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【発明の名称】 メカニカルシール
【発明者】 【氏名】福井 寿夫

【氏名】藤永 繁行

【要約】 【課題】両密封環の少なくとも一方を分割構造となしていることに起因して適正なシール機能を発揮し得ないでいた条件下においても、良好なシール機能を発揮することができるものであり、凝固性流体等を扱う化学工業分野等の広範な用途に供しうるメカニカルシールを提供する。

【解決手段】回転軸2側の第1密封環4とシールケース側の第2密封環6との対向端面である密封端面4a,6aの相対回転摺接作用により、機内領域Hと大気領域Lとをシールする。第1密封環4の端部は尖端形状とされており、密封端面4aの径方向幅Wは0.2〜1.0mmとされている。各密封環4,6は、その内周部又は外周部に軸線方向における全幅に亘る切欠部を形成すると共にこの切欠部に剪断力を作用させることによって、径方向に2分割されており、その分割面は微細な凹凸面をなしている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シールケース及びこれを洞貫する回転軸の一方に設けた第1密封環と他方に設けた第2密封環とがその対向端面である密封端面で相対回転摺接するように構成されており、少なくとも第1密封環が径方向に分割されているメカニカルシールにおいて、密封端面が形成される第1密封環の端部を、その内外周面が当該密封端面との交角が鈍角となる円錐面をなす尖端形状として、当該密封端面の径方向幅を0.2〜1.0mmとなしていることを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】 第1密封環又は第1及び第2密封環が、その内周部又は外周部に軸線方向における全幅に亘る切欠部を形成すると共にこの切欠部に剪断力を作用させることによって、径方向に分割されており、その分割面が微細な凹凸面をなしていることを特徴とする、請求項1に記載するメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、少なくとも一方を径方向に分割してある二つの密封環を相対回転摺接させることによりシール機能が発揮されるように構成されたメカニカルシールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】シールケースに設けた密封環と回転軸に設けた密封環とをこれらの対向端面である密封端面で相対回転摺接させることにより、その相対回転摺接部分の内外周側領域である機内領域と機外領域とをシールするように構成されたメカニカルシールにあって、密封端面の摩耗損傷等による密封環の交換,修理等のメンテナンス作業を容易ならしめべく、少なくとも一方の密封環を径方向に分割しておくように工夫されたものが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、このように分割形の密封環を使用するメカニカルシールにあっては、機内領域の流体が凝固物質等のスラリ成分を含有するものである場合、スラリ成分が密封端面間に侵入して付着,堆積し、密封端面の適正な接触を妨げる虞れがあり、特に、密封環の分割面間にスラリ成分が付着,堆積したときには、シール機能が喪失して、大量漏れに繋がる。また、機内領域の圧力変動等により、当該密封環の分割面にズレが生じて、その密封端面に分割個所で段差や隙間が生じる虞れがあった。かかる密封端面に生じた段差や隙間は、それが極く僅かなものであっても、シール機能の大幅な低下を招来する。
【0004】したがって、分割形の密封環を使用する従来のメカニカルシールは、機内領域の圧力変動や流体の性状等のシール条件によっては実用することができず、その用途が大幅に制限されているのが実情である。
【0005】本発明は、このような実情に鑑みてなされたもので、少なくとも一方の密封環を分割形としておくことによる上記した問題を解決して、シールすべき流体の性状等のシール条件に拘わらず良好なシール機能を発揮することができ、例えば高粘度スラリ流体のシール等、広範な用途に供しうるメカニカルシールを提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、シールケース及びこれを洞貫する回転軸の一方に設けた第1密封環と他方に設けた第2密封環とがその対向端面である密封端面で相対回転摺接するように構成されており、少なくとも第1密封環が径方向に分割されているメカニカルシールにおいて、密封端面が形成される第1密封環の端部を、その内外周面が当該密封端面との交角が鈍角となる円錐面をなす尖端形状として、当該密封端面の径方向幅を0.2〜1.0mmとなしておくことを提案するものである。