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【発明の名称】 シールの組付方法及び装置
【発明者】 【氏名】塙 伸道

【氏名】山田 敏博

【要約】 【課題】ピストンシール外周からのオイルの洩れを防止し、ピストンシールのシリンダに対するフリクションの低減が図れるピストンシール構造を得る当り、そのシールの組付方法とシールの組付装置を提供すること。

【解決手段】弾性なワッシャ状のシール母材19Aを治具20を介して内径側を支点にして全周に亘って一方向に倒し、次いで内径側を拡径して円錐状のシールを構成させ、次にこのシールをそのまま摺動部材の外周環状溝に送り込んで嵌合させることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 弾性なワッシャ状のシール母材を治具を介して内径側を支点にして全周に亘って一方向に倒し、次いで内径側を拡径して円錐状のシールを構成させ、次にこのシールをそのまま摺動部材の外周環状溝に送り込んで嵌合させることを特徴とするシールの組付方法。
【請求項2】 円盤状の基台と、この基台に着脱自在に結合する円錐体状のガイド部材とからなる治具を用意し、弾性なワッシャ状のシール母材をガイト部材に挿入する工程と、シール母材をガイド部材の外周で内径側を支点にして全周に亘って倒して円錐状にする工程と、円錐状にしたシール母材をガイド部材のテーパ面に沿って移動させながら内径側を拡径してシールを得る工程と、このシールを基台の外周に挿入して待機する工程と、基台に対してガイド部材に代えて摺動部材を結合する工程と、基台の外周に待機するシールを摺動部材方向に移動して当該摺動部材の外周環状溝に嵌合させる工程と、からなることを特徴とするシールの組付方法。
【請求項3】 摺動部材がピストンからなり、シールがピストンの外周環状溝に嵌合するピストンシールからなる請求項1又は2のシールの組付方法。
【請求項4】 円盤状の基台と、基台の一端に設けたソケット内に着脱自在に嵌合する円錐体状のガイド部材とからなり、ガイド部材は円錐面部と、円錐面部に連なり且つ上記ソケット内に嵌合する大径側円形部とを備えていることを特徴とするシールの組付装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、油圧緩衝器,油圧シリンダ等のピストン外周に設けたピストンシール等のシールの組付方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に油圧緩衝器,油圧シリンダではピストンの外周環状溝にピストンシールを嵌合させ、このピストンシールを介してピストンがシリンダの内周を摺動するようになっている。
【0003】例えば、油圧緩衝器のピストンシールの取付構造として図5に示すものが開発されている。
【0004】これは、シリンダ1内に環状のピストンシール2を介してピストンシール3が摺動自在に挿入され、ピストンシール2はピストン3の外周環状溝内に嵌合し、このピストンシール2の内周とピストン3との間に弾性リング5を介在させたものである。
【0005】しかしながら、このピストンシールの取付構造では、ピストンシール2の背面が一つの弾性リング5のみで支持されているだけであるから伸縮作動時に矢印で示すように、油圧がピストンシール2の摺接面に回り込んでくるようになると、ピストンシール2を縮径方向に押す力が加わる。この為、シリンダ1とピストンシール2との間に隙間6が発生し、この隙間6から弾性リング5に抗してピストンシール2を押し除けつつ油が低圧側へ逃がし、減衰力特性を乱してしまう不具合がある。
【0006】この為、例えば、これを防止するため、特開平11−37202号公報に示す油圧緩衝器のピストンシール構造が開発されている。
【0007】このピストンシール構造は図6に示すように、シリンダ1内に環状のピストンシール2を介してピストン3が摺動自在に挿入され、ピストンシール2はピストン3の環状溝4内に嵌合し、ピストンシール2の背面とピストン3との間に隔設した二つの弾性リング5,5を介在させたものである。
