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【発明の名称】 ソレノイド
【発明者】 【氏名】歳田 寿充

【氏名】金田 敬右

【氏名】高橋 利光

【氏名】加田 日登海

【氏名】木下 靖朗

【要約】 【課題】ヨークからプランジャーに作用する吸引力を向上させたソレノイドを提供する。

【解決手段】磁束を発生させる筒状のコイル10と、該コイル10の外周面10A 、内周面10B および端面10C1,10C2 にそれぞれ沿った外周部20A 、内周部20B および端部20C1,20C2 から成るヨーク20と、該ヨーク20に吸引されて上記コイル10の軸X 方向に変位するプランジャー30とを含むソレノイド1 であって、上記ヨーク20が、一方向性電磁鋼板から成り、上記外周部20A および上記内周部20A は上記一方向性電磁鋼板の磁化容易軸が上記磁束の流れ方向に沿うように配置され、上記端部20C1, 20C2は上記磁化容易軸が上記コイル10の端面10C1,10C2 に沿うように配置されており、該ヨーク20と上記プランジャー30とで上記磁束の磁気回路を構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 磁束を発生させる筒状のコイルと、該コイルの外周面、内周面および端面にそれぞれ沿った外周部、内周部および端部から成るヨークと、該ヨークに吸引されて上記コイルの軸方向に変位するプランジャーとを含むソレノイドであって、上記ヨークが、一方向性電磁鋼板から成り、上記外周部および上記内周部は上記一方向性電磁鋼板の磁化容易軸が上記磁束の流れ方向に沿うように配置され、上記端部は上記磁化容易軸が上記コイルの端面に沿うように配置されており、該ヨークと上記プランジャーとで上記磁束の磁気回路を構成することを特徴とするソレノイド。
【請求項2】 上記ヨークの外周部が上記コイルの外周面全体を覆うことを特徴とする請求項1記載のソレノイド。
【請求項3】 上記ヨークの外周部が上記コイルの外周面の一部を覆うことを特徴とする請求項1記載のソレノイド。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁弁等の電磁アクチュエータに適したソレノイドに関する。
【0002】
【従来の技術】このようなソレノイドは、プランジャーを変位させるための吸引力をできるだけ効率良く発生させることが望ましい。それには、コイルで発生した磁束を発散させずに、磁束の流れを吸引方向に収束させることが重要である。実開平2−84077号公報に、ヨークを多重の筒形で構成した電磁弁が提案されている。ヨークをこのように構成することにより、多重の筒形のヨークのそれぞれに磁束が発生して磁束の指向性が増加し、プランジャーを変位させる方向の磁束を増加させる。
【0003】しかし、上記提案の電磁弁では、筒形のヨークの外周をコイルが取り巻いた構造であり、コイルで発生する磁束のうち、コイルの内周側では磁束の流れは多重のヨークにより指向性を付与されるが、それ以外の部分(コイルの外周および端面)では、磁束の流れには指向性が付与されず発散してしまうため吸引力の向上には寄与しないという問題があった。
【0004】また、多重のヨークのそれぞれの内部では、磁束の流れに指向性が付与されないため、吸引方向へ磁束の流れを高密度で収束させることができないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、ヨークからプランジャーに作用する吸引力を向上させたソレノイドを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するために、本発明のソレノイドは、磁束を発生させる筒状のコイルと、該コイルの外周面、内周面および端面にそれぞれ沿った外周部、内周部および端部から成るヨークと、該ヨークに吸引されて上記コイルの軸方向に変位するプランジャーとを含むソレノイドであって、上記ヨークが、一方向性電磁鋼板から成り、上記外周部および上記内周部は上記一方向性電磁鋼板の磁化容易軸が上記磁束の流れ方向に沿うように配置され、上記端部は上記磁化容易軸が上記コイルの端面に沿うように配置されており、該ヨークと上記プランジャーとで上記磁束の磁気回路を構成することを特徴とする。
