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【発明の名称】 電磁弁制御方法,電磁弁制御装置および電磁弁制御プログラムを記録した記録媒体
【発明者】 【氏名】加藤 英雄

【氏名】前田 隆義

【氏名】土井 昭晴

【氏名】渥美 憲行

【氏名】山本 浩司

【要約】 【課題】電磁弁の反応速度または作動速度を向上させて,作動時間の誤差を小さくする。

【解決手段】電磁弁2の作動前に,CPU11は,定格電圧制御15を一定周期でオン状態とオフ状態に切り換えて,ディザ電圧を電磁弁2に印加し,電磁弁2の弁体を復帰位置付近で微振動させる。作動時に,CPU11は,駆動電圧制御回路14をオン状態にして,定格電圧の2倍の駆動電圧を電磁弁2に印加して,弁体を作動位置まで移動させる。作動位置に移動後,CPU11は,駆動電圧制御14をオフ状態にするとともに,定格電圧制御回路15をオン状態にして,定格電圧を電磁弁2に印加する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 複数の流路が形成された電磁弁の本体と,前記流路を切り換える弁体と,前記弁体に連結されたアーマチャと,電圧を印加することによって前記アーマチャを吸引し前記弁体を駆動して前記流路を切り換えるソレノイドと,前記弁体または前記アーマチャを吸引方向とは反対方向に付勢し,電圧の印加の解除により前記アーマチャおよび前記弁体を復帰させる付勢手段とを備えた電磁弁を駆動制御する電磁弁制御方法であって,前記弁体を駆動して前記流路を切り換える前に,前記流路が切り換わらない状態で前記弁体を微振動させるディザ電圧を前記ソレノイドに印加し,前記流路を切り換える時に,前記弁体を駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧を前記ソレノイドに印加し,前記流路を切り換えた後に,前記定格電圧を前記ソレノイドに印加する,ことを特徴とする電磁弁制御方法。
【請求項2】 請求項1において,前記弁体を駆動する際に行われる前記ディザ電圧の印加から前記駆動電圧の印加への切り換えを,毎回,前記ディザ電圧の1周期の中の同じ位置で行う,ことを特徴とする電磁弁制御方法。
【請求項3】 複数の流路が形成された電磁弁の本体と,前記流路を切り換える弁体と,前記弁体に連結されたアーマチャと,電圧を印加することによって前記アーマチャを吸引し前記弁体を駆動して前記流路を切り換えるソレノイドと,前記弁体または前記アーマチャを吸引方向とは反対方向に付勢し,電圧の印加の解除により前記アーマチャおよび前記弁体を復帰させる付勢手段とを備えた電磁弁を駆動制御する電磁弁制御方法であって,前記弁体を駆動して前記流路を切り換える前に,前記流路が切り換わらない状態で前記弁体を微振動させるディザ電圧を前記ソレノイドに印加し,前記流路を切り換える時に,毎回,前記ディザ電圧の1周期の中の同じ位置で,前記弁体を駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧を前記ソレノイドに印加する,ことを特徴とする電磁弁制御方法。
【請求項4】 請求項1から3のいずれか1項において,前記ディザ電圧が最大となる時に,前記ディザ電圧から前記駆動電圧への切り換えを行う,ことを特徴とする電磁弁制御方法。
【請求項5】 請求項4において,前記ディザ電圧が矩形状に変化するものであり,前記ディザ電圧から前記駆動電圧への切り換えを,前記ディザ電圧がハイレベルからローレベルに切り換わる直前に行う,ことを特徴とする電磁弁制御方法。
【請求項6】 複数の流路が形成された電磁弁の本体と,前記流路を切り換える弁体と,前記弁体に連結されたアーマチャと,前記アーマチャを吸引するソレノイドと,前記弁体または前記アーマチャを吸引方向とは反対方向に付勢する付勢手段とを備えた電磁弁を駆動制御する電磁弁制御装置であって,前記流路を切り換える前に,前記流路が切り換わらない状態で前記弁体を微振動させるディザ電圧を前記ソレノイドに印加するディザ電圧印加手段と,前記流路を切り換える時に,前記弁体および前記アーマチャを前記付勢手段に抗して駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧を前記ソレノイドに印加する駆動電圧印加手段と,前記流路を切り換わった後に,前記定格電圧を前記ソレノイドに印加する定格電圧印加手段と,を備えていることを特徴とする電磁弁制御装置。
