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【発明の名称】 金属ガスケット
【発明者】 【氏名】植田 耕作

【要約】 【課題】低コストで安定したシール性能を長期間に渡って確保する。

【解決手段】燃焼室孔3の周縁部4が他の部分より厚くされると共に、該周縁部4の周囲の表裏面にそれぞれ凹状のフルビード5,6,7,8が形成され、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付ける際に前記周縁部4に最大荷重が作用するようにして前記接合面間をシールするようにした少なくとも二枚の基板1,2を備えた金属ガスケットにおいて、フルビード5,6,7,8に弾性シール材Sを該ビード5,6,7,8の凹状空間を満たすように充填する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 燃焼室孔の周縁部が他の部分より厚くされると共に、該周縁部の周囲の表裏面にそれぞれ凹状のビード部が形成され、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付ける際に前記周縁部に最大荷重が作用するようにして前記接合面間をシールするようにした少なくとも二枚の基板を備えた金属ガスケットにおいて、前記ビード部に弾性シール材を該ビード部の凹状空間を満たすように充填したことを特徴とする金属ガスケット。
【請求項2】 燃焼室孔の周縁部が他の部分より厚くされると共に、該周縁部の周囲の表裏面にそれぞれ凹状のビード部が形成され、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付ける際に前記周縁部に最大荷重が作用するようにして前記接合面間をシールするようにした少なくとも二枚の基板を備えた金属ガスケットにおいて、前記ビード部に該ビード部の凹状空間の体積に応じた量の弾性シール材を装填したことを特徴とする金属ガスケット。
【請求項3】 前記表面側のビード部と前記裏面側のビード部とを前記燃焼室孔の径方向に互いにずらして配置したことを特徴とする請求項1又は2記載の金属ガスケット。
【請求項4】 前記周縁部の板厚が前記燃焼室孔の周方向に沿って変化するように板厚に抑揚を付けたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の金属ガスケット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、燃焼室孔の周縁部が他の部分より厚くされると共に、該周縁部の周囲の表裏面にそれぞれ凹状のビード部が形成され、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付ける際に前記周縁部に最大荷重が作用するようにして前記接合面間をシールするようにした少なくとも二枚の基板を備えた金属ガスケットに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の金属ガスケットとしては、例えば図14に示すように、全面がシリコン、フッ素ゴム、NBR等のシール材Sで被覆された上下二枚の基板1,2を備え、上基板1の燃焼室孔3側の端部を下方に折り返すと共に、上基板1より薄い下基板2の外周縁部を上方に折り返し、これらの基板1,2を積層することにより、該燃焼室孔3の周縁部4を他の部分より厚くして板厚差を設けたものが知られている。
【0003】そして、かかる板厚差によりシリンダヘッドとシリンダブロックとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付ける際に周縁部4に最も面圧が集中するようにしてシリンダボア端部周縁に最大荷重をかけてシールすると共に、周縁部4の周囲の表裏面に形成された凹状のフルビード5,6や外周縁部の内側の表裏面に形成された凹状のフルビード7,8の全屈を防止するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の金属ガスケットにおいては、燃焼室孔3の周縁部4から漏れた微少な燃焼ガス、水孔から流出した冷却水及び油孔から流出したエンジンオイル等が基板1,2に被覆されたシール材Sに直接接触してしまい、また、エンジン(アルミニウム)とガスケット(ステンレス鋼、一般鋼)の材質の違いによる熱膨張差で起こるずれや、エンジンの運転・停止の繰り返しにより起こるずれの繰り返しも手伝ってシール材Sが剥離したり、フルビード5,6,7,8の劣化が促進され又シール材Sの剥離したビードの曲げR部がエンジンの稼働による爆発振動でデッキ面と擦れてフレッチング(擦り傷)ができて曲げR部の疲労破壊を引き起していまい、更には、フルビード6が対向するエンジン面に鋳巣穴等が存在する場合に、この部分のシールは線シールのため、シール線が組立時あるいはエンジン稼働中にエンジンとガスケットの材質の違いによる熱膨張差でずれて、ビードが巣穴を跨いだり巣穴の上に位置したときには、巣穴からフルビード6の凹部内に燃焼ガス、冷却水、オイル等が漏れ出してしまうことがあり、長期にわたって安定したシール性能を確保することができないという不都合がある。 また、上下の基板1,2にシール材Sを被覆する際の寸法精度や接着強度を考慮する必要があるばかりか、全面を被覆するためシール材料の量が多くなってコスト高になるという不都合がある。
