| 【発明の名称】 |
セラミックバルブ及びそれを用いたバルブユニット |
| 【発明者】 |
【氏名】余語 哲爾
【氏名】西里 泰昭
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| 【要約】 |
【課題】優れた摺動特性を長期間安定して得ることができて水漏れ等も生じににくく、しかもメンテナンス性に極めて優れたセラミックバルブを提供する。
【解決手段】セラミックバルブ10、各々セラミック製の固定弁体11と可動弁体12とを備え、それら弁体11,12の一方の摺動面12aを主に非晶質炭素からなる硬質炭素被膜にて覆うとともに、固定弁体と可動弁体との両摺動面の算術平均粗さRaを0.08μm以下とする。また、硬質炭素被膜のヌープ硬さHKの数値をV1、その硬質炭素被膜の形成されない相手側の弁体11の摺動面11aを形成するセラミック基材のビッカース硬さHVの数値をV2として、V1>V2とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 各々セラミック製の固定弁体と可動弁体とを備え、それら弁体の一方の摺動面を主に非晶質炭素からなる硬質炭素被膜にて覆うとともに、前記固定弁体と前記可動弁体との両摺動面の算術平均粗さRaを0.08μm以下とし、かつ、前記硬質炭素被膜のヌープ硬さHKの数値をV1、その硬質炭素被膜の形成されない相手側の弁体の摺動面部を形成するセラミック基材のビッカース硬さHVの数値をV2として、V1>V2としたことを特徴とするセラミックバルブ。 【請求項2】 前記硬質炭素被膜を形成する側の弁体は、その硬質炭素被膜の下地部分を形成するセラミック基材の被膜形成面の算術平均粗さRaが0.08μm以下である請求項1記載のセラミックバルブ。 【請求項3】 硬さ測定用圧子の先端部が下地のセラミック基材に到達しない条件にて測定した、前記硬質炭素被膜のヌープ硬さHKが1200〜1800である請求項1又は2に記載のセラミックバルブ。 【請求項4】 各々セラミック製の固定弁体と可動弁体とを備え、それら弁体の少なくとも一方の摺動面を主に非晶質炭素からなる硬質炭素被膜にて覆うとともに、硬さ測定用圧子の先端部が下地のセラミック基材に到達しない条件にて測定した、その硬質炭素被膜のヌープ硬さHKが1200〜1800であることを特徴とするセラミックバルブ。 【請求項5】 前記硬質炭素被膜の平均厚さが0.9μm以上である請求項1ないし4のいずれかに記載のセラミックバルブ。 【請求項6】 前記固定弁体と前記可動弁体とは、前記硬質炭素被膜の形成される側の摺動面と、形成されない側の摺動面とが、潤滑油を積極介在させることなく直接接して配置されている請求項1ないし5のいずれかに記載のセラミックバルブ。 【請求項7】 前記固定弁体と前記可動弁体との各セラミック基材は、アルミナ質緻密焼結体にて構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載のセラミックバルブ。 【請求項8】 前記固定弁体と前記可動弁体との一方が1ないしそれ以上の液供給部を備える供給側部材であり、同じく他方が、その供給側部材に対し、前記摺接面において互いに接触した状態で相対的に摺動可能に設けられ、その摺動により前記液供給部から供給される液体の流量を調整する流量調整部材であり、それら供給側部材又は流量調整部材のいずれかに、前記流量調整部材により流量調整された前記液体を排出する液排出部が設けられている請求項1ないし7のいずれかに記載のセラミックバルブ。 【請求項9】 前記供給側部材に前記液供給部として高温側供給部と低温側供給部を形成し、また、前記流量調整部材の前記供給側部材に対する摺動に伴い、それら高温側供給部と低温側供給部との供給比率を変化させる混合室が設けられている請求項8記載のセラミックバルブ。 【請求項10】 請求項8又は9に記載のセラミックバルブを用いたバルブユニットであって、前記可動弁体が取り付けられると共に、その可動弁体の前記固定弁体に対する摺動操作を行うための操作部が設けられた可動弁体取付部と、前記固定弁体が取り付けられる固定弁体取付部とを備え、それら可動弁体取付部と固定弁体取付部のうち、前記流量調整部材として機能する弁体に対応するものに前記液供給部に連通する液供給口が形成される一方、前記液排出部の形成される弁体に対応するものに、その液排出部に連通する液排出口が形成されることを特徴とするバルブユニット。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、セラミックバルブ及びそれを用いたバルブユニットに関する。 【0002】 【従来の技術】従来、水や湯の供給に使用されるバルブとして、摺動面において互いに接する固定弁体と可動弁体とを備えたセラミックバルブが多く使用されている。このようなセラミックバルブは、例えば円板状に形成された弁体を互いに接した状態にて摺動させることにより、各弁体に形成した流体通路の開閉を行うようになっている。このようなバルブには、水(あるいは湯)を単独に給・止水できるタイプのものの他、湯水を混合して使用できるタイプのものもある(いわゆる湯水混合栓)。また、弁体の材質としては、耐食性や耐摩耗性に優れてしかも安価であることから、アルミナ質セラミックを採用したものが普及している。