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【発明の名称】 金属製ガスケット
【発明者】 【氏名】魚返 智義

【氏名】古田 裕

【氏名】中里 浩一

【要約】 【課題】構成板枚数または部材数の低減によるコストダウンと、シール性能との両立を図ることのできる金属製ガスケットを提供する。

【解決手段】弾性金属よりなり、ホットプラグ4との対向部にホットプラグビード13を有する第1ビード板6と、弾性金属よりなり、ボア孔9周りに折り返し部14を有するとともに、ボア孔9の周縁部とホットプラグ対向部の周縁部とを囲む環状のボアビード15を有する第2ビード板7とを備える構成とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 シリンダヘッドの下部にホットプラグを装着してなる副室式エンジンに用いられる金属製ガスケットであって、(a)弾性金属よりなり、前記ホットプラグとの対向部にホットプラグビードを有する第1ビード板および(b)弾性金属よりなり、ボア孔周りに折り返し部を有するとともに、ボア孔の周縁部とホットプラグ対向部の周縁部とを囲む環状のボアビードを有する第2ビード板を備えることを特徴とする金属製ガスケット。
【請求項2】 前記第1ビード板のボア孔側の端部が、前記第2ビード板に形成される折り返し部によって抱持されている請求項1に記載の金属製ガスケット。
【請求項3】 前記第2ビード板によって抱持される第1ビード板の端部のコーナー部がボア孔の全周にわたって面取りされている請求項2に記載の金属製ガスケット。
【請求項4】 前記第1ビード板上に、弾性金属よりなりボアビードを有する第3ビード板が積層される請求項1〜3のいずれかに記載の金属製ガスケット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、金属製ガスケットに関し、より詳しくはシリンダヘッドの下部にホットプラグを装着してなる副室式エンジンに用いられる金属製ガスケットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】副室式エンジン、とりわけ副室式ディーゼルエンジンは、主燃焼室(主室)とその主燃焼室に絞りを介して連通される副燃焼室(副室)とを備え、副燃焼室にて一次燃焼された燃料ガスと不完全混合気とが前記絞りを通過して主燃焼室に噴出するようにされ、この通過時の噴流エネルギーによって主燃焼室内の空気と良好に混合して完全燃焼を図るようにされている。この副室式ディーゼルエンジンにおいては、シリンダヘッドに対してホットプラグ(口金)が嵌め込みにより挿入されてなる構造が採用されていることから、ホットプラグ下面とシリンダヘッド下面との間に凹凸段差が生じる。ホットプラグ下面が凸状である場合には、ビード板などへの応力集中が発生し、ホットプラグ対向部の高温に起因する熱応力と相俟ってビード板などの燃焼室周縁部に亀裂が発生し易くなり、シール性の確保が困難であるという問題点があった。
【0003】このような問題点に対処するために、特に副室式エンジン用の積層金属製ガスケットとして、2枚のビード板間に2枚の中間板を挟持してなる4枚構成のガスケットがいろいろと提案されている。
【0004】例えば実開平6−24268号公報においては、第一ビード板と第二ビード板との間に上調整板と下調整板とよりなる二枚の中間板を積層し、このうち上調整板の燃焼室用穴側および切込穴の周縁を折り返して折返し重合縁部(密着折返し部)とした金属積層形ヘッドガスケットが提案されている。また、ホットプラグとの対向部の補強などのために金属シム板または軟質部材を挟持するようにしたものが、実用新案登録第2575037号公報、特開平8−42697号公報、特開平8−42698号公報などにおいて提案されている。
【0005】ところで、最近では、エンジンにおける所謂オールアルミニウム合金化による軽量化と高燃焼圧化の動きと並行して、この種の副室式ディーゼルエンジン用ガスケットにおいても、コスト面から3枚構成のものが要求されるようになってきている。この3枚構成のシリンダヘッドガスケットの例としては、グロメットとワイヤーリングとを併用したもの(実開平2−83356号公報)や、ボア孔周りにシムリングを設けることによりストッパー部を構成するとともに、環状ビードを有するビード板のホットプラグ対向部分に押さえビードを形成したもの(特開平6−337069号公報)などが挙げられる。
