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【発明の名称】 メタルシール
【発明者】 【氏名】日高 芳皓

【要約】 【課題】密封性、耐圧性を向上した「メタルシール」を提供する。

【解決手段】第1金属(たとえば、ステンレス)からなるシール母材28の表面に該第1金属よりも低硬度の第2金属(たとえば、銀)からなる内側被覆層29を設け、内側被覆層29の表面に該第2金属よりも低硬度の第3金属(たとえば、錫)からなる外側被覆層30を設けて構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1金属からなるシール母材の表面に該第1金属よりも低硬度の第2金属からなる内側被覆層を設け、該内側被覆層の表面に該第2金属よりも低硬度の第3金属からなる外側被覆層を設けたことを特徴とするメタルシール。
【請求項2】 前記シール母材は環状に形成されていることを特徴とする請求項1記載のメタルシール。
【請求項3】 前記シール母材は内側に開口するように断面が略C字状に形成されていることを特徴とする請求項2記載のメタルシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、静止面を密封するメタルシール関し、特に、密封性を向上したメタルシールに関する。
【0002】
【従来の技術】たとえば、車両に搭載される空気調和装置に使用されるコンプレッサにおいては、シリンダとヘッドの間など、構成部品の相対面間をシール(密封)するため、金属(メタル)からなる環状に形成されたメタルシール(金属Oリング)が用いられる。このようなシールにはゴムからなるものもあるが、密封性や耐久性の観点から金属が用いられる場合がある。
【0003】このようなメタルシールには、断面が略O字状に形成されたもの(すなわち、中空のもの)、あるいは、耐圧性の向上などの観点から内側に開口するように断面が略C字状に形成されたものなどがある。
【0004】図5に示されているように、メタルシール41は、ステンレスなどの金属からなるシール母材42の表面に、該シール母材42よりも硬度が低い(軟らかい)銀やインジウムなどの金属からなる単一の被覆層43を設けて構成される。
【0005】シールすべき部品のシール面(静止面)44とこれに対向するシール面間に介装されて該部品がボルトなどにより締め付けられて、該シール面44とこれに対向するシール面間に加圧的に挟持されると、表面の被覆層43が変形して、部品のシール面44の凹凸(一般に同心円状の複数形成されている。)にくい込むことにより、当該シール面間がシールされる。
【0006】ここで、近時においては、車両に搭載される空気調和装置のコンプレッサに使用される冷媒として、環境により優しいという観点から二酸化炭素(CO)が使用されるようになってきた。このような二酸化炭素を冷媒として用いると、従来のフロンなどと比較して、コンプレッサ自体を高圧設計とする必要があり、これに用いるメタルシールとしても、十分な密封性を維持しつつ耐高圧性を高くする必要がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来のメタルシールは被覆層が単一であるから、シール面の凹凸に対するくい込みを十分とするために被覆層の材料としてインジウムのような非常に軟らかい金属を選択すると、高圧力に負けて被覆層の一部が剥離して吹き飛ばされてしまう場合があり、反対に被覆層の材料として比較的に硬い金属を選択すると、シール面の凹凸に対するくい込みが不十分となり、十分なシール性を実現することができないという問題があった。特に、ボルトなどによる締め付け力が弱く十分な面圧が得られない場合やシール面の面粗度が不良で凹凸が大きい場合にはシール性が不十分となりがちであった。
【0008】本発明は、このような実状に鑑みてなされ、密封性、耐圧性を向上することができるメタルシールを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明の請求項1に係るメタルシールは、第1金属からなるシール母材の表面に該第1金属よりも低硬度の第2金属からなる内側被覆層を設け、該内側被覆層の表面に該第2金属よりも低硬度の第3金属からなる外側被覆層を設けたことを特徴とする。
【0010】この場合において、請求項2記載のように、前記シール母材としては環状に形成されたものを採用することができる。さらにこの場合において、請求項3記載のように、前記シール母材としては内側に開口するように断面が略C字状に形成されたものを採用することができる。
