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【発明の名称】 密封装置
【発明者】 【氏名】大林 新一

【氏名】境 真太郎

【要約】 【課題】密封装置において、ポンピング効果による密封流体戻し作用を強化し、密封性能を高めること。

【解決手段】ケース2に嵌合装着した環状芯金10と、環状芯金10に取り付けて回転軸3の外周面に接触させられるリップ41を有するシール部材40とからなる密封装置1において、シール部材40のリップ41の接触周面41aに、複数の螺旋溝50,60が互いに交差しない状態で周方向等配状態で形成されている。これにより、リップ41の接触周面41aに形成する各螺旋溝50,60の経路長を短くできるので、この螺旋溝50,60で受け止めた密封流体が従来例に比べて早期に戻されることになる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】径方向内外に同心状に配設される2つの部材の対向環状空間に設けられて前記環状空間を軸方向で仕切る密封装置であって、前記いずれか一方の部材に嵌合装着される環状芯金と、この環状芯金に取り付けられて他方の部材に面接触するリップを有するシール部材とを備え、前記リップの接触周面において、複数の密封流体戻し用の螺旋溝が互いに交差しない状態で形成されている、ことを特徴する密封装置。
【請求項2】請求項1の密封装置において、前記複数の密封流体戻し用の螺旋溝が、周方向等配状態で形成されている、ことを特徴する密封装置。
【請求項3】請求項1または2の密封装置において、前記複数の密封流体戻し用の螺旋溝が、前記リップの接触周面において自由端端面との間に軸方向一定長さ範囲の平滑周面を残す状態で形成されている、ことを特徴する密封装置。
【請求項4】請求項1ないし3の密封装置において、前記シール部材が、合成樹脂製のシートとされている、ことを特徴する密封装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、径方向内外に同心状に配設される2つの部材の対向環状空間を軸方向で2つの空間に仕切る密封装置に関する。特に、シール部材と回転軸との密封部に侵入した密封流体を回転軸の動圧によるポンピング効果によって密封流体封入側に戻す機能をもたせた密封装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来例の密封装置を図9に示す。図例の密封装置1は、2つの金属環20,30からなる環状芯金10にシール部材40を取り付けた構成である。
【0003】第1金属環20の円筒部21と第2金属環30の円筒部31とを嵌合させた状態で、第1金属環20の環状板部22と第2金属環30の環状板部32との間にシール部材40の外周部分42を挟持させている。
【0004】第1金属環20がケース2に内嵌固定され、シール部材40の内周部分が回転軸3の外周面に対して面接触させられている。このシール部材40の内周部分がリップ41となる。
【0005】なお、シール部材40は、例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)などのフッ素系樹脂材とされている。
【0006】しかし、このような合成樹脂製のシール部材40の場合には、ゴム製のシール部材に比べると、その剛性が比較的に高くて弾性復元性に劣り、軸振れに対する追随性が低いため、そのリップ41の内周面が平滑であると、この平滑な接触周面41aに密封流体が侵入しやすく、十分な密封性能が得られない。
【0007】そこで、リップ41の接触周面41aに螺旋溝80を形成し、そのポンピング効果を利用して、接触周面41aに侵入した密封流体を密封流体封入側(図面上の右側)に戻すように工夫している。この密封流体戻し用の螺旋溝80は、リップ41の自由端端面41bまでわたっている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例では、リップ41の接触周面41aに形成された密封流体戻し用の螺旋溝80が1本のみであるため、下記のような不都合をもたらしている。
【0009】ポンピング効果による密封流体戻し作用が不十分なものとなっている。それは、侵入した密封流体が単一螺旋溝80に沿って自由端端面41bまで案内されて排出されるまでの経路長が長いものとなっているからである。のちに図5で詳しく説明することになるが、鎖線で示す単一螺旋溝80の開口ポイントBから軸方向に寸法xだけ奥に侵入した密封流体が単一螺旋溝80に案内されて開口ポイントBから排出されるに至るまでの経路長Lx′は、Lx′=x/sinθsであり、この経路長Lx′が比較的に長いものであるため、ポンピング効果による密封流体戻し作用が不十分なものとなりがちである。