【0006】また、本願発明に関連する先行技術として、本出願人らの提案になる、特開平9−196178号公報および特開平10−9392号公報に開示された3枚構成の積層ガスケットがある。これら先行技術に開示されたものでは、ビードまたはビード状ストッパーを備えた厚い中間板を薄ビード板にて抱持した構成が採用されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前記従来の4枚構成のガスケットにおいては、ストッパー部として中間板の1枚に180°の密着折返し部を形成する構成であるために、この折返し部形成のための曲げ加工時における割れ防止の観点から使用材料に制約を受けることになり、例えばSUS304などの低弾性金属板を選択せざるを得ないことが多い。このため、この種の中間板では、ストッパー機能を付与することはできるものの、シールのためのビード板機能までをも担わせることは困難である。
【0008】また、これら従来構造では、厚い中間板または調整板を、あるいはそれら両板を積層した状態で、2枚のビード板間に介在させる構成であるために、各ビード板のシール面圧が厚板または積層板の反対側に全く及ばなくなり、これら厚板または積層板によってシール機能が分断され、シール効果が低下するという問題点がある。さらに、ホットプラグとの対向部の補強などのために金属シム板を用いるものでは、強度が大きくなり過ぎて、ホットプラグ下面の凹凸のばらつきの吸収性が乏しくなるという問題点があり、また軟質部材を用いるものでは、強度上弱いという問題点がある。また、これらいずれの場合にも、部材数が増加するのみならず、取付けおよび取付け忘れチェックなどの工数が増加するという問題点がある。
【0009】一方、前記3枚構成のガスケットにおいて、ワイヤーリング等を用いるものでは、前述の金属シム板、軟質部材を用いるものと同様、部材数および工数が増加するという問題点がある。また、ビード板側にホットプラグ用の押さえビードを形成するものでは、その強度を確保するのが困難であり、強度を上げようとすると、逆に応力集中によって押さえビード自身およびビード板に亀裂または変形が発生するという問題点がある。
【0010】なお、本願発明に関連する先行技術として挙げた特開平9−196178号公報および特開平10−9392号公報に開示されたものでは、ビードまたはビード状ストッパーがボア孔周りに環状に設けられているだけであって、副室式エンジンにおけるホットプラグの対向部の補強について考慮したものではない。
【0011】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたもので、構成板枚数または部材数の低減によるコストダウンと、シール性能との両立を図ることができ、副室式エンジンに適用して好適な金属製ガスケットを提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段および作用・効果】本発明は、低弾性ばね材または良好な冷間加工性および耐熱・高強度を兼ね備えた材料であれば、この材料に設けたボアビードには、ストッパーなしの場合でもビード亀裂およびへたりの原因となる高応力振幅および高応力集中はほとんど発生せず、この材料を折返し部とボアビードとを共に形成する第2ビード板として活用すれば、積層枚数を増加させることなく所期のシール機能を達成することができるという知見に基づいてなされたものである。要するに、本発明による金属製ガスケットは、シリンダヘッドの下部にホットプラグを装着してなる副室式エンジンに用いられる金属製ガスケットであって、(a)弾性金属よりなり、前記ホットプラグとの対向部にホットプラグビードを有する第1ビード板および(b)弾性金属よりなり、ボア孔周りに折り返し部を有するとともに、ボア孔の周縁部とホットプラグ対向部の周縁部とを囲む環状のボアビードを有する第2ビード板を備えることを特徴とするものである。
【0013】本発明によれば、第1ビード板にホットプラグビードが形成されていることによって、このホットプラグビードによりホットプラグが支えられ、ガス一次シール部への局部的な荷重集中、変形・亀裂の発生が防止されるとともに、ホットプラグの落下が防止される。この第1ビード板は完全な剛体ではないため、ホットプラグ下面の凹凸段差およびそのばらつきに対する応力の吸収代の機能を有し、かつ厚さ調整板の機能を有する。一方、第2ビード板に適切に折り返し部が形成されていることによって、ボア孔周りの増厚が図られ、かつその折返し部が、3枚構成とした場合の第3ビード板におけるボアビードのストッパーの役目をする。また、第2ビード板に形成されるボアビードが、ボア孔の周縁部とホットプラグ対向部の周縁部とを囲む環状ビードとされていることによって、シールラインに、ホットプラグ下面とシリンダヘッド下面との間に生じる凹凸段差による隙間を発生させることがなく、ボア孔周りのシールが確実に行えることになる。