【0011】特に限定されないが、前記第1金属としてはインコネル(商標)やステンレスを用いることができ、前記第2金属としては銀を用いることができ、前記第3金属としては錫を用いることができる。
【0012】本発明によるメタルシールがシールすべきシール面に加圧的に挟み込まれると、最も軟らかい第3金属からなる外側被覆層が主として変形して、該シール面の凹凸にくい込む。これと同時に、次に軟らかい第2金属からなる内側被覆層が外側表面層ほどではないが変形して密封に寄与するとともに該第3金属を支える。したがって、最も軟らかい外側被覆層がシール面に十分くい込むことによって密封性を向上することができ、かつ外側被覆層は該外側被覆層よりも硬くシール母材よりは軟らかい内側被覆層により支えられているので、高圧が作用した場合であっても剥離・吹き飛ばされることが少なくなり、耐圧性を向上することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0014】図1は本発明に係るメタルシールが使用されたコンプレッサを示す断面図、図2は本発明に係るメタルシールの要部を示す断面図、図3はメタルシールの断面形状の一例を示す断面図、図4はメタルシールの断面形状の他の例を示す断面図である。
【0015】まず、図1を参照して、本発明に係るメタルシールが使用される対象装置の一例としてのコンプレッサについて概説する。
【0016】このコンプレッサは、自動車用空気調和装置等に用いられる容量可変斜板式コンプレッサである。この容量可変斜板式コンプレッサは、同図に示されているように、シリンダ11における圧縮室内容積を、このコンプレッサに帰還する冷媒の吸込圧に応じて変化させて、該コンプレッサの吐出冷媒量を調節し、このコンプレッサの吸入圧が一定になるようにしたものである。
【0017】シリンダ11の一側には、クランク室12を構成するフロントヘッド13が複数のボルト(不図示)により取り付けられており、シリンダ11の他側には、バルブプレート14を介してリアヘッド15が複数のボルト(不図示)により取り付けられている。
【0018】このコンプレッサの中央部には、エンジンによりベルト、プーリ及びマグネットクラッチ(いずれも不図示)を介して回転駆動される駆動軸(シャフト)16が回転自在に支持されている。この駆動軸16には、突出する駆動棒17を有する駆動板18が一体的に取り付けられており、クランク室12内で駆動軸16と共に回転するようになっている。
【0019】駆動棒17の先端部近傍には、円弧状の長穴19が形成されており、この長穴19に遊嵌するピン20を支点として駆動斜板21が駆動軸16に対して傾斜して揺動し得るように連結され、駆動軸16の回転力が駆動棒17およびピン20を介して駆動斜板21に伝達するようになっている。
【0020】この駆動斜板21には、スラスト軸受およびラジアル軸受(いずれも不図示)を介して、非回転のソケットプレート22が摺動自在(回転自在)に取り付けられている。このソケットプレート22には球面軸受23を介して、円周方向等間隔に配置された複数のピストン24が連結されている。
【0021】この容量可変斜板式コンプレッサにあっては、駆動軸16の回転に伴い駆動斜板21が回転し、この駆動斜板21が駆動軸16に対し傾斜していることから、駆動斜板21の回転により非回転のソケットプレート22は、いわゆるみそすり的動作をする。このソケットプレート22のみそすり的動作により、ピストン24がシリンダボア25内で軸方向に往復運動する。駆動斜板21の駆動軸16に対する傾斜角度は、駆動棒17の長穴19内におけるピン20の位置に応じて変化することができ、これによりピストン24のストロークが調節される。
【0022】このコンプレッサに使用される冷媒としては、二酸化炭素(CO)が採用されており、このため、各部の耐圧性は、フロンなどを用いる場合と比較して高くなるように設計されている。
【0023】シリンダ11のフロントヘッド13との間のシール面には、環状の溝26が形成されており、この溝26内に、本発明に係るメタルシール27が挿入されている。また、リアヘッド15のシリンダ11との間のシール面およびバルブプレート14との間のシール面には、それぞれ環状の溝26が形成されており、これらの溝26内にそれぞれ本発明に係るメタルシール27が挿入されている。
【0024】各メタルシール27は対応する溝26に沿うように環状に形成されたいわゆるOリングであり、その断面形状は、図3に示されているように、略O字状(すなわち、中空)、あるいは、図4に示されているように、内側に開口するように略C字状とされている。何れの断面形状のメタルシール27を用いても良いが、断面C字状のものの方が、高圧が作用することにより外側に開くため、耐圧性の観点からは好ましい。なお、断面形状は他の形状のものであってもよい。
