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【発明の名称】 流体噴射弁
【発明者】 【氏名】中尾 頼人

【氏名】榊田 明宏

【氏名】久保 賢明

【氏名】亀ヶ谷 茂

【要約】 【課題】大型化させることなく流体噴射弁の応答性を向上させる。

【解決手段】流体噴射弁は、弁体3と、アクチュエータ4とを備え、アクチュエータ4が弁体3を駆動して噴射口2を開くと供給された流体が噴射される。アクチュエータ4は形状記憶合金4sで構成され、変態温度以下に冷却すると伸長し、弁体3を噴射口2を閉じる位置に保持するが、変態温度以上に加熱すると収縮し、弁体3を噴射口2を開く位置まで変位させる。形状記憶合金4sの収縮率が大きいのでその軸方向長さをそれ程大きくしなくても十分なストローク量を確保することができ、流体噴射弁を大型化させることなく応答性を向上できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】噴射口を開閉する弁体と、その弁体を駆動するアクチュエータとを備え、前記アクチュエータが弁体を駆動して前記噴射口を開くと供給された流体が噴射される流体噴射弁において、前記アクチュエータを形状記憶合金で構成し、変態温度以下に冷却すると伸長し、前記弁体を前記噴射口を閉じる位置に保持するが、変態温度以上に加熱すると収縮し、前記弁体を前記噴射口を開く位置まで変位させるように構成したことを特徴とする流体噴射弁。
【請求項2】前記アクチュエータを構成する形状記憶合金の変態温度を前記流体の温度より高い温度に設定し、前記アクチュエータの周囲に前記流体を導いてその冷却を行うように構成したことを特徴とする請求項1に記載の流体噴射弁。
【請求項3】前記アクチュエータを棒形状の形状記憶合金を隙間をあけて内側に空間を形成するよう複数配置して構成し、前記流体を前記空間内に供給し、前記隙間を通過するように構成したことを特徴とする請求項2に記載の流体噴射弁。
【請求項4】前記アクチュエータは形状記憶合金の線材を撚り合わせて棒形状にしたものであること特徴とする請求項3に記載の流体噴射弁。
【発明の詳細な説明】【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジンの燃料噴射弁等の流体噴射弁に関する。
【0002】
【従来の技術】特開平11-50932号公報には、噴射口を開閉する弁体を駆動するアクチュエータとして、通電によって歪を生じる圧電素子(ピエゾ素子)を用いたエンジンの燃料噴射弁が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとしている問題点】しかしながら、圧電素子をアクチュエータとして用いた場合、その単位長さあたりの変化量、すなわち歪率が小さいため、アクチュエータの十分なストローク量を確保するためには圧電素子を積層構造として使用する必要がある等、燃料噴射弁の大型化が避けられないという問題があった。
【0004】本発明は、上記従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、流体噴射弁を大型化させることなくその応答性を向上させることである。
【0005】
【問題点を解決するための手段】第1の発明は、噴射口を開閉する弁体と、その弁体を駆動するアクチュエータとを備え、前記アクチュエータが弁体を駆動して前記噴射口を開くと供給された流体が噴射される流体噴射弁において、前記アクチュエータを形状記憶合金で構成し、変態温度以下に冷却すると伸長し、前記弁体を前記噴射口を閉じる位置に保持するが、変態温度以上に加熱すると収縮し、前記弁体を前記噴射口を開く位置まで変位させるように構成したことを特徴とするものである。
【0006】また、第2の発明は、第1の発明において、前記アクチュエータを構成する形状記憶合金の変態温度を前記流体の温度より高い温度に設定し、前記アクチュエータの周囲に前記流体を導いてその冷却を行うように構成したことを特徴とするものである。
【0007】また、第3の発明は、第2の発明において、前記アクチュエータを棒形状の形状記憶合金を隙間をあけて内側に空間を形成するよう複数配置して構成し、前記流体を前記空間内に供給し、前記隙間を通過するように構成したことを特徴とするものである。
【0008】また、第4の発明は、第3の発明において、前記アクチュエータが形状記憶合金の線材を撚り合わせて棒形状にしたものであること特徴とするものである。
【0009】
【作用及び効果】第1の発明によると、流体噴射弁の弁体を駆動するアクチュエータを形状記憶合金で構成したことにより、燃料噴射弁を大型化することなく高応答化することができる。すなわち、アクチュエータを構成する形状記憶合金は通電抵抗加熱等により変態温度まで加熱されると瞬時に収縮するが、このときの収縮率が圧電素子の歪率に比べ極めて大であるため、アクチュエータの軸方向長さを小さくしても十分なストローク量を確保することができる。
【0010】また、形状記憶合金をアクチュエータとして利用するには、その温度を変態温度をまたいで変化させる必要があるが、第2の発明によると、アクチュエータを構成する形状記憶合金の変態温度を供給される流体の温度以下に設定し、流体を利用してアクチュエータを変態温度以下まで冷却する構成としたことにより、アクチュエータを冷却する手段を特に設ける必要がなくなり、噴射弁をさらに小型化できるという利点がある。
【0011】また、第3によると供給される流体とアクチュエータの接触面積が広くなり、第4の発明によるとさらに接触面積が広くなる。これにより、アクチュエータの冷却効率が向上するので、アクチュエータを変態温度以下まで急速に冷却することができ、燃料噴射弁の閉弁応答性が向上する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づき本発明の実施の形態について説明する。
