トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 ソレノイドバルブ
【発明者】 【氏名】近藤 靖裕

【氏名】鈴木 秀之

【氏名】倉橋 哲郎

【氏名】宮崎 徹也

【氏名】志村 周

【要約】 【課題】流体力の変動を抑制しリニア弁として使用可能にする。

【解決手段】ポペットの先端部に球面部を設け、開弁時に、シート面と球面部との間にシート面と前球面部との接触部を起点とした短い第1の流路が流出側に形成されると共に、第1の流路と連続し、かつ第1の流路から急激に流路断面積が拡大する第2の流路が形成されるようにし、第1の流路のポペットの移動方向と直交する平面への投影面積A1と、球面部の直径と同一の直径の円の面積Abとの比A1/Abが、以下の式を満足するようにする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】下流側が拡開したシート面が形成されたシート部と、前記シート部のシート面に対して接近及び離反する方向に移動して流路を開閉する弁体と、を備えたソレノイドバルブにおいて、開弁時に、前記シート面と前記弁体の先端部との間に前記シート面と前記弁体の先端部との接触部を起点とした短い第1の流路が流出側に形成されると共に、該第1の流路と連続し、かつ該第1の流路から急激に流路断面積が拡大する第2の流路が形成されるようにしたことを特徴とするソレノイドバルブ。
【請求項2】前記第1の流路の前記弁体の移動方向と直交する平面への投影面積A1と、前記弁体の流体力が作用する部分の前記平面への投影面積A2との比A1/A2が、以下の式を満足するようにしたことを特徴とする請求項1記載のソレノイドバルブ。
0.02≦A1/A2≦0.2【請求項3】前記弁体の先端部に球面部を設け、前記第1の流路の前記弁体の移動方向と直交する平面への投影面積A1と、直径が前記弁体の球面部の直径と同一の円の面積Abとの比A1/Abが、以下の式を満足するようにしたことを特徴とする請求項1記載のソレノイドバルブ。
0.02≦A1/Ab≦0.2
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ソレノイドバルブに係り、特に、ブレーキの油圧を制御するソレノイドバルブに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】ソレノイドバルブは、下流側が拡開したシート面が形成されたシート部、シート部の下流側に設けられ、シート面に対して接近及び離反する方向に移動して流路を開閉する先端に球面部が形成された弁体、弁体の基端に固定された鉄心、鉄心を介して弁体をシート面方向に常時付勢するばね、及び鉄心を吸引して弁体を移動させるソレノイドで構成されている。このソレノイドバルブは、ソレノイドに通電する電流の制御によりソレノイドの吸引力を制御して弁体を移動し、弁体に作用する力(ソレノイドの吸引力、ばねの弾性力、流体力)の釣り合いを利用して出口流量を制御することにより、出口圧を制御している。なお、この流体力は、弁体の先端部に作用する流体の圧力と弁体の先端部の流体の圧力が作用している部分の面積との積で表される。
【0003】従来よりソレノイドバルブの一種である弁体としてポペットを用いたポペット弁は、ABS制御時の増減圧の切り換えに用いられており、リニア弁としてではなく、オンオフ制御弁(すなわち、開度を全閉、全開に制御する弁)として用いられているため、制御性に対しては流体力の影響を考慮する必要はなかった。
【0004】ところが、ポペット弁を全開、全閉するだけでなく、その間の開度も制御する場合には、制御性に対して流体力が大きく影響することになる。
【0005】この場合、流体力の変動が大きい場合には、フィードフォワード制御だけでは目標ブレーキ圧に制御することが困難なため、フィードバック制御が必要となり、フィードバック制御分だけ応答性が悪化する。一方、流体力の変動が小さい場合には、フィードフォワード制御だけで目標ブレーキ圧に制御することができ、フィードバック制御があまり必要とならないため、応答性が向上する。このため、圧力を精度良く制御するためには、流体力の変動が小さいポペット弁が必要になる。