【請求項7】 複数の流路が形成された電磁弁の本体と,前記流路を切り換える弁体と,前記弁体に連結されたアーマチャと,電圧を印加することによって前記アーマチャを吸引するソレノイドと,前記弁体または前記アーマチャを吸引方向とは反対方向に付勢する付勢手段とを備えた電磁弁をコンピュータによって駆動制御するための電磁弁制御プログラムを記録した記録媒体であって,前記流路を切り換える前に,前記流路が切り換わらない状態で前記弁体を微振動させるディザ電圧を電源から前記ソレノイドに印加する手順と,前記流路を切り換える時に,前記弁体および前記アーマチャを前記付勢手段に抗して駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧を電源から前記ソレノイドに印加する手順と,前記流路を切り換えた後に,前記定格電圧を電源から前記ソレノイドに印加する手順と,を備えていることを特徴とする電磁弁制御プログラムを記録した記録媒体。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,電磁弁の動作を制御する制御装置および制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】直接噴射エンジンには,特開平2−191865号公報の図2に示されるように,排気ガス(NOx等)の低減や同量の燃料での爆発エネルギーの増加を図るために,電磁弁を用いて,燃料の噴射タイミングを変更するものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような電磁弁を用いた燃料の噴射タイミングの制御において,電磁弁の作動時間の誤差は燃料の噴射タイミングの誤差につながる。このため,電磁弁の作動時間の誤差はできるだけ小さい方が好ましい。
【0004】電磁弁の作動時間の誤差は,この作動時間の長さに比例して大きくなるので,作動時間の誤差を小さくするためには,電磁弁の作動時間を短くすることが有効である。電磁弁の作動時間を短くするためには,電磁弁の反応速度(励磁から電磁弁が稼動開始するまでの時間)または電磁弁の作動速度(電磁弁の稼動開始から稼動修了までの時間)を速くすることが考えられる。
【0005】本発明は,このような状況に鑑みなされたものであり,その課題は,電磁弁の反応速度または作動速度を向上させて,作動時間の誤差を小さくすることにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】前記課題を達成するために,本願請求項1に記載の発明に係る電磁弁制御方法は,複数の流路が形成された電磁弁の本体と,前記流路を切り換える弁体と,前記弁体に連結されたアーマチャと,電圧を印加することによって前記アーマチャを吸引し前記弁体を駆動して前記流路を切り換えるソレノイドと,前記弁体または前記アーマチャを吸引方向とは反対方向に付勢し,電圧の印加の解除により前記アーマチャおよび前記弁体を復帰させる付勢手段とを備えた電磁弁を駆動制御する電磁弁制御方法であって,前記弁体を駆動して前記流路を切り換える前に,前記流路が切り換わらない状態で前記弁体を微振動させるディザ電圧を前記ソレノイドに印加し,前記流路を切り換える時に,前記弁体を駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧を前記ソレノイドに印加し,前記流路を切り換えた後に,前記定格電圧を前記ソレノイドに印加する,ことを特徴とする。
