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【発明の名称】 スピンドル装置
【発明者】 【氏名】米山 博樹

【要約】 【課題】圧縮エア源を用いることなく、シール効果を発揮するエアの流れを作りだし、外界からの異物の浸入を防ぐことが可能なスピンドル装置を提供する。

【解決手段】軸受3と、軸受3に相対的に回転可能に支持された回転軸1と、軸受3と外界との間に配置されたラビリンスシールと、を備え、回転軸1の軸受3より外界側にフランジ6を形成し、このフランジ6に溝9を形成したスピンドル装置である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸受と、当該軸受に相対的に回転可能に支持された軸と、前記軸受と外界との間に配置されたラビリンスシールと、を備えたスピンドル装置であって、前記軸の前記軸受より外界側にフランジを設け、当該フランジに溝を形成したスピンドル装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、スピンドル装置の内部と外界とを密封するラビリンスシールを備えたスピンドル装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、スピンドル装置の外界から埃、切削粉や切削水、あるいは研削水などの異物(以下、これらを単に「異物」という)が、スピンドル装置の内部に浸入することを防止する手段として、例えば、軸受と外界との間にラビリンスシールを配置したものがある。また、ラビリンスシールに加え、外部(外界)に設置された圧縮エア源から空気(エア)を供給してエアーパージを行うことで、シール効果を高めるようにしたものがある。
【0003】例えば、図5に示す従来のスピンドル装置は、転がり軸受103と、転がり軸受103に回転可能に支持された回転軸101と、を備えて構成されている。回転軸101の端部には、ラビリンス間座106が、ナット107によって固定されている。軸受103の外輪側は、ハウジング102に組み込まれ、前蓋104で固定されている。前蓋104の図5における左側には、カバー105が取付けられ、ラビリンス間座106で作られたラビリンス部の空気の流れによって、スピンドル装置内部への異物の浸入を防止している。この空気の流れは、ハウジング102の外周面を開口し、ここに外部(外界)に設けられた図示しない圧縮エア源を接続し、この圧縮エア源から供給された空気(エア)を、給気ノズル109から噴出させることで形成される。なお、符号108は、異物が浸入した場合に外界へこれらを排出するためのドレイン穴である。
【0004】また、特開平10−337633号公報には、スピンドルのシールを、外部に設置された圧力エア源から供給される空気により得られるラビリンスシールにより行う工作機械用ギャングヘッドが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来のスピンドル装置や工作機械用ギャングヘッド等に使用されているラビリンスシールは、空気(エア)を供給するための圧縮エア源に接続されており、ここから供給される空気の流れによってシール効果を得る構成を備えている。したがって、圧縮エア源を外部(外界)に設置しておく必要があり、設備費用やランニングコスト等が増加するという問題がある。
【0006】本発明は、このような従来の問題点を解決することを課題とするものであり、圧縮エア源を用いることなく、シール効果を発揮する空気の流れを作りだし、これによって外界からの異物の浸入を防ぐことが可能なスピンドル装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明は、軸受と、当該軸受に相対的に回転可能に支持された軸と、前記軸受と外界との間に配置されたラビリンスシールと、を備えたスピンドル装置であって、前記軸の前記軸受より外界側にフランジを設け、当該フランジに溝を形成したスピンドル装置を提供するものである。
【0008】この構成を備えたスピンドル装置は、前記軸が前記軸受に対し相対的に回転すると、外部の圧縮エア源から空気を供給しなくても、前記溝によって遠心ポンプ作用により空気の流れが生じ、この空気の流れによって、前記軸受と外界との間を良好にシールすることができる。この結果、スピンドル装置内部に異物が浸入することが防止される。
