034】本体ブロック11に形成された貫通孔14部分にはロッド20の中間部分が嵌合しており、貫通孔14の低圧冷媒流路側開口部14aから少し離れた位置には、ロッド20に突起23が突設されている。
【0035】このように突起23が形成されていることにより、ロッド20がそれ以上貫通孔14内に入り込まないので、組み立て時にロッド20を安定した状態に保持することができる。なお、貫通孔14の低圧冷媒流路側開口部14aは、テーパ状に面取りされている。
【0036】パワーエレメント30を全体的に囲むように形成されたハウジング31には、本体ブロック11と螺合する螺合部25が外面に形成されている。26はシール部材である。
【0037】ハウジング31の低圧冷媒流路12に面する部分の中央部分には、ロッド20が端部近傍で摺動自在に嵌合するロッド受け37が形成されており、これによってロッド20のガタ付きが規制されて騒音の発生が抑制されている。
【0038】ロッド受け37の周囲の低圧冷媒流路12に面する部分には、低圧冷媒流路12内を通過する冷媒をパワーエレメント30内に少量だけ導くための冷媒通過孔38がハウジング31に穿設されており、低圧冷媒流路12内を通過する冷媒の温度と圧力の状態変化がダイアフラム32の裏面に遅延されて緩やかに伝達されるので、膨張弁10が急激な動作変化をしない。
【0039】このように構成された膨張弁においては、低圧冷媒流路12内を流れる低圧冷媒の温度が下がると、ダイアフラム32の温度が下がって、パワーエレメント30の気密室30a内の飽和蒸気ガスがダイアフラム32の内表面で凝縮する。
【0040】すると、気密室30a内の圧力が下がってダイアフラム32が変位するので、ロッド20が圧縮コイルスプリング17に押されて移動し、その結果、弁体16が弁座孔15側に移動して高圧冷媒の流路面積が狭くなり、蒸発器1に送り込まれる冷媒の流量が減る。
【0041】低圧冷媒流路12内を流れる低圧冷媒の温度が上がると、上記と逆の動作により、パワーエレメント30で押されたロッド20によって弁体16が弁座孔15から離れる方向に移動させられ、高圧冷媒の流路面積が広がって、蒸発器1に送り込まれる高圧冷媒の流量が増える。
【0042】そして、ロッド20が当接するダイアフラム受け盤33側の当接面が斜面36になっていることにより、パワーエレメント30と圧縮コイルスプリング17とからロッド20が受ける力は、軸線の向きを変える方向にロッド20を回転させようとする偶力としても作用する。
【0043】その結果、ロッド20が進退する際には貫通孔14の内面壁との間において相当に大きな摩擦抵抗が発生するので、高圧冷媒流路13内の高圧冷媒に圧力変動があったとき、ロッド20の動作(即ち弁体16の開閉動作)がそれに対して敏感に反応しないので、高圧冷媒に圧力変動があっても弁体16の動作がそれに対して鋭敏に反応せず、動作が安定している。
【0044】
【発明の効果】本発明によれば、弁体をパワーエレメントの反対側から付勢する圧縮コイルスプリングを、一端が外部に開口するように本体ブロックに形成された孔内に配置して、圧縮コイルスプリングの固定端側を受けるスプリング受け部材を孔内に開口端側から圧入固定し、それによって孔の開口端側が気密に塞がれるようにしたことにより、螺合部を形成する必要がないのでねじ込みによる切り粉の発生がなく、しかもOリング等のシール材を装着する必要がないので、切り粉に起因する冷媒漏れ等を起こすおそれなくスプリング調整を確実に行うことができ、部品点数の削減にもなってコスト低減の効果も大きい。
【出願人】 【識別番号】000133652
【氏名又は名称】株式会社テージーケー
【出願日】 平成11年10月22日(1999.10.22)
【代理人】 【識別番号】100091317
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 和彦
【公開番号】 特開2001−124236(P2001−124236A)
【公開日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願番号】 特願平11−300850