【0007】本願請求項1に記載の発明によると,弁体を駆動して流路を切り換える前に,ディザ電圧がソレノイドに印加され,弁体は微振動する。流路を切り換える時,該弁体を駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧がソレノイドに印加され,弁体は駆動する。そして,流路を切り換えた後,定格電圧がソレノイドに印加され,弁体は流路を切り換えた状態で維持される,このように,弁体を駆動して流路を切り換える前に,流路が切り換わらない状態で弁体を微振動させるディザ電圧をソレノイドに印加するので,駆動前に弁体が微振動して摺動抵抗を減少させることができ,その結果,弁体が駆動を開始する反応速度を速くすることができる。
【0008】また,流路を切り換える時に,弁体を駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧をソレノイドに印加するので,ソレノイドの吸引力が増加し,弁体の作動速度を早めることができる。
【0009】さらに,流路を切り換えた後に,定格電圧をソレノイドに印加するので,駆動電圧を印加し続けることによるソレノイドの焼き付きを防止することができ,ソレノイドの耐久性,ひいては電磁弁の耐久性を維持することもできる。
【0010】本願請求項2に記載の発明に係る電磁弁制御方法は,請求項1において,前記弁体を駆動する際に行われる前記ディザ電圧の印加から前記駆動電圧の印加への切り換えを,毎回,前記ディザ電圧の1周期の中の同じ位置で行う,ことを特徴とする。
【0011】本願請求項2に記載の発明によると,弁体を駆動する際に行われる前記ディザ電圧の印加から前記駆動電圧の印加への切り換えを,毎回,ディザ電圧の1周期の中の同じ位置で行うので,弁体は,毎回,ほぼ同じ振動状態において,微振動の状態から駆動状態に切り換えられることとなる。これにより,毎回の微振動から駆動への反応速度もほぼ同じにすることができ,各回の反応速度の誤差の変化を小さくすることができる。
【0012】本願請求項3に記載の発明に係る電磁弁制御方法は,複数の流路が形成された電磁弁の本体と,前記流路を切り換える弁体と,前記弁体に連結されたアーマチャと,電圧を印加することによって前記アーマチャを吸引し前記弁体を駆動して前記流路を切り換えるソレノイドと,前記弁体または前記アーマチャを吸引方向とは反対方向に付勢し,電圧の印加の解除により前記アーマチャおよび前記弁体を復帰させる付勢手段とを備えた電磁弁を駆動制御する電磁弁制御方法であって,前記弁体を駆動して前記流路を切り換える前に,前記流路が切り換わらない状態で前記弁体を微振動させるディザ電圧を前記ソレノイドに印加し,前記流路を切り換える時に,毎回,前記ディザ電圧の1周期の中の同じ位置で,前記弁体を駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧を前記ソレノイドに印加する,ことを特徴とする。
【0013】本願請求項3に記載の発明によると,前記本願請求項1と同様に,弁体を駆動して流路を切り換える前に,流路が切り換わらない状態で弁体を微振動させるディザ電圧をソレノイドに印加するので,駆動前に弁体が微振動して摺動抵抗を減少させることができ,その結果,弁体が駆動を開始する反応速度を速くすることができる。
【0014】また,弁体を駆動する際に行われる前記ディザ電圧の印加から前記駆動電圧の印加への切り換えを,毎回,ディザ電圧の1周期の中の同じ位置で行うので,弁体は,毎回,ほぼ同じ振動状態において,微振動の状態から駆動状態に切り換えられることとなる。これにより,毎回の微振動から駆動への反応速度もほぼ同じにすることができ,各回の反応速度の誤差の変化を小さくすることができる。
【0015】本願請求項4に記載の発明に係る電磁弁制御方法は,請求項1から3のいずれか1項において,前記ディザ電圧が最大となる時に,前記ディザ電圧から前記駆動電圧への切り換えを行う,ことを特徴とする。
【0016】ディザ電圧が最大となる時は,弁体が微振動状態において吸引方向に移動している。したがって,本願請求項4に記載の発明によると,弁体が微振動状態において吸引方向に移動している時にディザ電圧から駆動電圧に切り換えるので,弁体の駆動への反応速度を速くすることができる。
