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【発明の名称】 電動補助自転車用タイヤおよびその空気バルブシステム
【発明者】 【氏名】小林 久利

【氏名】戸田 宗宏

【氏名】橋本 剛

【氏名】坂上 幸司

【要約】 【課題】既存の自転車用空気入れによる空気入れが可能で密閉性に優れたシール剤入り電動補助自転車用タイヤおよびその空気バルブを提供する。

【解決手段】チューブ52は、周壁54で囲まれた内部を2分する隔壁55を備え、空気室周壁41と隔璧55とで囲まれた断面略円形の空気室53には空気が充填され、シール剤室周壁40と隔壁55とで囲まれた断面略円弧状のシール剤室57には公知の液状シール剤58が充填される。空気バルブシステム6は、気密性が英式バルブに比べて優るものの英式バルブ用空気入れが不適合の、例えば米式バルブ構造の空気バルブ60と、前記空気バルブ60の先端にねじ込み装着されて英式バルブ用空気入れの使用を可能にするキャップ状アダプタ61とを主要構成としている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 電動補助自転車用タイヤの空気バルブシステムにおいて、空気が充填される空気室とシール材が充填されるシール材室とを備えたシール剤入りタイヤチューブと、前記タイヤチューブの空気室に連通し、英式バルブよりも気密性の高い空気バルブと、前記空気バルブに装着され、当該空気バルブを英式バルブ用空気入れに適合させるキャップ状アダプタとを具備したことを特徴とする電動補助自転車用タイヤの空気バルブシステム。
【請求項2】 前記空気バルブは米式バルブであることを特徴とする請求項1に記載の電動補助自転車用タイヤの空気バルブシステム。
【請求項3】 電動補助自転車用タイヤにおいて、空気が充填される空気室とシール材が充填されるシール材室とを備えたシール剤入りタイヤチューブを具備し、前記空気室の空気圧が、シール材室を備えない自転車用タイヤチューブにおける空気圧の基準値よりも10ないし20%高いことを特徴とする電動補助自転車用タイヤ。
【請求項4】 前記タイヤチューブの空気室に連通し、英式バルブよりも気密性の高い空気バルブと、前記空気バルブに装着され、当該空気バルブを英式バルブ用空気入れに適合させるキャップ状アダプタとを具備したことを特徴とする請求項3に記載の電動補助自転車用タイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電動補助自転車用タイヤおよびその空気バルブシステムに係り、特に、シール剤入りタイヤチューブを備えた電動補助自転車用タイヤおよびその空気バルブシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のチューブタイヤでは、釘等を踏んでチューブが損傷を受けると、いわゆるパンク状態となる。そこで、チューブが損傷を受けたときに、これを自動的に応急補修するための液状シール剤を予めチューブ内に注入したシール剤入りタイヤチューブが知られている。上記したシール剤入りタイヤチューブは、これまで自動車や自動二輪車のタイヤには採用されており、自転車に採用するにあたっては以下のような課題が存在する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】すなわち、シール剤入りタイヤチューブが損傷を受けた際の応急補修は、チューブ内の空気圧を利用してシール剤を損傷部へ充填することにより行われる。このため、特にシール剤入りタイヤチューブでは、チューブ内の空気圧が常に適性値に保持されている必要がある。
【0004】ここで、自動車や自動二輪車のタイヤチューブに用いられる米式バルブは、弁体をバネ力で押し付けて封止する構造を採用しているため、構造が多少複雑なものの気密性が高い。これに対して、自転車に用いられる英式バルブは、虫ゴムと呼ばれるパッキンで封止する構造を採用し、構造が簡単で安価な反面、密閉性が前記米式バルブに比べて低い。
【0005】また、自転車用空気バルブとして単に米式バルブを採用しただけでは、従来の自転車用空気入れが使用できなくなるという課題もある。さらに、シール剤入りタイヤチューブでは路面との接地面にシール剤室が形成されるため、基本的に変形しやすい性質を有する。このため、アシストモータで踏力を補助するようにした電動補助自転車、いわゆるアシスト自転車のように、車重の大きな自転車に採用するとタイヤの変形量が増大し、路面との接地面積が増えて走行抵抗が増加してしまう。