【0006】ブレーキは、種々の入口圧と出口圧の組み合わせで使用されるが、従来のポペット弁では図1に示すように圧力条件により開度に対する流体力が変動する。したがって、実際の制御において流体力を精度良く予測することが困難となり、これにより電流−流量の制御精度が悪化する、という問題があった。
【0007】本発明は、上記従来の問題点を解消するためになされたもので、流体力の変動を抑制してリニア弁としての使用に適したソレノイドバルブを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】流体力の変動が大きくなる原因は、ソレノイドバルブの入口圧及び出口圧の大きさによって、バルブ内部にキャビテーションが発生する条件が異なり、バルブ内部の圧力分布が変化するためであると考えられる。これにより、本発明者は、キャビテーションの発生によって生じるバルブ内部の圧力分布の変化領域を小さくするか、バルブ内部の圧力分布が変化してキャビテーションが発生したとしてもキャビテーションが発生する部分の表面積を小さくすれば、弁開度に対する流体力の変動を小さくすることができる、との知見を得た。
【0009】本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、下流側が拡開したシート面が形成されたシート部と、前記シート部のシート面に対して接近及び離反する方向に移動して流路を開閉する弁体と、を備えたソレノイドバルブにおいて、開弁時に、前記シート面と前記弁体の先端部との間に前記シート面と前記弁体の先端部との接触部を起点とした短い第1の流路が流出側に形成されると共に、該第1の流路と連続し、かつ該第1の流路から急激に流路断面積が拡大する第2の流路が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0010】本発明によれば、開弁時に、シート面と弁体の先端部との間にシート面と弁体の先端部との接触部を起点とした短い第1の流路が流出側に形成されると共に、この短い流路に連続して急激に流路断面積が拡大する第2の流路が形成されるので、キャビテーションの発生を抑制すると共に、キャビテーションが発生する表面積を小さくすることができ、これにより流体力の変動を抑制することができる。なお、第1の流路は、シート面と弁体の先端部との間に形成されるシート面と弁体の先端部との接触部を起点とした流入側流路より短くすることができる。
【0011】本発明では、前記第1の流路の前記弁体の移動方向と直交する平面への投影面積A1と、前記弁体の流体力が作用する部分の前記平面への投影面積A2との比A1/A2が、以下の式を満足するようにシート面の形状及び弁体の先端部の形状を定めるのが好ましい。
【0012】
0.02≦A1/A2≦0.2 ・・・(1)
ここで、比A1/A2を上記の範囲としたのは、比が0.2を越えると圧力条件の変動によって所定開度に対する流体力の変動が大きくなるので好ましくなく、比A1/A2は0.2以下であればよいが0.02以上であるのがシール性、耐久性の面で実用的であるからである。
【0013】本発明では、弁体の先端部に球面部を設けることができる。
【0014】また、本発明において、弁体の先端部に球面部を設け、前記第1の流路の前記弁体の移動方向と直交する平面への投影面積A1と、直径が前記弁体の球面部の直径と同一の円の面積Abとの比A1/Abが、以下の式を満足するようにすることもできる。
【0015】
0.02≦A1/Ab≦0.2 ・・・(2)
投影面積A2は、直径が弁体の球面部の直径と同一の円の面積Abで近似できるので、上記(2)式の比A1/Abは、比A1/A2と近似した値になる。従って、比A1/Abを上記(2)式に示すように(1)式と同様の範囲に定めることにより、上記と同様に流体力の変動を抑制することができる。
【0016】ここで、シート部のシート面の形状を円錐台状に形成したときのシート面の最大直径Ds、弁体の球面部の曲率から得られる直径Db、及び弁体の先端部の直径Dbのうち最小な直径をD、シート部と弁体の球面部とが接触して得られる円の直径をDtとするとき、面積A1、Abは、 A1=0.25π(D2−Dt2) ・・・(3)
Ab=0.25πDb2 ・・・(4)
と表すことができる。
【0017】本発明によれば、所定開度に対する流体力の変動を小さくすることができるので、実際の制御において弁開度に対する流体力を精度良く予測することが可能になり。これにより、電流−流量の制御精度が向上するため、フィードフォワード制御が可能になり、応答性を向上することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明をポペット弁に適用した場合の実施の形態を詳細に説明する。