また、最近では、その摺動特性を向上させるために、弁体の摺動面にダイヤモンド状薄膜等の非晶質炭素膜を形成したものが多数提案されている(例えば、特開平3−223190号、特開平6−101772号あるいは特開平8−233121号等の各公報)。非晶質炭素膜は自己潤滑性を有するため、緻密なセラミック製の摺動部材を摺動させても水漏れ等の心配がなく、また、滑らかな摺動特性を得ることができる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のようなセラミックバルブにおいては、弁体の摺動面は、水漏れ防止のために高精度に仕上げられるのが通常である。しかしながら、摺動性と水漏れ防止のためのシール性とは元来相反する因子であり、摺動性を高めるために摺動面の面粗さを大きくすると水漏れが発生するし、シール性を向上させるために摺動面の面粗さを小さくすると、弁体同士が貼り付いて動かなくなる、いわゆるリンキング現象が発生しやすくなるジレンマがある。 【0004】そこで、特開平8−233121号公報には、非晶質炭素膜を形成する摺動面の面粗さを0.08〜0.4μmと若干粗い領域に設定し、リンキング防止とシール性との両立を図る提案がなされている。しかし、該面粗さのレベルは、非晶質炭素膜単独で水漏れを完全に防止するには粗すぎるため、グリースの塗布が必須となる。この場合、長期間バルブを使用するうちにグリースが流出すると、面粗さが大きく設定されているために非晶質炭素膜の摩耗が進行し、微細な凸部が削れてなくなったり、あるいは凹部が摩耗粉で埋まったりして、結局はリンキングが発生しやすくなるのである。 【0005】一方、特開平3−223190号公報や特開平6−101772号公報には、摺動面を構成する2面のうちのいずれか一方のみに非晶質炭素膜(ダイヤモンド状炭素膜)を形成する手法にて、グリース塗布の廃止が実現可能となる旨が謳われている。これら公報の技術においては、2つの弁体のいずれか片側のみに非晶質炭素膜を形成する点にて共通しており(前者においては、表1の実施例1〜4を参照、後者においては第5図を参照)、かつ面粗度も特開平8−233121号公報に開示されたものよりも低い値に設定されている。しかしながら、実際にはグリースを塗布しない状態でバルブの摺動を長期間繰り返せば非晶質炭素膜の摩耗がやはり進行し、摺動特性が損なわれてしまう。従って、現在市販されている各社のセラミックバルブには、例外なくグリース塗布した形で市販に供されているのが現状である。その結果、グリース切れが生じた場合はグリースの再塗布を行う必要が生じるなどメンテナンスが極めて面倒となる問題を生ずる。また、現実の多くの製品供給形態では、グリース切れにより摺動性が低下した場合はバルブそのものを新品交換するという方式が取られているが、リサイクルや省資源が叫ばれる今日の風潮には次第にそぐわなくなってきている。 【0006】本発明の課題は、上記のような従来技術に鑑みて、優れた摺動特性を長期間安定して得ることができて水漏れ等も生じににくく、しかもメンテナンス性に極めて優れたセラミックバルブ及びそれを用いたバルブユニットを提供することにある。 【0007】 【課題を解決するための手段及び作用・効果】上記の課題を解決するために本発明のセラミックバルブの第一は、各々セラミック製の固定弁体と可動弁体とを備え、それら弁体の一方の摺動面を主に非晶質炭素からなる硬質炭素被膜にて覆うとともに、固定弁体と可動弁体との両摺動面の算術平均粗さRaを0.08μm以下とし、かつ、硬質炭素被膜のヌープ硬さHKの数値をV1、その硬質炭素被膜の形成されない相手側の弁体の摺動面部を形成するセラミック基材のビッカース硬さHVの数値をV2として、V1>V2としたことを特徴とする。 【0008】本発明者らは、弁体間のシール性を考慮しつつ、滑らかな摺動性を確保するためには、定弁体と可動弁体との両摺動面の片側にのみ硬質炭素被膜を形成することがより効果的であり、かつ両摺動面の平均粗さRaを0.08μm以下と、例えば特開平8−233121号公報の粗さレベルよりも小さく設定することが、やはり有効であるとの結論に達した。そして、特開平3−223190号公報や特開平6−101772号公報に開示された技術において、長期間にわたるシール性確保が必ずしも十分とならない理由についてさらに検討を重ねた結果、片側の摺動面に形成される硬質炭素被膜の相手材との摺動に伴う摩耗を抑制することが最も重要であり、その解決手段として、硬質炭素被膜の硬さを相手側の摺動面を形成するセラミック基材(以下、相手材ともいう)の硬さよりも大きく設定することが有効であることを見い出して、本発明を完成するに至ったのである。 【0009】以下、さらに詳細に説明する。まず、本明細書において「主に非晶質炭素からなる硬質炭素被膜」とは、膜の主体をなす炭素の骨格構造が非晶質であり、かつ下地となるセラミック基材よりも硬質の被膜をいう。このような被膜は、物理蒸着法あるいは化学蒸着法の原理を応用した気相成膜法により成膜でき、具体的には、原料ガスとしての炭化水素(例えばメタンガス)あるいは炭化水素と水素との混合ガスを減圧した雰囲気中に導入し、高周波プラズマや抵抗発熱フィラメントを用いてこれを熱分解させ、セラミック基材表面に析出させることにより被膜を得ることができる。 【0010】該被膜のうち、炭素の骨格構造を作る結合にダイヤモンド結合(sp3混成軌道による共有結合)を比較的多く含んでいるものは、ダイヤモンド状炭素被膜(ダイヤモンドライクカーボン(DLC)被膜)とも称され、硬度と潤滑性とを兼ね備えた被膜となる。