【0006】この結果、電動補助自転車ではアシストモータの負荷が増加して電力消費量が増えるので、一回の充電による航続距離が短くなってしまう。このような航続距離の減少は、車重が重く、駆動エネルギをバッテリに依存しているアシスト自転車では重要な課題となる。
【0007】本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決し、既存の自転車用空気入れによる空気入れが可能で密閉性に優れた、シール剤入りの電動補助自転車用タイヤおよびその空気バルブを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成するために、本発明は、電動補助自転車用タイヤの空気バルブシステムにおいて、空気が充填される空気室とシール材が充填されるシール材室とを備えたシール剤入りタイヤチューブと、前記タイヤチューブの空気室に連通し、英式バルブよりも気密性の高い空気バルブと、前記空気バルブに装着され、当該空気バルブを英式バルブ用空気入れに適合させるキャップ状アダプタとを具備したことを特徴とする。
【0009】上記した特徴によれば、気密性に優れた空気バルブに英式バルブ用の空気入れ(汎用の自転車用空気入れ)を適合させることができるので、汎用の自転車用空気入れによる空気入れが可能で気密性に優れたシール剤入りタイヤの空気バルブシステムを実現できる。したがって、電動補助自転車にシール剤入りタイヤを採用しても、空気圧の低下に起因した航続距離の低下を防止できる。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明を詳細に説明する。図1は、タイヤチューブの空気バルブに本発明を適用した電動補助自転車の側面図である。
【0011】電動補助自転車の車体フレーム2は、車体前方に位置するヘッドパイプ21と、ヘッドパイプ21から後下りかつ下に凸状に延びるダウンパイプ22と、ダウンパイプ22の終端部近傍から上方に立上がるシートポスト23とを備える。ヘッドパイプ21とダウンパイプ22との結合部およびその周辺部は、上下に2分割されて着脱される樹脂カバー33により覆われている。前記ヘッドパイプ21の上部には操向ハンドル27が回動自在に挿通され、下部には前記操向ハンドル27により操舵されるフロントフォーク26が操向可能に支承されている。フロントフォーク26の終端には前輪WFが回転自在に軸支されている。
【0012】車体フレーム2の下部には、踏力アシスト用の電動モータを含む電動補助ユニット1が、前記ダウンパイプ22の後端、シートポスト23の下部およびチェーンステイ25の前端の3か所でネジ止め固定により懸架されている。電動補助ユニット1の電源スイッチ29はダウンパイプ22上のヘッドパイプ21の近傍に設けられている。なお、電源スイッチ29はハンドル27上に設けても良い。
【0013】本実施形態では、ダウンパイプ22とシートポスト23との結合部が電動補助ユニット1の前部にレイアウトされているので、電動補助ユニット1を低位置に配置でき、低重心化が可能となる。また、フレームの高さを低く抑えられるので“跨ぎ易さ”が向上する。
【0014】電動補助ユニット1にはクランク軸101が回転自在に支承され、クランク軸101の左右両端にはクランク11を介してペダル12が軸支されている。電動補助ユニット1から後方側に延出される左右一対のチェーンステイ25の終端間には、駆動輪としての後輪WRが軸支されている。シートポスト23の上部および両チェーンステイ25の終端間には、左右一対のシートステイ24が設けられている。シートポスト23には、上端にシート30を備えるシートパイプ31が、シート30の上下位置を調整可能とすべく、シートポスト23内で摺動可能に装着されている。
【0015】シート30の下方でシートポスト23の後部には、バッテリ4を収納するバッテリ収納ケース5が取り付けられている。バッテリ4は略直方体のバッテリケースに収容された複数のバッテリセルを含み、該バッテリ4は長手方向が略上下方向となるようにシートポスト23に沿って設置される。
【0016】バッテリ収納ケース5の上部は、荷台28と共にシートステイ24に対してネジ39により固定されている。前記電動補助ユニット1は前記バッテリ4によって給電され、その駆動スプロケット13およびチェーン6を介して後輪WRのホイールスプロケット14へ駆動力を伝達する。前記駆動スプロケット13の全部およびチェーン6の上半分はチェーンカバー32で覆われている。
