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【発明の名称】 容量制御弁
【発明者】 【氏名】鴻村 哲志

【氏名】濱崎 勝

【氏名】日高 茂之

【氏名】村尾 和重

【要約】 【課題】電気駆動部に対する入力電流値がゼロとなったとしても、弁体の開度が一義的に決定されることのない容量制御弁を提供すること。

【解決手段】容量制御弁46は、コイル70への入力電流値が小さくなるのに応じて設定吸入圧力を高くしてゆき、入力電流値がゼロとなると設定吸入圧力を最高値とする構成である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 クランク室の圧力を変更することで吐出容量を変更可能な可変容量型圧縮機の吐出容量を制御するための容量制御弁であって、前記クランク室の圧力を開度調節により変更可能な弁体と、内部圧力に応じて弁体を動作させる感圧機構と、入力電流値に基づいて弁体への付与荷重を調節することで、感圧機構の動作の基準となる設定圧力を変更する電気駆動部とを備えた容量制御弁において、前記電気駆動部は、入力電流値が小さくなるのに応じて設定圧力を高くしてゆき、入力電流値がゼロとなると設定圧力を最高値とする構成である容量制御弁。
【請求項2】 前記感圧機構は、内部圧力に応じて変位する感圧部材と、感圧部材を電気駆動部とは反対側で弁体に作動連結する感圧ロッドとを備え、前記感圧ロッドは、感圧部材又は弁体の少なくとも一方に対して、感圧部材の場合には弁体側へ、弁体の場合には感圧部材側へ離脱可能な状態で係合されており、前記弁体を感圧部材側へ付勢することで、電気駆動部への入力電流値がゼロの時においても感圧部材と弁体との作動連結を達成する付勢バネを備えている請求項1に記載の容量制御弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、車両空調装置に適用される可変容量型圧縮機の吐出容量を制御するための容量制御弁に関する。
【0002】
【従来の技術】車両空調装置に適用される可変容量型圧縮機(以下単に圧縮機とする)としては、例えば、図8に示すようなものが存在する。すなわち、ハウジング101 にはクランク室102 が区画形成されるとともに、駆動軸103 が回転可能に保持されている。リップシール104 は、ハウジング101 との間に介在されて駆動軸103 を封止する。
【0003】前記駆動軸103 は、電磁式の摩擦クラッチ105 を介して外部駆動源としての車両エンジンEgに作動連結されている。摩擦クラッチ105 は、車両エンジンEgに作動連結されたロータ106 と、駆動軸103 に一体回転可能に固定されたアーマチャ107 と、コイル108 とを備えている。コイル108 は、その励磁によりアーマチャ107 をロータ106 側に吸引して両者106,107 を締結することで、車両エンジンEgと駆動軸103 との間での動力伝達を可能とする(摩擦クラッチ105 のオン)。この状態からコイル108 が消磁されると、アーマチャ107 がロータ106 から離間して、車両エンジンEgと駆動軸103 との間での動力伝達は遮断される(摩擦クラッチ105 のオフ)。
【0004】回転支持体109 は前記クランク室102 において駆動軸103 に固定されるとともに、この回転支持体109 には斜板110 がヒンジ機構111 を介して連結されている。斜板110 は回転支持体109 にヒンジ機構111 を介して連結されることで、駆動軸103 と一体回転可能でかつ駆動軸103 の軸線Lに対する傾斜角度を変更可能となっている。最小傾斜角度規定部112 は駆動軸103 に設けられ、斜板110 の最小傾斜角度を当接規定する。
【0005】シリンダボア113 、吸入室114 及び吐出室115 は前記ハウジング101 に形成されている。ピストン116 は、シリンダボア113 に往復動可能に収容されるとともに、斜板110 に連結されている。
【0006】そして、前記駆動軸103 の回転運動が、回転支持体109 、ヒンジ機構111 及び斜板110 を介してピストン116 の往復運動に変換され、ハウジング101 が備える弁・ポート形成体117 の吸入ポート117a及び吸入弁117bを介した、吸入室114 からシリンダボア113 への冷媒ガスの吸入、吸入冷媒ガスの圧縮、及び弁・ポート形成体117 の吐出ポート117c及び吐出弁117dを介した、圧縮済み冷媒ガスの吐出室115 への吐出の圧縮サイクルが繰り返される。
【0007】駆動軸付勢バネ118 は前記ハウジング101 と駆動軸103 との間に介在されている。駆動軸付勢バネ118 は、駆動軸103 を軸線L前方(図面左方)側に付勢することで、各部品の製造公差を組み付け時に吸収して軸線L前後方向のがたつきを抑制する役割を担っている。
【0008】抽気通路119 は前記クランク室102 と吸入室114 とを連通する。給気通路120は吐出室115 とクランク室102 とを連通する。容量制御弁121 は給気通路120 上に配設され、給気通路120 の開度を調節可能である。検圧通路122 は容量制御弁121 と吸入室114 との間に介在されている。
【0009】前記容量制御弁121 としては、例えば、本出願人が特開平9−268973号公報において開示したものが存在する。すなわち、図9に示すように、弁室131は、弁孔132 及び給気通路120 の下流側を介してクランク室102 に連通されるとともに、給気通路120 の上流側を介して吐出室115 に連通されている。弁体133は弁室131 に収容され、弁孔132 を開閉可能である。強制開放バネ134 は、弁孔132 を開放する方向に弁体133 を付勢している。
【0010】感圧室135 は、前記検圧通路122 を介して吸入室114 に連通されている。ベローズ136 は感圧室135 に収容されている。設定バネ137 はベローズ136 内に配設されている。設定バネ137 は、ベローズ136 の初期長さを設定するためのものである。感圧ロッド138 は一端側がベローズ136 に遊びをもって嵌合されるとともに、他端側が弁体133 に作動連結されている。