シールすべき粒体が高粘度,凝固性流体や微粒固形成分を含有する流体である場合には、密封端面間に凝固性成分が侵入して凝固物が生成したり微粒固形成分が噛み込んだりして、密封端面間が開き良好なシール機能が発揮できなくなる虞れがあるが、かかる場合にも、上記した如く第1密封環の密封端面の径方向幅(密封端面幅)を微小としておくと、両密封端面の接触圧(面圧)が高くなることとも相俟って、密封端面間への高粘度,凝固性流体や微粒固形成分の侵入,噛み込みを防止し得て、両密封端面を適正な接触状態に保持し、良好なシール機能を発揮することができる。さらに、第1密封環が、その内周部又は外周部に軸線方向における全幅に亘る切欠部を形成すると共にこの切欠部に剪断力を作用させることによって、径方向に分割されたものであり、その分割面が微細な凹凸面をなしているものであることを提案する。このように分割面を微細な凹凸面をなすものとしておくことにより、分割面が上記した如く微小幅のものであっても、分割面同士のずれを効果的に防止することができる。また、第2密封環についても、第1密封環と同様の手法により同様の形態に分割しておくことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1〜図4に基づいて説明する。なお、以下の説明において、軸線とは回転軸及び密封環の軸線並びにOリングの曲率中心を通過する軸線を、また前後とは図1における左右を意味するものとする。
【0008】この実施の形態における本発明に係るメカニカルシールは、図1に示す如く、円形の内周部を有するシールケース1とこれを前後方向に同心状に洞貫する回転軸2との間に組み込まれた分割形のものであり、回転軸2に第一リテーナ3を介して保持された第一密封環4と、シールケース1の内周部に第二リテーナ5を介して第一密封環4と同心対向状に保持された第二密封環6とを具備して、スプリング部材8により第一密封環4を第二密封環6へと押圧接触させることによって、両密封環4,6の対向端面である密封端面4a,6aの相対回転摺接部分において、その外周側領域である機内領域Hとその内周側領域である機外領域(大気領域)Lとをシールするように構成されている。
【0009】シールケース1は、図1に示す如く、回転機器のハウジングに取り付けられたケース本体1aと、その先端部(前端部)に取り付けられた端部壁1bとからなる。
【0010】第一リテーナ3は、図1に示す如く、内周部を基端方向(後端方向)に順次縮径する階段状に形成した円環状体である。すなわち、第一リテーナ3の内径は、先端部(前端部)3aにおいて中間部3bより大きく、基端部(前端部)3cにおいて中間部3bより小さく設定されており、基端部3cの内径は、第一リテーナ3を回転軸2の外径よりやや大きく設定されている。而して、第一リテーナ3は、回転軸2と中間部3bとの対向周面間にOリング9を介装させることにより、回転軸2に、これと同心をなし且つOリング9により二次シールされた状態で、軸線方向つまり前後方向に移動可能に嵌合保持されている。また、第一リテーナ3は、その回転を回転軸2との間に設けた回転阻止手段により阻止されている。すなわち、回転阻止手段は、図1に示す如く、第一リテーナ3の基端部に対向して回転軸2に嵌合固定された環状体7aと、環状体7aを貫通して第一リテーナ3の基端部に固着されたドライブピン7bとからなり、リテーナ3及びドライブピン7bの頭部7cが環状体7aに衝合する範囲内において、第一リテーナ3の軸線方向移動を許容しつつ、その回転軸2に対する相対回転を阻止する。
【0011】第二リテーナ5は、図1に示す如く、筒状の本体部5aとその基端部(前端部)に内方へと突出する環状鍔部5bとからなる円環状体であり、第一リテーナ3の先端部に対向し且つ回転軸2と同心をなす状態で、シールケース1の端部壁1bの内周部にOリング12を介して内嵌固定されている。
【0012】第一密封環4は、図1及び図3に示す如く、基端部(後端部)4cの外径を先端部(前端部)4b及び中間部4dの外径より小さくした円環状体である。そして、第1密封環4は、次のようにして、径方向において一対の半円形状の密封環部分4f,4fに二分割されている。
