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【発明の名称】 回転機械のアクティブシール
【発明者】 【氏名】佐々木 公良

【要約】 【課題】クリアランスの変化によるシール性能の低下の自動的回避。

【解決手段】固定体側シール部材9と、回転体側シール部材3とのうちのいずれかのシール部材9は、その有効半径が回転体側シール部材の回転に基づく物理的変化による温度変化により変形して定常回転時に、そのいずれかのシール部材の固定体側シール部材9と回転体側シール部材3との間のクリアランスが適正化される。回転体側シール部材9の回転に基づく物理的変化による温度変化は、両部材の現実の接触・干渉、両部材の近接に基づく流体摩擦による温度上昇である。その変形は、熱変形である。その熱変形の温度依存性の設計は、そのいずれかのシール部材が形状記憶合金であり温度依存性形状記憶化されることが変形制御の点で好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】固定体側シール部材と、前記固定体側シール部材に対して相対的に回転する回転体側シール部材とを含み、前記固定体側シール部材と前記回転体側シール部材のうちのいずれかのシール部材は、その有効半径が前記回転体側シール部材の回転に基づく物理的変化による温度変化により変形して定常回転時に、前記固定体側シール部材と前記回転体側シール部材との間のクリアランスが適正化される回転機械のアクティブシール。
【請求項2】請求項1において、前記いずれかのシール部材は、形状記憶合金により形成され、前記いずれかのシール部材の有効直径Rは、温度Tを変数とする関数R(T)で表される回転機械のアクティブシール。
【請求項3】請求項2において、前記いずれかのシール部材は、起動時から定常運転時に移行する際に上流側に曲がる回転機械のアクティブシール。
【請求項4】請求項3において、前記いずれかのシール部材は、上流側に渦巻き状に曲がる回転機械のアクティブシール。
【請求項5】請求項2において、前記いずれかのシール部材は、起動時に上流側に初めから曲がっていて、定常運転時に半径方向にまっすぐになって前記クリアランスが狭くなる回転機械のアクティブシール。
【請求項6】請求項2において、前記回転体側シール部材を備える回転体は、タービン動翼を備える回転軸である回転機械のアクティブシール。
【請求項7】請求項2において、前記いずれかのシール部材は、ラビリンスシールである回転機械のアクティブシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転機械のアクティブシールに関し、特に、圧縮機、送風機、回転式ポンプ、タービンのような回転機械のロータの回転軸部のシール性能の低下を防止する回転機械のアクティブシールに関する。
【0002】
【従来の技術】圧縮機、送風機、回転式ポンプ、タービンのような回転機械の回転軸などのロータは、その軸方向に前後する2位置で流体の圧力差が存在する。その圧力差を維持するために、そのロータの周囲に固定側でラビリンスシールが配置されている。図5は、そのようなラビリンスシールを示している。タービンロータ101の一部分である回転軸102の周囲で、軸方向に並ぶ動翼103の入側と出側に、複数のラビリンスシール104が配置されている。このようなラビリンスシール104は、図6に示されるように、回転軸102の外周部として形成される凹凸状のシール部位105に外装されている。ラビリンスシール104は、基部106と基部106から内側に薄く延びる複数枚のシールフィン107とから形成されている。シール部位105とシールフィン107との間の微妙な幅のクリアランスがコントロールされて、軸方向流れの漏れ量が制約され、各ラビリンスシール104の上流側と下流側の間の圧力差が微妙に保持され得る。
【0003】このようなラビリンスシールは、そのシール性能の向上のために、シール部位105とシールフィン107との間のクリアランスが小さく設定される。そのような小さいクリアランスは、その変化がシール性能に影響する。更には、タービンの発停時にシールフィン107とシール部位105とが干渉するラビングにより、タービンロータ、その回転軸の熱曲がり振動を誘起する。更に、その干渉による両者の摩耗によりそのクリアランスが拡大してシール性能の低下が生じる。