これは、炭素の骨格構造に生ずるダングリングボンドが原料ガスに由来する水素原子によって塞がれ、原料付着の要因になる水素結合が発生しにくい表面構造が実現されることによるものと推測される。なお、炭素原子のダングリングボンドに水素原子が入ることは、炭素の連鎖を閉じることで非晶質構造を安定化させ、かつ膜強度や下地との密着性低下を引き起こす有害なグラファイト構造の生成を抑制し、高強度で密着性の高いDLC被膜の実現にも寄与していると考えられている。 【0011】なお、本発明で使用する硬質炭素被膜には、膜硬度向上等の目的で、リン、珪素、タングステン、クロム等の添加元素が50重量%未満の範囲で配合されていてもよい。これらの添加元素を含む被膜の製法は、例えば特開昭63−162870号、特開昭63−162871号あるいは特開昭63−162872号等の各公報に開示された方法を採用することができる。また、図12(a)に示すように、硬質炭素被膜をセラミック基材上に直接形成してもよいし、同図(b)に示すように、下地となるセラミック基材との間に、被膜の密着強度向上等の目的で1層(又は2層以上)の中間層を形成することができる。このような中間層として、例えばシリコンを主体とする中間層(非晶質であっても結晶質であってもよい)を使用することができる。さらに、硬質炭素被膜を構成する炭素成分は、その50重量%未満が結晶質となっていてもよい。 【0012】次に、セラミック基材の硬さは、バルク材の硬さとして、一般的なビッカース硬さHVにより比較的容易にかつ正確に測定することが可能である。しかしながら、硬質炭素被膜は気相成膜法等にて形成される薄膜であり、正確な硬さ評価のためには、測定方法としてどのようなものを採用するかが極めて重要である。そして、上記本発明の第一の構成では、その硬質炭素被膜の硬さをヌープ硬さHKにより規定し、相手側のセラミック基材はビッカース硬さHVにて硬さを規定する点に特徴がある。より詳しくは、硬質炭素被膜のヌープ硬さHKの数値をV1、相手材のビッカース硬さHVの数値をV2として、V1>V2とすることにより、摺動面の算術平均粗さRaが0.08μm以下と小さな値に設定されているにも拘わらず、摺動を継続したときの硬質炭素被膜の相手材との摩擦による摩耗が効果的に抑制されてリンキングが防止される。その結果、摺動面の面粗さRaを低く設することによるシール性の向上に加え、長期の使用を継続しても硬質炭素被膜の磨滅が進行しにくいので摺動特性の持続性が確保できるようになる。また、摺動面への積極的なグリース塗布が実質的な意味において初めて廃止できるようになる(ただし、本発明はのセラミックバルブは、グリース塗布を廃止した態様に限られるものではない)。 【0013】摺動面の算術平均粗さRaが0.08μmを超えると、摺動面のシール性が不足することにつながる。他方、摺動面の算術平均粗さRaが0.02μm未満では、研磨仕上に工数がかかり、コスト高の問題を生じやすくなる場合がある。なお、摺動面の算術平均粗さRaは望ましくは0.03〜0.06μmとするのがよい。なお、本発明でいう算術平均粗さRaは、JIS−B0601(1994)に規定された方法により測定された算術平均粗さをいう。この規定によれば、算術平均粗さRaが0.02μmを超え、0.08μm以下の範囲にあるとき、カットオフ値は0.25mm、評価長さは1.25mmが標準値となる。 【0014】なお、ヌープ硬さHKとビッカース硬さHVとは、いずれも角錐状のダイヤモンド圧子を定められた試験荷重(単位:kgf)により測定対象物表面に圧入し、それによって生ずる圧痕の内表面積にて試験荷重(単位:g)を除した値により、硬さ値を表す。従って、測定原理は定性的には同じであり、得られる硬さ値の次元においても共通する(圧力の次元を有する)。両者の本質的な違いは圧子形状にあり、図11(b)に示すように、ビッカース硬さ試験用の圧子91は対面角が136°の正四角錐形状を有している対し、同図(a)に示すように、ヌープ硬さ試験用の圧子90は、対稜角が172°30’と130°である横断面が菱形の四角錐形状のものが使用される。 【0015】そして、体積が同じであればヌープ硬さ圧子の方がビッカース硬さ圧子よりも側面積が大きくなることから、荷重が同じであればヌープ硬さの方が測定対象物への圧子の圧入深さが小さくなる。その結果、下地のセラミック基材の影響を受けにくくなり、セラミック基材上に形成された硬質炭素被膜の硬さを正確に測定することができる。これに対し、ビッカース硬さHVは、圧子の圧入深さが大きいため、圧子が硬質炭素被膜を貫いて先端が下地のセラミック基材にまで食い込んでしまうことが多く、硬質炭素被膜の正確な硬さ測定には不向きである。しかしながら、圧子の横断面が偏平で組織の局所的な不均一の影響を拾いやすいヌープ硬さHKよりは、ビッカース硬さHVの方が多結晶セラミック体のバルクとしての平均的な硬さを的確に反映した指標となりうるので、本発明では、相手材であるセラミック基材の硬さはビッカース硬さHVにて規定しているのである。 【0016】なお、上記のような目的に鑑みて本発明においては、硬質炭素皮膜のヌープ硬さHKは、JIS−Z2251に規定された方法により、試験荷重0.196Nにて測定された値を採用するものとする。