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【発明の名称】 止水構造
【発明者】 【氏名】大西 国昭

【氏名】平山 弘三

【要約】 【課題】出水時には農業用地、住居や市街地を保護できるよう切り通しを封鎖し、平常時には通行の邪魔にならないよう、止水扉を取り外してしまうことのできる防水堤切り通しの止水構造を提供することにある。

【解決手段】防水堤の切り通しの両側壁面に上部開口の案内溝が対向して設けられていて、不使用時に防水堤から分離されて他所に保管される着脱自在な止水扉板が、その両側縁を前記案内溝内に臨ませるように、前記案内溝に上方からスライド嵌合され、前記案内溝に隣接して切り通しの側壁面に設けられた扉固定手段によって、止水扉板の戸当たりに対面する部分または戸当たりの止水扉板に対面する部分のいずれか一方に固着されたパッキンを、止水扉板と戸当たりとの間で水密に圧縮した状態に固定される防水堤切り通しの止水構造。
【特許請求の範囲】
【請求項1】防水堤の切り通しの両側壁面に上部開口の案内溝が対向して設けられていて、不使用時に防水堤から分離されて他所に保管される着脱自在な止水扉板が、その両側縁を前記案内溝内に臨ませるように、前記案内溝に上方からスライド嵌合され、前記案内溝に隣接して切り通しの側壁面に設けられた扉固定手段によって、止水扉板の戸当たりに対面する部分または戸当たりの止水扉板に対面する部分のいずれか一方に固着されたパッキンを、止水扉板と戸当たりとの間で水密に圧縮した状態に固定される防水堤切り通しの止水構造。
【請求項2】扉固定手段が、ヒンジに回動自在に枢支され、案内溝の戸当たり側で案内溝に隣接して設けられた収納凹部から出没自在なアームと、一端部がアームに貫通して設けられた挿通孔に挿通自在で、一端部に設けられたねじ部が止水扉板に設けられたねじ穴に螺合するネジ棒とを備えている請求項1に記載の止水構造。
【請求項3】両側壁部の案内溝に連続して切り通しの底面部に止水扉板の下端縁が嵌まり込む溝が設けられ、止水扉板のこの溝の戸当たりに対面する部分または戸当たりの止水扉板に対面する部分のいずれか一方にパッキンが固着されている請求項1または請求項2に記載の止水構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、防水堤切り通しの止水構造に関するものであり、さらに詳しくは着脱自在な扉を有し、通行の邪魔にならない防水堤切り通しの止水構造に関する。
【0002】
【従来の技術】海岸、湖岸、河川には田、畑など農業用地や住居、市街地などを出水から守るために防水堤が設けられており、この防水堤には、平常時に、農業用地や住居、市街地などから海岸、湖岸、河川に出ていく通行のために、切り通しが設けられている。従来この切り通しには、門のように柱を立て、柱頂点で梁りのように橋を渡し、橋には、下部に止水扉板を吊り下げるように止水扉板と結合した長ボルトと、この止水扉板を吊り下げる長ボルトをハンドルの回転により上下させることのできる保持装置とが備えられている。天気予報により、台風などで出水が予想されるときは、ハンドルを回転させて止水扉板を下ろし、切り通しを封鎖し、水が農業用地や住居、市街地に流れ込むのを防いでいる。出水の無い平常時は止水扉板は上に上げ、切り通しは通路にしている。切り通しを通るときは止水扉板の下をくぐるかたちを取るので、背の高い器具、装置をもって通過しようとするときには大変不便であった。また、常時止水扉板を設置して置くことは、備品やグリ−スなどの劣化に伴うメンテナンスを省くわけにはいかず、失念すると大変動かしにくくその作業は大変なものであった。
【0003】このような例として、特開平6−185636を挙げることができる。特開平6−185636においても、ゲ−トを開閉する扉体は扉体昇降用弁棒による扉体の上げ下げにより開閉される。装置は大掛かりなものになり、装置が大掛かりなだけゲ−トは狭くなり、通行に不便であり、また、グリ−ス供給作業など、装置をスム−スに動かすためのメンテナンス作業は大変なものであった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、このような事情に鑑みて、出水時には農業用地、住居や市街地を保護できるよう切り通しを封鎖し、平常時には通行の邪魔にならないよう、止水扉を取り外してしまうことのできる防水堤切り通しの止水構造を提供することを目的としている。