【0017】本願請求項5に記載の発明に係る電磁弁制御方法は,請求項4において,前記ディザ電圧が矩形状に変化するものであり,前記ディザ電圧から前記駆動電圧への切り換えを,前記ディザ電圧がハイレベルからローレベルに切り換わる直前に行う,ことを特徴とする。
【0018】ディザ電圧が矩形状に変化する場合において,ディザ電圧がローレベルからハイレベルに変化すると,弁体は吸引方向に移動を開始する。そして,ハイレベルからローレベルに切り換わる直前において,弁体は,吸引方向に最も多く移動している。本願請求項5に記載の発明によると,この時に,ディザ電圧から駆動電圧への切り換えを行うので,弁体の反応速度をより速くすることができる。
【0019】本願請求項6に記載の発明に係る電磁弁制御装置は,複数の流路が形成された電磁弁の本体と,前記流路を切り換える弁体と,前記弁体に連結されたアーマチャと,前記アーマチャを吸引するソレノイドと,前記弁体または前記アーマチャを吸引方向とは反対方向に付勢する付勢手段とを備えた電磁弁を駆動制御する電磁弁制御装置であって,前記流路を切り換える前に,前記流路が切り換わらない状態で前記弁体を微振動させるディザ電圧を前記ソレノイドに印加するディザ電圧印加手段と,前記流路を切り換える時に,前記弁体および前記アーマチャを前記付勢手段に抗して駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧を前記ソレノイドに印加する駆動電圧印加手段と,前記流路を切り換わった後に,前記定格電圧を前記ソレノイドに印加する定格電圧印加手段と,を備えていることを特徴とする。
【0020】本願請求項6に記載の発明によると,本願請求項1に係る発明と同様の作用効果を得ることができる。
【0021】本願請求項7に記載の発明に係る電磁弁制御プログラムを記録した記録媒体は,複数の流路が形成された電磁弁の本体と,前記流路を切り換える弁体と,前記弁体に連結されたアーマチャと,電圧を印加することによって前記アーマチャを吸引するソレノイドと,前記弁体または前記アーマチャを吸引方向とは反対方向に付勢する付勢手段とを備えた電磁弁をコンピュータによって駆動制御するための電磁弁制御プログラムを記録した記録媒体であって,前記流路を切り換える前に,前記流路が切り換わらない状態で前記弁体を微振動させるディザ電圧を電源から前記ソレノイドに印加する手順と,前記流路を切り換える時に,前記弁体および前記アーマチャを前記付勢手段に抗して駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧を電源から前記ソレノイドに印加する手順と,前記流路を切り換えた後に,前記定格電圧を電源から前記ソレノイドに印加する手順と,を備えていることを特徴とする。
【0022】本願請求項7に記載の発明によると,本願請求項1に係る発明と同様の作用効果を得ることができるとともに,この記録媒体に記録された電磁弁制御プログラムを読み取って実行することができる電磁弁制御装置であれば,任意のそのような電磁弁制御装置に,本願請求項1に係る発明と同様の作用効果をもたらすことができる。
【0023】
【発明の実施の形態】図1は,エンジンに燃料油を噴射する燃料噴射装置の概略構成図である。この燃料噴射装置は,本発明に係る電磁弁制御装置1,電磁弁制御装置1によって駆動制御される電磁弁2,エンジン5に燃料油(たとえば重油)を噴射する燃料噴射ポンプ3,および電磁弁2により流路が切り換えられる流体(たとえば油や燃料油)を蓄えたタンク4を備えている。
【0024】電磁弁制御装置1は,電磁弁2を駆動制御して,タンク4と燃料噴射ポンプ3のシリンダ・ユニット31とを結ぶ流体の流路を切り換える。これにより,シリンダ・ユニット31が駆動制御され,燃料油33の噴射弁51への送り込みと,新たな燃料油33の燃料噴射ポンプ3への供給とが行われる。