【0014】本発明において、前記第1ビード板のボア孔側の端部は、前記第2ビード板に形成される折り返し部によって抱持されているのが好ましい。こうすることで、薄肉の第2ビード板の厚さもしくはそれ以下の厚さで、ホットプラグビードの高さよりやや小さい厚さのストッパー量を確保することができ、また締付け時の荷重を適切に集中させることができてボア孔直近部で適切な高面圧を発生させることができる。また、この折り返し抱持によって第1ビード板のボア孔側の端部がホットプラグによる高温から遮断され、熱応力に起因するボア孔側の端部における亀裂発生が防止される。
【0015】また、前記第2ビード板によって抱持される第1ビード板の端部のコーナー部はボア孔の全周にわたって面取りされているのが好ましい。この構成により、第2ビード板の折り返しアール部に発生する高温熱応力に起因する亀裂発生を防止することができる。なお、この面取り施工は、折り返し加工と別工程で行うこともできるし、折り返し加工の際に併せて施工することもできる。
【0016】本発明では、前記第1ビード板上に、弾性金属よりなりボアビードを有する第3ビード板が積層されるのが好適である。このようにすれば、2枚構成のものに比べて層間漏れ経路数を削減することができるので、シールの信頼性を向上させることができる。また、前記第1ビード板の厚さを適切に設定することで、厚い中間板および/または調整板を第2ビード板および第3ビード板間に介在させないようにすれば、第2ビード板および第3ビード板のシール面圧が第1ビード板を介してその反対側にも及ぶことになり、中間の第1ビード板によって第2ビード板と第3ビード板のシール面圧の分断をなくすことができ、良好なシール効果を達成することができる。さらに、このような3枚構成で、かつ第1ビード板の端部を第2ビード板の折り返し部によって抱持する構成を採用することで、ボア孔周りの耐熱性および耐亀裂性にも優れたガスケットを得ることができる。特に、この効果は、折り返し部が形成される第2ビード板の材質として高Mnオーステナイト系ステンレス鋼を用いると、より顕著になる。
【0017】ここで、前記第1ビード板はその板厚を第2ビード板および第3ビード板よりも基本的に適宜厚さだけ厚くするのが良い。こうすることで、この第1ビード板は、強度および冷間加工性を有する構成板となって、亀裂や変形の発生を少なくすることができる。また、この第1ビード板に形成されるホットプラグビードの形状としては、種々の凸状のビード、ハーフビードまたは段差等種々の形状が採用される。このホットプラグビードの形状、高さおよび全体形状は、ホットプラグ下面のシール当接面からの凹凸段差や必要な応力分散および所要面圧などに応じて適宜選択することができる。なお、形状の単純さ、加工の容易さおよび効果等の面から最も望ましい形状は、平面視が三日月状の凸状ビードである。
【0018】また、前記第2ビード板の望ましい材質は、折り返しアール部の亀裂防止とビード弾性の確保とを両立させることを考慮し、冷間加工性を有するばね材とするのが良い。また、前記第3ビード板の望ましい材質は、ばね材である。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、本発明による金属製ガスケットの具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0020】図1には、本発明の一実施例に係る金属製ガスケットの平面図が示され、図2には、同金属製ガスケットにおける第1ビード板の平面図が示されている。また、図3、図4、図5には、図1のA−A断面図、B−B断面図、C−C断面図がそれぞれ示されている。
【0021】本実施例の金属製ガスケット1は、副室式の多気筒ディーゼルエンジンにおけるシリンダヘッド2とシリンダブロック3との対向面に装着して使用される。図4に示されるように、シリンダヘッド2に形成されたキャビティには、シリンダヘッド2とは別体に作製されて副室(副燃焼室)を構成するホットプラグ4が装着・位置決めされている。通常、このホットプラグ4は、シリンダヘッド2の下面から段差5をもって僅かに突出した状態になったり、あるいは僅かに窪んだ状態になることが多い。なお、図4では、ホットプラグ4がシリンダヘッド2の下面から僅かに突出した状態で示されている。
【0022】前記金属製ガスケット1は、弾性金属よりなる所要厚みの第1ビード板6と、この第1ビード板6を挟む上下に積層され、やはり弾性金属よりなりその第1ビード板6よりも厚さの薄い第2ビード板7および第3ビード板8との3枚構成とされている。なお、本実施例では、板厚は厚い方から順に、第1ビード板6、第3ビード板8、第2ビード板7となっている。また、図示省略されているが、各構成板には、必要に応じて各種の表面コーティング処理を部分的もしくは全面的に施すことができる。