【0004】クリアランスの変化によるシール性能の低下の回避が望まれる。更に、シールフィンとシール部位の干渉による熱曲がり振動の回避が求められる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、クリアランスの変化によるシール性能の低下の回避が可能である回転機械のアクティブシールを提供することにある。本発明の他の課題は、クリアランスの変化によるシール性能の低下の自動的回避が可能である回転機械のアクティブシールを提供することにある。本発明の更に他の課題は、シールフィンとシール部位の干渉による熱曲がり振動の回避が自動的に可能である回転機械のアクティブシールを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】その課題を解決するための手段が、下記のように表現される。その表現中に現れる技術的事項には、括弧()つきで、番号、記号等が添記されている。その番号、記号等は、本発明の実施の複数・形態又は複数の実施例のうちの少なくとも1つの実施の形態又は複数の実施例を構成する技術的事項、特に、その実施の形態又は実施例に対応する図面に表現されている技術的事項に付せられている参照番号、参照記号等に一致している。このような参照番号、参照記号は、請求項記載の技術的事項と実施の形態又は実施例の技術的事項との対応・橋渡しを明確にしている。このような対応・橋渡しは、請求項記載の技術的事項が実施の形態又は実施例の技術的事項に限定されて解釈されることを意味しない。
【0007】本発明による回転機械のアクティブシールは、固定体側シール部材(図1では9)と、固定体側シール部材(9)に対して相対的に回転する回転体側シール部材(図1では3)とを含み、固定体側シール部材(9)と回転体側シール部材(3)のうちのいずれかのシール部材は、その有効半径が回転体側シール部材の回転に基づく物理的変化による温度変化により変形して定常回転時に、そのいずれかのシール部材の固定体側シール部材(9)と回転体側シール部材(3)との間のクリアランスが適正化される。回転体側シール部材(3)の回転に基づく物理的変化による温度変化は、両部材の現実の接触・干渉、両部材の近接に基づく流体摩擦による温度上昇である。その変形は、熱変形である。その熱変形の温度依存性の設計は、そのいずれかのシール部材が形状記憶合金であり温度依存性形状記憶化されることが変形制御の点で好ましい。
【0008】そのいずれかのシール部材の有効直径Rは、温度Tを変数とする関数R(T)で表され、そのいずれかのシール部材は、起動時から定常運転時に移行する際に上流側に曲がることが、スラント効果を得るために特に好ましい。そのいずれかのシール部材は、上流側に渦巻き状に曲がることが更に好ましい。
【0009】そのいずれかのシール部材は、起動時に上流側に初めから曲がっていて、定常運転時に半径方向にまっすぐになってクリアランスが狭くなるように形成され得る。回転体側シール部材(3)を備える回転体がタービン動翼を備える回転軸(2)である場合に、その効果がより強く発揮される。いずれかのシール部材がラビリンスシールである場合に、その効果は更に強く奏される。
【0010】
【発明の実施の形態】図に一致対応して、本発明による回転機械のアクティブシールの実施の形態は、ロータ又はロータの回転軸にシール手段が設けられている。そのシール手段1は、図1に示されるように、ロータの回転軸2に形成されるシール部位3と、シール部位3を囲むラビリンスシール4とから形成されている。シール部位3とラビリンスシール4とは、軸方向Dに並び回転軸2に固着されている前後2つの動翼(図示されず、図5参照)の間に配置されている。複数の動翼は、軸方向に多段に並設されている。
【0011】シール部位3は、回転軸2の一部でありより大径に形成される大径部に矩形状の波状凹凸部5として回転軸2に形成されている。凹凸部5は、回転軸2の回転軸心線Lに直交する放射方向により高い複数の輪環状山部6とその放射方向により低い輪環状谷部7とから形成されている。
【0012】ラビリンスシール4は、回転軸を支持する側の非回転体(図示されず)に固定されて形成されるラビリンスシール本体8と、ラビリンスシール本体8から放射方向と反対の方向である中心方向に向かって延びる薄い複数枚の輪環状シールフィン9とから形成されている。各輪環状シールフィン9は、軸方向に薄く形成され、その内側端部は8の内周面側部に固着されている。複数の輪環状シールフィン9の1つは輪環状山部6の外周面に近接し、他の1つは輪環状谷部7の外周面に近接している。輪環状シールフィン9の内周端又は内周面と輪環状山部6の外周面との間のクリアランス、及び、輪環状シールフィン9の内周端又は内周面と輪環状谷部7の外周面との間のクリアランスは、適正に設計されている。
【0013】輪環状シールフィン9は、形状記憶合金により形成されている。輪環状シールフィン9は、特に、その内周側部分が形状記憶合金により形成されている。その内周側部分である内側円周部分は、任意の部分が温度変化の推移により連続的に又は間欠的に変態して変形するように形状記憶化されている。輪環状シールフィン9は、温度が上がると全体的に又は局所的に温度上昇部位が高圧側(上流側)に曲がるように形状記憶化されている。