【0007】一般には、上記ヨークの外周部が上記コイルの外周面全体を覆う構造であるが、上記ヨークの外周部が上記コイルの外周面の一部を覆う構造にすると占有体積を低減できるので、特に小型化する上で有利である。
【0008】
【発明の実施の形態】図1に、本発明によるソレノイドの一態様を示す。図1は筒状のコイルの軸を含む面における縦断面図である。ソレノイド1は、磁束を発生させる筒状のコイル10と、コイル10の外周面10A、内周面10Bおよび端面10C1、10C2にそれぞれ沿った外周部20A、内周部20Bおよび端部20C1、20C2から成るヨーク20と、ヨーク20に吸引されてコイル10の軸X方向に変位するプランジャー30とを含む。プランジャ30は外周部30Aが磁性材料から成り、芯部(シャフト部)30Bが非磁性材料から成る。
【0009】ヨーク20は、一方向性電磁鋼板から成り、外周部20Aおよび内周部20Bは一方向性電磁鋼板の磁化容易軸(両頭矢印MA、MB)が磁束の流れ方向に沿うように配置され、端部20C1,20C2は磁化容易軸(両頭矢印MC)がコイル10の端面10C1,10C2に沿うように配置されており、ヨーク20とプランジャー30とで上記磁束の磁気回路を構成する。
【0010】一方向性電磁鋼板は、微細な各磁区の磁化容易軸を一方向(一般に圧延方向)に揃えてあり、鋼板全体として一つの磁化容易軸を持っており、この磁化容易軸方向の透磁率および飽和磁束密度が高い。本発明においては、この特性を利用して、磁化容易軸が磁束の流れの方向にできるだけ沿うように、ヨーク各部を形成・配置するようにしたので、ヨークからプランジャーに作用する吸引力が向上する。
【0011】更に、一方向性電磁鋼板は保磁力が低い点も特徴であり、これによりヒステリシスが小さくなり、制御を簡素化できることも利点の一つである。なお、この例では、ヨーク20の外周部20Aは一方向性電磁鋼板1枚で形成し、内周部20Bおよび両端部20C1,20C2は複数枚を積層して形成してあるが、ヨーク各部を構成する枚数はそれぞれ必要に応じて決めればよい。
【0012】図2に、図1と同じ断面における磁束の流れを示す。コイル10で発生した磁束は、ヨーク外周部20A→ヨーク端部20C2→プランジャー30→ヨーク内周部20B→ヨーク端部20C1→ヨーク外周部20Aで構成される磁気回路を太線矢印Qで示したように流れる。磁束の流れQの向きは、ヨーク20の外周部20Aおよび内周部20Bでは図示のとおり一方向性電磁鋼板の磁化容易軸MAおよびMBに沿っている。
【0013】ヨーク20の端部20C1、20C2については、図2の断面では磁束の流れQの向きが磁化容易軸MCに沿っている。しかし、実際には端部20C1では内周部20B側から外周部20A側に向かって放射状に流れ、端部20C2では外周部20A側からプランジャー30側に向かって求心的に流れている。図3に、ソレノイドが円筒状の場合について端部20C1内の磁束の流れを太線矢印で、一方向性電磁鋼板の磁化容易軸MCを両頭矢印で示す。このように、端部では磁束の流れはコイル10の端面10C1または10C2には沿っているが、磁化容易軸とは特定の方向の流れ(図1、図2の断面内の流れ)のみが一致する。
【0014】これに対して、図4に示したように、端部を扇状の一方向性電磁鋼板を複数枚組み合わせて形成すると、放射状の磁束の流れと磁化容易軸との一致する割合を高めることができる。本発明のソレノイドは、上記のようにヨーク各部を一方向性電磁鋼板で形成し、かつ磁化容易軸が磁束の流れ方向とできるだけ一致するように構成したことにより、ヨークからプランジャーに作用する吸引力が向上する。
【0015】以下、本発明による種々の態様のソレノイドと、その作製方法を説明する。ただし、本発明の特徴であるヨークについて特に詳細に説明する。コイル、プランジャを含むソレノイド全体としては、図1〜図4を参照した上記の説明に準ずる。
【0016】