【0011】前記ベローズ136 は、例えば、感圧室135 に導入される吸入圧力が設定された値(設定吸入圧力)を上回ると、自身が収縮することで感圧ロッド138 を介して弁体133 を、弁孔132 を閉塞する方向に動作させる。従って、圧縮機は、吐出室115 からクランク室102 への高圧冷媒ガスの供給量が減少し、抽気通路119 を介した冷媒ガスの逃がし量との関係から、クランク室102 の圧力が低下して吐出容量が増大される。この吐出容量の増大は、吸入圧力の低下を引き起こして設定吸入圧力に近づける。逆に、吸入圧力が設定吸入圧力を下回ると、ベローズ136 が伸長することで弁孔132 を開放する方向に弁体133 が動作される。従って、圧縮機は、吐出室115 からクランク室102 への高圧冷媒ガスの供給量が増大し、クランク室102 の圧力が上昇して吐出容量が減少される。この吐出容量の減少は、吸入圧力の上昇を引き起こして設定吸入圧力に近づける。
【0012】プランジャ室139 は固定鉄心140 を介して前記弁室131 に隣接されている。可動鉄心141 はプランジャ室139 に収容されている。追従バネ142 はプランジャ室139 に収容され、可動鉄心141 を固定鉄心140 側に付勢する。可動鉄心141 と弁体133 とは、ソレノイドロッド143 を介して作動連結されている。なお、追従バネ142 は、強制開放バネ134 よりもバネ力が弱いものが用いられている。
【0013】前記両鉄心140,141 間の吸引力(電磁力)は、コイル144 への入力電流値に応じて変更される。従って、可動鉄心141 を弁体133 側へ付勢する付勢力、つまり、ソレノイドロッド143 を介して弁体133 に作用する、弁孔132 を閉塞する方向への荷重が変更され、ベローズ136 の動作の基準となる設定吸入圧力が変更される。例えば、コイルへ144 の入力電流値が大きくなると、設定吸入圧力が低い側に変更される。従って、ベローズ136 は、より低い吸入圧力を維持すべく弁体133 を動作させて弁孔132 を開閉する。逆に、コイル144 への入力電流値が小さくなると、設定吸入圧力が高い側に変更される。従って、ベローズ136 は、より高い吸入圧力を維持すべく弁体133 を動作させて弁孔132 を開閉する。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】さて、上記容量制御弁121 において、ベローズ136 と感圧ロッド138 とは遊びをもって嵌合されている。この遊嵌関係のみを見た場合、ベローズ136 の伸長によっては感圧ロッド138 が押し下げられて、弁孔132 を開放する方向へ弁体133を動作させることはできる。しかし、ベローズ136 の収縮によっては、感圧ロッド138 との嵌合がずれるのみで、弁孔132 を閉塞する方向へ弁体133 を動作させることができない。それにも関わらず上述したように、ベローズ136 の収縮によって弁孔132 を閉塞する方向へ弁体133 が動作されるのは、弁体133 にソレノイドロッド143 を介して、固定鉄心140 と可動鉄心141 との間の吸引力及び追従バネ142 の付勢力が、弁孔132 を閉塞する方向に作用されているからである。
【0015】ところが、前記容量制御弁121 には、弁孔132 を開放する方向に弁体133 を付勢する強制開放バネ134 が備えられており、この強制開放バネ134 は追従バネ142 よりもバネ力が強いものが用いられている。従って、コイル144 への入力電流値が所定値よりも小さくなって両鉄心140,141 間の吸引力が弱くなると、この吸引力と追従バネ142 の付勢力との合力によっても強制開放バネ134 の付勢力に打ち勝つことができなくなり、弁体133 (感圧ロッド138 )はベローズ136 との作動連結関係が解除されて、一義的に弁孔132 を全開状態としてしまうのである。図10は、容量制御弁121 におけるコイル144 への入力電流値と設定吸入圧力との関係を示しており、同図において入力電流値が所定値Ia 以下の領域において設定吸入圧力が示されていないのは、ベローズ136 による吸入圧力の一定値制御領域から外れて、強制開放バネ134 により弁孔132 が一義的に全開状態となっていることを意味している。
【0016】ここで、例えば、圧縮機が最大吐出容量にて運転されている状態から、エアコンスイッチ(図示しない)のオフ操作に応じて摩擦クラッチ105 がオフされるか、或いは車両エンジンEgが停止して圧縮機の運転が停止されたとする。このような場合、前記容量制御弁121 のコイル144 に対する給電も停止され(入力電流値はゼロとされ)、弁体133 は強制開放バネ134 によって弁孔132 を急激に全開することとなる。従って、吐出室115 からクランク室102 への高圧冷媒ガスの供給量が急激に増大され、抽気通路119 がこの急激な増大分を逃がしきらないことから、クランク室102 の圧力が過大に上昇する。また、シリンダボア113 の圧力は、圧縮機の停止により、吸入室114 の低い圧力で均圧しようとして低下される。その結果、シリンダボア113 とクランク室102 との圧力差が過大に拡大される。
【0017】このため、傾斜角度を最小とした斜板110 (図8において二点鎖線で示す)は、最小傾斜角度規定部112 に過大な力で押しつけられるし、ヒンジ機構111 を介して回転支持体109 を後方(図面右方)側に強く引っ張ることにもなる。その結果、駆動軸103 が軸線L後方側に向かう強い移動力を受け、駆動軸付勢バネ118の付勢力に抗してスライド移動してしまう。このため、次のような問題を生ずるおそれがある。
【0018】(1)駆動軸103 が軸線L方向にスライド移動すると、そのリップシール104との摺動位置が、コンタクトラインと呼ばれる所定の位置を逸脱することがある。駆動軸103 の外周面において、コンタクトラインから外れた箇所には、スラッジ等の異物が付着していることが多い。このため、リップシール104 は、駆動軸103 との間にスラッジが噛み込まれて軸封性能が低下し、ガス漏れ等の不具合が生じる問題。
【0019】(2)摩擦クラッチ105 がオフされた場合、言い換えれば、車両エンジンEgと駆動軸103 との間での動力伝達が遮断された場合、駆動軸103 が軸線L後方側にスライド移動すると、駆動軸103 に固定されたアーマチャ107 がロータ106 側に移動する。摩擦クラッチ105 のオフ状態におけるロータ106 とアーマチャ107との間のクリアランスは微小(例えば、0.5mm )に設定されている。従って、前述した駆動軸103 の軸線L後方側へのスライド移動によって、ロータ106 とアーマチャ107 との間のクリアランスが容易に消滅してしまい、アーマチャ107 が回転状態にあるロータ106 に摺接して異音や振動を生じたり、さらには動力伝達を許容してしまう問題。