【0017】なお、本実施形態では通常の自転車とは異なり、クランク軸101の根元に駆動スプロケットが存在しないが、外観性や足の引っ掛かりの防止、あるいは電動補助ユニット1を保護する目的で、チェーンカバー32の前方は、クランク軸101の根元に駆動スプロケットが連結されているがごとく、クランク軸101を中心とした略円形状となっている。
【0018】図2は、前記車輪の横断面図であり、リムRは、ワイヤスポークを介してハブ(共に図示せず)に連結される。本実施形態では、シール剤室を備えたチューブ入りタイヤが装着されている。
【0019】リムRには、タイヤ51と、その内部に収納されるチューブ52とからなるチューブ入りタイヤTが装着される。チューブ52は、その半径方向内側に位置する空気室周壁41および半径方向外側に位置するシール剤室周壁40とからなる周壁54と、周壁54で囲まれた内部を2分する隔壁55とを備え、前記周壁54および隔壁55は一体に成型される。
【0020】空気室周壁41と隔璧55とで囲まれた断面略円形の空気室53には、空気バルブシステム6から空気が充填され、シール剤室周壁40と隔壁55とで囲まれた断面略円弧状のシール剤室57には公知の液状シール剤58が充填される。
【0021】本発明の空気バルブシステム6は、気密性が英式バルブに比べて優るものの英式バルブ用空気入れが不適合の、例えば米式バルブ構造の空気バルブ60と、前記空気バルブ60の先端にねじ込み装着されて英式バルブ用空気入れの使用を可能にするキャップ状アダプタ61とを主要構成としている。
【0022】図3は、前記空気バルブユニット6単体の部分断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0023】空気バルブ60は、外周部に雄ネジ601aが形成されたバルブボディ601内に、図3に関して後述するバルブコア62(図2では、図示省略)を装着して構成される。バルブボディ601の下端部にはフランジ部601bが設けられ、このフランジ部601bを包むようにゴム座602が設けられている。このゴム座602は前記チューブ52に対して気密的に固着される。バルブボディ601の先端部には、英式バルブ用空気入れの使用を可能にする前記キャップ状アダプタ61が装着されている。
【0024】図4は、前記バルブコア62を含むバルブボディ601内の構造を詳細に示した断面図であり、前記と同一の符号は同一または同等部分を表している。
【0025】バルブコア62は、先端外周部に雄ネジ621aが形成された内筒621と、前記内筒621の内部に挿貫されたバルブピン622と、前記内筒621およびバルブピン622の段差部に係合し、バルブピン622を内筒621に対して弁口63側へ常時弾発するスプリング623とを含む。内筒621内部とバルブピン622とは、バルブピン622の下端部に形成されたフランジ部622a上に設けられたパッキン(Oリング)624により気密的に封止されている。
【0026】前記バルブコア62は、内筒621の先端外周部に形成された雄ネジ621aを前記バルブボディ601の内部先端に形成された雌ネジ601cに螺合させることにより、前記バルブボディ601内の所定位置に固定される。バルブコア62の外側とバルブボディ601の内側とはパッキン625により気密的に封止されている。
【0027】前記キャップ状アダプタ61のバルブ側開口部には、その内周部に沿って雌ネジ61aが形成され、バルブボディ601の前記雄ネジ601aに螺合させることによりバルブボディ601に装着される。アダプタ61内で前記バルブボディ601の先端端面が当接する突当面にはパッキン611が設けられ、これにより、アダプタ61内部と空気バルブ60の弁口63内とが気密的に封止される。
【0028】図5は、上記した構成の空気バルブシステム6から、汎用の自転車用空気入れを用いて空気を入れる方法を示した図であり、従来の英式バルブへの空気入れ時と同様に、クリップ式金口122のホース121側クリップ122aに設けられた口金123を前記アダプタ61の先端開口部に当てがい、反対側のクリップ122bを、そのU型切欠部(図示せず)にバルブボディ601を入れ込むようにしてアダプタ61の付根部分に当てがう。これにより、クリップ式金口122のバネ力で口金123がアダプタ61の先端開口部に密接され、アダプタ61内に空気が導入される。
