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【発明の名称】 シリンダヘッドガスケット
【発明者】 【氏名】神野 修

【要約】 【課題】

【解決手段】シリンダヘッドガスケット1は、プレート1´と、このプレート1´に穿設した燃焼室孔2を囲む環状溝5と、この環状溝5内に嵌合される金属製のシム部3と、このシム部3よりも外方側で該シム部と同方向に突出するフルビード部4とを備えており、そして上記シム部3は、プレート1´対して断続的な溶接により取付けられている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 金属プレートに穿設した燃焼室孔を囲む環状溝と、この環状溝内に嵌合される環状のシム部と、このシム部よりも外方側で上記燃焼室孔を囲む環状のビード部とを備えるシリンダヘッドガスケットにおいて、上記金属プレートに、上記燃焼室孔を囲む環状の突出段部を形成するとともに当該突出段部の内側を上記環状溝とする一方、この環状溝内に嵌合される上記シム部を金属素材から形成するとともに当該シム部を金属プレートに対してその円周方向に断続的に溶接して取付けたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】 上記ビード部は、金属プレートから一方に突出する突出段部の突出量と他方に突出するシム部の突出量との大きい方と同方向に突出することを特徴とする請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、エンジンに用いられるシリンダヘッドガスケットに関し、より詳しくは燃焼室孔を囲むシム部を有するシリンダヘッドガスケットの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シリンダヘッドガスケットとしては、金属プレートに穿設した燃焼室孔の周囲の平坦部に環状の金属製シム部を溶接したものが一般的に知られている。また、シリンダヘッドガスケットとして、金属プレートに穿設した燃焼室孔を囲む環状溝と、この環状溝内に嵌合される環状のシム部と、このシム部よりも外方側で該シム部と同方向に突出する環状のビード部とを備えるものも知られている(特開平9−317890号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、近年のエンジンの高効率化に伴って燃焼温度も上昇してきているが、燃焼温度が上昇するとそれに伴ってエンジンの冷熱の差も大きくなるので、シリンダブロックとシリンダヘッドの熱膨張差も大きくなる。従って前者のように平坦部に金属製のシムを溶接するものにおいては、その取付け強度を確保するために、連続溶接や多重溶接を施さなければならない。しかしながらそのような溶接をすると製造コストの上昇もさることながら、溶接時の熱によってシム部およびプレート自体の歪みがひどくなり、シール性が非常に悪くなるとともに、エンジンへの組付時に不具合を生じることになる。また後者の公報ではシム部を樹脂素材としているので、燃焼温度が高くなると耐熱性に問題を生じる虞がある。本発明はそのような事情に鑑み、従来に比較して燃焼温度の高いエンジンに用いて好適なシリンダヘッドガスケットを提供するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】すなわち、従来のシリンダヘッドガスケットと同一の構成を有するシリンダヘッドガスケットにおいて、上記金属プレートに、上記燃焼室孔を囲む環状の突出段部を形成して当該突出段部の内側を上記環状溝とする一方、この環状溝内に嵌合される上記シム部を金属素材から形成するとともに当該シム部をプレートに対してその円周方向に断続的に溶接して取付けたことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【0005】上述した構成によれば、シム部は金属プレートに断続的に溶接されていても、当該シム部に作用する熱膨張差は環状溝の側壁によってある程度受け止められるようになるので、連続溶接または多重容接に比較して取付け強度の劣る断続的な溶接でも充分に対応することができる。その結果、連続溶接または多重溶接に比較してコストを低くすることができるし、また連続溶接または多重溶接に比較してシム部およびプレート自体の熱変形が小さくなるのでシール性を向上させることができる。また、金属素材からなるシム部は樹脂素材からなるシム部に比較して耐熱性が高いので、樹脂素材からなるシム部を用いていた従来のシリンダヘッドガスケットに比較して燃焼温度の高いエンジンに用いて好適である。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明を多気筒用のシリンダヘッドガスケット1に適用した実施例について説明する。図1において、ガスケット1は、図示しないシリンダブロックとシリンダヘッドとに接触する1枚のプレート1´(弾性金属板)より構成されており、このプレート1´には、それぞれエンジンのシリンダボアに合わせて穿設した燃焼室孔2と、図示しないボルト孔、および冷却水又は油が流通される水油孔がそれぞれ形成されている。上記ガスケット1は、エンジンのシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介在され、上記締結ボルト孔を貫通するボルトによってシリンダブロックとシリンダヘッドとを一体に連結することによりそれらの間に挟持されて両者をシールするようになっている。