【0020】(3)駆動軸103 が軸線L後方側にスライド移動すると、この駆動軸103 に斜板110 を介して連結されているピストン116 が、シリンダボア113 内を後方側にスライド移動して、その死点が弁・ポート形成体117 側にずれようとする。また、駆動軸103 は、摩擦クラッチ105 のオフ直後や車両エンジンEgが停止した直後は、慣性によって多少は回り続けている。従って、この慣性回転時において、ピストン116 が上死点に位置する際に弁・ポート形成体117 に対して衝撃的に衝突し、この衝突に起因して振動や騒音が発生したり、ピストン116 或いは弁・ポート形成体117 が破損する等の問題。
【0021】なお、駆動軸103 のスライド移動を防止するため、駆動軸付勢バネ118 の付勢力を大きくする対策が考えられるが、この大きな荷重を受承することとなるスラストベアリング123 の耐久性の低下及び動力損失の増大という新たな問題が発生してしまう。
【0022】本発明は、上記従来技術に存在する問題点に着目してなされたものであって、その目的は、電気駆動部に対する入力電流値がゼロとなったとしても、弁体の開度が一義的に決定されることのない容量制御弁を提供することにある。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために請求項1の発明では、クランク室の圧力を変更することで吐出容量を変更可能な可変容量型圧縮機の吐出容量を制御するための容量制御弁であって、前記クランク室の圧力を開度調節により変更可能な弁体と、内部圧力に応じて弁体を動作させる感圧機構と、入力電流値に基づいて弁体への付与荷重を調節することで、感圧機構の動作の基準となる設定圧力を変更する電気駆動部とを備えた容量制御弁において、前記電気駆動部は、入力電流値が小さくなるのに応じて設定圧力を高くしてゆき、入力電流値がゼロとなると設定圧力を最高値とする構成であることを特徴としている。
【0024】この構成においては、電気駆動部への入力電流値がゼロであっても、弁体の開度調節は、内部圧力に感応する感圧機構に委ねられることとなる。請求項2の発明では、前記感圧機構は、内部圧力に応じて変位する感圧部材と、感圧部材を電気駆動部とは反対側で弁体に作動連結する感圧ロッドとを備え、前記感圧ロッドは、感圧部材又は弁体の少なくとも一方に対して、感圧部材の場合には弁体側へ、弁体の場合には感圧部材側へ離脱可能な状態で係合されており、前記弁体を感圧部材側へ付勢することで、電気駆動部への入力電流値がゼロの時においても感圧部材と弁体との作動連結を達成する付勢バネを備えていることを特徴としている。
【0025】この構成においては、感圧ロッドが、感圧部材又は弁体の少なくとも一方に対して、感圧部材の場合には弁体側へ、弁体の場合には感圧部材側へ離脱可能な状態で係合されている。つまり、感圧ロッドと感圧部材又は感圧ロッドと弁体の少なくとも一方の係合は簡単となっており、容量制御弁の組立時における両者の係合作業を容易に行なうことができる。ところが、このような係合構成を採用すると、電気駆動部からの荷重を期待できない入力電流値がゼロの時、感圧部材と弁体との作動連結が、感圧ロッドと感圧部材との間又は感圧ロッドと弁体との間で解除されてしまうおそれがある。しかし、本発明においては、弁体を感圧部材側へ付勢する付勢バネを備えることで、電気駆動部への入力電流値がゼロの時においても、弁体が感圧ロッドに押し付けられるか、感圧ロッドが感圧部材に押し付けられることとなり、感圧部材と弁体との作動連結を維持することができる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下に、本発明を、車両空調装置に適用される可変容量型圧縮機の吐出容量を制御するための容量制御弁において具体化した一実施形態について説明する。
【0027】先ず、可変容量型圧縮機(以下圧縮機とする)の構成について説明する。図1に示すように、フロントハウジング11は、センタハウジングとしてのシリンダブロック12の前端部に接合固定されている。リヤハウジング13は、シリンダブロック12の後端部に弁・ポート形成体14を介して接合固定されている。フロントハウジング11、シリンダブロック12及びリヤハウジング13によって、圧縮機のハウジングが構成されている。なお、図1の左方を圧縮機の前方とし、右方を後方とする。
【0028】クランク室15は、前記フロントハウジング11とシリンダブロック12とにより囲まれて区画形成されている。駆動軸16はクランク室15を挿通するようにして配置され、フロントハウジング11とシリンダブロック12との間で回転可能に架設支持されている。
【0029】前記駆動軸16の前端側は、フロントハウジング11にラジアルベアリング17を介して支持されている。収容孔12aはシリンダブロック12の中心部に貫設されている。駆動軸16の後端側は収容孔12aに挿入され、ラジアルベアリング18を介して支持されている。バネ座21はサークリップよりなり、収容孔12aの内周面(シリンダブロック12)に嵌合固定されている。スラストベアリング19及び駆動軸付勢バネ20は、収容孔12aにおいて駆動軸16の後端面とバネ座21との間に介在されている。駆動軸付勢バネ20はコイルバネよりなり、駆動軸16を軸線L前方側に付勢する。駆動軸16の回転力は、スラストベアリング19の介在によって、駆動軸付勢バネ20への伝達が遮断されている。
【0030】前記駆動軸16の前端部は、フロントハウジング11の前壁を貫通して外部へ突出されている。駆動軸16の軸封装置としてはリップシール22が用いられ、このリップシール22は、駆動軸16の前端部とフロントハウジング11との間に介在されている。リップシール22は、リップリング22aを以って駆動軸16の外周面に圧接することで、駆動軸16を封止している。
【0031】電磁式の摩擦クラッチ23は、外部駆動源としての車両エンジンEgと駆動軸16との間に介在されている。すなわち、摩擦クラッチ23のロータ24は、フロントハウジング11の外壁面にアンギュラベアリング25を介して回転可能に支持されている。車両エンジンEgからのベルト26は、ロータ24の外周に巻き掛けられている。ハブ27は駆動軸16の前端部に固定されるとともに、その外周側でアーマチャ28を弾性支持している。アーマチャ28は、駆動軸付勢バネ20と反対側でロータ24に対向配置されている。コイル29は、フロントハウジング11の外壁面に支持されるとともに、ロータ24内に収容配置されている。