【0019】図2に示すように、本実施の形態のポペット弁は、バルブ全体を収納し、かつ一端側の側面に出力ポート10Aが形成されると共に、非磁性体で構成されたハウジング10を備えている。ハウジング10内部は、隔壁10Bによって2つの部屋に分割されており、この隔壁10Bには2つの部屋に跨って軸方向に移動可能に略円柱状のポペット12が支持されている。
【0020】ポペット12の先端部には曲率2/Db(直径Db)の球体の略1/2の球面からなる球面部12Aが形成され、ハウジング10のポペット12の先端部が位置する部屋には、シート部14が設けられている。シート部14には、入力ポート14Aと、ポペット12の球面部12Aが入出可能なように、入力ポート14Aの下流側端部から円錐台状に拡開した空間14Bとによって形成された流体の流路が形成されている。この空間14Bを形成する面は、ポペット12の球面部12Aが当接して流路を開閉するシート面14Cとして作用する。
【0021】ポペット12の基端部は、ハウジング10の他方の部屋内に位置し、ポペット12の基端部には、この部屋内にポペット12の軸方向に移動可能に収納された鉄心16が固定されている。また、ハウジング10の鉄心16が収納された部屋には、ばね18と磁性体19とが収納されており、ポペット12は鉄心16を介してばね18によって、シート部14のシート面14Cに当接するように常時付勢されている。
【0022】また、ハウジング10の外周には、鉄心16を囲むように、ボビンに巻回されたソレノイド20が配置されている。
【0023】このポペット弁によれば、ソレノイド20に通電しない状態では、ばね18の付勢力により、ポペット12の球面部12Aがシート面に当接されて常時全閉になっている。シート面14Cの形状は円錐台状で、シート面に当接するポペット球面部の形状は球面であるので、シート面14Cと球面部との接触部の形状は円形になる。一方、ソレノイド20に通電すると、ソレノイドの吸引力により鉄心が吸引され、ポペットの球面部がシート面から離反する方向にポペットが移動される。
【0024】次に、上記のポッペト弁のシート面14Cとポペット12の球面部12Aとの形状について図3を参照して詳細に説明する。シート面の母線方向の長さ、及び球面部の直径は、シート面14Cとポペット12の球面部12Aとが接触する接触部Pの位置が、ポペットの球面部と先端部の側面S1との境界線L1、及びシート面とシート部のポペット側の端面S2との境界線L2に近接するように定められている。また、ポペットの先端部の側面S1とシート部のポペット側の端面S2とが略直交するように形成されている。
【0025】従って、開弁時に、シート面14Cとポペット弁の球面部12Aとの間にシート面14Cとポペット弁の球面部12Aとの接触部Pを起点とした流入側流路24Bより短い第1の流路24Aが流出側に形成されると共に、第1の流路24Aと連続し、かつ第1の流路24Aから急激に流路断面積が拡大する第2の流路26が形成される。
【0026】この第1の流路24Aは略平行になったシート面14Cと球面部12Aの表面とによって形成され、第2の流路26は略直交するポペットの先端部の側面S1とシート部のポペット側の端面S2とで形成される。従って、液体が流れる流路は、第1の流路24Aから第2の流路26に向かう際に略90°に急激に拡大されることになる。
【0027】なお、第1の流路24Aはシート面14Cと球面部12Aの表面とによって形成されるため、シート面14Cと球面部12Aとが接触する接触部Pの位置は、境界線L1及び境界線L2の少なくとも一方に近接するようにすればよい。
【0028】また、上記では、ポペットの先端部の側面S1とシート部のポペット側の端面S2とが略直交するように形成したが、このポペットの先端部の側面S1とシート部のポペット側の端面S2とが成す角度は、90°を越えるようにしてもよく、90°未満の90°付近の値でもよい。