【0007】上記プレート1´は、上記燃焼室孔2を囲んでシリンダブロック側に突出するシム部3を有しており、これによりシム部3とシリンダブロック並びにシリンダヘッドとの接触面圧を局部的に高くしている。また上記プレート1´は、上記シム部3を囲んでこれと同方向に突出するフルビード部4を有しており、このフルビード部4の頂点部分4aとシリンダヘッドとの接触面圧を高くするとともに、ビード部4の裾部分4bとシリンダブロックとの接触面圧を高くしている。そして、上記シム部3の突出量をフルビード部4の突出量よりも小さく設定しており、つまり剛性の高いシム部3により高い面圧を得る一方で、弾性の高いフルビード部4によるシリンダブロックとシリンダヘッドとの間隙変化に対する優れた追従性を確保しており、このとき上記シム部3はフルビード部4が完全に押し潰されるのを防止する働きも有している。
【0008】しかして本実施例では、図2に拡大して示すように、上記環状溝5を燃焼室孔2の周囲の平坦部7をプレスして形成した環状の突出段部8内とする一方で、上記シム部3を、例えばステンレスからなる金属素材から形成するとともに、このシム部3を上記環状溝5内に嵌合させたものである。上記シム部3は、溶接によってプレート1´に取付け固定されており、このときシム部3は円周方向における所定位置が断続的に溶接されている。すなわち、シム部3とプレート1´では熱膨張が異なるとともに、シム部3が当接するシリンダブロックおよびプレート1´が当接するシリンダヘッドとの熱膨張も異なっているので、通常であればエンジンの冷熱に伴う熱膨張差に打ち勝つためにはシム部を円周方向に連続して、または半径方向に多重に溶接して充分な取付け強度を確保する必要があるが、このような連続または多重溶接は製造コストが高くなるとともに、また逆にシム部およびプレートが熱変形してしまいシリンダヘッドまたはシリンダブロックとの間でガス漏れを生じたり、エンジンへの組付時に不具合を生じる虞がある。しかしながら、上述した構成によれば連続または多重溶接に比較して強度の劣る断続的な溶接であってもシム部3に作用する熱膨張差は環状溝5の側壁5aによってある程度受止められるので問題はない(なお図面上ではシム部3と側壁5aとの間に間隙があるが、これは両者の隙間に浸透したコーティング剤Cの存在を分かり易くするためである)。したがって、以上の説明より理解されるように断続的な溶接であっても問題なく対応することができるので、連続または多重溶接する場合に比較して低コストに抑えることができるし、また連続または多重溶接する場合に比較してシム部およびプレートの熱変形が小さいのでシリンダヘッドまたはシリンダブロックとの間におけるシール性を向上させることができる。また本実施例では、上記環状溝5をプレス成形による突出段部8によって形成しているので、例えばビード部よりも内方側が全て平坦になるように切削により環状溝を形成する場合に比較してシム部の反対側における面圧を突出段部8により局部的に高くすることができるので、シム部3の反対側におけるシール性を向上させることができる。さらに本実施例では、プレート1´にシム部3を取付けた状態のシリンダヘッドガスケット1の両面全体にコーティング剤Cを塗付しており、これによりコーティング剤Cによってより確実にシム部3とプレート部1´との間から燃焼ガスが漏洩することを防止している。ところで本実施例では、上記シム部3の突出量T1を突出段部8の突出量T2よりも大きく設定するとともに、これに伴って上記ビード部4の突出方向を突出量の大きなシム部3と同方向としており、これによりビード部4が過度に圧縮されるのを防止して弾性が早期に損なわれることを防止している。なお、シム部3の突出量T1よりも突出段部8の突出量T2が大きい場合にはビード部4は突出段部8と同方向に突出するようになる。
【0009】そして、また本実施例のシム部3によれば、樹脂素材からなるシム部に比較して耐熱性に優れており、より具体的には、シム部3に作用する温度はエンジンの種類等によっても異なるが約200〜300度近くになり、これは樹脂素材が熱的に耐えうる限界ぎりぎりのところであるのに対し、本シム部3であれば問題なく対応することができるので樹脂素材では熱的に苦しい燃焼温度の高いエンジンに用いて好適である。そしてさらに本シム部3は、樹脂素材からなるシム部に比較して精度よく形成することができ、より具体的には金属素材からなるシム部3は1ミクロン単位程度の精度で製造することができるのに対し、樹脂素材からなるシム部は10ミクロン単位程度の精度でしか製造することができないので、精度が高い分よりシール性を向上させることができる。