【0023】各ビード板6,7,8には、シリンダブロック3に形成された並列する複数のシリンダボアに対応してボア孔9がそれぞれ形成され、またボルト孔10、オイル孔11、水孔12等がそれぞれ穿設されている。なお、ボア孔9を除くボルト孔10、オイル孔11、水孔12の周囲およびガスケット1の周辺部には、原則としてハーフビードが設けられている。
【0024】前記第1ビード板6は、ホットプラグ4との対向部にホットプラグビード13が形成されてなる形状とされている。このホットプラグビード13は、平面視が三日月状で、その凸部の表面が平坦面に形成されている。このホットプラグビード13はホットプラグ4を支え、ガス一次シール部への局部的な応力集中、変形・亀裂の発生を防止し、ホットプラグ4の落下を防止する役目をする。前記第1ビード板6は、厚さが比較的厚く、強度および冷間加工性を有する構成板とされているため、亀裂や変形の発生が少ない。一方、この第1ビード板6は完全な剛体ではないため、強度を維持しながら、ホットプラグ4下面の凹凸段差およびそのばらつきに対し応力の吸収代を有しており、かつ厚さ調整板としても機能する。なお、ホットプラグビード13は、その嵌め合い具合にもよるが、ゆるい場合にはホットプラグ4自体の動きを支える機能も有している。
【0025】前記第2ビード板7は、ボア孔9周りに折り返し部14を有するとともに、ボア孔9とホットプラグ4の周縁部とを囲む環状のボアビード15を有し、前記折り返し部14によって前記第1ビード板6のボア孔9側の端部が抱持されるよう構成されている。この第2ビード板7の折り返し部14は、第3ビード板8における後述のボアビード16のストッパーとして機能する。ここで、この折り返し部14は、ホットプラグ4と対向する部分(図1の記号Pにて示される部分)において、その幅をその他の部分に対して徐々に変化させて広くするように形成されている。このようにされていることによって、ホットプラグ4の下面が凸状になるような段差が生じている場合に、ストッパー部の面圧を分散させることができ、この折り返し部14の変形および亀裂を抑制することができる。一方、ボアビード15はボアシール用であり、このボアビード15がボア孔9とホットプラグ4とを囲む環状形状とされていることによって、シールラインにホットプラグ4の凹凸段差による隙間が発生しないようになっている。
【0026】前記第3ビード板8は、第2ビード板7と同様、ボア孔9とホットプラグ4の周縁部とを囲む環状のボアビード16を有する形状とされている。このボアビード16はボアシール用である。本実施例においては、第2ビード板7と第3ビード板8の各ボアビード形状が同一形状とされている。これによって加工型の共通化が可能であって加工がより容易に行えることになる。
【0027】本実施例の金属製ガスケット1において、シール部は折り返し部14およびボアビード15,16から構成される。前記折り返し部14は、締付け時の荷重を適切に集中させ、ボア孔直近で適切な高面圧を発生させる役目をする。また、この折り返し部14は、第3ビード板8のボアビード16のストッパーとして機能する。このために、前記ホットプラグビード13の高さH(図8参照)は必ず折り返し部14のストッパー量S(図8参照)よりも小さく設定され、この折り返し部14によるガス一次シール機能を妨げないようにされている。また、このストッパー量Sは第3ビード板8のボアビード16の高さよりも小さく設定され、この第3ビード板8のボアビード16のストッパー効果が発揮されるように構成されている。こうして、折り返し部14による一次シールおよび第3ビード板8のボアビード16による二次シールが同時に発揮されることになる。
【0028】前記第1ビード板6の材質としては、SECCまたはSUS430が選定され、第2ビード板7の材質としては、高Mnオーステナイト系ステンレス鋼、SUS304、SUS301の3/4ハード未満(軟質調質ばね材)のいずれかが選定され、第3ビード板8の材質としては、SUS301フルハードまたは3/4ハード(硬質調質ばね材)が選定される。望ましい材質組み合わせは、第2ビード板7が耐熱・高強度および良冷間加工性を有する高Mnオーステナイト系ステンレス鋼、第3ビード板8がSUS301フルハードである。この組み合わせによれば、第2ビード板7の折り返し抱持によって第1ビード板6のボア孔9側の端部がホットプラグ4による高温から遮断され、熱応力に起因するその端部における亀裂発生が防止される。すなわち、第1ビード板6の材質が普通鋼SECCであっても、そのボア孔9側の端部が耐熱・高強度のステンレス鋼よりなる第2ビード板7の折り返し部14によって抱持されて保護されているので、第1ビード板6のボア孔9側端部の耐久性が一層向上する。この場合、第1ビード板6の材質がSUS430であれば、その効果をより一層向上させることができる。