【0013】すなわち、第一密封環4の内周部又は外周部における径方向対向二箇所に、図4(a)又は同図(B)に示す如く、当該密封環4の軸線方向における全幅に亘って微細な切欠溝4iを形成した上、この切欠溝4iに径方向の剪断力を作用させて、切欠溝4iを起点として径方向への亀裂を進行させることにより、当該密封環4を二分割するようにしている(以下、この分割加工を自然割という)。このように分割された密封環部分4f,4fの衝合面つまり当該密封環4の分割面4g,4gは、図4に示す如く、微細且つ不規則な凹凸面となり、当該分割面4iに平行する方向(密封環4の軸線方向及び径方向)に相対スライドを生じない状態で凹凸係合するものとなっている。したがって、分割面4i,4iが離間せず衝合状態を維持する限り、分割面4i,4iの凹凸係合により密封環部分4f,4fの軸線方向及び径方向への相対変位(ズレ)が生じず、密封環4を適正な円環状体に保持させておくことができる。また、密封環部分4f,4fの衝合時の位置決めつまり分割面4g,4gの適正な衝合も容易に行うことができる。
【0014】第二密封環6は、図1に示す如く、基端部(前端部)6bの外径を中間部6c及び先端部(後端部)6dの外径より小さくした円環状体であり、第一密封環4と同様にして径方向に二分割されている。すなわち、第二密封環6は、上記した自然割により、一対の半円形状の密封環部分6f,6fに二分割されており、密封環部分6f,6fの衝合面である分割面6g,6gは微細且つ不規則な凹凸面となっている。
【0015】而して、各密封環4,6は、これとリテーナ3,5との対向周面部間に軸線方向に所定間隔を隔てて配設した第一及び第二Oリング10,11又は13,14により、環状に緊縛すると共にリテーナ3,5との相対回転を阻止された状態で、リテーナ3,5に嵌合保持されている。
【0016】すなわち、第一密封環4は、図1に示す如く、回転軸2に同心状に遊嵌され且つ先端部4bを第一リテーナ3の先端面(前端面)から突出させた状態で、第一リテーナ3の先端部3aの内周部に内嵌保持されている。そして、第一リテーナ3の先端部3aの内周部とこれに対向する第一密封環4の中間部4d及び基端部4cの外周部との間には、第一及び第二Oリング10,11が充填されている。第一リテーナ3の先端部3aと第一密封環4の基端部4cとの対向周面部間に配設された第一Oリング10は、前後方向において、第一密封環4に設けられた第一係止部(基端部4dの外周部と基端部4cの外周部との連繋部分)4hと第一リテーナ3に設けられた第二係止部(先端部3aの内周部と中間部3bの内周部との連繋部分)3dとの対向端面間に挟圧されていて、第一密封環4に対する密封端面方向(前方)への相対移動を第一係止部4hにより阻止されると共に、第一リテーナ3に対する上記と逆方向(後方)への相対移動を第二係止部3dにより阻止されている。第一リテーナ3の先端部3aと第一密封環4の中間部4dとの対向周面部間に配設された第二Oリング11は、第一リテーナ3の先端部3aの内周部に形成した環状溝3dに係合保持されている。なお、第一リテーナ3の先端部3aの内周部(環状溝3dが形成されていない部分の内周部)と第一密封環4の基端部4cの外周部との径方向間隔(第一Oリング10の締代)及び第一リテーナ3の先端部3aの内周部(環状溝3dの底面部)と第一密封環4の中間部4dの外周部との径方向間隔(第二Oリング11の締代)は、両Oリング10,11により、第一密封環4をその分離面4g,4gが適正に衝合する円環状体に保持するに充分な緊縛力と第一密封環4の第一リテーナ3に対する相対回転を阻止するに充分な摩擦係合力とが確保されることを条件として、適宜に設定される。
【0017】また、第二密封環6は、図1に示す如く、回転軸2に同心状に遊嵌され且つ先端部6dを第二リテーナ5の先端面(後端面)から突出させた状態で、第二リテーナ5の本体部5aの内周部に内嵌保持されている。そして、第二リテーナ5の本体部5aの内周部とこれに対向する第二密封環6の基端部6b及び中間部6cの外周部との間には、第一及び第二Oリング13,14が適度に圧縮された状態で充填されている。第二リテーナ5の本体部5aと第二密封環6の基端部6bとの対向周面部間に配設された第一Oリング13は、前後方向において、第二密封環6に設けられた第一係止部(基端部6bの外周部と中間部6cの外周面との連繋部分)6hと第二リテーナ5に設けられた第二係止部(環状鍔部)5bとの対向端面間に挟圧されていて、第二密封環6に対する密封端面方向(後方向)への相対移動を第一係止部6hにより阻止されると共に、第二リテーナ5に対する上記と逆方向(前方向)への相対移動を第二係止部5bにより阻止されている。第二リテーナ5の本体部5aと第二密封環6の中間部6cとの対向周面部間に配設された第二Oリング14は、第二リテーナ5の本体部5aの内周部に形成した環状溝5cに係合保持されている。なお、第二リテーナ5の本体部5aの内周部(環状溝5cが形成されていない部分の内周部)と第二密封環6の基端部6bの外周部との径方向間隔(第一Oリング13の締代)及び第二リテーナ5の本体部5aの内周部(環状溝5cの底面部)と第二密封環6の中間部6cの外周部との径方向間隔(第二Oリング14の締代)は、上記したOリング10,11と同様に、両Oリング13,14により第二密封環6をその分離面6g,6gが適正に衝合する円環状体に保持するに充分な緊縛力と第二密封環6の第二リテーナ5に対する相対回転を阻止するに充分な摩擦係合力とが確保されることを条件として、適宜に設定される。