【0029】次に、上記のポペット弁においてシート面及びポペットの先端部の形状を変化させ、第1の流路24のポペットの移動方向と直交する平面への投影面積A1と、ポペットの流体力が作用する部分の平面への投影面積A2との比A1/A2と、流体力の変動の大きさ、すなわちばらつきとの関係を調べた。本実施の形態では、ポペットの先端部の形状を半球形に近似した形状に形成したことから、計算を簡単にするために、投影面積A2に代えて、ポペットの球面部の直径と同一の直径の円の面積Ab(ポペットの球面部のポペットの移動方向と直交する平面への投影面積に相当する)との比A1/Abを用いて、この比と流体力の変動の大きさとの関係を調べた。
【0030】図4及び図5に示すように、シート部のシート面14Cの最大直径Ds、ポペット12の球面部12Aの球面の直径Db、及びポペット12の先端部の直径Dcのうち最小な直径をD、シート面14Cとポペットの球面部とが接触して得られる円の直径をDtとすると、面積A1、Abは、以下の式で与えられる。なお、図4は、ポペットの先端部の直径がシート面の最大直径より大きい場合を示し、図5は、ポペットの先端部の直径がシート面の最大直径より小さい場合を示すものである。
【0031】A1=0.25π(D2−Dt2
Ab=0.25πDb2また、流体力の変動の大きさとしては、各開度における流体力の最大値Fmaxと最小値Fminとの差を全開度に亘って積算したの総和Σ(Fmax−Fmin)を用いた。
【0032】図6(A)に比A1/Abと差の総和Σ(Fmax−Fmin)との関係、(B)に比A1/A2と差の総和Σ(Fmax−Fmin)との関係を示す。図からから理解されるように、比A1/Ab、または比A1/A2が、0.2以下で流体力の変動が小さくなることが確認できた。なお、比A1/A2は、比A1/Abに近似した値であるので、比A1/A2を用いた場合も比A1/Abを用いた場合と同様の下限値を採用することができ、いずれの場合も下限値としては、0.02がシール性、耐久性の面で実用上問題のない値であった。
【0033】圧力の条件を次の表2の■〜■のように定め、図7(A)〜図10(A)に示すポペット弁の各々について、開度(ポペットの移動量)と流体力との関係を調べたところ、図7(B)〜図10(B)の結果が得られた。図7(A)は、直径2mmの球面部を備え、シート面と球面とがシート面の中央より上流側で接触する従来のポペット弁(弁1)を示し、図8(A)は、図7(A)に示す従来のポペット弁のシート部をポペットの移動方向と垂直な面で切り取ったポペット弁(弁2)を示すものである。なお、シート部の切り取り部分は斜線で示す。図9(A)は、従来のポペット弁のポぺットの先端部の側面をポペットの移動方向を軸とする円筒面で切り取ったポペット弁(弁3)を示すものである。なお、ポペットの切り取り部分は斜線で示す。図10(A)は、シート面の拡開角度を小さい角度に変更し、シート面の拡開角度を急峻にしたポペット弁(弁4)を示すものである。なお、弁1〜弁4の比A1/Abは、表1示す通りであった。表1の弁3における括弧内の数字は、比A1/A2の値を示す。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】なお、入口圧P1及び出口圧P2は、ホイールシリンダ圧である。
【0037】図8(B)〜図10(B)から理解されるように、いずれの弁2〜弁4も流体力の変動の大きさは弁1の流体力の変動より小さくなっており、特に、弁4では流体力が略0からリニアな特性が得られている。
【0038】なお、上記では、弁体として先端部に球面部が形成されたポペットを用いた例について説明したが、シート面に着座できる滑らかな形状であれば、先端部の形状は楕円面、放物面等の球面以外の滑らかな形状にすることができる。
【0039】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、流体力の変動を小さくすることができるので、実際の制御において流体力を精度良く予測することが可能になり、これにより、電流−流量の制御精度を向上して、応答性を向上することができる、という効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月29日(1999.10.29)
【代理人】 【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳 (外1名)
【公開番号】 特開2001−124228(P2001−124228A)
【公開日】 平成13年5月11日(2001.5.11)
【出願番号】 特願平11−309091