【0009】前記溝は、前記フランジの、前記軸受と対向する面に複数形成することができる。この溝は、例えば、フランジの径方向、すなわち放射状に複数形成することができる。この放射状の配置は、スピンドル装置が前記軸の回転方向を限定しない場合、すなわち、前記軸が時計回り及び反時計回りの両方に回転可能である場合に特に好適である。また、前記溝は、例えば、フランジの中心側がフランジの外周側より回転方向側に位置するよう配置された曲線形状を備えていてもよい。この曲線形状の溝は、前記軸が一方向(時計回りまたは反時計回りのいずれか)に回転させて使用するスピンドル装置の場合に特に好適であり、そのような場合、さらにシール効果を高めることができる。これらの複数の溝は、互いに等角度間隔で配置してもよく、異なった角度間隔で配置してもよいが、フランジの重心が回転中心上からすれないような位置に配置することがより望ましい。
【0010】そしてまた、本発明に係るスピンドル装置は、前記フランジの外周部と所定の間隔をおき、かつこのフランジの外周部に対向して配置された環状突起を備えることができる。この環状突起の存在により、フランジの外周部とハウジングとが形成する隙間をさらに微小にすることができるため、より良好なラビリンスシール効果を得ることができ、外界から異物がスピンドル装置の内部に浸入することがさらに防止される。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態に係るスピンドル装置について図面を参照して説明する。なお、本実施の形態では、回転軸が時計回り及び反時計回りの両方向に回転する場合について説明する。
【0012】図1は、本発明の実施の形態に係るスピンドル装置の一部を示す断面図、図2は、図1に示すA−A線に沿った一部断面図、図3は、図1の一部を拡大した図である。
【0013】図1〜図3に示すように、本実施の形態に係るスピンドル装置は、転がり軸受3と、転がり軸受3を介してハウジング2に回転可能に支持された回転軸1と、を備えて構成されている。
【0014】回転軸1の、転がり軸受3より外界側には、ナット7によってフランジ6が固定されている。なお、このフランジ6がラビリンス間座となる。このフランジ6の転がり軸受3側の表面には、特に図2に示すように、放射状に等間隔(等しい角度間隔)で配置された複数の溝9が形成されている。この溝9は、後に詳述するが、回転軸1の回転によりフランジ6が回転すると、遠心ポンプ作用により空気の流れが生じる。この遠心ポンプ作用によって、軸受3と外界との間を空気の流れによってシールすることができ、スピンドル装置内部に異物が浸入することを防止することができる。なお、本実施の形態では、各々の溝9の深さf(図3参照)を約2mm程度に設定した。
【0015】転がり軸受3の外輪側は、ハウジング2に組み込まれ、前蓋4で固定されている。この前蓋4と、フランジ6の転がり軸受3側表面との間には、微小なラビリンス隙間b(図3参照)が形成される。また、前蓋4と、回転軸1との間には、微小なラビリンス隙間a(図3参照)が形成される。この前蓋4の図1における左側には、カバー5が取付けられている。
【0016】カバー5の外周側下方には、外界から浸入してきた異物を再び外界へ排出するためのドレイン穴8が形成されている。また、カバー5のフランジ6の外周面と対向する面には、フランジ6の外周面との間に微小なラビリンス隙間c(図3参照)を形成する環状突起10が形成されている。また、このカバー5は、回転軸1の軸心O側において、フランジ6との間に微小なラビリンス隙間e及びd(図3参照)を形成する。
【0017】なお、前述したラビリンス隙間a、b、c、d、eは、例えば、0.5mm以下など、できるだけ小さな隙間にすることが好適である。
【0018】なお、図1には、回転軸1の一端側のみをシールする場合について記載してあるが、回転軸1の両端ともシールが必要な場合は、回転軸1の他端側も同様の構成とすればよい。