【0005】本発明はかかる不都合を解消するためになされたものであり、低コストで安定したシール性能を長期間に渡って確保することができる金属ガスケットを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】かかる目的を達成するために、請求項1に係る金属ガスケットは、燃焼室孔の周縁部が他の部分より厚くされると共に、該周縁部の周囲の表裏面にそれぞれ凹状のビード部が形成され、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付ける際に前記周縁部に最大荷重が作用するようにして前記接合面間をシールするようにした少なくとも二枚の基板を備えた金属ガスケットにおいて、前記ビード部に弾性シール材を該ビード部の凹状空間を満たすように充填したことを特徴とする。
【0007】請求項2に係る金属ガスケットは、燃焼室孔の周縁部が他の部分より厚くされると共に、該周縁部の周囲の表裏面にそれぞれ凹状のビード部が形成され、シリンダブロックとシリンダヘッドとの接合面間に介装して締結ボルトで締め付ける際に前記周縁部に最大荷重が作用するようにして前記接合面間をシールするようにした少なくとも二枚の基板を備えた金属ガスケットにおいて、前記ビード部に該ビード部の凹状空間の体積に応じた量の弾性シール材を装填したことを特徴とする。
【0008】請求項3に係る金属ガスケットは、請求項1又は2において、前記表面側のビード部と前記裏面側のビード部とを前記燃焼室孔の径方向に互いにずらして配置したことを特徴とする。請求項4に係る金属ガスケットは、請求項1〜3のいずれか一項において、前記周縁部の板厚が前記燃焼室孔の周方向に沿って変化するように板厚に抑揚を付けたことを特徴とする。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の一例である金属ガスケットを説明するための要部平面図、図2は図1のA−A線断面図、図3及び図4は本発明の他の実施の形態を説明するための説明的断面図、図5は本発明の他の態様の実施の形態を説明するための説明的断面図、図6〜図13は基板又は副板の変形例を説明するための説明的断面図である。
【0010】図1及び図2を参照して、この金属ガスケットは、例えばステンレス鋼板などの金属板からなる上下二枚の基板1,2を備えており、上基板1は下基板2に比べて厚肉になっている。上基板1の燃焼室孔3側の端部は下方に折り返されて上下方向に二枚配置され、一方、下基板2の外周縁部は上方に折り返されて上下方向に二枚配置されている。そして、これらの基板1,2を積層することにより、燃焼室孔3の周縁部4が他の部分より厚くされて板厚差が設けられている。
【0011】また、上基板1の周縁部4の周囲の上面及び下基板2の周縁部4の周囲の下面には、それぞれ凹状のフルビード5及び6が形成され、上基板1の外周縁部より内側の上面及び下基板2の外周縁部より内側の下面には、それぞれ水孔から流出した冷却水や油孔から流出したエンジンオイル等をシールする凹状のフルビード7及び8が形成されている。なお、図1において、符号70は水孔、71はオイル孔である。
【0012】ここで、この実施の形態では、フルビード5,6,7,8にシリコン、フッ素ゴム、NBR等の耐熱性を有する弾性シール材Sが各ビードの凹状空間を満たすように充填されており、これにより、各ビードの板厚方向の弾性変形を可能にしている。なお、フルビードに弾性シール材Sを充填する方法としては、プリント、型モールド、ディスペンサー塗布方法等が挙げられる。
【0013】そして、かかる構成の金属ガスケットをシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装して締結ボルトで締め付けると、フルビード5,6、フルビード7,8、周縁部4の順に板厚方向に圧縮変形し、該締め付けは板厚が変化しない外周縁部の板厚まで行われる。締め付け終了時においては、最も板厚の厚い周縁部4と外周縁部との板厚差により、該周縁部4に最も面圧が集中してシール条件が一番厳しいシリンダボア端部周縁に最大荷重が作用して該端部周縁のシールがなされると共に、フルビード5,6,7,8の全屈が防止される。
【0014】また、フルビード5,6、フルビード7,8はシール材Sと共に板厚方向に変形し、締め付け完了時においては、各ビードの弾性反発力とシール材Sの弾性反発力とが共働して強力なシール圧で上下両面を完全にシールし、更に、エンジンの振動振幅に対しても変形追従する。このとき、シール材Sはビードの凹状空間内に充填されているため、万が一周縁部4から微少な燃焼ガスが漏れたとしても該燃焼ガスがシール材Sに直接接触するのを防止することができると共に、水孔から流出した冷却水や油孔から流出したエンジンオイルについてもシール材Sに直接接触するのを防止することができ、また、エンジン(アルミニウム)とガスケット(ステンレス鋼、一般鋼)の材質の違いによる熱膨張差で起こるずれや、エンジンの運転・停止の繰り返しにより起こるずれの繰り返しが生じても、基板のビードで覆われたシール材はビードで保護され又シール幅も2〜4mmあって傷や巣穴のずれをカバーでき、また、シール材Sが剥離するのを防止することができると共に、フルビード5,6,7,8の曲げR部の疲労破壊を抑制することができ、更には、フルビード6が対向するエンジン面に鋳巣穴等が存在する場合においても、巣穴がビード幅内に存在してエンジンとガスケットの熱膨張差でずれる範囲内であれば巣穴からビードの凹部内に燃焼ガスが漏れ出してしまうのを防止することができ、この結果、長期にわたって安定したシール性能を確保することができる。