【0018】ところで、この例では、第1密封環4を炭化珪素で、第2密封環6を超硬合金で構成してあり、第1及び第2リテーナ3,5はSUS304で構成してある。また、各密封環4,6の先端部4b,6dの外周には、密封環抜出用の環状凹部4j,6jが形成されているそして、第一リテーナ3と環状体7aとの間には、回転軸2の周囲に等間隔を隔てて配置した複数個のスプリング部材(圧縮コイルスプリング)8が介装されていて、第一リテーナ3を第二密封環方向(前方向)に附勢することにより、第一密封環4を第二密封環6に押圧接触させ、それらの先端部4b,6dの対向端面である密封端面4a,6aを同心状態で相対回転摺接させるようになっている。
【0019】このように相対回転摺接する両密封端面4a,6aは、軸線に直交する平滑な環状平面に形成されているが、第1密封環4の密封端面4aは、その径方向幅(以下密封端面幅」という)Wを微小なものとして、密封端面4a,6aの接触面積を小さくすると共に密封端面4a,6aの接触圧(面圧)を高めるように工夫されている。すなわち、第1密封環4の先端部4bを、図2に示す如く、その内外周面4m,4nが当該密封端面4aとの交角α,βが鈍角(90°<α,β<180°)となる円錐面をなす尖端形状として、密封端面Wを0.2〜1.0mmとなしている。なお、内外周面4m,4nと密封端面4aとの交角α,βの一方を鋭角又は直角としても、上記した寸法の密封端面幅Wを得ることが可能であるが、このように鋭角又は直角とした場合には、密封環4の構成材が上記した炭化珪素のように一般に脆い硬質材で構成されることとも相俟って、上記した自然割により密封環4を分割したときにおいて密封端面4aの分割個所が欠ける虞れがある。したがって、上記交角α,βは、密封環4の材質に応じて鈍角の範囲で適宜に設定しておくことが必要であり、一般には、90°<α,β≦170°としておくことが好ましい。
【0020】このように、第1密封環4の密封端面幅Wを微小としておくと、シールすべき流体(機内領域Hの流体)が凝固物質等のスラリ成分や微粒固形成分を含有するもの(高粘度,凝固性流体等)である場合にも、密封端面4a,6a間へのスラリ成分,微粒固形成分の侵入,噛み込みを効果的に防止し得て、密封端面4a,6aの接触不良を確実に防止することができる。すなわち、密封端面幅Wが微小であること及びそのために密封端面4a,6aの接触圧(面圧)が高くなることから、密封端面4a,6a間へのスラリ成分,微粒固形成分の侵入,噛み込みは防止される。したがって、密封端面4a,6a間が凝固物の生成や固形成分の噛み込みにより開いたりするようなことがなく、またスラリ成分等が密封環4,6の分割面4g,4g又は6g,6g間に侵入して、その間が開くようなこともなく、密封端面4a,6aを適正な接触状態に維持し得て、良好なシール機能を発揮することができる。さらに、密封端面幅Wを小さくして密封端面4a,6aの接触面積を小さくしておくことにより、密封端面4a,6aの摺動による発熱が少なく且つ放熱効果も大きくなり、密封端面4a,6aの相対回転摺接が円滑に行われ、シール機能が更に向上する。
【0021】このような機能ないし効果は、密封端面幅Wを上記した0.2〜1.0mmの範囲で密封環材質やシール条件に応じて設定しておくことによって効果的に発揮される。すなわち、W>1.0mmであると、密封端面4a,6a間へのスラリ成分等の侵入,噛み込み防止機能が充分に発揮されないし、密封端面4a,6aの接触による発熱,摩耗を効果的に抑制できない。また、W<0.2mmであると、自然割を行う上での強度上の問題(密封端面4aの分割個所が欠ける等の問題)が生じる虞れがあり、密封端面4a,6aの接触圧が必要以上に高くなる。
【0022】また、上記したメカニカルシールにあっては、密封環4,6が自然割によって分割されており、それらの分割面4g,4g又は6g,6gが不規則な凹凸面をなして係合されることから、機内領域Hの圧力変動等により密封環部分4f,4f又は6f,6fが軸線方向に齟齬して密封端面4a,6aに段差が生じるようなことがない。
【0023】さらに、上記した如く、密封環4,6を軸線方向に所定間隔を隔てた二本のOリング10,11又は13,14で緊縛するようにしておくと、密封環4,6とリテーナ3,5との間にOリング10,11又は13,14による十分な摩擦係合力が生じて、ドライブピンのような物理的係合手段を使用せずとも、密封環4,6のリテーナ3,5に対する相対回転を確実に阻止することができる。しかも、一本のOリングにより緊縛した場合に比して、両密封環部分4f,4f又は6f,6fが強力に衝合一体化されることになる。したがって、密封端面4a,6aの分割部分が開くようなことがなく、密封端面4a,6aの相対回転も適正に行われる。