【0032】そして、前記車両エンジンEgの運転状態にて、コイル29が通電により励磁されると、アーマチャ28とロータ24との間には電磁力に基づく吸引力が作用される。従って、アーマチャ28がハブ27の弾性力に抗して移動してロータ24と圧接し、摩擦クラッチ23がオン状態となる。このオン状態では、車両エンジンEgの駆動力が、ベルト26及び摩擦クラッチ23を介して駆動軸16に伝達される(図1)。この状態からコイル29が消磁されると、アーマチャ28がハブ27の弾性力によりロータ24から離間されて、摩擦クラッチ23がオフ状態となる。このオフ状態では、車両エンジンEgから駆動軸16への駆動力の伝達が遮断される(図4)。
【0033】図1に示すように、回転支持体30は、前記クランク室15において駆動軸16に固定されている。カムプレートとしての斜板31は、駆動軸16に傾動可能でかつ駆動軸16の軸線L方向にスライド移動可能に支持されている。ヒンジ機構32は回転支持体30と斜板31との間に介在されている。斜板31は、回転支持体30に対するヒンジ機構32を介したヒンジ連結により、駆動軸16と一体回転可能でかつ軸線Lに対する傾斜角度を変更可能である。
【0034】最小傾斜角度規定部34は、前記駆動軸16において斜板31とシリンダブロック12との間に配設されている。最小傾斜角度規定部34は、リング状の部材を駆動軸16の外周面に外嵌固定することで構成されている。図1において二点鎖線で示すように、斜板31の最小傾斜角度は、最小傾斜角度規定部34との当接により規定される。図1において実線で示すように、斜板31の最大傾斜角度は、回転支持体30との当接により規定される。
【0035】複数(図面には一個所のみ示す)のシリンダボア33は、前記シリンダブロック12において駆動軸16の軸線L周りの同一円周上に、所定間隔おきで形成されている。片頭型のピストン35は各シリンダボア33に収容されている。各シリンダボア33は、ピストン35の先端面と弁・ポート形成体14の前面とで前後が閉塞されている。各ピストン35は、シュー36を介して斜板31の外周部に係留されている。そして、駆動軸16の回転運動は、回転支持体30、ヒンジ機構32、斜板31及びシュー36を介することで、シリンダボア33におけるピストン35の往復運動に変換される。
【0036】図1及び図3に示すように、吸入圧力領域としての吸入室37は、前記リヤハウジング13の中央部に区画形成されている。吐出圧力領域としての吐出室38は、リヤハウジング13において吸入室37の外周側に区画形成されている。吸入ポート39、吐出ポート40、吸入弁41、吐出弁42及びリテーナ43は、それぞれ弁・ポート形成体14に形成されている。そして、吸入室37の冷媒ガスは、ピストン35の上死点側から下死点側への移動により、吸入ポート39及び吸入弁41を介してシリンダボア33へ吸入される。シリンダボア33に吸入された冷媒ガスは、ピストン35の下死点側から上死点側への移動により所定の圧力にまで圧縮された後、吐出ポート40及び吐出弁42を介して吐出室38へ吐出される。リテーナ43は吐出弁42の最大開度を規定する。
【0037】図1に示すように、給気通路44は前記吐出室38とクランク室15を連通する。抽気通路45はクランク室15と吸入室37を常時連通する。本実施形態の容量制御弁46は、リヤハウジング13に装着されて給気通路44の途中に介在されている。検圧通路47は容量制御弁46と吸入室37との間に介在されている。そして、容量制御弁46が給気通路44の開度を調節することで、クランク室15への高圧な吐出冷媒ガスの導入量が調節され、抽気通路45を介した冷媒ガスの吸入室37への逃がし量との関係から、クランク室15の圧力が変更される。従って、クランク室15の圧力とシリンダボア33の圧力とのピストン35を介した差が変更され、斜板31の傾斜角度が変更される。その結果、ピストン35のストローク量が変更されて、吐出容量が調節される。
【0038】上記構成の可変容量型圧縮機において、その吸入室37と吐出室38とは、外部冷媒回路71で接続されている。外部冷媒回路71は、凝縮器72、膨張弁73及び蒸発器74を備えている。この外部冷媒回路71と圧縮機とで、車両空調装置の冷凍回路が構成されている。
【0039】図1及び図3に示すように、前記吸入室37と外部冷媒回路71の蒸発器74側の配管71aとは、リヤハウジング13に設けられた吸入通路90を介して連通されている。収容室91は、リヤハウジング13において吸入通路90の途中から吸入室37までを拡径するようにして形成されている。従って、この収容室91の奥側には、吸入通路90において外部冷媒回路71側の部位との径差により、位置決め用段差91aが形成されている。
【0040】逆止弁92は、有蓋底円筒状をなすケース96内に、弁孔93aを有する弁座93、弁座93に接離することで弁孔93aを開閉する弁体94、及び弁孔93aを閉塞する方向に弁体94を付勢する付勢バネ95を備えてなる。逆止弁92は前記収容室91において、ケース96の先端が位置決め用段差91aに当接する位置まで圧入されている。収容室91に圧入固定された逆止弁92は、弁体94を収容するケース96の内空間が、弁孔93aを介して吸入通路90に連通されるとともに、ケース96の周面に貫設された複数の連通孔96aを介して吸入室37に連通されている。つまり、逆止弁92において、弁孔93a、ケース96の内空間及び連通孔96aは、吸入通路90の一部を構成する。導圧孔96bは、弁孔93aと反対側でケース96の内空間を吸入室37に連通させ、弁体94に作用させる背圧として吸入室37の圧力を導入している。
【0041】そして、前記逆止弁92の弁体94は、その前後の圧力差に基づき作用される荷重、つまり、前端面に作用される外部冷媒回路71側の圧力と背圧として作用される吸入室37の圧力との差に基づく荷重と、付勢バネ95の付勢力に基づく荷重との総合力によって弁座93に接離動作され、弁孔93a(吸入通路90)を開放又は閉塞する。逆止弁92は、例えば、圧縮機が運転状態にあって外部冷媒回路71と圧縮機との間で冷媒循環が生じている場合、つまり、蒸発器74側の圧力が吸入室37側の圧力より高くなっている場合には吸入通路90を開放する(図3)。また、逆止弁92は、吸入室37側の圧力が蒸発器74側の圧力以上となると吸入通路90を閉塞し、冷媒ガスの吸入室37側から蒸発器74側への逆流を阻止する(図5)。