ここで、硬質炭素皮膜のヌープ硬さHKは、図11(c)に示すように、下地のセラミック基材の影響を小さくするために、硬さ測定用圧子の先端部が下地のセラミック基材に到達しない条件にて測定されたものであることが望ましく、さらに望ましくは、圧子の食込み付加さをdi とし、硬質炭素被膜の平均厚さをtとしたときに、di/tが1/2以下となっているのがよい。このような条件を満たしうるかどうかは、硬質炭素被膜の硬さレベルと平均厚さとによって決まるが、概ね0.9μm以上の膜厚レベルが確保されていれば、ヌープ硬さによる硬さ測定を問題なく行うことができる。 【0017】一方、相手材であるセラミック基材のビッカース硬さHVは、JIS−R1610に規定された方法により、試験荷重196Nにて測定された値を採用するものとする。 【0018】なお、従来の公報に目を向ければ、特表昭63−501237号公報では、セラミックバルブの弁体の摺動面を覆う硬質炭素被膜の膜厚を0.5〜5μm、好ましくは1μmとし、その硬質炭素被膜のビッカース硬さHVを3500以上とすることが望ましい旨が開示されている。また、特開平8−47150号公報には、硬質炭素被膜(DLC膜)のビッカース硬さHVの範囲として、700〜1800が例示されている。しかし、これら公報に開示された硬質炭素被膜の硬さはいずれもビッカース硬さHV による測定値であり(しかも試験荷重レベルも全く開示されていない)、下地のセラミック基材の影響等により、被膜の正確な硬さ測定値を表していない可能性が高いことを付言しておく。 【0019】なお、硬質炭素被膜の形成された摺動面の表面粗さRaを0.08μm以下(望ましくは0.05μm以下)とするためには、該硬質炭素被膜を形成する側の弁体は、その硬質炭素被膜の下地部分を形成するセラミック基材の被膜形成面の算術平均粗さRaが0.10μm以下(望ましくは0.05μm以下)となっているのがよい。また、硬質炭素被膜の形成により摺動面の表面粗さRaが若干大きくなる場合は、セラミック基材の被膜形成面の表面粗さRaは、被膜形成後の狙い表面粗さよりも多少小さく設定しておくことが望ましい。なお、硬質炭素被膜の形成された弁体の、その被膜形成面の算術平均粗さRaは、弁体を乾燥空気中にて1100℃に加熱することにより硬質炭素被膜を焼き飛ばして被膜形成面を露出させ、その露出した面にて測定した算術平均粗さRaの値により推定するものとする。 【0020】次に、本発明のセラミックバルブの第二の構成は、各々セラミック製の固定弁体と可動弁体とを備え、それら弁体の少なくとも一方の摺動面を主に非晶質炭素からなる硬質炭素被膜にて覆うとともに、硬さ測定用圧子の先端部が下地のセラミック基材に到達しない条件にて測定した、その硬質炭素被膜のヌープ硬さHKが1200〜1800であることを特徴とする。本発明者らは、硬質炭素被膜の硬さ値の正しい評価には、先にも述べた通りヌープ硬さHKを用いるのが妥当であるとの観点に立ち、さらに鋭意検討を重ねた結果、硬質炭素被膜の潤滑性能の持続性とシール性とを両立するための該硬質炭素被膜のヌープ硬さHKの最適の範囲を見い出して、上記本発明の第二の構成を完成させるに至ったのである。なお、該構成では、硬質炭素被膜は弁体摺動面の一方にのみ形成される態様に限定されず、例えば両面に形成される態様をも包含する。 【0021】硬質炭素被膜のヌープ硬さHKが1200未満では、被膜の耐摩耗性が不足し、例えば初期段階では摺動特性が確保されていても、摩耗が早期に進行しやすくなるため、リンキング等による摺動特性の劣化が早まる問題がある。他方、硬質炭素被膜のヌープ硬さHKが1800を超えた場合は、シール性や潤滑性能が却って損なわれる場合がある。硬質炭素被膜においては、例えば被膜のごく表層の部分が摺動摩擦により少しずつ摩耗することにより発生した炭素質微粉末が、摩擦低減さらには微視的な凹凸の一時的な充填によるシール性向上等に、重要な役割を果たすことも考えられる。従って、硬質炭素被膜の硬さは、小さすぎる場合はもちろん被膜の耐摩耗性の喪失につながるが、上記のような機構を推定すれば、硬さがむやみに大きすぎても潤滑性能やシール性が損なわれることにつながると考えられる。また、なお、硬質炭素被膜のヌープ硬さHKは、より望ましくは1200〜1600とするのがよい。 【0022】なお、シール性のさらなる向上を図るために、上記の第二の構成を前記した第一の構成と組み合わせることも可能である。この場合、硬質炭素被膜はセラミック基材からなる相手材摺動面と接することとなるが、硬質炭素被膜のヌープ硬さHKを1800以下とすることで、セラミック基材からなる相手材摺動面の摩耗進行が抑制され、摺動性能の持続性を高めることができる。 【0023】なお、硬質炭素被膜による平均厚さは、潤滑性能の持続性確保の観点から、0.9μm以上確保されていることが望ましい。他方、1.5μmを超える厚さは過剰スペックであり、また被膜形成時間も長くなるので不要なコスト高を招く。硬質炭素被膜の平均厚さは、より望ましくは0.9〜1.2μmとするのがよい。 【0024】次に、固定弁体と可動弁体との各セラミック基材は特に限定されないが、例えばアルミナ質緻密焼結体が、熱衝撃や熱応力に対する耐久性と耐薬品性に優れていることから本発明に好適に使用することができる。 【0025】本発明の採用により摺動面へのグリース塗布を実質に廃止したセラミックバルブは、固定弁体と前記可動弁体とは、硬質炭素被膜の形成される側の摺動面と、形成されない側の摺動面とが、潤滑油を積極介在させることなく直接接して配置されたものとして表現することができる。