【0005】本発明にかかる防水堤切り通しの止水構造は、上記の目的を達成するために、防水堤の切り通しの両側壁面に上部開口の案内溝が対向して設けられていて、不使用時に防水堤から分離されて他所に保管される着脱自在な止水扉板が、その両側縁を前記案内溝内に臨ませるように、前記案内溝に上方からスライド嵌合され、前記案内溝に隣接して切り通しの側壁面に設けられた扉固定手段によって、止水扉板の戸当たりに対面する部分または戸当たりの止水扉板に対面する部分のいずれか一方に固着されたパッキンが、止水扉板と戸当たりとの間で水密に圧縮された状態に固定されている構成とした。
【0006】本発明において、扉固定締付手段としては、特に限定されないが、請求項2のように、ヒンジを中心に回動して収納凹部から出没自在なアームと、アームに貫通して設けられた挿通孔に挿通自在で、一端に挿通孔より大きなねじ頭部を有するネジ棒と、止水扉板に設けられ、ネジ棒の先端が螺合するねじ孔とを備えているような構成とするとよい。また、請求項3のように、両側壁部の案内溝に連続して切り通しの底面部に止水扉板の下端縁が嵌まり込む溝が設けられ、止水扉板のこの溝の戸当たりに対面する部分または戸当たりの止水扉板に対面する部分のいずれか一方にパッキンが固着されている構成とすることが好ましい。
【0007】本発明に係る防水堤は、通常コンクリ−トで作られているため切り通しの壁面もコンクリ−トであるが、たとえば鋼鉄製で防錆塗料を塗布したもの、ステンレス製やアルミ製などの材質で、当該切り通しに合わせた枠をつくり、切り通しに嵌め込んでもよい。この場合、案内溝や扉固定手段を収納する収納凹部は当該枠に設ける必要がある。本発明にかかる案内溝は断面コ字型の樋状のものであってもよい。収納凹部は、扉固定手段ア−ムの取付け、収納に用いられるが、箱であってもよく、また防水堤切断面に溝を設けてもよい。
【0008】本発明に係る止水扉板の材質は、出水を止める強度があればどの様なものでもよく、木材であっても、金属であってもよいが、軽量で強度が大きいガラス長繊維強化樹脂、たとえばガラス長繊維強化硬質ウレタン樹脂が好ましい。この場合、ガラス長繊維の多くの部分が水平方向に向くようしてガラス長繊維強化樹脂を作ることが好ましい。この方向にガラス長繊維を揃えておくと、出水を抑えることについて一層強度が大きくなるからである。また、この樹脂を発泡体にすることで、軽くて強いガラス長繊維強化樹脂を提供でき、メンテナンス時にも取扱い易いものとなる。
【0009】本発明に係る止水扉板は不使用時には取り外して倉庫にしまっておき、陸側へ水が流れ込む恐れがある非常時には、止水扉板を保管場所から例えばクレーン付きトラックで運び、クレーン付きトラックのクレーンのフックを吊り環に引っかけて、クレーンで吊り下げて、案内溝に止水扉板の両側縁をスライド嵌合させるとともに、止水扉板の下端縁を溝に嵌め込むことができる。本発明は、止水扉板の戸当たりに対面する部分または戸当たりの止水扉板に対面する部分のいずれか一方に固着されたパッキンが、止水扉板と戸当たりとの間で水密に圧縮された状態に固定されて、水の漏れを有効に防止するものであるが切り通しの両側壁面に上部開口の案内溝と連続して切り通しの底面部に設けた溝が切ってないときは、止水扉板の下縁の接地する部分に、パッキンを固着して、漏水の防止をする必要がある。切り通しの両側壁面に上部開口の案内溝と連続して、切り通しの底面部に設けた溝が切ってあるときは、止水扉板の戸当たりに対面する部分または戸当たりの止水扉板に対面する部分のいずれか一方に、両側上下方向および下方水平方向に、パッキンを固着することが、止水扉板と戸当たりとの間で水密に圧縮された状態にし、有効に漏水を防止することができる。
【0010】本発明にかかる扉固定手段は、好ましいものとして、請求項2の構造をとることができるが、他の構造もとることもできる。たとえば、扉固定手段が、ヒンジを中心に回動して収納凹部から出没自在なア−ムとア−ムに貫通してネジを切って設けられた挿通孔に、ネジと螺合するように装着したネジ棒とからなり、当該ネジ棒はその一端が板を押すようになっており、他端にはネジ棒をネジに合わせて回転するためのハンドルを装着したものであって、パッキンを有する側の反対側の面で止水扉板を押す構造であってもよい。
【0011】本発明にかかる扉固定手段を収納する収納凹部は、扉固定手段の数だけ必要であるが、同じ上下方向の防水堤切断面にある収納凹部は連続した凹部にしてしまって、一つの凹部に複数の扉固定手段が収納されるようになっていてもよい。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に、本発明の1つの実施の形態を、図面を参照しつつ詳しく説明する。図1は、本発明にかかる止水構造を備えた防水堤の斜視図である。