【0013】図1は本発明に係る燃料噴射弁の概略構成を示し、1はインジェクターハウジング、2は図示しないエンジンの吸気ポートあるいは燃焼室内に開口する燃料噴射口、3は噴射口2を開閉する針状の弁体(針弁)、4は針弁3を軸方向に駆動する棒状の形状記憶合金アクチュエータ(SMAアクチュエータ)、5は針弁3とSMAアクチュエータ4を絶縁しつつ結合するキャップである。
【0014】ここでSMAアクチュエータ4は、Ti-Ni、Cu-Zn-Al等の形状記憶作用を有する合金4sで構成され、温度が変態温度を超えると軸方向に収縮し、変態温度を下回ると元の長さまで伸張する。変態温度を超えたときの形状記憶合金4sの収縮率は約2%であり、圧電素子の歪率(約0.1%)に比べて大きい。変態温度は金属組成に依存し、ここでは燃料噴射弁に供給される燃料の温度よりも高い値に設定される。
【0015】6は燃料を通すための貫通口7が軸方向に複数設けられた円形部材であり、SMAアクチュエータ4と円形部材6はまとめて針弁ホルダー8によってかしめ固定される。
【0016】また、9は針弁ホルダー8をハウジング1へ固定するためのプラグである。プラグ9の燃料供給口10には図示しない燃料ポンプで加圧された燃料が供給される。11はSMAアクチュエータ4に電圧をかけるための電源線であり、図示しないコントローラに接続される。
【0017】針弁3、SMAアクチュエータ4、キャップ5、円形部材6及び針弁ホルダー8が一体になったものと、ハウジング1との軸方向の位置関係はプラグ9の締め代により規定され、プラグ9は、SMAアクチュエータ4が伸長状態にあるときに針弁3の先端が噴射口2を閉塞するように固定される。
【0018】図2は図1のA−A断面を示す。
【0019】この図に示すように、SMAアクチュエータ4は棒形状の形状記憶合金4sを円形部材6の周囲に環状に隙間をあけて複数配置して構成される。加圧燃料は燃料供給口10から、貫通口7を介して形状記憶合金4sに囲まれた空間内Aに供給され、燃料は形状記憶合金4sの表面に接して冷却しながら隙間を通過し、SMA4アクチュエータ4とハウジング1との間の外側空間Bを通って噴射口2の近傍まで導かれる。
【0020】次に作用について説明する。
【0021】SMAアクチュエータ4に電圧がかけられていないときは、SMAアクチュエータ4を構成する形状記憶合金4sの温度は燃料温度にほぼ等しく、変態温度よりも低くなっている。そのため、SMAアクチュエータ4は伸長状態にあり、針弁3は噴射口2を閉塞する位置に保持される。
【0022】この状態でSMAアクチュエータ4に電圧をかけると、SMAアクチュエータ4を構成する形状記憶合金4sの温度はそれ自体の発熱により急速に上昇する(通電抵抗加熱)。そして、形状記憶合金4sの温度が変態温度を超えるとSMAアクチュエータ4は軸方向に収縮して針弁3の先端がリフトし、噴射口2が開かれる。
【0023】SMAアクチュエータ4への電圧供給が中止されると、形状記憶合金4sの表面を流れる燃料により形状記憶合金4sの温度はほぼ燃料温度まで冷却される。燃料が形状記憶合金4sの隙間を通過するようにしているので、燃料と形状記憶合金4sの接触面積が広く、形状記憶合金4sの冷却は速やかに行われる。形状記憶合金4sが変態温度以下まで冷却されると、形状記憶合金4s、すなわちSMAアクチュエータ4は再び伸長状態となって、針弁3の先端が噴射口2を閉塞する。
【0024】したがって、本発明に係る燃料噴射弁においては、SMAアクチュエータ4に電圧がかけられていると開弁して燃料が噴射され、電圧がかけられていないと閉弁して燃料噴射が停止されることとなり、SMAアクチュエータ4への通電、非通電を繰り返すことにより燃料を間欠噴射することができる。
【0025】通電時は形状記憶合金4sは変態温度を超える温度まで即座に加熱され、非通電時は形状記憶合金4sの表面に導かれる燃料により形状記憶合金4sは変態温度以下まで急速に冷却されるので、SMAアクチュエータ4の収縮及び伸長、すなわち噴射口2の開閉は高い応答で行われ、応答性の高い燃料噴射弁が実現される。
【0026】また、形状記憶合金4sの収縮率が大きく、形状記憶合金4sの軸方向長さをそれ程大きくしなくてもSMAアクチュエータ4は十分なストローク量を確保することができ、高い応答性を確保しつつ燃料噴射弁を小型化することができる。
【0027】なお、SMAアクチュエータ4を構成する形状記憶合金4sは棒形状であるが、形状記憶合金4sは形状記憶合金の線材を複数撚り合わせて棒形状としたものでもよい。この場合、形状記憶合金4sと燃料の接触面積がさらに増加し、形状記憶合金4sの冷却効率が高まって、燃料噴射弁をさらに高応答化することができる。
【0028】以上、本発明をエンジンの燃料噴射弁に適用した実施例について説明したが、上記実施例はあくまでも例示的なものであり、本発明が適用可能な範囲がこの実施例の構成に限定されるものではない。本発明はエンジンの燃料噴射弁に限らず適用することができ、流体を噴射する噴射弁について広く適用することができるものである。
【出願人】 【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
【出願日】 平成11年7月8日(1999.7.8)
【代理人】 【識別番号】100075513
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 政喜 (外1名)
【公開番号】 特開2001−21061(P2001−21061A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−194552