【0008】上記のピストンシール構造では二つの弾性リング5,5でピストンシール2の上下が二ケ所で支持されているので矢印方向の油圧が作用してもピストンシール2の外周に隙間が発生せず、油が低圧側に逃げるのが防止できる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記図6に示すピストンシール構造は特に大きな欠陥があるわけでないが、二つの弾性リング5,5を使用してピストンシール2を支持しているため、弾性リング5,5で外方に付勢されたピストンシール2の上下端のシリンダ1に対するフリクションが増大し、ピストン3の摺動性が若干劣り、その分車両への乗り心地が悪くなる。更に一つのピストンシールと二つの弾性リングを設けているから構造が複雑となり、これらの各部材を装着する工程が多く複雑となり、組付性,経済性に劣る。
【0010】そこで本発明の目的は、ピストンシール外周からの油の洩れを防止し、ピストンシールのシリンダに対するフリクションの低減が図れるピストンシール構造を得る当り、そのシールの組付方法とシールの組付装置を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明の方法の手段は、弾性なワッシャ状のシール母材を治具を介して内径側を支点にして全周に亘って一方向に倒し、次いで内径側を拡径して円錐状のシールを構成させ、次に、このシールをそのまま摺動部材の外周環状溝に送り込んで嵌合させることを特徴とするものである。
【0012】同じく、円盤状の基台と、この基台に着脱自在に結合する円錐体状のガイド部材とからなる治具を用意し、弾性なワッシャ状のシール母材をガイト部材に挿入する工程と、シール母材をガイド部材の外周で内径側を支点にして全周に亘って倒して円錐状にする工程と、円錐状にしたシール母材をガイド部材のテーパ面に沿って移動させながら内径側を拡径してシールを得る工程と、このシールを基台の外周に挿入して待機する工程と、基台に対してガイド部材に代えて摺動部材を結合する工程と、基台の外周に待機するシールを摺動部材方向に移動して当該摺動部材の外周環状溝に嵌合させる工程と、からなることを特徴とするものである。
【0013】上記各手段において、摺動部材が例えばピストンからなり、シールがピストンの外周環状溝に嵌合するピストンシールからなるものである。
【0014】更に、本発明のシール取付装置の手段は、円盤状の基台と、基台の一端に設けたソケット内に着脱自在に嵌合する円錐体状のガイド部材とからなり、ガイド部材は円錐面部と、円錐面部に連なり且つ上記ソケット内に嵌合する大径側円形部とを備えていることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明のシールの組付方法及び装置の一実施の形態を図1乃至に図4にづいて説明する。
【0016】この実施の形態は油圧緩衝器のピストンシール構造について説明しているが、油圧シリンダ,オートバイのフロントフォーク,その他同様の摺動部材におけるシール構造にも適用されることはいうまでもない。
【0017】図1,図2は、油圧緩衝器とそのピストンシール構造を示す。
【0018】油圧緩衝器はシリンダ10と、シリンダ10内に摺動部材たるピストン11を介して移動自在に挿入したピストンロッド12と、ピストン11でシリンダ10内に区画された上下二つの油室13,14と、二つの油室13,14を開閉する伸側バルブ15及び圧側バルブ16とを有し、ピストンン11の外周に形成した二つの環状溝17,18内には弾性で円錐状のシールたる環状ピストンシール19,19がそれぞれ嵌合している。上記二つのピストンシール19はシリンダ10内に上下二つの油室13,14を隔成すると共にピストン11の摺動時にシリンダ10の内周を摺動する。
【0019】各ピストンシール19は、弾性状のゴム或いはフッ素系合成樹脂等からなるワッシャー状の母材を使用し、その内径側を支点に全体を一方向に傾倒変形させると共に、内径側を拡径変形するように成形している。このため各ピストンシール19は母材における内径側を反油室側に、変形側を油室側に組み込むことにより内径側では収縮方向の復元力で環状溝17に密に嵌合し、変形側では拡径方向の復元力を持ってシリンダ10内周に接触している。