【0010】密封流体戻し作用が不十分であると、接触周面41aに密封流体が滞留しがちとなり、そうなると、その滞留密封流体の容積分が接触周面41aに隙間を形成する状態が継続することとなって、密封性能が大きく低下するという不都合な事態を招く。
【0011】回転軸3が回転している稼働モードではポンピング効果が働くのでまだよいが、回転軸3が静止している静止モードではポンピング効果が消失してしまうので、密封流体の漏洩のおそれがある。
【0012】また、従来例においては、単一螺旋溝80が自由端端面41bまで達しているので、密封流体封入側から密封流体が単一螺旋溝80の開口ポイントBから侵入することを許してしまい、上記の不都合を助長することとなっていた。これは、特に静止モードで影響が強くなる。
【0013】なお、類似する従来技術として、特開平10−122377号公報、特開平10−184930号公報、特開平10−267133号公報などを挙げることができるが、これらはいずれも課題が違っていたり、課題解決手法が異なっていたりする。
【0014】このような事情に鑑み、本発明は、同心状で相対回転する2つの部材間の環状空間を軸方向に仕切る密封装置において、ポンピング効果による密封流体戻し作用を強化し、密封性能を高めることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明第1の密封装置は、径方向内外に同心状に配設される2つの部材の対向環状空間に設けられて前記環状空間を軸方向で仕切るもので、前記いずれか一方の部材に嵌合装着される環状芯金と、この環状芯金に取り付けられて他方の部材に面接触するリップを有するシール部材とを備え、前記リップの接触周面において、複数の密封流体戻し用の螺旋溝が互いに交差しない状態で形成されている。
【0016】本発明第2の密封装置は、上記第1の密封装置において、前記複数の密封流体戻し用の螺旋溝が、周方向等配状態で形成されている。
【0017】本発明第3の密封装置は、上記第1または第2の密封装置において、前記複数の密封流体戻し用の螺旋溝が、前記リップの接触周面において自由端端面との間に軸方向一定長さ範囲の平滑周面を残す状態で形成されている。
【0018】本発明第4の密封装置は、上記第1ないし第3の密封装置において、前記シール部材が、合成樹脂製のシートとされている。
【0019】このような本発明の構成では、リップの接触周面に密封流体戻し用の螺旋溝が1本ではなくて複数本形成されているから、それぞれの螺旋溝が接触周面に侵入した密封流体をポンピング効果によって密封流体封入側に戻すときの螺旋溝に沿った経路長が短いものとなり、密封流体戻し作用が効果的に発揮されることになる。したがって、接触周面での密封流体の滞留が抑制でき、密封性能を向上させることができる。
【0020】特に、第2の密封装置のように複数の螺旋溝を等配した場合には、螺旋溝全体としてのピッチやリード角が均一となり、密封流体戻し作用が安定化する。
【0021】また、第3の密封装置のように複数の螺旋溝を形成するのに、リップの自由端側に平滑周面を残しておけば、特に静止モードでの漏れ出しを効果的に防止することができる。
【0022】さらに、シール部材として耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性等のある合成樹脂製のシートを用いたときには、本発明の効果がきわめて有効に発揮される。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明の詳細を図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0024】図1は本発明の一実施形態の密封装置の上半分の構造を示す断面図である。下半分の構造は水平方向の中心線に関して上半分と対称となっている。
【0025】図示例の密封装置1は、径方向内外に同心状に配置されたケース(ハウジング)2と回転軸3との間の対向環状空間4に設けられてその環状空間4を軸方向で仕切るものであり、環状芯金10と、シール部材40とを備えている。この密封装置1は、ケース2に対する環状芯金10の密着と回転軸3に対するシール部材40の密着とにより環状空間4を軸方向で油密的に仕切っている。
【0026】環状芯金10は、第1金属環20と第2金属環30とからなり、その外径側の第1金属環20がケース2の内周面に嵌合装着されるようになっている。この2つの金属環20,30は、円筒部21,31と、この円筒部21,31の一方の軸端箇所から径方向内向きに一体的に延出された環状板部22,32とを有する断面L字形状をなしている。この第1金属環20に対して第2金属環30が内嵌されていて、第1金属環20の円筒部21の自由端23を薄肉として、この薄肉の自由端23を径方向内向きに折り曲げることにより、第2金属環30を第1金属環20に対して抜け止めさせている。このように抜け止めを行うので、第1金属環20に対する第2金属環30の嵌合は、すきま嵌めであってもよい。