【0025】具体的には,流体が,電磁弁2のポート26を介して油圧ポンプqからシリンダ室312に供給されるとともに,シリンダ室311から電磁弁2のポート27を介してタンク4に排出されると,ピストン32が上昇し,燃料油がエンジン5の燃料弁51に送り込まれる。燃料弁51に送り込まれた燃料油は,エンジン5のシリンダ53内に注入され,シリンダ53内で爆発燃焼する。この爆発燃焼による動力がピストン52を介してクランク軸(出力軸)54へ伝達され,クランク軸54が回転する。
【0026】流体が,電磁弁2のポート27を介して油圧ポンプqからシリンダ室311に供給されるとともに,シリンダ室312から電磁弁2のポート26を介してタンク4へ排出されると,ピストン32が下降して,次の爆発燃焼のための燃料油33が,燃料噴射ポンプ3内に注入される。
【0027】電磁弁制御装置1は,エンジン5の回転数に応じた適切な燃料噴射タイミングでエンジン5に燃料油33が噴射されるように,電磁弁2を適切なタイミングで駆動制御する。
【0028】エンジン5のクランク軸54には,図示しないターニング・ギアと,このターニング・ギアの回転角度を検出するための2つの回転角度検出器55および56とが取り付けられている。回転角度検出器55は,ターニング・ギアの特定された1つの歯を検出し,クランク角が0度となるごとに1つのパルス信号を電磁弁制御装置1に出力する。回転角度検出器56は,ターニング・ギアの各歯を検出するごとに1つのパルス信号を電磁弁制御装置1に出力する。電磁弁制御装置1は,これらのパルス信号によって,電磁弁2を駆動制御する適切なタイミングを決定する。
【0029】図2は,電磁弁2の詳細な構成を示す側断面図である。電磁弁2は,本体21,弁体22,アーマチャ23,ソレノイド24,および付勢手段であるバネ25を備えている。通路28は油圧ポンプqに、通路29はタンク4に各々接続されている。
【0030】ソレノイド24は,電磁弁制御装置1(図1参照)に接続され,後述するディザ電圧,駆動電圧または定格電圧を印加される。図2は,ソレノイド24にこれらの電圧が印加されていない状態を示し,この状態では,弁体22およびアーマチャ23は,バネ25の付勢力によって復帰位置に戻っている。この復帰位置において,流体は,油圧ポンプq(図1参照)から電磁弁2のポート27を介してシリンダ室311(図1参照)に供給されるとともに,シリンダ室312(図1参照)から電磁弁2のポート26を介してタンク4に排出される。これにより,燃料油33が燃料噴射ポンプ3内に注入される。
【0031】ソレノイド24に駆動電圧または定格電圧が印加されると,アーマチャ23は,ソレノイド24に吸引されて,バネ25側に向かって(図2における右方向に)移動する。これにより,弁体22も,バネ25の付勢力に抗してバネ25側に向かって移動し,作動位置で停止する。この作動位置において,流体は,油圧ポンプqから電磁弁2のポート26を介してシリンダ室312に供給されるとともに,シリンダ室311から電磁弁2のポート27を介してタンク4に排出される。これにより,ピストン32が上昇し,燃料油33がエンジン5の燃料弁51に送り込まれる。
【0032】ソレノイド24への電圧の印加が解除されると,弁体22およびアーマチャ23は,バネ25の付勢力によって,再び復帰位置に戻る。
【0033】図3は,電磁弁制御装置1の概略構成図である。電磁弁制御装置1は,CPU11,ROM12,RAM13,駆動電圧制御回路14,定格電圧制御回路15,2つの直列接続された24[V]の電源16および17,ならびに発振器18を備えている。
【0034】ROM12には,電磁弁2を駆動制御するための電磁弁制御プログラム,エンジンの回転数と最適な燃料噴射タイミングとを対応させたテーブル・データ,ディザ電圧の印加を継続させる時間(以下「ディザ電圧継続時間」という。)t,駆動電圧の印加を継続させる時間(以下「駆動電圧継続時間」という。)t,定格電圧の印加を継続させる時間(以下「定格電圧継続時間」という。)t等があらかじめ記憶されている。