【0029】本実施例の金属製ガスケット1によれば、前述の第1ビード板6のボア孔9側端部における亀裂発生防止の効果に加えて、第1ビード板6の厚さを適切に設定することで、厚い中間板および/または調整板を第2ビード板7および第3ビード板8間に介在させないようにすれば、第2ビード板7および第3ビード板8のシール面圧が第1ビード板6を介してその反対側にも及ぶことになり、中間の第1ビード板によって第2ビード板と第3ビード板のシール面圧の分断をなくして、良好なシール効果が達成できるという効果を奏するものである。
【0030】本実施例において、第2ビード板7および第3ビード板8のボアビード形状は、フルビードであっても、ハーフビードであっても良い。また、山形、台形のいずれであっても良い。最も望ましい形状は、断面台形状のフルビード形状(ハーフビードを近接させた形状)である。この理由は、シリンダヘッド2およびシリンダブロック3ともに2重のシールラインによる多重シールが可能となり、ビード復元性に優れシール当接面の動きに対して追随性が良いからである。
【0031】一方、ボアビード幅は、ボア孔9から離れたホットプラグ4対向部の外側部において、その他の部分の幅よりも広くするのが良い。この場合、ボア孔部から前記外側部へ移行する部分で徐々にそのボアビード幅を拡大して広い部分に連設するようにするのが好ましい。一般に、ホットプラグ対向部の外周側にあるボアビートでは、その圧縮量が大きくなって応力が増大し、ビード近傍部の亀裂やへたり等の不具合発生の原因となるが、前述のようにボアビード幅を広くすることは、このような不具合発生の有効な対策となる。
【0032】本実施例では、互いに隣接する二つのボア孔間でそれぞれのビード同士が会合しない場合について説明したが、本発明は、隣接ビード同士が会合するタイプのガスケットに対しても適用することができる。
【0033】図6(a)〜(d)、図7(a)(b)には、3枚構成のガスケットの他の実施例(図1のB−B断面に相当する断面図)が示されている。これらの図において、図1〜図5に示される実施例と共通もしくは相当する部分には図に同一符号が付されている。
【0034】図6(a)〜(d)に示されるのは、第2ビード板7,7A,7Bの折り返し部14によって第1ビード板6,6Aのボア孔側端部を抱持するようにした点で共通するが、ビード板のビード形状がそれぞれ異なる実施例である。すなわち、図6(a)は、第1ビード板6および第2ビード板7の形状は前記実施例と同様であるが、第3ビード板8Aにおけるボアビード16Aの形状を上に凸の形状に変更した例である。また、図6(b)は、第1ビード板6の形状は前記実施例と同様であるが、第2ビード板7Aおよび第3ビード板8Bの各ボアビード15A,16Bをハーフビードとした例である。
【0035】次に、図6(c)にて示されているガスケットは、前記実施例に対して第1ビード板の形状を変更したものである。この例では、第1ビード板6Aにおける、第2ビード板7の折り返し部14の端部に対向する位置に段加工を施して、階段状のホットプラグビード13Aを形成したものである。このように、ホットプラグビードに階段状などの局部的な段を形成すると、ホットプラグ4の下面がシリンダヘッド2の接合シール面から凹凸状の段差が生じている場合(図4参照)に、その段差の吸収が可能となる。また、ストッパー量もその段部の板厚以下に設定することができ、さらにボルト孔近傍部で局部的に前記段加工を施すことにより、折り返し部14の面圧を調整することもできる。
【0036】また、図6(d)にて示されるガスケットは、第2ビード板7Bにホットプラグビード13と重なる別の補強ビード17を形成した例である。なお、図6の構成においては、ストッパービード高さとストッパー量との高低(大小)の関係は適宜選択される。
【0037】一方、図7(a)(b)に示されるのは、第2ビード板の折り返し部14によって第1ビード板のボア孔側端部を抱持せずに、この折り返し部14に隙間18を設けて第2ビード板を積層する例である。すなわち、図7(a)は、第2ビード板7Cにおける折り返し部14の手前に屈曲部19を設けてストッパー量を上下均等にし、第1ビード板6Bのホットプラグビードとして更にハーフビード20を付加した例である。また、図7(b)は、後述する図9(a)に示されるガスケットに第3ビード板を積層した例であって、第1ビード板6Cに、比較的厚い第1ビード板6Cを積層しやすくし、かつボア孔周りのシール効果を確実にするシム部21を設けるとともに、二重ハーフビード22を設けたものである。この場合、ハーフビード22は、ホットプラグビードと、隙間18を有する第2ビード板7の折り返し部14に積層してシール作用を創出させるためのシム部21形成との二つの作用を果たしている。本実施例においては、基本的にハーフビードであるために、さほどホットプラグビードの機能を有しないことは勿論であり、ホットプラグ4下面とシール当接面との凹凸段差が小さく、かつホットプラグ4の嵌め込みが強固である場合などに適用するのが良い。なお、本実施例のように第2ビード板の折り返し部14によって第1ビード板のボア孔側端部を抱持しない場合には、曲げ部の割れ防止および締付け後の隙間18の維持を図るようにするのが望ましい。