【実施例】〔実施例1〕図1に示した構造であって円筒形のソレノイドを作製する方法を説明する。図5に示すように、ヨーク20の外周部20Aおよび内周部20Bは、一方向性電磁鋼板Sから曲げ加工および溶接により作製する。外周部20Aと内周部20Bは寸法が異なる円筒であり、鋼板Sの磁化容易軸が円筒の軸方向に一致している。ヨーク20の端部20C1および20C2は、鋼板Sから打抜き加工により作製した同一寸法の穴開き円板を複数枚積層して作製する。これにより、ヨーク20の外周部20A,内周部20Bの磁化容易軸MA,MBは円筒の長手方向に沿う磁束の流れQ(図2)と一致し、ヨーク20の端部20C1,20C2の磁化容易軸MCはコイル10の端面に沿っている。各部材同士を、溶接、接着等の適当な手段により所定箇所で相互に接合することにより、ヨーク20が完成する。
【0017】端部20C1,20C2は、前出の図4に示したような扇形を多数組み合わせて一枚の穴開き円板とすることもできる。これにより、端部の穴から放射状に外周部へ向かう磁束の流れ(または外周部から端部の穴へ求心的に向かう磁束の流れ)と端部の磁化容易軸との一致する割合が高まるので、磁束の流れを更に高密度で収束させることができ、吸引力を一層高めることができる。
【0018】プランジャ30は、ヨーク内周部20Bに吸引されて、軸X方向に変位する。ヨーク内周部20とプランジャ30は相互の対面部が図示したように段付きになっている。これは作動電流に対するプランジャ変位のリニア性を確保するためである。ヨーク内周部20Bの段付き部分は、図示したように内寄りの部分と外寄りの部分を寸法の異なる鋼板Sを積層して構成することにより、別途段付き加工を行う必要がなくなる。
【0019】〔実施例2〕図1に示した構造であって角筒形のソレノイドを作製する方法を説明する。図6に示すように、ヨーク20の外周部20Aおよび内周部20Bは、一方向性電磁鋼板Sから所定寸法に切り出した平板を角筒形に溶接して作製する。外周部20Aと内周部20Bは寸法が異なる角筒であり、鋼板Sの磁化容易軸が角筒の軸方向に一致している。ヨーク20の端部20C1および20C2は、鋼板Sから打抜き加工により作製した同一寸法の穴開き角板を複数枚積層して作製する。これにより、ヨーク20の外周部20A,内周部20Bの磁化容易軸MA,MBは円筒の長手方向に沿う磁束の流れQ(図2)と一致し、ヨーク20の端部20C1,20C2の磁化容易軸MCはコイル10の端面に沿っている。各部材同士を、溶接、接着等の適当な手段により所定箇所で相互に接合することにより、ヨーク20が完成する。
【0020】端部20C1,20C2は、一枚の角板を前出の図4に示した扇形のように多数の部分に分割し、各部分の板を多数組み合わせて一枚の穴開き角板とすることもできる。これにより、端部の穴から放射状に外周部へ向かう磁束の流れ(または外周部から端部の穴へ求心的に向かう磁束の流れ)と端部の磁化容易軸との一致する割合が高まるので、磁束の流れを更に高密度で収束させることができ、吸引力を一層高めることができる。
【0021】実施例2の角筒形構造は、実施例1の円筒形構造に比べて、同一の断面積について断面寸法が若干大きくなるが、曲げ加工を行わないことにより、鋼板に残留応力が殆ど発生しないので磁気特性が損なわれず、曲げ加工工程がないので工程削減が可能である。図9(1)、(2)に、上記実施例1および実施例2の構造を対比して示す。図9において、(A)は図1と同一の断面を中心軸Xの片側のみ示す断面図であり、(B)は(A)の矢印B方向から見た正面図である。
【0022】〔実施例3〕図9(3)に示したヨークは、深絞り加工を用いて作製する。図7に示すように、一方向性電磁鋼板Sから深絞り加工により部材22および部材24を作製する。部材22は二重円筒形であり、ヨーク20の外周部20A(外側円筒部分)と、端部20C1の最外部20C11(内外の円筒を接続する穴開き円板部分)と、内周部20Bの最内部20B1(内側円筒部分)とを、一枚の鋼板Sから深絞り加工により一体に成形したものである。部材24はフランジ付き円筒形であり、ヨーク20の端部20C1の最内部20C13(フランジ部分)と、内周部20Bの最外部20B2(円筒部分)とを、一枚の鋼板Sから深絞り加工により一体に成形したものである。端部20C1の中間部20C12および端部20C2は、鋼板Sから打抜き加工により作製した同一寸法の穴開き円板を複数枚積層して作製する。