【0035】CPU11は,ROM12に記憶された電磁弁制御プログラムを実行して,駆動電圧制御回路14および定格電圧制御回路15を制御し,電磁弁2の駆動制御を行う。CPU11には,前述した回転角度検出器55および56からの各パルス信号が入力され,これらのパルス信号および発振器18のクロック信号が,電磁弁2の駆動制御において利用される。
【0036】回転角度検出器55からのパルス信号は,主として,回転角度検出器56が検出ミスをした場合であっても,クランク角が0度となった時を正確に検知して,電磁弁2を適切なタイミングで駆動制御できるようにするために利用される。回転角度検出器56からのパルス信号は,後述するように,エンジン5の回転数および加速度または減速度を検出し,電磁弁2を駆動制御するタイミングを決定するために利用される。
【0037】駆動電圧制御回路14の一方の端子は,電源16のマイナス端子に接続され,他方の端子は,電磁弁2(ソレノイド24)を介して電源17のプラス端子に接続されている。定格電圧制御回路15の一方の端子は,電源17のマイナス端子に接続され,他方の端子は,電磁弁2(ソレノイド24)を介して電源17のプラス端子に接続されている。
【0038】駆動電圧制御回路14および定格電圧制御回路15は,電磁弁2(ソレノイド24)への電圧印加をスイッチングするスイッチング回路として構成されている。駆動電圧制御回路14がCPU11によってオン状態にされると,直列接続された電源16および17による48[V]の駆動電圧が電磁弁2のソレノイド24に印加される。駆動電圧制御回路14がCPU11によってオフ状態にされると,ソレノイド24への48[V]の電圧の印加が解除される。定格電圧制御回路15がCPU11によってオン状態にされると,電源17による24[V]の定格電圧が電磁弁2のソレノイド24に印加される。定格電圧制御回路15がCPU11によってオフ状態にされると,ソレノイド24への電圧の印加が解除される。後述するように,定格電圧制御回路15のオン状態とオフ状態とを短い周期で繰り返すことにより,24[V]のディザ電圧がソレノイド24に印加される。
【0039】RAM13は,CPU11が電磁弁駆動制御プログラムを実行する時に生成される中間データ等を記憶するためのワークエリアとして利用される。
【0040】図4および図5は,電磁弁制御プログラムの処理の流れを示すフローチャートである。このフローチャートにおけるステップS1からS13までの一連の処理は,エンジン5(図1参照)において1回の爆発燃焼が行われるごとに実行される。図6は,電磁弁制御装置1によるソレノイド24への印加電圧V,この印加電圧Vに伴う弁体22の動作M,電磁弁2のポート26(シリンダ・ユニット31(図1参照)のシリンダ室312の圧力)P,およびシリンダ・ユニット31のシリンダの動作Mを示すグラフである。弁体22の動作Mのうち,実線は本発明による場合の動作を,破線は駆動電圧を印加するがディザ電圧を印加しない場合の動作を,一点鎖線は駆動電圧およびディザ電圧をともに印加しない場合の動作を,それぞれ示す。
【0041】まず図4を参照して,回転角度検出器56からのパルス信号に基づいて,エンジン5の回転数(クランク軸54の回転数)および加速度または減速度が検出される(ステップS1)。
【0042】次に,前述した,ROM12に記憶されたテーブル・データが参照され,ステップS1で検出されたエンジンの回転数および加速度または減速度の値から,エンジン5に燃料油を噴射するのに最適な燃料噴射タイミングが決定される(ステップS2)。
【0043】次に,ソレノイド24に駆動電圧(48[V])を印加するタイミング(以下「励磁タイミングT」という。)が算出される(ステップS3)。この励磁タイミングTは,ソレノイド24へ電圧を印加(励磁)してから燃料油がエンジン5に噴射されるまでの遅延時間を最適な燃料噴射タイミングに加えることにより求められ,クランク軸54の回転角度として算出される。なお,クランク軸54の回転角度として算出するのは,回転検出器56からのパルス信号によって,励磁タイミングTを検知することができるからである。