【0042】次に、前記容量制御弁46について詳述する。図2に示すように容量制御弁46は、バルブハウジング51と電気駆動部としてのソレノイド部52とを中央付近において接合することで構成されている。弁室53は、バルブハウジング51とソレノイド部52との間に区画形成されている。弁体ロッド54は、弁体として機能する一端部が弁室53に延出配置されている。弁孔55は、弁室53において弁体ロッド54と対向するように開口されている。弁孔55と対向する弁体ロッド54の端面は、平面状に形成されている。弁孔55は、バルブハウジング51の軸線方向(図面上下方向)に延びるように形成されている。弁室53は給気通路44の下流側を介してクランク室15に連通されている。
【0043】感圧室56は、バルブハウジング51の先端部に区画形成されている。前記検圧通路47は感圧室56に接続されている。感圧部材としてのベローズ57は感圧室56に収容されている。設定バネ58はベローズ57内に配設されている。設定バネ58は、ベローズ57の初期長さを設定するためのものである。
【0044】感圧ロッドガイド孔59は、前記感圧室56と弁室53との間でバルブハウジング51の区画壁部51aに貫設されている。感圧ロッドガイド孔59は弁孔55に連続して形成されている。感圧ロッド60は、感圧ロッドガイド孔59に摺動可能に挿通されるともに、その先端がベローズ57に遊びをもって嵌合されている。感圧ロッド60は弁体ロッド54に一体形成され、ベローズ57と弁体ロッド54とを作動連結する。感圧ロッド60において弁体ロッド54に連続する部分は、弁孔55における冷媒ガスの通路を確保するために小径となっている(小径部61)。感圧ロッド60の断面積S2は弁孔55の開口面積S3と等しくなるように形成されている。前記感圧室56、ベローズ57、設定バネ58及び感圧ロッド60等が感圧機構を構成している。
【0045】ポート62は、前記バルブハウジング51の区画壁51aにおいて、弁室53と感圧室56との間に形成されている。ポート62は弁孔55と直交されている。ポート62は、給気通路44の上流側を介して吐出室38に連通されている。つまり、前記弁室53、弁孔55及びポート62は、給気通路44の一部を構成している。
【0046】プランジャ室63は前記ソレノイド部52に形成され、その上方開口部には弁室53と区画するようようにして固定鉄心64が嵌合固定されている。可動鉄心65は、プランジャ室63においてバルブハウジング51の軸線方向前後に往復動可能に収容されている。付勢バネ66はプランジャ室63に収容され、可動鉄心65を固定鉄心64側に付勢する。弁体ロッドガイド孔67は、プランジャ室63と弁室53との間で固定鉄心64に貫設されている。前記弁体ロッド54は、弁体ロッドガイド孔67に挿通されるとともに、可動鉄心65に貫通状態で固定されている。
【0047】前記プランジャ室63は、弁体ロッド54の円筒外面と弁体ロッドガイド孔67の円筒内面との間の間隙を介して弁室53に連通されている。プランジャ室63において、可動鉄心65を境とした上方の空間と下方の空間とは、可動鉄心65に貫設された連通孔65aを介して連通されている。従って、プランジャ室63は、弁室53と同じ圧力雰囲気、つまり、クランク室15の圧力雰囲気となっている。円筒状のコイル70は、前記固定鉄心64及び可動鉄心65の外側において両鉄心64,65を跨ぐように配置されている。
【0048】図1に示すように、車両空調装置のメインスイッチであるエアコンスイッチ80、車室内の温度を検出するための車室温度センサ81、及び、乗員が車室内の温度を設定するための車室温度設定器82は、それぞれ制御コンピュータCに接続されている。制御コンピュータCは、前記摩擦クラッチ23及び容量制御弁46の各コイル29,70と、車両バッテリ等の電源Sとの間の給電ライン上に介在されている。制御コンピュータCは、エアコンスイッチ80のオン・オフ、車室温度センサ81からの車室温度、及び車室温度設定器82からの設定温度等の外部信号に基づいて、電源Sから各コイル29,70への給電を制御する。
【0049】なお、一般的に、車両エンジンEgの運転が停止された状態では、車両の電装品への給電はその殆どが停止され、これは車両空調装置も例外ではない。従って、車両エンジンEgの運転が停止されると、各コイル29,70と電源Sとの間の給電ラインは、制御コンピュータCよりも上流側で遮断され、電源Sから各コイル29,70への給電は停止される。
【0050】次に、前記容量制御弁46の動作について説明する。車両エンジンEgの運転状態において、エアコンスイッチ80のオン状態のもとで、車室温度センサ81からの検出温度が車室温度設定器82の設定温度以上となると、制御コンピュータCは電源Sから摩擦クラッチ23のコイル29へ電流を入力させる。従って、摩擦クラッチ23がオン状態となって圧縮機が起動される。
【0051】この状態において容量制御弁46のベローズ57は、内部圧力としての感圧室56の吸入圧力に応じて伸縮しようとする。また、制御コンピュータCは、車室温度センサ81からの車室温度、及び車室温度設定器82からの設定温度に基づいて、容量制御弁46のコイル70への入力電流値を決定する。制御コンピュータCは、決定された値の電流を電源Sからコイル70へ入力させる。コイル70に電流が入力されると、固定鉄心64と可動鉄心65との間には入力電流値に応じた吸引力(電磁力)が生じる。この吸引力は、弁孔55の開度を小さくする方向への荷重として弁体ロッド54に付与される。
【0052】このように、弁体ロッド54による弁孔55の開度は、ベローズ57の伸縮により付与される荷重、固定鉄心64と可動鉄心65との間の吸引力により付与される荷重、及び付勢バネ66の付勢力により付与される荷重等の総合力によって決定される。
【0053】例えば、冷房負荷が大きい場合には、車室温度センサ81からの検出温度と車室温度設定器82の設定温度との差が大きくなる。制御コンピュータCは、検出温度と設定温度との大きな差に基づいて、ベローズ57の伸縮動作の基準となる吸入圧力(以下(設定圧力としての)設定吸入圧力とする)を低くするように、容量制御弁46のコイル70に対する入力電流値を制御する。すなわち、制御コンピュータCは、この温度差が大きいほど電源Sからコイル70への入力電流値を大きくして、固定鉄心64と可動鉄心65との間の吸引力を強くするように指令する。従って、ソレノイド部52は、弁体ロッド54に作用させる弁孔55を閉塞する方向への付勢力を大きくする。その結果、ベローズ57は、より低い吸入圧力を維持すべく弁体ロッド54を動作させて弁孔55を開閉する。