【0019】この構成を備えたスピンドル装置は、ラビリンス隙間d及びeによるラビリンスシール効果によって、ある程度外界からの異物などの浸入を防止することができる。ここで、このラビリンス隙間d及びeの存在のみでは、図1における左側からある程度以上の速度(流速)で流れまたは飛翔してくる異物は、ラビリンス隙間d及びeを通り抜けてスピンドル装置の内部に浸入してしまうことがある。しかしながら、複数の溝9が形成されたフランジ6の存在により、回転軸1が回転すると、ラビリンス隙間bから外界に向けて気流が発生する。この気流は、遠心ポンプ作用によって強力な流れとなり、この気流がシールの役割を果たし、異物がこれ以上スピンドル装置内に浸入することを防止する。またこれと同時に、浸入した異物をドレイン穴8から外界へ排出する。また、ラビリンス隙間a及びbも微小な間隔に設定されているため、この部分にもラビリンスシール効果が得られる。さらにまた、カバー5に形成した環状突起10の存在により、この部分に形成されたラビリンス隙間cからラビリンスシール効果を得られ、シール効果が一層向上する。すなわち、環状突起10が単に異物がこれより右方向へ侵入するのを防ぐ障壁となるのみならず、環状突起10の右方から隙間cを通り抜けてくる前記遠心ポンプ作用による気流の圧力を高めることになるので、よりシール効果を高められるものである。
【0020】このように、本発明に係るスピンドル装置は、気体を供給する圧力エア源に接続することなく、良好なシール効果を得ることができる。したがって、設備費用やランニングコストを削減することができる。
【0021】なお、本実施の形態では、回転軸1が、時計回り及び反時計回りの両方向に回転する場合について説明したが、これに限らず、回転軸1が一方向にのみ回転する場合にも使用できることは勿論である。
【0022】また、回転軸1が一方向にのみ回転する場合は、例えば、図4に示すように、フランジ6に形成される溝19の形状は、フランジ6の中心O側が、フランジ6の外周側より回転方向(図4に示す矢印の方向)側に位置するよう、ある程度斜めに配置された曲線形状を備えていてもよい。なお、図4は、回転軸1が図中の矢印方向(図1における左側から見て、時計回り)に回転する場合に適用される図であり、回転軸1が反対方向にのみ回転する場合は、図4に示す溝19とは逆方向に斜めに配置された曲線形状にすることが好適である。
【0023】そしてまた、フランジ6に形成される溝9の形状は、前述したものに限定されず、回転軸1が回転することにより遠心ポンプ作用を発揮可能であれば、特に限定されるものではない。また、溝の設置数、設置個所、大きさなども同様に、限定されるものではない。
【0024】さらにまた、本実施の形態では、ラビリンス隙間d及びeを形成でき、ドレイン穴8が設けられたカバー5を用いたが、カバー5のラビリンス隙間d及びeを形成する部分及びドレイン穴8は、実施の形態1に示すように、回転軸1を水平にして使用するスピンドル装置の場合に設けることが好ましい。ここで、本実施の形態に係る遠心ポンプ作用は、回転軸1の外界に露出する部分が下向きになるような使い方をするスピンドル装置にも応用可能であるが、この場合は、ラビリンス隙間d及びeを形成する部分(すなわち、カバー5の左端内周部に向けて突出された環状突起及びこれに対応してフランジ6の左側面に設けられた環状凹部)及びドレイン穴8は設けなくてもよい。但し、ラビリンス隙間eに相当する隙間は、微小にすることが好ましい。
【0025】また、本実施の形態では、ハウジング2に対し回転軸1が回転する場合について説明したが、これに限らず、回転軸1に対しハウジング2が回転する場合にも適用可能であることは勿論である。
【0026】さらにまた、本発明で使用可能なスピンドル装置は、転がり軸受の他、滑り軸受等、他の種類の軸受が配設されたスピンドル装置にも応用可能であることは勿論である。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係るスピンドル装置は、軸受に相対的に回転可能に支持された軸の、当該軸受より外界側にフランジを設け、このフランジに溝を形成したため、前記回転軸が回転した際に、気流の流れを生じさせることができる。この遠心ポンプ作用による気流の流れによって、良好なシール効果を発揮することができる結果、圧縮エア源を用いることなく、外界からの異物の浸入を防ぐことができる。
【出願人】 【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
【出願日】 平成12年2月29日(2000.2.29)
【代理人】 【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸 (外2名)
【公開番号】 特開2001−241555(P2001−241555A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2000−53164(P2000−53164)