【0029】弁口63の空気圧が上昇すると、図6に示したように、バルブピン622が前記スプリング623の弾発力に抗して押し下げられ、内筒621の下端部とパッキン624との間に空気通路が形成され、圧縮された空気がバルブコア62内を通って前記空気通路からチューブ52内へ導入される。
【0030】また、空気入れが終了して弁口63近傍の圧力が低下すると、前記バルブピン622はスプリング623の弾発力およびチューブ52内の空気圧により押し上げられるので前記空気通路がパッキン624により完全にシールされ、従来の虫ゴムを利用した英式バルブに比べて高い気密性が得られる。
【0031】図7は、電動補助自転車におけるタイヤ空気圧と航続距離との関係を、シール剤入りタイヤチューブ(実線B)およびシール剤無しタイヤチューブ(破線A)について示した図であり、航続距離は、5Ahr相当のバッテリを使用した場合の数値である。
【0032】シール剤入りタイヤチューブでは、前記シール剤室57の変形による走行抵抗の増加により、同一のタイヤ空気圧ではシール剤無しタイヤチューブに比べて航続距離が短くなる。しかしながら、シール剤室57の変形による走行抵抗は、タイヤ空気圧を高めれば減少させることが可能であり、タイヤ空気圧を従来の300KPから350KPまで高めれば、従来と同様の航続距離が得られる。
【0033】ここで、本発明の空気バルブシステムを備えたタイヤチューブは気密性が極めて高いので、空気圧を十分に高めても、その状態を長く維持できる。したがって、空気圧を予め高めに設定すれば、実質上、シール剤入りタイヤチューブを採用しても航続距離が低下しない。
【0034】このように、本実施形態によれば、英式バルブよりも気密性の高い空気バルブを英式バルブ用の空気入れ(汎用の自転車用空気入れ)に適合させることができるので、電動補助自転車にシール剤入りタイヤチューブを採用しても、汎用の自転車用空気入れの使用を妨げることなく、タイヤ空気圧の低下に起因した航続距離の低下を防止することができる。
【0035】また、空気バルブとして汎用の米式バルブを採用したので、電動補助自転車にシール剤入りタイヤチューブを採用しても、米式バルブの先端にアダプタを装着するだけで、汎用の自転車用空気入れの使用を妨げることなく、空気圧の低下に起因した航続距離の低下を防止することができる。
【0036】なお、上記した実施形態では、空気バルブ60として米式バルブを採用したが、本発明はこれのみに限定されるものではなく、英式バルブよりも気密性の高いバルブ構造を有していれば、他のバルブ構造を採用しても良い。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、以下のような効果が達成される。
【0038】(1) 英式バルブよりも気密性の高い空気バルブを英式バルブ用の空気入れ(汎用の自転車用空気入れ)に適合させることができるので、電動補助自転車にシール剤入りタイヤチューブを採用しても、シール剤の性能を維持しつつ、汎用の自転車用空気入れの使用を妨げることがなく、かつ空気圧の低下に起因した航続距離の低下も防止することができる。
【0039】(2) 空気バルブとして汎用の米式バルブを採用したので、電動補助自転車にシール剤入りタイヤチューブを採用しても、米式バルブの先端にアダプタを装着するだけで、汎用の自転車用空気入れの使用を妨げることがない。また、アダプタを取り外せば自動車用(自動二輪車用)の空気入れを使用できる。
【0040】(3) タイヤ空気圧を従来のシール剤を含まないタイヤの場合よりも高く設定したので、アシストモータの電力消費量が抑えられ、走行感も通常の自転車と同等にできる。また、シール剤によるパンク補修機能を十分に発揮させることができる。
【出願人】 【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
【出願日】 平成11年10月13日(1999.10.13)
【代理人】 【識別番号】100084870
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 香樹 (外1名)
【公開番号】 特開2001−108123(P2001−108123A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−290372