【0014】回転軸2は、公知装置により図5で示されるように、両側のラジアル軸受108と、回転軸102(又は2)の一部位の鍔109の両側のスラスト軸受110により軸方向及び放射方向(半径方向)に安定的に支持されている。
【0015】非回転時と定常状態の回転時には、輪環状シールフィン9は、図2(a)に示されるように、全ての輪環状シールフィン9とシール部位3の外周面との間には、適正なクリアリンスが与えられている。タービン動翼と回転軸2を含むタービンの発停時、その回転体は、その固有値通過(クリティカル通過)又はケーシングの熱変形等により、大きな振動応答を示す。その振動応答に伴って、クリアランスが変動して狭くなることがある。
【0016】そのクリアランスがより狭くなって、輪環状シールフィン9の内周端とシール部位3の輪環状山部6又はシール部位3の輪環状谷部7とが接触し、輪環状シールフィン9の内周端部が発熱する。温度上昇した輪環状シールフィン9の内周端部の一部(又は全部)は、図2(b)に示されるように、その内側寄り部分がより多く軸方向に変形する。その軸方向は、下流側から上流側に向かう方向であることが好ましい。軸方向上流側に曲がる変形は、シール性能の低下をより有効に抑制することができるスラント効果がある。
【0017】図2(b)示される接触回避状態の後に更に固有値通過があり、又は、ケーシングの熱変形が拡大して、やや変形している輪環状シールフィン9の内周端部が局所的にシール部位3に接触して温度上昇した場合は、輪環状シールフィン9の内側端部はその形状記憶により更に曲がりが進行して、図2(c)に示されるように、渦巻き状に変形して、その内側端部の最内周半径が更に縮小し、クリアランスが拡大する。その渦巻き状変形部も全体的には上流側に曲がっていて、既述のスラント効果が維持されている。
【0018】定常回転状態になれば、輪環状シールフィン9は、図2(a)に示されるように定常時の起立状態に回復し、クリアランスが適正にコントロールされ、シール部位3の両側(軸方向に隣り合う2つの動翼)の間の流体の漏れ量が適正にコントロールされて、隣り合う動翼間の圧力差が所定圧力差に維持される。輪環状シールフィン9のこのような曲がりは、シール効果の低下を防止するとともに、接触しあう両部材、特に、輪環状シールフィン9の摩耗を防ぐことができる。
【0019】形状記憶化は、輪環状シールフィン9の最内周半径がR1とR2で表され、半径R1とR2は、第1半径関数R1(T)と第2半径関数R2(T)で表される。形状記憶合金は、シール流体の雰囲気、温度、変態点などが考慮され、公知の多様な材料の中から適宜に適正な材料が選択され得る。
【0020】図3は、本発明による実施の他の形態を示している。形状記憶合金で製作されている輪環状シールフィン9は、静止時に、その内周端部が上流側に曲がっている。シール部位3の凹凸面と内周端部が曲がっている輪環状シールフィン9の最内周端との間のクリアランスは、大きい目に設計されている。このようにクリアランスが大きいので、タービンの始動時の回転体の振動はラビングを発生させない。この始動時は、クリアランスが大きくても、起動時の時間帯は短く、且つ、上流側に曲がる部分のスラント効果が発揮されて、シール性能の低下は小さく流体の漏れによる動損は微量に抑えられている。
【0021】定常運転時の状態(例示:その状態時の流体による雰囲気温度は450゜C)は、起動時の状態(例示:その状態時の流体による雰囲気温度は350゜C)を示す図4(a)から図4(b)に示される状態に移行して、輪環状シールフィン9の曲がった部分は、まっすぐに起立して、輪環状シールフィン9の内周端部の最小半径が大きくなる。このように大きくなる最小半径は、輪環状シールフィン9がシール部位3に接触しない程度に(ラビングが起きない程度に)適正に大きい半径に設計されている。
【0022】形状記憶による変形が遠心力による変形により相殺されないように、温度変化により変形するラビリンスシールの変形側は、固定側、回転体側、内周端側、外周端側から適正に選択され得る。
【0023】
【発明の効果】本発明による回転機械のアクティブシールは、物理的変化によりクリアランスが適正に維持され、シール性能の低下が回避され、特に、自動的に回避される。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成12年1月17日(2000.1.17)
【代理人】 【識別番号】100102864
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 実 (外1名)
【公開番号】 特開2001−200937(P2001−200937A)
【公開日】 平成13年7月27日(2001.7.27)
【出願番号】 特願2000−8250(P2000−8250)