【0024】また、密封環4,6には、スプリング部材8による附勢力(及び機内領域Hの流体圧による押圧力)によって軸線方向荷重が作用するが、上記したメカニカルシールでは、かかる軸線方向荷重を第一Oリング10,13を介してリテーナ3,5で受け止めるように工夫している。すなわち、軸線方向荷重は密封環側の第一係止部4h,6hから第一Oリング10,13に伝えられ、リテーナ側の第二係止部3d,5bで受け止められる。したがって、軸線方向荷重を受け止めるリテーナ側部分(第二係止部3d,5b)と密封端面4a,6aとの表面加工精度差や密封環4,6とリテーナ3,5との材質による熱膨張係数差が如何に大きくとも、これらによる密封端面4a,6aへの影響は第一Oリング10,13による弾性変形によって吸収されることになるから、分割面4g,4g又は6g,6gが上述した如く不規則な凹凸面をなして軸線方向に相対変位しない状態に凹凸係合していることとも相俟って、密封端面4a,6aの分割個所におけるズレが更に効果的に防止される。
【0025】ところで、上記したメカニカルシールにあっては、密封環4,6のシールケース1又は回転軸2からの取り外しを容易に行うことができる。すなわち、ケース本体1aから端部壁1bを外して、第二リテーナ5及びこれに嵌合保持されている第二密封環6を前方向に移動させた上、第二密封環6を第二リテーナ5から後方向に抜き出すことにより、第二密封環6の取り外し及び分解を行うことができる。しかる後、第一密封環4を第一リテーナ3から前方向に抜き出すことにより、第一密封環4の取り外し及び分解を行うことができる。このとき、密封環4,6及びリテーナ3,5とOリング10,11,13,14との間に機内領域Hの流体に含まれているスラリ成分が侵入堆積することによって、密封環4,6やOリング10…のリテーナ3,5からの抜き出し,取り出しが困難となる場合があるが、かかる場合には、密封環4,6の外周部に形成した環状凹部4j,6jに引っ掛けた適宜の抜き出し工具により、当該抜き出し,取り出し作業を容易に行うことができる。
【0026】なお、本発明は上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の基本原理を逸脱しない範囲において、適宜に改良,変更することができる。例えば、上記した実施の形態にあっては、相対回転摺接する両密封環4,6を共に分割構造としたが、当該メカニカルシールの各構成部材の寸法や使用条件等によっては第1密封環4のみを分離構造としておいてもよい。また、必要に応じて、各Oリングとして、周方向の一箇所を切離したものを使用してもよい。さらに、密封環やOリング以外のメカニカルシール構成部材についても、必要に応じて、径方向に分割した構造となしておいてもよい。
【0027】
【発明の効果】以上の説明から容易に理解されるように、本発明のメカニカルシールは、第1密封環の密封端面をナイフエッジ状に形成したから、凝固物質等のスラリ成分や微粒固形成分を含有する流体をシールする場合にも、スラリ成分等の侵入,凝固,噛み込みによる密封端面が接触不良となる等の問題が生じることがない。しかも、第1密封環又は両密封環を上記した自然割により分割することにより、その分割面が不規則な凹凸面となってズレや開きを生じ難い状態で衝合(凹凸係合)されることから、シールされるべき流体が圧力変動する等の条件下においても、分割された密封端面が段差等を生じない適正な平滑面形態に保持させておくことができる。
【0028】したがって、本発明のメカニカルシールは、両密封環の少なくとも一方を分割構造となしていることに起因して適正なシール機能を発揮し得ないでいた条件下においても、良好なシール機能を発揮することができるものであり、高粘度,凝固性流体等を扱う化学工業分野等の広範な用途に供しうる極めて実用的価値大なるものである。
【出願人】 【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
【出願日】 平成11年12月22日(1999.12.22)
【代理人】 【識別番号】100082474
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 丈夫
【公開番号】 特開2001−173800(P2001−173800A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−363570