【0020】ピストン11の伸縮作動時、例えば図2においてピストン11が上方に移動する伸長作動時においては上部油室19に圧力Pが発生し、矢印で示す方向に油圧が作用するが、ピストンシール19が傾斜しており、その内周面19aがテーパ状になっていることから、油圧はピストンシール19の背面たる内周側に侵入し、シールリップたる外径側を更にシリンダ10の内周面に押し付けてシール性を高め、油が低圧側の下部油室14に逃げるのを防止する。
【0021】圧縮作動時には、図2において下方のピストンシール19が上記と同じ作用を行なう。従って、圧力の発生の小さい極低速のピストン低速域から高速域まで作動時の洩れを防止し、しかもフリクションが小さく、安定した減衰特性が得られる。ピストンシール19は単独でピストン外周環状溝17内に嵌合しているだけであるから構造が簡単であり、組付性も向上する。
【0022】図3,図4は、上記ピストンシール19の組付装置たる治具に、これを利用したシールの組付方法を示す。
【0023】このシールの組付方法は、図2のようにピストン11の外周にピストンシール19を二つ組付ける方法に適するが、組み付ける部材としてはピストンに限るものではなく、シールもピストンシールに限らず、またピストンシール19は一つであってもよい。
【0024】図3に示すシール組付装置たる治具20は円盤状の基台21と、基台21の一端に設けたソケット22と、ソケット22内に着脱自在に嵌合する円錐体状のガイド部材23とからなり、ガイド部材23は図において右方向に拡径する円錐面部24に連なり且つ上記ソケット22内に嵌合する大径側円形部25とを備えている。
【0025】図4に示すように、ピストン11の環状溝17内にシールたるピストンシール19を装着する時にはガイド部材23に代えてソケット22内にピストン11を嵌合させるものである。
【0026】上記の治具20を利用した本発明のシールの組付方法は、弾性なワッシャ状のシール母材19Aを治具20を介して内径側を支点にして全周に亘って一方向に倒し、次いで内径側を拡径して円錐状のシールたるピストンシール19を構成させ、次にこのピストンシール19をそのまま摺動部材たるピストン11の外周環状溝17に送り込んで嵌合させるものである。
【0027】更に詳しく述べると、円盤状の基台21と、この基台21に着脱自在に結合する円錐体状のガイド部材23とからなる治具20を用意しておく。この治具20を利用するシールの組付工程は、弾性なワッシャ状のシール母材19Aをガイド部材23に挿入する工程と、シール母材19Aをガイド部材23の外周で内径側を支点にして全周に亘って一方向に倒して円錐状にする工程と、円錐状にしたシール母材19Aをガイド部材23のテーパ面に沿って大径な円形部25方向に移動させながら内径側を拡径してシールたるピストンシール19を得る工程と、このピストンシール19を基台21の外周に挿入して待機する工程と、基台21に対してガイド部材23に代えて摺動部材たるピストン11を結合する工程と、基台21の外周に待機するピストンシール19をピストン11方向に移動して当該ピストン11の外周環状溝17に嵌合させる工程と、からなるものである。
【0028】上記の組付工程により一端内径側に収縮方向の復元力を付与し、他端を拡径方向の復元力を有する円錐状のピストンシール19が容易に成形できると共に簡単にピストン11の外周環状溝17に嵌合できる。
【0029】
【発明の効果】本発明のシールの組付方法および組付装置によれば、ワッシャ状のシール母材を利用して簡単にピストンシール等のシールを形成でき、又、このシールに一端内径側に収縮方向の復元力を付与でき、他端に拡径方向の復元力を付与でき、併せて簡単且つスムースにピストン等の摺動部材にシールを装着でき、シールの成形,シールの組付作業の向上が図れ、併せて加工,組付上のコストダウンを図れる。
【出願人】 【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ工業株式会社
【出願日】 平成11年12月22日(1999.12.22)
【代理人】 【識別番号】100067367
【弁理士】
【氏名又は名称】天野 泉
【公開番号】 特開2001−173780(P2001−173780A)
【公開日】 平成13年6月26日(2001.6.26)
【出願番号】 特願平11−363959