【0015】また、上下の基板1,2のフルビードにシール材Sを充填するようにしているので、シール材Sの寸法精度を考慮する必要がなく、接着強度についても比較的弱くて済み、また、フルビードの凹部のみにシール材Sを充填すれば足りるためシール材Sを全面被覆する場合に比べてシール材の量を少なくすることができ、この結果、コスト低減を図ることができる。
【0016】なお、図3は、上下の基板1,2のエンジンに接触する面に減摩剤(例えば二硫化モリブデンに樹脂を混入させたもの等)9を塗布してエンジンとガスケットの材質の違いによる熱膨張差で起こるフレッチングを防止するようにした例を示す。また、図4は、上基板1側のフルビード5,7と下基板2側のフルビード6,8とを燃焼室孔3の径方向に互いにずらして配置した例であり、このようにすると、ビードの板厚方向の変形量を大きくとることができるので、ビードの高さを高くしてシール材の充填量を多くすることができ、この結果、より大きなシール圧を確保することができる。
【0017】更に、図5は、フルビード5,6,7,8にビードの凹状空間の体積に応じた量の弾性シール材Sを装填した他の態様の例を示す。この態様では、金属ガスケットをシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に介装して締結ボルトで締め付けた状態においては、図2に示すものと同様にシール材Sが大きな弾性反発力を有してビードの凹状空間を埋めつくすように充填され、上記実施の形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0018】次に、図6〜図13を参照して基板の変形例を説明する。まず、図6は上下の基板1,2間に所定厚の副板11を介在させてガスケットの板厚を調整するようにした例であり、副板11には周縁部4と外周縁部との板厚差の半分の段差12が設けられている。図7は上基板1の外周縁部より内側の上面及び下基板2の外周縁部より内側の下面に、フルビード7,8に代えて、ステップ状のハーフビード13,14を形成して、各ビード13,14の凹状空間にシール材Sを充填した例である。
【0019】図8は上下の基板21,22の間に副板23を介在させた例であり、上下の基板21,22を同じ板厚とし、燃焼室孔3側の端部及び外周縁部に折り返し部分を設けない代わりに、副板23の燃焼室孔3側の端部及び外周縁部をそれぞれ上方に折り返して該副板23の燃焼室孔3側の端部の折り返し部分の内部に外周縁部との板厚差に応じた厚さのシム板24を装入したものである。図9は図8のフルビード7,8をステップ状のハーフビード13,14に代えて、各ビード13,14の凹状空間にシール材Sを充填した例であり、図10は図8の上基板21と副板23との間に副板25を介在させてガスケットの板厚を調整するようにした例である。
【0020】図11は上下二枚の基板31,32を同一厚とし、上基板31の燃焼室孔3側の端部と外周縁部とをそれぞれを下方に折り返して燃焼室孔3側の端部の折り返し部分の内部に外周縁部との板厚差に応じた厚さのシム板26を装入したものであり、図12は上下二枚の基板41,42を同一厚とし、上基板41の燃焼室孔3側の端部下面にシム板43を溶接等により固着すると共に、外周縁部の下面にシム板43より薄いシム板44を溶接等により固着して板厚差を設けるようにしたものである。
【0021】図13は上下二枚の基板51,52を同一厚とし、上基板51の燃焼室孔3側の端部下面にシム板(成形板)53を溶接等により固着すると共に、下基板52の外周縁部を上方に折り返して上下方向に二枚配置したものであり、シム板53はボルト締結時の締め付け力が大きい締結ボルトのボルト孔54近傍の板厚T1が薄く成形されていると共に、締め付け力が小さい各ボルト孔54間に位置する部分の板厚T0 がボルト孔54近傍より厚く、且つ、上基板1より厚く成形されて抑揚が付けられており、これにより、シリンダボア周縁における面圧の均一化を図って該シリンダボアの真円度が損なわれないようにしている。
【0022】
【発明の効果】上記の説明から明らかなように、請求項1又は2の発明によれば、低コストで安定したシール性能を長期間に渡って確保することができるという効果が得られる。請求項3の発明では、請求項1又は2の発明に加えて、ビードの高さを高くしてシール材の充填量を多くすることができるので、より大きなシール圧を確保することができるという効果が得られる。
【0023】請求項4の発明では、請求項1〜3のいずれか一項の発明に加えて、シリンダボア周縁における面圧の均一化を図って該シリンダボアの真円度が損なわれないようにすることができるという効果が得られる。
【出願人】 【識別番号】000230261
【氏名又は名称】日本メタルガスケット株式会社
【出願日】 平成11年12月22日(1999.12.22)
【代理人】 【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也 (外2名)
【公開番号】 特開2001−173791(P2001−173791A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−364391