【0027】シール部材40は、その外周部42が第1金属環20の環状板部22と第2金属環30の環状板部32との間に挟持されており、その内周部分が回転軸3の外周面に面接触して密封部を形成するリップ41とされている。このシール部材40は、耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性等を確保するために、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン樹脂)などのふっ素系樹脂製のシートを採用している。
【0028】そして、シール部材40のリップ41において回転軸3に接触する接触周面41aには、複数の(図示例の場合は2本の)密封流体戻し用の第1および第2の螺旋溝50,60が互いに交差しない状態で形成されている。図面では、分かりやすくするために、第1の螺旋溝50を実線で表し、第2の螺旋溝60を破線で表し、ピッチおよびリード角を大きめにデフォルメしている。
【0029】図示例では、第1の螺旋溝50と第2の螺旋溝60とを周方向等配状態で形成している。但し、リップ41の接触周面41aにおいて、その自由端端面41b側から軸方向一定長さ範囲L0にわたる平滑周面41cを残す状態で形成してある。また、第1の螺旋溝50と第2の螺旋溝60とは、軸方向で互いに同じ長さ範囲L1において互いに位相を180度異ならせた状態で形成されている。
【0030】以下、図2、図3を用いて、リップ41に2つの螺旋溝50,60を設ける形態を具体的に説明する。
【0031】図2はシール部材40のリップ41の内周面である接触周面41aを軸方向に沿って拡張した状態で図示したデフォルメ斜視図である。このように軸方向に沿って拡張するのは、螺旋溝のピッチを拡張することで、両螺旋溝50,60の様子を分かりやすくするためである。図3は接触周面41aを軸心70を通る1つの平面で切断して展開したものに相当している。上下に付した符号73が切断線を示している。図2、図3において、第1の螺旋溝50は実線で表し、第2の螺旋溝60は破線で表している。
【0032】第1および第2の螺旋溝50,60における自由端端面41b側の端点をそれぞれ始点50a,60aとし、その反対側の端点をそれぞれ終点50b,60bとする。自由端端面41bは、軸心70に対して垂直な平面上に存在する。この自由端端面41bから前記の軸方向一定長さ範囲L0だけ隔てた箇所において軸心70に対して垂直な第1の垂直平面71を考える。自由端端面41bからこの第1の垂直平面71までの間が、螺旋溝50,60を形成しない平滑周面41cとなっている。この第1の垂直平面71上に第1の螺旋溝50の始点50aと第2の螺旋溝60の始点60aとが180度の位相を隔てた状態で位置している。同様に、第1の垂直平面71から前記の軸方向一定長さ範囲L1だけ隔てた箇所において軸心70に対して垂直な第2の垂直平面72を考える。第1の垂直平面71から第2の垂直平面72までの間が、螺旋溝50,60を形成してある密封流体戻し領域45となっている。この第2の垂直平面72上に第1の螺旋溝50の終点50bと第2の螺旋溝60の終点60bとが180度の位相を隔てた状態で位置している。
【0033】第1の螺旋溝50は、第2の螺旋溝60において軸方向で隣接する2つの単位螺旋間の丁度中点を通る軌跡を描いて接触周面41a上を旋回し、同様に、第2の螺旋溝60は、第1の螺旋溝50において軸方向で隣接する2つの単位螺旋間の丁度中点を通る軌跡を描いて接触周面41a上を旋回している。単位螺旋というのは、螺旋において360度範囲を切り取ったものと考えてよい。
【0034】第1の螺旋溝50と第2の螺旋溝60とは、それぞれのピッチP1,P2が互いに等しく、かつ、それぞれのリード角θ1,θ2が互いに等しくなっている。これを、P1=P2=Pとし、θ1=θ2=θとする。第1の螺旋溝50と第2の螺旋溝60との隣接ピッチPaは、Pの2分の1である。この隣接ピッチPaが従来技術の場合のピッチPsと等しくなっており、リード角θが従来技術の場合のリード角θsの2倍となっている。すなわち、P=P1=P2=2・Pa=2・Psθ=θ1=θ2=2・θsである。
【0035】次に、回転軸3の回転に伴って発生する動圧によって密封流体を戻す動作について、従来技術と比較しながら説明する。