【0013】図1に示すように、この防水堤1は、平常時に通路となる切り通し2と、この切り通し2を閉じる止水扉板3とを備えている。切り通し2は、両側壁面4,4にそれぞれ上部開口の案内溝5,5が対面するように設けられているとともに、案内溝5より陸側(階段6と反対側)に各2つの扉引付固定手段7の一部を収納する収納凹部8とを備えている。
【0014】また、通路となる切り通し2の底面9には、案内溝5の下端に連通する溝10が設けられている。収納凹部8は、蓋11を備えるとともに、その内部で扉引付固定手段7の一部を構成するアーム12の一端がヒンジ13を介して枢支されている。
【0015】すなわち、アーム12は、ヒンジ13を中心にして回動し、収納凹部8から出没するようになっている(図3及び図4参照)。また、アーム12の他端には、扉引付固定手段7の一部を構成するネジ棒14の挿通孔15が地面に対して水平に穿設されている。
【0016】ネジ棒14は、一端に挿通孔15より大きなねじ頭部としてのハンドル16が設けられ、他端にネジ部が設けられていて、不使用時には、アーム12から取り外され、図示していないが、アーム12と共に収納凹部8に収納できるようになっている。止水扉板3は、水平方向にガラス長繊維が配向するように入った繊維強化硬質ウレタン樹脂によって案内溝5の幅より少し薄い厚みに形成されていて、一方の面の両側縁および下端縁に沿ってパッキン17が図2に示すようにボルト18およびナット19を介して固着されている。
【0017】また、止水扉板3は、そのパッキン17が設けられた面に、ネジ棒14のねじ部20が螺合するねじ穴21が設けられているとともに、上端縁に吊り下げフックやワイヤロープ等が係止される吊り環22が設けられている。ねじ穴21は、止水扉板3にねじ穴21をそなえたインサートスリーブを埋め込むことによって形成されている。
【0018】そして、この防水堤1は、平常時は、止水扉板3を倉庫等の他所に設けた保管場所に保管しておき、陸側へ水が流れ込む恐れがある非常時には、止水扉板3を保管場所からクレーン付きトラックで運び、クレーン付きトラックのクレーンのフックを吊り環22に引っかけて、クレーンで吊り下げて、案内溝5に止水扉板3の両側縁をスライド嵌合させるとともに、止水扉板3の下端縁を溝10に嵌め込む。
【0019】つぎに、収納凹部8の蓋11を開け、ネジ棒14を取り出すとともに、アーム12を回動させて切り通し2の側壁面に垂直状態にする。続いて、ハンドル16を持ち、ねじ棒14のネジ部20側をアーム12の挿通孔15に挿通し、ネジ部20を止水扉板3のねじ穴21に螺合させて、止水扉板3を案内溝5の戸当たり側(陸側)へ引き付けパッキン17を案内溝5および溝10の戸当たりと止水扉板3との間で水密に圧縮し、止水扉板3を切り通し2が閉鎖された状態に固定するようになっている。
【0020】この防水堤1の切り通し2の止水構造によれば、上記のように、平常時には、止水扉板3が取り外された状態になっているので、常時止水扉板を備え付けておく従来のものと比較してメンテナンスが不要であり、グリ−スの補給などという作業も不要である。しかも、パッキン17が止水扉板3に固定されているので、不使用時には、風雨や太陽に曝されない。従って、パッキン17の劣化が極力抑えられ、パッキン17の寿命が長くなる。
【0021】また、不使用時には、アーム12が収納凹部8に収納されるようになっているので、切り通し側壁面に突出物がなく、切り通しの幅方向に障害物がなく、切り通しを通行する人が安全である。
【0022】本発明にかかる防水堤切り通しの止水構造は、以上のように構成されているので出水時には農業用地、住居や市街地を保護できるよう切り通しを封鎖することができるが、平常時には、背の高い器具、装置をもって通ることが出来るようになったのである。また、止水扉板は不使用時には倉庫にしまっておき、1年のう数回使うだけであるので、常時、止水扉板を備え付けておく従来のものでは必要なメンテナンスが不要であり、グリ−スの補給などという作業も不要である。
【0023】請求項3のようにすれば、止水扉板が両側縁だけでなく、下端縁でも支持されるので、よりしっかりとした止水構造とすることができる。
【出願人】 【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
【出願日】 平成11年10月7日(1999.10.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−108117(P2001−108117A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−287222