【0010】なお上記実施例では、シム部3とフルビード部4とをシリンダブロック側に向けて取付けるようにしているがこれに限定されるものではなく、シリンダヘッド側に向けて取付けるようにしてもよい。また上記実施例では、シリンダヘッドガスケット1の両面全体にコーティング剤Cを塗付していたがこれに限定されるものではなく、図3に示すように環状溝5とシム部3との隙間に局部的にコーティング剤Cを充填するようにしてもよい。
【0011】次に図4は本発明の第2実施例を示すものであり、上記第1実施例では1枚のプレート1´と1つのシム部3で単層のシリンダヘッドガスケット1を構成していたが、本実施例では上下に配置した2枚のプレート101´、110と、上方側のプレート101´に形成した環状溝105内に取付け固定されるとともに両プレート101´、110に設けた環状溝105、111により挟持されるシム部103とから構成している。すなわち、上方側のプレート101´とシム部103は第1実施例と同一に形成されるとともに、下方側のプレート110はシム部を備えていない点を除けば上方側のプレート101´に対して上下対象となっている。なお上記シム部103は、第1実施例と同様にプレート101´に断続的に溶接される一方、該シム部103とこれを収容する環状溝105との間にはコーティング剤Cを充填してある。
【0012】これにより、上記シリンダヘッドガスケット101をシリンダヘッドとシリンダブロックとで挟持すると、図示を省略するが相互に当接する上方側のプレート101´のビード部104と下方側のプレート110のビード部112とが圧縮変形されるとともに、これに伴って上方側のプレート101´に設けたシム部103と下方側のプレート110に設けた環状溝111とが接近し、やがてこの環状溝111内にシム部103が収容されて該環状溝111の底部に圧接されるようになる。これにより、シム部材103は下方側のプレート110に対しては溶接されていないがこれを収容する環状溝111の作用によって実質的には溶接されているのに近い状態となる。したがって、本実施例の積層シリンダヘッドガスケット101でも、シム部を連続溶接する場合に比較して製造コストを低減することができるし、また樹脂製のシム部を用いる場合に比較して燃焼温度の高いエンジンに用いて好適であり、しかもシール性も向上させることができる。
【0013】次に図5は本発明の第3実施例を示すものであり、すなわち本実施例では上記第2実施例のプレート110に設けていた環状溝111を省略して平坦としたものである。このような構成の積層シリンダヘッドガスケット201によれば、第2実施例のようにプレート110の環状溝111によってシム部103を受けるストッパ的な効果は無いが、それを除いては第2実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0014】次に図6は本発明の第4実施例を示すものであり、上記第3実施例ではシリンダヘッドガスケット201を2枚のプレート201´、210から構成していたが、本実施例ではプレート301´とプレート310との間に1枚のインナープレート313を配置したものである。上記インナープレート313の燃焼室孔の周囲は、シム部303と同方向に突出する突出段部313aを形成してある。そして、上記突出段部313aをシム部303の突出量と同一もしくはこれよりも僅かに小さく設定しており、これにより当該シリンダヘッドガスケットをシリンダヘッドとシリンダブロックとで挟持した際にはシム部303とインナープレート313の突出段部313aが圧接されるとともに、該インナープレート313の突出段部313aとプレート310のフルビード部307よりも内方側部分が圧接するようになる。なお、それ以外の構成は第3実施例と同一に構成されている。本構成を有する第4実施例でも、上記第3実施例と同様の作用効果を得ることができる。
【0015】なお上記第1実施例ないし第4実施例におけるシム部の突出量を円周方向において異ならせてもよいことは勿論である。
【0016】また上記第1実施例ないし第4実施例では、いずれもフルビード部であるがこれに限定されるものではなく、ハーフビード部としてもよい。
【0017】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば、従来の連続溶接または多重溶接に比較してコストを低くすることができるし、また連続溶接または多重溶接に比較してシム部およびプレート自体の熱変形が小さくなるのでシール性を向上させることができるし、またさらに樹脂素材からなるシム部を用いていた従来に比較して燃焼温度の高いエンジンに用いて好適な効果を得ることができる。
【出願人】 【識別番号】000207791
【氏名又は名称】大豊工業株式会社
【出願日】 平成12年2月25日(2000.2.25)
【代理人】 【識別番号】100082108
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真一郎
【公開番号】 特開2001−241551(P2001−241551A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2000−49862(P2000−49862)