【0023】上記のように準備した部材22の内周部最内部20B1(内側円筒部分)に端部中間部20C12(穴開き円板積層体)を嵌め込んだ後、更に円筒20B1に部材24を嵌め込む。これにより、ヨーク外周部20Aと、部材20C11+部材20C12+部材20C13により成るヨーク端部20C1と、部材20B1+部材20B2により成るヨーク内周部20Bが所定位置に配置される。更に、右の端部20C2を組み付ける。各部材同士を、溶接、接着等の適当な手段により所定箇所で相互に接合することによりヨーク20が完成する。
【0024】実施例3の構造は、一体成形された部材22がヨーク20全体に高い剛性を付与するので、ヨークの強度および耐振動性が高いという利点がある。
〔実施例4〕図9(4)に示したヨークは、実施例3と同様に深絞り加工を用いて作製する。ただし、実施例3の場合は、左側の端部20C1の中間部20C12を打抜き加工で作製したのに対して、本実施例の場合は図7の部材24の内周部20B2(内側円筒部分)の寸法を順次変えて深絞り加工により複数作製して相互に嵌め合わせる点が異なる。これにより、端部20C1と内周部20Bとの一体性が高まるため両者間の磁束の流れがよりスムーズになり、磁束の漏洩が低減する。
【0025】〔実施例5〕図9(5)に示したヨークは、基本的に実施例3あるいは実施例4と同様の構造であるが、外周部20Aをコイル10の外周面全体を覆うのではなく、外周面の対向した2部分のみを覆う点で異なる。図8に示したように、実施例3あるいは実施例5と同様の方法で作製する。
【0026】このように外周部20Aを部分的にのみ備えた簡略構造にしても、磁束の流れがこの部分に収束し、外周部を全周に備えた構造とほぼ同等の吸引力が得られ、しかも加工が容易になり、ヨークの軽量化も可能になる。
〔実施例6〕図10に示したように、ヨーク20全体を磁気シールド材40で覆うことにより、磁束漏洩が低減し、同時に耐久性が高まる。
【0027】なお、以上の実施例で示した構造では、ヨーク内周部20Bおよびプランジャ30の相互対面部分は段付き構造になっていたが、本発明は段付き構造に限らず図11に示したように段付き部の無い構造においても同様に適用することができる。
<特性の評価試験>同一仕様のソレノイドについて、ヨークを従来材(軟鉄)により構成した従来のソレノイドと、本発明によりヨークを一方向性電磁鋼板により上記実施例1〜5により構成したソレノイドとの特性比較試験を行った。得られた結果を図12〜15に示す。
【0028】図12は、作動電流により発生する電磁力を示したグラフであり、例えば作動電流1.0Aにおいて従来例では電磁力10Nであったのに対して、本発明の実施例では電磁力12Nと20%向上した。これは、図13に示したように、従来のヨーク材である軟鉄に対して、本発明のヨーク材である一方向性電磁鋼板の磁化特性が極めて優れていることによる。また、図14に示したように、一方向性電磁鋼板は保持力が小さいため、ヒステリシスが小さい点も有利である。
【0029】図15は、従来例と実施例1〜5の吸引ヒステリシスを比較したグラフであり、本発明により吸引ヒステリシスが30〜40%低減した。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、ヨークからプランジャーに作用する吸引力を向上させたソレノイドが提供される。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年8月26日(1999.8.26)
【代理人】 【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬 (外2名)
【公開番号】 特開2001−65726(P2001−65726A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−240495