ただし、例えばバルブ操作レバー等の摺動を向上させるために、弁体以外の部分に塗布されたグリース等の潤滑油が、弁体間の摺動面に侵入することがある。このような態様は、潤滑油を摺動面間に積極介在させた態様とはみなさないものとする。 【0026】上記本発明のセラミックバルブは、固定弁体と可動弁体との一方が1ないしそれ以上の液供給部を備える供給側部材であり、同じく他方が、その供給側部材に対し、摺接面において互いに接触した状態で相対的に摺動可能に設けられ、その摺動により液供給部から供給される液体の流量を調整する流量調整部材であり、それら供給側部材又は流量調整部材のいずれかに、流量調整部材により流量調整された前記液体を排出する液排出部が設けらた構成とすることができる。具体的には、供給側部材に液供給部として高温側供給部と低温側供給部を形成し、また、流量調整部材の前記供給側部材に対する摺動に伴い、それら高温側供給部と低温側供給部との供給比率を変化させる混合室が設けられている態様とすることができる。なお、混合室は、流量調整部材に形成することができるが、流量調整部材とは別の部材を用いて混合室を形成するようにしてもよい。 【0027】また、本発明のバルブユニットは、上記構成のセラミックバルブを用いたバルブユニットであって、可動弁体が取り付けられると共に、その可動弁体の固定弁体に対する摺動操作を行うための操作部が設けられた可動弁体取付部と、固定弁体が取り付けられる固定弁体取付部とを備え、それら可動弁体取付部と固定弁体取付部のうち、流量調整部材として機能する弁体に対応するものに液供給部に連通する液供給口が形成される一方、液排出部の形成される弁体に対応するものに、その液排出部に連通する液排出口が形成されることを特徴とする。 【0028】例えば温水の供給栓ないし冷水と温水との混合栓等に適用した場合など、冷熱サイクルが付加されやすい環境下で使用されるセラミックバルブないしそれを用いたバルブユニットでは、本発明の適用により、そのような使用環境下においても、バルブの摺動特性やシール性ならびにそれらの持続性を向上させることができる。 【0029】 【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。図1は、本発明のセラミックバルブの一例を示すものである。セラミックバルブ10は、例えば温水と冷水の混合など、温度の異なる液体を混合させる混合栓のバルブ部として使用されるものであって、円板等の板状に構成された固定弁体としての供給側部材11と、同じく可動弁体としての流量調整部材12とを備え、それぞれ一方の板面に形成された摺接面11a及び12aにおいて、互いに重ね合わされるようになっている。これら両部材は11及び12は、アルミナ質緻密焼結体により形成されている。 【0030】供給側部材11は、板厚方向に貫通する2つの液供給部としての液流入口14及び15を備え、一方が高温側供給部としての高温液流入口14、他方が低温側供給部としての低温液流入口15とされ、各々摺接面12aとは反対側の板面側からそれぞれ高温及び低温の液体(例えば温水と冷水)が図示しない供給管路から流入し、流量調整部材12側へ流出するようになっている。また、供給側部材11には、同じく板厚方向に貫通する液排出部16が形成されており、摺接面12a側において流量調整部材12側からの液体が流入し、その反対側において流出管路等へ該液体を流出するようになっている。 【0031】次に、流量調整部材12は、その摺接面11a側に開口する混合室17が形成されている。混合室17は、高温液流入口14、低温液流入口15及び液排出部16とそれぞれ重なり部を有してそれらと連通しており、高温及び低温液流入口14及び15からの高温及び低温の液体を流入させて混合した後、液排出部16へ排出するようになっている。ここで流量調整部材12は、その摺接面11aにおいて供給側部材11に対して相対的に回転可能とされており、その相対回転に応じて混合室17と高温及び低温液流入口14及び15との重なり部の面積比率、すなわち高温及び低温液流入口14及び15から混合室17への液の供給比率が変化するようになっている。また、流量調整部材12は供給側部材11に対して混合室17が流入口14及び15に重なる位置と、重なりを生じなくなる位置との間で往復動可能とされ、液排出部16からの液排出を許容ないし停止できるようになっている。 【0032】図2は、セラミックバルブ10を組み込んだバルブユニット1の一例を示す分解斜視図である。可動弁体たる流量調整部材12は、可動弁体取付部としてのカバー21の底面側の開口部21aに嵌着・収容される。そして、そのケース21の上面側に一体的に設けられたレバー取付部21bに、カバー22を介して操作部としての操作レバー18が取り付けられる。一方、固定弁体たる供給側部材11は、固定弁体取付部たる円板状のベース部20上に固定される。このベース部20には、供給側部材11の液流入口14及び15(液供給部)に連通する液供給口14a,15aと、液排出部16に連通する液排出口16aとが形成され、各供給口14a,15aと液排出口16aとの各周縁部にて、ベース部20と供給側部材11との間には、ゴム等によりリング状に形成されたシール部材19が配置されている。そして、液排出口16aには蛇口部33が、また、液供給口14a,15aには温水供給管32及び冷水供給管31がそれぞれ接続されている。 