【0044】続いて,励磁タイミングT前に,ソレノイド24にディザ電圧を印加するために,ディザ電圧の印加を開始するディザ電圧印加タイミングTが算出される(ステップS4)。この算出は,励磁タイミングTからディザ電圧継続時間t[秒](たとえば40[ミリ秒])を引算することにより行われる。
【0045】続いて,ディザ電圧印加タイミングTが,発振器18からのクロック信号を利用するCPU11の内部タイマにより検出され(ステップS5),検出時にディザ電圧がソレノイド24に印加される(ステップS6)。
【0046】ディザ電圧は,CPU11が定格電圧制御回路15のオン状態とオフ状態とを一定周期で切り換えることに生成される。この周期としては,弁体22およびアーマチャ23は復帰位置付近で微振動し,作動位置へは移動しない周期(たとえば,1[ミリ秒]のオン状態と2[ミリ秒]のオフ状態の周期)が選ばれる。これにより,ソレノイド24には,一定周期で24[V]の電圧が印加され,弁体22は,図6の実線による動作Mに示すように,流路を切り換えることなく,復帰位置付近で微振動する。
【0047】このディザ電圧は,後述するステップS8において駆動電圧が印加されるまでのディザ電圧継続時間tの間継続して印加される。これにより,弁体22の摺動抵抗が減少するので,ステップS8において駆動電圧が印加され,弁体22が作動位置に移動を開始する際に,その反応速度を速くすることができる。
【0048】続いて,回転角度検出器56からのパルス信号に基づいて励磁タイミングTになったかどうかが判定される(ステップS7)。励磁タイミングTになると(ステップS7でYes),48[V]の駆動電圧が印加される(ステップS8)。これにより,図6に示すように,励磁タイミングTより僅かに遅延して,弁体22は作動位置に移動を開始するとともに,2次側圧力は上昇し,シリンダ・ユニット31のシリンダが原点からストローク・エンドに向かって移動を開始する。なお,2次側圧力Pの符号aで示す圧力の上昇は,シリンダがストローク・エンドに到達した際に生じるサージ圧によるものである。
【0049】駆動電圧は,定格電圧よりも高いので(本実施の形態では定格電圧の2倍),弁体22およびアーマチャ23を定格電圧で移動させる場合よりも高速に移動させることができる。
【0050】また,駆動電圧の印加は,ディザ電圧がハイ・レベル(24[V])の時またはロー・レベル(0[V])の時のいずれの時にでも行うことができるが,駆動電圧の印加時は,毎回,ディザ電圧の1周期の中の同じ位置で行われることが好ましい。このようにすることにより,弁体22が,毎回,ほぼ同じ振動状態において,微振動の状態から駆動状態に切り換えられることとなり,これにより,毎回の微振動から駆動への反応速度もほぼ同じにすることができ,各回の反応速度の誤差の変化を小さくすることができるからである。
【0051】さらに,駆動電圧の印加は,ディザ電圧がハイ・レベルからロー・レベルに切り換わる直前に行われることがより一層好ましい。ディザ電圧がハイ・レベルからロー・レベルに切り換わる直前では,弁体22およびアーマチャ23が,微振動において復帰位置から作動位置側に向かって最も移動している時であり,さらにその移動の慣性力も利用できるので,弁体22の反応速度をより速くすることができるからである。
【0052】なお,このように,ディザ電圧がハイ・レベルからロー・レベルに切り換わる直前に,駆動電圧を印加するために,ディザ電圧の印加開始タイミングTを,回転検出器56からのパルス信号に同期させて調整することができる。
【0053】続いて,図5に移って,駆動電圧印加後,CPU11の内部タイマにより,駆動電圧継続時間t[秒]が計時される(ステップS9)。この時間が経過すると(ステップS9でYes),経過時に,ソレノイド24に印加される電圧は,駆動電圧から24[V]の定格電圧に切り換えられる(ステップS10)。この切り換えは,駆動電圧制御回路14をオフ状態にするとともに,定格電圧制御回路15をオン状態にすることにより行われる。駆動電圧継続時間tとしては,弁体22が作動位置に移動するのに十分な時間が選ばれる。