【0054】弁孔55の開度が小さくなれば、吐出室38から給気通路44を経由してクランク室15へ供給される高圧冷媒ガスの量が少なくなり、クランク室15の圧力が低下する。従って、クランク室15の圧力とシリンダボア33の圧力とのピストン35を介した差が小さくなる。このため、斜板31の傾斜角度が大きくなって、圧縮機の吐出容量が大きくなる。弁体ロッド54が弁孔55を全閉した状態となると、クランク室15の圧力が大きく低下され、斜板31の傾斜角度が最大となって圧縮機の吐出容量は最大となる。
【0055】逆に、冷房負荷が小さい場合には、前記車室温度センサ81からの検出温度と車室温度設定器82の設定温度との差は小さくなる。制御コンピュータCは、検出温度と設定温度との小さな差に基づいて、設定吸入圧力を高くするように容量制御弁46のコイル70に対する入力電流値を制御する。すなわち、制御コンピュータCは、この温度差が小さくなるほど電源Sからコイル70への入力電流値を小さくして、固定鉄心64と可動鉄心65との間の吸引力を弱くするように指令する。従って、ソレノイド部52は、弁体ロッド54に作用させる弁孔55を閉塞する方向への付勢力を小さくする。その結果、ベローズ57は、より高い吸入圧力を維持すべく弁体ロッド54を動作させて弁孔55を開閉する。
【0056】特に、前記制御コンピュータCは、検出温度と設定温度との差がほとんど無い状態では、設定吸入圧力を最高値とするように容量制御弁46のコイル70に対する入力電流値を制御する。すなわち、制御コンピュータCは、検出温度と設定温度との差がほとんど無い状態では、電源Sからコイル70への給電を停止して(入力電流値をゼロとして)、固定鉄心64と可動鉄心65との間の吸引力を消滅させるように指令する。従って、ソレノイド部52は、弁体ロッド54に作用させる弁孔55を閉塞する方向への付勢力を、付勢バネ66のみによる最も小さなもとする。その結果、ベローズ57は、さらに高い吸入圧力を維持すべく弁体ロッド54を動作させて弁孔55を開閉する。
【0057】つまり、図6に示すように本実施形態の容量制御弁46は、図9に示す従来の容量制御弁121 においては弁孔132 が一義的に全開状態とされていた、コイル70への入力電流値が所定値Ia 未満の場合においても(図10)、弁孔55の開度調節はあくまで吸入圧力に応じたベローズ57の伸縮動作に委ねられる構成となっている。
【0058】前記弁孔55の開度が大きくなれば、吐出室38から給気通路44を経由してクランク室15へ供給される高圧冷媒ガスの量が多くなり、クランク室15の圧力が上昇する。従って、クランク室15の圧力とシリンダボア33の圧力とのピストン35を介した差が大きくなる。このため、斜板31の傾斜角度が小さくなって圧縮機の吐出容量が小さくなる。弁体ロッド54が弁孔55を全開した状態となると、クランク室15の圧力が大きく上昇して、斜板31の傾斜角度が最小となって圧縮機の吐出容量が最小となる。
【0059】次に、本実施形態の特徴的な作用について説明する。圧縮機の運転状態において、エアコンスイッチ80がオフされたり、車室温度が設定温度未満となった場合、制御コンピュータCはコイル29への給電を停止して摩擦クラッチ23をオフ状態とするとともに、容量制御弁46のコイル70への給電を停止する。また、圧縮機の運転状態において、車両エンジンEgが停止されると、電源Sから各コイル29,70への給電ラインは制御コンピュータCよりも上流側で遮断される。
【0060】このように、摩擦クラッチ23のオフや車両エンジンEgの停止によって容量制御弁46のコイル70への給電が停止されると、固定鉄心64と可動鉄心65との間の吸引力が消失し、設定吸入圧力が最高値に設定されたことと同様な状態がもたらされる。このようなコイル70に対する給電停止が、例えば、圧縮機の最大吐出容量での運転状態から行われると、容量制御弁46のベローズ57は設定吸入圧力(最高値)を維持しようと、給気通路44を急激に全開する。従って、吐出室38からクランク室15への高圧冷媒ガスの供給量が急激に増大し、抽気通路45が冷媒ガスの急激な増大分を逃がしきらないことから、クランク室15の圧力が急激に上昇する。
【0061】しかし、圧縮機の運転停止状態では、外部冷媒回路71との間での冷媒循環も停止され、しかも、吸入室37にはクランク室15の冷媒ガスが、常時連通の抽気通路45を介して流入され続けていることから、吸入通路90において吸入室37側の圧力が蒸発器74側の圧力以上となる。従って、逆止弁92が吸入通路90を閉塞し、吸入室37側から蒸発器74側への冷媒ガスの逆流が阻止される。このようにして逆止弁92により外部冷媒回路71から遮断された吸入室37の圧力は、クランク室15からの冷媒ガスの供給により速やかに上昇される。よって、シリンダボア33の圧力は、吸入弁41のシール部分からの冷媒ガスの漏れ等により吸入室37の高い圧力で均圧しようとして、高く維持されることとなる。
【0062】また、前述した逆止弁92の作用による吸入室37の圧力上昇によっては、この吸入室37に検圧通路47を介して常時連通されている容量制御弁46の感圧室56の圧力が、やがては設定吸入圧力(最高値)よりも上昇されることになる。従って、容量制御弁46のベローズ57は、一旦は全開状態とした弁孔55の開度を減少させて、吐出室38からクランク室15への高圧冷媒ガスの供給量を減少させる。その結果、クランク室15の圧力の急激な上昇が途中で緩和され、クランク室15の圧力の過大な上昇が阻止される。
【0063】以上のように、クランク室15とシリンダボア33との差圧の過大な拡大が阻止されるため、傾斜角度を最小とした斜板31が、最小傾斜角度規定部34に過大な力で押しつけられたり、ヒンジ機構32を介して回転支持体30を強く引っ張ることがなくなる。従って、駆動軸16が、駆動軸付勢バネ20の付勢力に抗して軸線L後方側にスライド移動してしまうことはない。
【0064】上記構成の本実施形態においては次のような効果を奏する。
(1)逆止弁92を吸入通路90上に備えることで、圧縮機の停止後においてシリンダボア33の圧力を高く維持することができ、ひいてはクランク室15の圧力との差の過大な拡大を阻止することができた。従って、駆動軸16が、駆動軸付勢バネ20の付勢力に抗して軸線L後方側にスライド移動してしまうことを防止でき、よって次のような効果を奏する。