【0033】次に、図1のセラミックバルブ10においては、流量調整部材12と供給側部材11との一方のもの、具体的には、流量調整部材12側の摺動面12aが、他方のもの、具体的には、供給側部材11の摺動面11aよりも小面積に形成されている。そして、図2に示すように、上記の摺動面12aは、前記したアルミナ質緻密焼結体からなるセラミック基材41を覆う、主に非晶質炭素からなる硬質炭素被膜40にて形成される一方、相手材となる供給側部材11の摺動面11aは、アルミナ質緻密焼結体からなるセラミック基材の露出面として形成されている。また、図3に示すように、摺動面12aの外縁部及び混合室17の開口周縁部には、0.05〜0.2mm程度の糸面取部80,81が形成されている。 【0034】そして、摺動面11a及び摺動面12aは、いずれもその算術平均粗さRaが0.08μm以下に調整される。このうち、硬質炭素被膜40にて形成される摺動面12aについては、下地であるセラミック基材41の算術平均粗さRaが0.08μm以下に調整され、その上に硬質炭素被膜40が形成されている。該硬質炭素被膜40のヌープ硬さHKは、1200〜1800(望ましくは1200〜1600)の範囲に調整される。一方、摺動面11aを形成するセラミック基材のビッカース硬さHVは1100〜1600(望ましくは1150〜1500)の範囲に調整される。そして、上記硬質炭素被膜40の硬さは、前述のヌープ硬さHKとして測定した硬さ値V1が、摺動面11aを形成するセラミック基材のビッカース硬さHVの硬さ値V2よりも大きくなるように調整される。 【0035】供給側部材11及び流量調整部材12は、以下のようにして製造することができる。すなわち、アルミナ粉末にSiO2、CaO、MgO等の焼結助剤粉末を配合して原料粉末となし、これをプレス成型することにより各部材形状を有する成形体を作る。そして、これを1550〜1600℃にて焼結することにより、セラミック基材たる焼結体を得る。供給側部材11については、摺動面11aとなるべき面を、ダイヤモンド砥粒(平均粒径2μm程度)等を用いた公知のラップ研磨により算術平均粗さRaが0.08μm以下となるように仕上げられる。例えば、得られるセラミック基材のビッカース硬さHVを1100〜1600とするには、焼結体の組成としてアルミナ含有量を94〜99.5重量%とし、かつその相対密度を98%以上、平均粒径を2〜10μmとすることが望ましい。 【0036】一方、流量調整部材12については、硬質炭素被膜40の形成の予定された面を、同様のラップ研磨等により算術平均粗さRaが0.08μm以下となるように仕上げる。次いで、その研磨面を脱脂・洗浄した後、これをプラズマ重合成膜装置の真空チャンバ内において、そのカソード側にセットする。そして、真空チャンバ内を真空排気し、ガス導入口から原料ガスとしての炭化水素ガス(例えば、メタン、エチレン、ベンゼン等;水素を混合してもよい。本実施例では、メタンを使用する)を導入する。そして、真空チャンバ内のカソードとアノードとの間に高周波電圧を印加し、プラズマを発生させる。これにより、炭化水素が分解して水素を取り込みながら非晶質炭素の形で堆積し、硬質炭素被膜40が形成される(いわゆるプラズマCVD法)。なお、硬質炭素被膜40の硬さは、原料ガスの導入圧力を変化させることで調整できる(例えば、メタンを使用する場合の導入圧力の範囲は0.3〜0.7torr程度)。一般に、原料ガスの導入圧力が小さいほど硬質の被膜が得られる。 【0037】以下、図2のバルブユニット1の使用方法について説明する。すなわち、レバー18により、流量調整部材12をケース21及びカバー22とともに、供給側部材11に対して高温液流入口14側へ回転させると、その高温液流入口14と混合室17との重なり面積が増加し、混合室17に流れ込む高温の液体の比率が増加して、液排出部16から排出される混合液の温度が上昇する。逆に、流量調整部材12を低温液流入口15側へ回転させると、低温の液体の比率が増大するので排出される混合液の温度は低下する。このように、流量調整部材12の回転角を調整することにより、排出される混合液の温度を自由に変化させることができる。また、レバー18を上下動させると、流量調整部材12が供給側部材11に対して往復動し、混合室17が流入口14及び15に重なると液排出が許容され、逆に重なりを生じなくなると排出が停止される。 【0038】そして、上記の構成では、硬質炭素被膜40のヌープ硬さHKの数値をV1、相手材のビッカース硬さHVの数値をV2として、V1>V2とすることにより、摺動面11a,12aの面粗さRaが0.08μm以下と小さな値に設定されているにも拘わらず、摺動を継続したときの硬質炭素被膜40の摩耗が効果的に抑制されてリンキングが防止される。その結果、摺動面11a,12aの面粗さRaを低く設することによるシール性の向上に加え、長期の使用を継続しても硬質炭素被膜の磨滅が進行しにくいので摺動特性の持続性が確保できるようになり、摺動面11a.12aへの積極的なグリース塗布も実質的に廃止できるようになる。また、硬質炭素被膜40のヌープ硬さHKが1200〜1800(望ましくは1200〜1600)に調整されていることも、硬質炭素被膜40の潤滑性能の持続性とシール性との両立に大きく寄与する。 【0039】なお、液排出部16は流量調整部材12側に形成してもよい。