【0038】前記各実施例においては、3枚構成のガスケットについて説明したが、本発明は2枚構成のガスケットに対しても適用することができる。図8に示されるのは、第1ビード板6と第2ビード板7とよりなる2枚構成のガスケットの例である。なお、前記実施例と共通もしくは相当する部分には図に同一符号が付されている。
【0039】本実施例では、第2ビード板7によって抱持される第1ビード板6のボア孔側の端部のコーナー部23,24がボア孔の全周にわたって面取りされている。このように構成することにより、第2ビード板7の折り返しアール部25に発生する高温熱応力に起因する亀裂発生を防止することができる。なお、この面取り施工は、折り返し加工と別工程で行うこともできるし、折り返し加工の際に併せて施工することもできる。この面取りは前述の3枚構成の場合にも適用することができる。
【0040】このような2枚構成のガスケットにおいても、第2ビード板7を折り返して第1ビード板6を抱持してなる折り返し部14を形成することにより、第2ビード板7の厚さまたはそれ以下の厚さで、かつホットプラグビード13の高さHより小さい厚さのストッパー量Sを確保することができるとともに、締付け時の荷重を適切に集中させてボア孔直近で適切な高面圧を発生させることができる。
【0041】図9(a)(b)には、2枚構成のガスケットの他の例が示されている。
【0042】図9(a)に示されるガスケットは、図7(b)に示されるガスケットにおける第3ビード板を省略した例であって、第1ビード板6Cに、比較的厚い第1ビード板6Cを積層しやすくし、かつボア孔周りのシール効果を確実にするシム部21を設けるとともに、二重ハーフビード22を設けたものである。一方、図9(b)に示されるガスケットは、第1ビード板6Dにおけるホットプラグビード26の向きを逆にするとともにハーフビードにし、この第1ビード板6Dの端部を第2ビード板7の折り返し部14に抱持するようにしたものである。
【0043】前記各実施例においては、ホットプラグビードの形状を平面視が三日月状で、その凸部の表面が平坦面に形成されたものについて説明したが、このホットプラグビードは金属板に一体成形加工されたものであれば、その形状としては、他にいろいろな変形例が可能である。図10(a)〜(d)に示されたのはそれを例示したものであって、(a)は直線状の並列ビード27、(b)は長円状の並列ビード28、(c)は二重ハーフビード29、(d)は複数の小突起状ビード30である。なお、このホットプラグビードの形状、高さおよび全体構成は、ホットプラグ下面のシール当接面からの凹凸段差、必要な応力分散および所要面圧などに応じて適宜選択される。形状の単純さや加工の容易さおよび効果などの点を考慮すれば、前記実施例に示されたような三日月状の凸形状とするのが好ましい。
【0044】前記各実施例においては、第2ビード板をシリンダブロック3側に配したものについて説明したが、ガスケットの装着の向きは上下逆方向にすることもできる。
【0045】以上のように、ホットプラグビートを有する第1ビード板と、折り返し部およびボアビードを有する第2ビード板とを基本構成として、さらに第3ビード板を適切に組み合わせることにより、中間に介在される第1ビード板による第2ビード板および第3ビード板のシール面圧の分断をなくすことができる。こうして、シール性能に優れた簡素な副室式エンジン用の積層金属製ガスケットを得ることができる。また、3枚板構成で折り返し部にて第1ビード板を抱持する構造を採用すれば、ボア孔周りの耐熱性および耐亀裂性にも優れたガスケットとなる。特に、折り返し部を形成する第2ビード板の材質として高Mnオーステナイト系ステンレス鋼を用いた場合には、上記の効果がより一層顕著となる。
【出願人】 【識別番号】000228383
【氏名又は名称】日本ガスケット株式会社
【出願日】 平成11年12月15日(1999.12.15)
【代理人】 【識別番号】100097755
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 勉
【公開番号】 特開2001−173788(P2001−173788A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−355812