【0065】(1-1 )リップシール22と駆動軸16との相対スライド移動を阻止することができる。従って、リップシール22のリップリング22aと駆動軸16との摺動位置が、その駆動軸16上の所定のコンタクトラインを大きく逸脱することがない。このため、リップリング22aと駆動軸16との摺接面間に、前記コンタクトライン以外の部分に付着されたスラッジ等の異物が噛み込まれることが回避される。従って、リップシール22が早期に劣化したり、ガス漏れを生じたりすることが抑制され、ひいては圧縮機の耐久性の向上につながる。
【0066】(1-2 )摩擦クラッチ23は、アーマチャ28がロータ24に対して軸線L方向前後に接離される。従って、摩擦クラッチ23のオフ状態にて、駆動軸16に軸線L後方側へのスライド移動が生じていると、ロータ24とアーマチャ28との間に吸引力が生じていないにもかかわらず、両者24,28間に所定のクリアランス(図4)を確保できない事態が起こり得る。しかし、前述したように、駆動軸16の軸線L後方側へのスライド移動が阻止されており、ロータ24とアーマチャ28との間に所定のクリアランスを確保できて、摩擦クラッチ23のオフ状態にて両者24,28が接触したままの状態となることがない。従って、ロータ24とアーマチャ28との間に摺動が生じることがなく、両者24,28間の動力伝達を確実に遮断できるとともに、両者24,28の摺動に基づく異音・振動の発生や発熱をも防止することができる。
【0067】(1-3 )ピストン35は、回転支持体30、ヒンジ機構32、斜板31及びシュー36を介して駆動軸16に連結されている。従って、前述したように、駆動軸16の軸線L後方側へのスライド移動を防止できることは、ピストン35の死点が弁・ポート形成体14側へずれることの防止につながる。その結果、圧縮機の完全停止までの慣性回転中においてピストン35が上死点に位置する際に、その先端面が弁・ポート形成体14に衝突することを回避することができ、振動・騒音の発生を抑制することができる。また、ピストン35と弁・ポート形成体14との衝突に基づく両者35,14の破損も回避され、ひいては、圧縮機の耐久性を向上することにつながる。
【0068】(2)容量制御弁46は、コイル70への入力電流値がゼロとなると、ベローズ57の動作の基準となる設定吸入圧力を最高値とする構成である。また、容量制御弁46の感圧室56は、検圧通路47を介して吸入室37に連通されている。つまり、ベローズ57は、吸入圧力領域において逆止弁92による開閉位置(弁座93と弁体94との当接部分)よりも吸入室37側の圧力に応じて動作される。従って、上述したように、逆止弁92の閉塞時に吸入室37の圧力が設定吸入圧力(最高値)よりも上昇すると、容量制御弁46のベローズ57はこの圧力上昇に応じて弁孔55の開度を減少させ、クランク室15の圧力の急激な上昇を阻止する動作を行なうこととなる。つまり、本実施形態においては、コイル70への入力電流値がゼロであっても、弁孔55の開度がベローズ57の感応動作に委ねられる構成の容量制御弁46を用いることで、クランク室15の過大な圧力上昇を阻止する側からもシリンダボア33との圧力差の過大な拡大を阻止することができる構成となっている。
【0069】(3)容量制御弁46は、給気通路44を開閉することで、高圧な吐出冷媒ガスのクランク室15への流入量を調節して圧縮機の吐出容量を制御する。従って、例えば、抽気通路45のみを開閉して、クランク室15から吸入室37への冷媒ガス(吐出冷媒ガスより低圧)の流出量を調節することで圧縮機の吐出容量を制御する構成と比較して、クランク室15の圧力を応答性良く変更することができる。別の見方をすれば、容量制御弁46が抽気通路45のみを開閉して吐出容量を制御する構成と比較して、クランク室15の圧力が過大に上昇する問題が生じ易く、逆止弁92を備えることのでの効果がより有効に奏される。
【0070】(4)容量制御弁46において、弁体ロッド54に作用する力の釣り合いは、次式で表される。
f0−S1・Ps+S2・Ps−(S2−S5)・Pd=S4・Pc−(S3−S5)・Pd+f1+F図7に示すように前記式において各符号は、S1…ベローズ57の有効面積S2…感圧ロッド60の断面積S3…弁孔55の開口面積S4…弁体ロッド54の断面積S5…小径部61の断面積F …コイル70への通電により発生する電磁力f0…設定バネ58の付勢力f1…付勢バネ66の付勢力Ps…吸入圧力(感圧室56の圧力)
Pc…クランク室圧力(弁室53及びプランジャ室63の圧力)
Pd…吐出圧力(弁孔55内の圧力)
である。
【0071】ここで、上述したように本実施形態においては、前記感圧ロッド60の断面積S2が弁孔55の開口面積S3と等しくなるように形成されている(S2=S3)。つまり、弁体ロッド54が弁孔55を全閉した状態にて、弁体ロッド54が端面を介して直接的に受ける弁孔55内の圧力Pdの受圧面積(S3−S5)と、弁体ロッド54が感圧ロッド60を介して間接的に受ける弁孔55内の圧力Pdの受圧面積(S2−S5)とが同じとなっている。従って、この条件(S2=S3)を上記式に加えれば、 f0−S1・Ps+S2・Ps−(S2−S5)・Pd=S4・Pc−(S2−S5)・Pd+f1+F ↓ f0−S1・Ps+S2・Ps=S4・Pc+f1+F ↓ Ps=(f0−S4・Pc−f1−F )/(S1−S2)
となる。
【0072】つまり、前記容量制御弁46は、吐出圧力Pdの影響が排除された動作特性を示し、吐出圧力Pdの変動に関係なく確実かつ正確な弁体ロッド54の開度制御を行い得る。
【0073】(5)弁体ロッド54、感圧ロッド60、及び可動鉄心65は一体化されており、これらの一体物は、感圧ロッド60において区画壁部51aに支持されるとともに、可動鉄心65においてプランジャ室63の内壁面に支持されている。つまり、弁体ロッド54、感圧ロッド60、及び可動鉄心65の一体物はその両端60,65で以って支持されており、例えば中央部のみを支持する構成と比較して、この一体物のバルブハウジング51の軸線方向前後への移動が安定される。
【0074】(6)図10に示すように、従来の容量制御弁121 においては、入力電流値が所定値Ia の時に設定吸入圧力が最高値となり、入力電流値が上限値Ib の時に最低値となる構成である。つまり、設定吸入圧力を最高値と最低値との間で変更するのに、Ia とIb との間の狭い範囲の入力電流値しか使用することができない。従って、入力電流値の単位変化量に対する設定吸入圧力の変化量を大きくせざるをえず、緻密な設定吸入圧力の変更を行い難い。一方、図6に示すように、本実施形態の容量制御弁46においては、入力電流値がゼロの時に設定吸入圧力が最高値となり、入力電流値が上限値Ib の時に最低値となる構成である。つまり、設定吸入圧力を最高値と最低値との間で変更するのに、ゼロとIb との間の広い範囲の入力電流値を使用することができる。従って、入力電流値の単位変化量に対する設定吸入圧力の変化量を小さくすることができ、冷房負荷の微妙な変化に応じた緻密な設定吸入圧力の変更を行なうことができて、車両空調装置の冷房フィーリングを良好とすることができる。