また、図1(b)に示すように、流量調整部材12に、混合室17を形成する代わりに貫通部27を設け、さらにその流量調整部材12を上方から覆うように中空の覆い部28を設けるとともに、その覆い部28の内側空間を混合室17として、ここに高温及び低温液流入口14及び15からの液体を貫通部27を経て導入するようにしてもよい。 【0040】また、図3においては、流量調整部材12の硬質炭素被膜40は、摺動面12aに対応するセラミック基材端面だけでなく、その周縁部を回り込んで部材外側面あるいは混合室内側面の、部材厚さ方向中間位置に至る位置まで覆う形となっている。これにより、図13の糸面取部80,81の形成とも相俟って、摺動面12aのエッジ部が相手材の摺動面11aを齧る不具合がさらに生じにくくなっている。ただし、図4(a)に示すように、硬質炭素被膜40は、摺動面12aに対応するセラミック基材端面のみを覆うようにしてもよいし、逆に、同図(b)に示すように、混合室17の内面や部材外表面を含めて全面を覆うようにしてもよい。さらに、同図(c)に示すように、流量調整部材12ではなく供給側部材11側の摺動面11aを、硬質炭素被膜40にて形成するようにしてもよい。 【0041】図5、図6はセラミックバルブの変形例であり、図5はその流量調整部材12を、図6は供給側部材11を示すものである(いずれも、図中の寸法を示すために、20mmを表すスケールを入れている。また、硬質炭素被膜は図示を省略している)。図5に示すように、流量調整部材12の摺動面12aと反対側の端面には、可動弁体取付部としてのカバー21(図2)側に嵌合させるための凹部51及び切欠き52,52が形成されている。また、混合室17の開口部は、図6の供給側部材12側の流入口14,15と重なりを生ずる側にて大面積となる異形形状に形成されている。一方、図6に示すように、供給側部材11の摺動面11aと反対側の端面には、流入口14,15及び液排出部16に対応する位置に各々絞り部64,65,66が形成され、その外周縁にはシール部材19(図2)を嵌め入れるための座ぐり部54,55,56が形成されている。 【0042】また、図7、図8はセラミックバルブのさらに別の変形例であり、図7はその流量調整部材12を、図8は供給側部材11を示すものである(いずれも、図中の寸法を示すために、20mmを表すスケールを入れている。また、硬質炭素被膜は図示を省略している)。流量調整部材11の摺動面12aと反対側の端面には混合室17が開放し、可動弁体取付部としてのカバー21を嵌合させるための凹部61が形成されている。この構成ではカバー21が混合室17を塞ぐ形となる。また、混合室17の開口部17aは、図7の供給側部材12側の流入口14,15と重なりを生ずる側にて大面積となる、鍵穴状の異形形状に形成されている。 【0043】 【実験例】本発明の効果を確認するために、以下の実験を行った。図5及び図6に示す流量調整部材12及び供給側部材11を、以下の方法により作製した。原料粉末として、純度99.8%のアルミナ粉末と、焼結助剤粉末として純度99.8%のSiO2、MgOとを用意し、所定の比率にて配合した後、その粉末総量を100重量部として、バインダとしてのボバールワックス及びステアリン酸を5重量部と、水103重量部とを加えて湿式混合することにより、成形用素地スラリーを作製した。そして、そのスラリーをスプレードライ法により乾燥し、ふるいにより粒径80〜150μmに整粒して原料素地粉末とした。該原料素地粉末は、金型プレスにより58.8MPaの圧力で部材形状に成型し、所定温度で焼結することにより流量調整部材12及び供給側部材11に対応する形状の焼結体を得た。なお、硬さレベルの異なる焼結体を得るために、製造条件を表1のA及びBの2水準に定めている。得られた焼結体の密度はアルキメデス法により測定した。また、試験終了後に部材を切断して断面を研磨し、その研磨面のSEM写真を画像解析することにより、焼結体の平均粒径を測定した。以上の結果も表1に合わせて示している。 【0044】 【表1】
【0045】上記の焼結体は、流量調整部材12及び供給側部材11の各摺動面となるべき端面を、ダイヤモンド砥粒(条件C:砥粒平均粒径2μm、条件D:砥粒平均粒径3μm)を用いてラップ研磨した。そして、各条件による研磨面毎に、JIS−B0601及びJIS−B0610に基づき、表面粗さ計(Taylor Hobson社製:タリサーフ)を使用して表面粗さ及び表面うねりの測定を行った。測定は、各試料とも10ケ所の測定の平均をとる形で行っており、測定したパラメータは、表面粗さについては、算術平均粗さRa、最大高さRy、十点平均粗さRz、最大粗さRt、局部山頂の平均間隔S及び凹凸の平均間隔Smである(カットオフ値:0.25mm、評価長さ:1.25mm)。また、表面うねりについては、ろ波中心線うねりWCAとろ波最大うねりWCMとの測定を行っている(高域カットオフ値:0.8mm、評価長さ:4mm)。表面粗さの測定結果を表2に示す(「被膜形成前」)。 【0046】 【表2】
【0047】次いで、上記条件A及びBによる2種類の供給側部材11及び流量調整部材12の一方又は双方の各研磨面に、高周波プラズマCVD法により硬質炭素被膜を形成した。ただし、原料ガスはメタンを使用し、高周波の周波数を13.56MHz、高周波出力を2kWに設定するとともに、メタンの導入圧力を表3の3つの条件のいずれかに設定した。 【0048】 【表3】