【0025】このメタルシール27は、図2に示されているように、シール母材28の表面に内側被覆層29を被覆形成し、さらに内側被覆層29の表面に外側被覆層30を被覆形成して構成されている。シール母材28は、断面O字状の金属Oリングの場合には、そのような断面O字状に形成され、断面C字状の金属Oリングの場合には、そのような断面C字状に形成されている。
【0026】シール母材28、内側被覆層29および外側被覆層30を構成する各金属材料は、この順に軟らかくなるように(すなわち、硬度が低くなるように)設定されている。より特定的には、シール母材28を構成する金属材料(第1金属)としてはインコネル(商標)やステンレスを用いることができ、内側被覆層29を構成する金属材料(第2金属)としては銀を用いることができ、外側被覆層30を構成する金属材料(第3金属)としては錫を用いることができる。内側被覆層29および外側被覆層30は、めっきあるいは蒸着などの方法により形成することができる。
【0027】この実施形態では、シール母材28の断面の直径が3.18mm、シール母材28の肉厚が0.3mmに対して、内側被覆層29の厚さは0.01mm、外側被覆層30の厚さは0.01mmに設定した。なお、シール面31の面粗度は約0.2μmRzである。
【0028】このようなメタルシール27をシリンダ11およびリアヘッド15の対応する溝26にそれぞれ挿入した状態で、シリンダ11に対してフロントヘッド13およびリアヘッド15をボルト締結すると、各メタルシール27は、シリンダ11またはリアヘッド15の溝26の底面(シール面31)とこれらに対応するフロントヘッド13またはシリンダ11のシール面31とによって加圧的に挟持されて、図3または図4に示されているように変形(弾性変形ないし塑性変形)する。
【0029】このように、メタルシール27がシールすべきシール面31に加圧的に挟み込まれると、図1に示されているように、最も軟らかい外側被覆層30が主として変形(塑性変形)して、該シール面31の凹凸(一般に同心円状に複数形成されている。)にくい込む。これと同時に、次に軟らかい内側被覆層29が外側表面層30ほどではないが変形(弾性変形ないし塑性変形)して密封に寄与するとともに外側被覆層30を支える。
【0030】したがって、最も軟らかい外側被覆層30がシール面31に十分くい込むことによって密封性を向上することができ、かつ外側被覆層30は該外側被覆層30よりも硬くシール母材28よりは軟らかい内側被覆層29により支えられているので、高圧が作用した場合であっても剥離・吹き飛ばされることが少なくなり、耐圧性を向上することができる。
【0031】特に、ボルトによる締め付け力が弱く十分な面圧が得られない場合やシール面31の面粗度が不良で凹凸が大きい場合には、従来の一層の被覆層しかないものではシールが不十分であったが、硬度を上述のように調整した二層の被覆層を有している本発明に係るメタルシール27によれば、十分なシール効果を得ることが可能である。
【0032】ところで、上述した実施形態では、シール母材28の表面に二層の被覆層29,30を形成したが、三層以上の被覆層を形成してもよい。この場合において、各被覆層を構成する金属材料の硬度は外側の層にいくにしたがって低くなるように設定される。
【0033】なお、以上説明した実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施の形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0034】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明に係るメタルシールによれば、耐圧性、密封性を向上したメタルシールを提供することができるという効果がある。
【出願人】 【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
【出願日】 平成11年12月14日(1999.12.14)
【代理人】 【識別番号】100097180
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 均 (外1名)
【公開番号】 特開2001−165315(P2001−165315A)
【公開日】 平成13年6月22日(2001.6.22)
【出願番号】 特願平11−354214