【0075】(7)ベローズ57と感圧ロッド60とは遊びをもって嵌合されており、容量制御弁46の組立時における両者57,60の嵌合作業を容易に行なうことができる。ところが、このような構成を採用すると、ソレノイド部52からの電磁力に基づく荷重を期待できない入力電流値がゼロの時、ベローズ57と弁体ロッド54との作動連結が、ベローズ57と感圧ロッド60との間で解除されてしまうおそれがある。しかし、本実施形態においては、付勢バネ66が弁体ロッド54をベローズ57側に付勢することで、感圧ロッド60がベローズ57に押し付けられ、ソレノイド部52への入力電流値がゼロの時にも、ベローズ57と弁体ロッド54との作動連結が維持されるようになっている。これは、ベローズ57において感圧ロッド60とは反対側の端部を、感圧室56の内壁面に常時押し付けることにもなり、ベローズ57の一端部を感圧室56の内壁面に固定しておく必要がなくなる。このことは、容量制御弁46の組立時における、感圧室56に対するベローズ57の組付け作業を容易とすることにつながる。
【0076】(8)図6及び図10に示すように、本実施形態の容量制御弁46と従来の容量制御弁121 は、コイル70,144 に対する入力電流値が同じ上限値Ib であるなら、設定吸入圧力も同じ最低値とされる。この時、従来の容量制御弁121 にあっては、固定鉄心140 と可動鉄心141 との間の最も強い吸引力と追従バネ142 の付勢力との合力から、追従バネ142 よりもバネ力の大きな強制開放バネ134 の付勢力を相殺した最大荷重がベローズ136 に付与される状態となっている。つまり、固定鉄心140 と可動鉄心141 との間の最も強い吸引力が、強制開放バネ134 によって弱められたものが最大荷重としてベローズ136 に付与されることとなっている。一方、本実施形態の容量制御弁46にあっては、固定鉄心64と可動鉄心65との間の最も強い吸引力と付勢バネ66の付勢力との合力が、そのままベローズ57に付与される状態となっている。つまり、固定鉄心64と可動鉄心65との間の最も強い吸引力が、付勢バネ66によってさらに強められたものが最大荷重としてベローズ57に付与されることとなっている。以上のことは、設定吸入圧力を最低値に設定するのに、本実施形態の容量制御弁46にあっては従来の容量制御弁121 よりも、同じ入力電流値Ib で得る固定鉄心64と可動鉄心65との間の吸引力を弱くできることを意味している。つまり、本実施形態の容量制御弁46は、従来の容量制御弁121 よりも小型のコイル70を用いることができ、小型化及び低コスト化を図り得る。
【0077】なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で以下の態様でも実施できる。
○感圧ロッド60と弁体ロッド54とを別体とし、この感圧ロッド60と弁体ロッド54とを遊びをもって嵌合させること。このような場合でも、前記付勢バネ66が弁体ロッド54をベローズ57側に付勢することで、弁体ロッド54が感圧ロッド60に押し付けられ、ソレノイド部52への入力電流値がゼロの時においても、ベローズ57と弁体ロッド54との作動連結を維持することができる。
【0078】○容量制御弁46を、給気通路44及び抽気通路45の両方を開閉することで吐出容量を制御する構成とすること。この場合、抽気通路45は全閉されない構成、つまり、抽気通路45を常時連通とすることが重要である。
【0079】○容量制御弁46を、抽気通路45のみを開閉することで吐出容量を制御する構成とすること。この場合にも、抽気通路45を常時連通とすることが重要である。
【0080】○感圧部材をベローズ57からダイヤフラムに変更すること。上記実施形態から把握できる技術的思想について記載する。
(1)前記弁体54は、吐出圧力領域38とクランク室15とを連通する給気通路44の開度を調節する請求項1又は2に記載の容量制御弁。
【0081】この構成によれば、クランク室15の圧力調節に高圧な吐出ガスを取り扱うこととなり、例えば、クランク室15と吸入圧力領域37とを連通する抽気通路45の開度のみを調節する構成と比較して、クランク室15の圧力、つまり可変容量型圧縮機の吐出容量を応答性良く変更することができる。
【0082】(2)クランク室15の圧力を調節することで吐出容量を変更可能なピストン式の可変容量型圧縮機を備えた車両空調装置において、前記可変容量型圧縮機の吸入室37と外部冷媒回路71の蒸発器74との間における冷媒流路90上には、吸入室37側の圧力が蒸発器74側の圧力以上となると冷媒流路90を閉塞する逆止弁92が配設され、前記可変容量型圧縮機の吐出容量を制御するための容量制御弁46は、クランク室15の圧力を開度調節により変更可能な弁体54と、吸入室37の圧力に応じて弁体54を動作させる感圧機構56〜60と、入力電流値に基づいて弁体54への付与荷重を調節することで、感圧機構56〜60の動作の基準となる設定吸入圧力を変更する電気駆動部52とを備え、この電気駆動部52は、入力電流値が小さくなるのに応じて設定吸入圧力を高くしてゆき、入力電流値がゼロとなると設定吸入圧力を最高値とする構成である車両空調装置。
【0083】このようにすれば、クランク室15とシリンダボア33との差圧の過大な拡大を阻止することができる。
【0084】
【発明の効果】上記構成の本実施形態によれば、電気駆動部に対する入力電流値がゼロとなったとしても、弁体の開度が一義的に決定されることがなくなる。
【出願人】 【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成11年9月10日(1999.9.10)
【代理人】 【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣 (外1名)
【公開番号】 特開2001−82626(P2001−82626A)
【公開日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願番号】 特願平11−257987