【0054】このように,作動位置への移動後は,ソレノイド24に印加される電圧が定格電圧に切り換わるので,ソレノイド24の焼き付きを防止することができ,ソレノイド24の耐久性,ひいては電磁弁2の耐久性を維持することができる。
【0055】続いて,定格電圧を定格電圧継続時間t[秒]の間印加し続けた後(ステップS11),電圧の印加が解除される(ステップS12)。これにより,図6に示すように,印加電圧解除後遅延して,弁体22は復帰位置に戻り,これに伴い,2次側圧力は減少し,シリンダも原点に戻る。定格電圧継続時間tとしては,燃料噴射ポンプ3がエンジン5に燃料を供給し終えるのに十分な時間が選ばれる。
【0056】その後,エンジン5の回転を停止するかどうかが判定され(ステップS13),停止しない場合には(ステップS13でNo),図4のステップS1からの処理が繰り返される。エンジ5ンの回転を停止する場合には(ステップS13でYes),処理は終了する。
【0057】図6の弁体22の動作Mのグラフが示すように,本発明によると,ディザ電圧および駆動電圧を印加するので,励磁タイミングTから弁体22の動作開始を,ディザ電圧と駆動電圧との双方を印加しない場合(一点鎖線)および駆動電圧のみを印加する場合(破線)よりも速くすることができるとともに,弁体22の復帰位置から作動位置までの移動時間も短くすることができる。
【0058】なお,本実施の形態では,ディザ電圧を,ハイ・レベルとロー・レベルとを繰り返すデジタル矩形波の電圧として構成したが,アナログ交流波の電圧として構成することもできる。また,アナログ交流波の電圧とした場合において,駆動電圧の印加が,ディザ電圧が最大値となる時に行われるように,ディザ電圧の印加タイミングを調整することができる。これにより,弁体が微振動状態において吸引方向に移動している時に,ディザ電圧から駆動電圧への切り換えが行われるので,弁体の駆動への反応速度を速くすることができる。
【0059】また,本実施の形態では,電磁弁制御プログラムをROMに記憶しているが,このプログラムを,他の記録媒体(フロッピィ・ディスク,メモリ・カード,磁気テープ,光磁気ディスク,ハードディスク等)に記録しておき,この記録媒体から記録媒体読み取り装置によって読み取って実行することもできる。
【0060】さらに、本実施の形態では、ディザ電圧と定格電圧とを定格制御回路により電磁弁に印加しているが、各々別の制御回路を形成してもよい。このとき、定格電圧は、弁体を保持可能な24[V]よりも低い電圧になるようにしてもよい。
【0061】
【発明の効果】本発明によると,電磁弁の弁体を駆動して流路を切り換える前に,流路が切り換わらない状態で弁体を微振動させるディザ電圧をソレノイドに印加するので,駆動前に弁体が微振動して摺動抵抗を減少させることができ,その結果,弁体が駆動を開始する反応速度を速くすることができる。
【0062】また,流路を切り換える時に,弁体を駆動する定格電圧よりも高い駆動電圧をソレノイドに印加するので,ソレノイドの吸引力が増加し,弁体の作動速度を早めることができる。
【0063】これらの電磁弁の反応速度または作動速度の向上により,作動時間の誤差を小さくすることができる。
【0064】さらに,流路を切り換えた後に,定格電圧をソレノイドに印加するので,駆動電圧を印加し続けることによるソレノイドの焼き付きを防止することができ,ソレノイドの耐久性,ひいては電磁弁の耐久性を向上させることもできる。
【出願人】 【識別番号】000004019
【氏名又は名称】株式会社ナブコ
【出願日】 平成11年10月28日(1999.10.28)
【代理人】 【識別番号】100095452
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 博樹
【公開番号】 特開2001−124232(P2001−124232A)
【公開日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願番号】 特願平11−307206