【0036】本発明のこの実施形態の場合の第1の螺旋溝50と第2の螺旋溝60と従来技術の場合の単一螺旋溝80とを重ね合わせて図示したのが図4である。実線が第1の螺旋溝50を表し、破線が第2の螺旋溝60を表し、鎖線が従来の単一螺旋溝80を表している。Aは接触周面41aの周長であり、接触周面41aの半径(内径)をrとすると、A=2πrである。この周長は360度範囲に相当している。なお、従来技術の場合には平滑周面41cは存在しない。
【0037】接触周面41aにおいて、第1の垂直平面71から軸方向に寸法xだけ離れたライン74上にある密封流体が螺旋溝に沿って第1の垂直平面71まで案内されて排出されるまでの経路長が、本発明実施形態と従来技術とでどのように違うかを見てみる。
【0038】鎖線の従来例の単一螺旋溝80についてみると、単位螺旋のイ→ロ→ハ→ニ→ホの順に案内されて、その経路長はおよそ5周分と幾らかである。
【0039】実線の第1の螺旋溝50についてみると、単位螺旋の半分の■から単位螺旋■→■の順に案内されて、その経路長はおよそ2周半と少しである。
【0040】破線の第2の螺旋溝60についても、単位螺旋a→bから単位螺旋の半分のcの順に案内されて、その経路長はおよそ2周半と少しである。
【0041】より正確に求めるために、図5を用いる。この図5は7周分を連続して展開したものである。直角三角形を円柱に巻き付けたとき、その斜辺は螺旋をなすことを利用している。寸法xのときの従来技術の単一螺旋溝80に相当する斜辺の長さLx′は、直角三角形BEFにおいて、Lx′=x/sinθsまた、同じ寸法xのときの第1の螺旋溝50に相当する斜辺の長さLxは、直角三角形BCDにおいて、Lx=x/sinθである。θ=2θsであるから、Lx=x/sin2θs=x/2sinθscosθs第2の螺旋溝60に相当する斜辺の長さも同じLxである。Lx′に対するLxの比をγとすると、γ=Lx/Lx′=1/2cosθsとなるが、θsが微小であるので、cosθs=1とおいてよく、したがって、γ=1/2となる。
【0042】参考のために寸法関係について一例を示しておく。接触周面41aの半径rとして、例えば、r=26mm、螺旋溝50,60のピッチP1,P2(=P)として、例えば、P=1mmがある。この場合、接触周面41aの周長Aは、A=163.3mmであり、リード角θ1,θ2(=θ)は、tanθ=P/Aより、θ≒0.35°となる。このθの値はきわめて小さくて、そのcosθ=0.99998≒1となる。
【0043】したがって、上記のγ=1/2は成立し、螺旋溝としてこの実施形態のように第1の螺旋溝50と第2の螺旋溝60の2つの螺旋溝を備えた場合には、経路長が従来技術の場合の2分の1となるのである。なお、念のためにいうと、図2〜図5の図示の形態として、軸方向に拡張した結果、リード角θ1,θ2を数十倍に拡大した状態で図示したものとなっている。
【0044】本発明としては、螺旋溝の本数は2以上の任意の値をとってよいものとする。例えば、3本の螺旋溝を形成した場合には、経路長は従来技術の3分の1となる。一般的に、nを2以上の自然数として、n本の螺旋溝を形成した場合には、経路長は従来技術のn分の1となる。
【0045】シール部材40の形状は、そのリップ41が円筒状であり、その樹脂シール基部42が円環状であり、これら両者が滑らかに連なった形状となっている。このような形状のシール部材40は、元からそのような形状の状態で成形してもよいが、フリー状態でワッシャーのような平板円環状のものとし、回転軸3を差し込むことにより、回転軸3の外周面に密着状態で沿わせながら押し拡げて、円筒状のリップ41を形作るようにしてもよい。そのような一例を図6に示す。
【0046】図6は、図1のシール部材40を矢印X1方向から見た図である。但しこの図6に示すシール部材40は、屈曲させずに伸ばした状態になっており、中央に円孔43が形成されたワッシャー状の平円環板40Aとなっている。この場合、中央円孔43の内周縁が自由端端面41bとなる。平円環板40Aの一側板面40bにおいて、中央円孔43と同心状で中央円孔43よりも大きい径の円形境界線44を考え、この円形境界線44の内側が平滑周面41cとなる。したがって、円形境界線44は第1の垂直平面71に対応している。円形境界線44上の1点を始点51aとして、左旋回の第1の渦巻溝51が実線で示すように一側板面40bに形成されている。そして、前記の始点51aから180度隔てた円形境界線44上の1点を始点61aとして、左旋回の第2の渦巻溝61が破線で示すように一側板面40bに形成されている。これらの渦巻溝はそれぞれアルキメデスの螺旋(回転角φに比例して動径rが増加する曲線で、r=k・φ)となっている。第1の渦巻溝51において半径方向の隣接間隔P1′は第1の螺旋溝50のピッチP1に対応し、第2の渦巻溝61において半径方向の隣接間隔P2′は第2の螺旋溝60のピッチP2に対応している。