【0049】硬質炭素被膜の形成後、前記と同じ条件にて表面粗さと表面うねりとを測定した。表2にその結果を示す。なお、図9(a)及び(b)は、表1の条件5にて作製した焼結体を、条件Cにて研磨したときの研磨面の表面粗さ曲線及び表面うねり曲線の測定例を示している。また、図9(c)及び(d)は、さらに表3の条件2にて硬質炭素被膜を形成した後の、摺動面の表面粗さ曲線及び表面うねり曲線の測定例を示している。他方、この硬質炭素被膜はX線ディフラクトメータ法により回折プロファイルを測定したところ、非晶質構造であることを示すハローパターンが認められた。また、図10は、その硬質炭素膜の表面に対し、ラマン分光分析器(フランスISA社製、Labram、Arレーザー(波長:514.5nm、スポット径:10μm))を用いて測定したラマンスペクトルプロファイルである。このピークは、主に1.584m−1のグラファイトのラマンバンドに対応しているが、1.332m−1付近のダイヤモンドのラマンバンドも包含しているとみられる。いずれにしろ、全体は単一のややブロードなピーク形状となっている。 【0050】次に、供給側部材11については摺動面11aをなすセラミック基材のビッカース硬さHVをJIS−R1601に規定された方法により、試験荷重196Nにて測定した。ただし、1試料につき5点測定して、最大及び最小をカットした平均によりその試料の測定値とし、これを条件A及び条件Bの各試料(各々試料数5個)にてさらに平均をとる形としている。なお、表1には、そのようにして求めたビッカース硬さHVの平均値と範囲(括弧内)とを示している。他方、流量調整部材12については、摺動面12aをなす硬質炭素被膜40からなるヌープ硬さHKをJIS−Z2251に規定された方法により、試験荷重0.196Nにて測定した(表3に結果を示す)。ただし、1試料につき5点測定して、最大及び最小をカットした平均によりその試料の測定値とし、これを条件C及び条件Dの各試料(各々試料数5個)にてさらに平均をとる形としている。表3には、測定したヌープ硬さHKの平均値と範囲(括弧内)とを示している。また、硬質炭素被膜40の平均厚さを、試験品断面のSEM観察像より測定した(表3に結果を示す)。その結果、ヌープ硬さ測定の圧子の食込み深さdiは、いずれも平均膜厚tの50%以内に収まっていることがわかった。さらに、条件A及びBによるセラミック基材の硬さの相違の影響は本質的に生じていなかった。 【0051】次に、上記のようにして作製した供給側部材11及び流量調整部材12とを用いて、表4に示す各種組み合わせにて、図2に示す態様のセラミックバルブユニットを作製した。ただし、供給側部材11及び流量調整部材12との摺動面間にはグリースを塗布せず、かつ、ケーシングにて20kgfの軸力にて押さえ付けた。そして、図2において、JIS−B2061による耐圧性能試験(閉栓状態にて液供給口14aより冷水として室温の水を1.75MPaにて注入する)を行い、水漏れの有無を確認した。続いて、バルブ全開状態として、液供給口14aより室温の水を0.17MPaにて注入する一方、液供給口15aより80℃の温水を0.1MPaにて注入し、操作レバー18により流量調整部材12を供給側部材11に対して回転摺動させ、摺動に必要な荷重を測定した。そして、全温水−混合−全冷水−止水を1サイクルとして、20万サイクルまで摺動を繰返し、その時点で摺動荷重が1kg以下のものを良好(○)、1kgを超えるものを不良(×)として評価した。また、試験終了時に硬質炭素被膜の摩耗の有無を拡大鏡による目視観察により確認するとともに、変化が見られなかったものを「無し」、基材露出はないが摩耗が認められたもの(干渉縞を生ずるので確認できる)を「微妙」、下地のセラミック基材が露出したものを「有り」として判定した。以上の結果を表4に示す。 【0052】 【表4】
【0053】この結果からも明らかな通り、供給側部材11及び流量調整部材12の一方の摺動面に硬質炭素被膜を形成したバルブは、どちらか一方の摺動面の算術平均粗さRaが0.08μmを超えると硬質炭素被膜の摩耗が発生し、また、初期水漏れが発生していることがわかる。また、Raが0.08μm以下の場合でも、硬質炭素被膜のヌープ硬さHKの値が、相手側の基材のビッカース硬さHVの値よりも小さい場合に摩耗が発生していることがわかる。他方、両摺動面の算術平均粗さRaを0.08μm以下とし、さらに、硬質炭素被膜のヌープ硬さHKの値を相手側の基材のビッカース硬さHVの値よりも大きくすることで、初期水漏れもなく、かつ良好な摺動特性とその持続性とが実現されていることがわかる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000004547 【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年10月27日(1999.10.27) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100095751 【弁理士】 【氏名又は名称】菅原 正倫
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| 【公開番号】 |
特開2001−124220(P2001−124220A) |
| 【公開日】 |
平成13年5月11日(2001.5.11) |
| 【出願番号】 |
特願平11−306115 |
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