【0047】図7(a),(b)は第1および第2の螺旋溝50,60の断面形状の例を示すものである。軸方向で1つおきに、第1の螺旋溝50と第2の螺旋溝60とが交互となっている。図7(a)の場合は、溝幅W1が隣接ピッチPaよりも十分に小さくなっており、図7(b)の場合は、溝幅W2が隣接ピッチPaの約2分の1となっている。もっとも、このような寸法、形状は単なる例示にすぎず、仕様に応じて適宜に変更してよいことはいうまでもない。
【0048】上記の実施形態では、リップ41の接触周面41aに形成する螺旋溝の数を2本としたが、必ずしもそれにとらわれる必要性はなく、螺旋溝の本数は任意である。
【0049】実験によって、螺旋溝の本数と動圧によるポンプ効果のポンプ量との関係を求めた。その結果を図8に示す。この実験の際の条件は次のとおりである。
【0050】
回転軸3の軸径(直径) :φ52mm 回転速度(回転数) :2000rpm 各螺旋溝の隣接ピッチ :0.5mm 密封流体戻し領域45の軸方向長さ:6mm 油種 :エンジンオイルSAE5W‐20 油温 :80℃図8の特性から明らかなように、螺旋溝の本数が多くなるほどポンプ量が比例的に増加し、密封装置1の密封性能が高くなる。この螺旋溝の本数としては、例えば2〜4本が適切な本数であると考えられる。なお、2本の場合は、図6に示したように、両螺旋溝の始点の位相が180°ずれているが、3本の場合は120°ずらすものとし、4本の場合は90°ずらすことにすれば、複数本の螺旋溝の配置が周方向および軸方向に沿って均等配置となる。
【0051】なお、本発明は上記実施形態のみに限定されるものではなく、種々な応用や変形が考えられる。
(1)上記の実施形態では、シール部材40をふっ素系樹脂などの合成樹脂材としたが、例えばゴム材などとする場合にも本発明を同様に適用できる。
(2)すでに述べたように密封流体戻し用の螺旋溝の本数については任意である。上記実施形態では、複数本の螺旋溝を周方向等配としたが、必ずしもそれにとらわれる必要性はなく、少しのずれがあってもよい。
(3)上記の実施形態では、リップ41の接触周面41aにおいて自由端端面41bとの間に平滑周面41cを残しているが、必ずしもそれにとらわれる必要性はなく、自由端端面41bにまでわたって各螺旋溝を形成してもよい。
(4)上記の実施形態では、螺旋溝50,60の断面形状を三角形や台形としたが、これは単に一例であるにすぎず、任意の形状のものを採用してよい。あるいは突起状としてもよい。
(5)螺旋溝50,60の旋回回数については全く任意である。数回から数十回までが適当である。螺旋溝の数を例えば10として、36度ずつ開けて形成してもよい。この場合に、個々の螺旋溝を360度以下の範囲のもの、例えば72度の範囲としてもよい。
(6)上記の実施形態では、螺旋溝50,60として右旋回螺旋のものを例示したが、左旋回螺旋のものとしてもよい。
(7)リップ41の接触周面41aが軸方向に長いものであれば、必要に応じて、軸方向の一方で右螺旋の螺旋溝を複数本形成し、軸方向の他方で左螺旋の螺旋溝を複数本形成してもよい。
(8)なお、径方向内外同心状の2つの部材として、外側の固定のケース2と内側の回転軸3の形態で説明したが、内側に固定の軸体を配置し、外側に回転する部材を配置した場合において、内側の軸体に嵌合装着される環状芯金を内径側に有し、外側の回転部材に摺接するリップを外径側に有する形態の密封装置に、本発明を適用することも考えられる。
【0052】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、密封流体戻し用の螺旋溝を複数本形成してあるので、接触周面に侵入した密封流体をポンピング効果によって戻す螺旋溝経路長を短くでき、密封流体戻し作用を良好化できるとともに、接触周面での密封流体の滞留を抑制でき、密封性能を向上させることができる。
【0053】特に、複数螺旋溝を形成するのにリップの自由端側に平滑周面を残しておけば、特に静止状態での漏れ出しを効果的に防止することができる。
【0054】なお、シール部材として耐摩耗性、耐熱性、耐薬品性等のあるシール部材を用いたときには、本発明の効果がきわめて有効に発揮される。
【出願人】 【識別番号】000167196
【氏名又は名称】光洋シーリングテクノ株式会社
【出願日】 平成11年12月8日(1999.12.8)
【代理人】 【識別番号】100086737
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 和秀
【公開番号】 特開2001−165327(P2001−165327A)
【公開日】 平成13年6月22日(2001.6.22)
【出願番号】 特願平11−348703