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【発明の名称】 2部材間の封止構造
【発明者】 【氏名】常世田 聡

【氏名】犬飼 健一

【要約】 【課題】取り扱いが容易で、取り付け相手の構造を簡略化することができ、しかも、シール圧を特別大きくしなくても、高いシール性能を確保する。

【解決手段】互いに結合される2つの部材104、200のフランジ面104a、200aにシールリング35を配置し、少なくとも一方の部材104に形成された開口(偏心体軸軸受孔)110aをシールリング35によってシールする2部材間の封止構造において、開口110aの内周縁にスナップリング160によって段差部34を形成し、該段差部34にシールリング35のシールリング本体35aを押し込み、その状態で他方の部材200を一方の部材104に結合することで、他方の部材200のフランジ面200aによりシールリング35の環状膨出部35bを押圧変形させ、他方の部材のフランジ面200aとシールリング35の環状膨出部35bの押圧接触により開口110aをシールした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】互いに合わせ結合される2つの部材の合わせ面の少なくとも一方に開口が臨まされた構造における前記開口付近を、可撓性材料よりなるシールリングを用いて封止する、2部材間の封止構造において、前記一方の部材の開口の内周面に半径方向内側に突出する段差部を形成し、前記シールリングを、該段差部に押し込まれるドーナツ状のシールリング本体と、該シールリング本体より前記他方の部材側に突出した環状の膨出部とを備えたものとし、両部材を合わせ結合したときに、他方の部材の合わせ面に該環状の膨出部が押圧接触されるように、前記段差部の合わせ面からの深さ、シールリングの前記本体及び膨出部の高さを設定したことを特徴とする2部材間の封止構造。
【請求項2】請求項1において、前記環状の膨出部が、他方の部材の合わせ面に対向するシールリング本体の表面の最内周部に形成されていることを特徴とする2部材間の封止構造。
【請求項3】請求項1又は2において、前記段差部が、開口の内周面に嵌着したスナップリングにより形成されていることを特徴とする2部材間の封止構造。
【請求項4】請求項3において、前記スナップリングが、前記開口の内周に嵌合された軸受を係止するものであることを特徴とする2部材間の封止構造。
【請求項5】請求項1〜4のいずれかにおいて、前記他方の部材の合わせ面上に前記一方の部材の開口内に進入する凸部が設けられ、該凸部の端面で前記シールリングの環状の膨出部を押圧変形させ、凸部の端面とシールリングの環状の膨出部との押圧接触により前記開口をシールしたことを特徴とする2部材間の封止構造。
【請求項6】請求項1〜5のいずれかにおいて、前記シールリング本体の内径を前記段差部の最内周縁の内径よりも小さくすることで、シールリング本体の内周部を段差部よりも更に内周側に突出させ、その段差部よりも内周側に突出したシールリング本体の内周部に前記環状膨出部を配置したことを特徴とする2部材間の封止構造。
【請求項7】請求項1〜6のいずれかにおいて、前記他方の部材に、前記一方の部材に形成した開口と連通し且つ該開口よりも小さい開口が形成され、両部材の開口が潤滑油の流通路として利用されていることを特徴とする2部材間の封止構造。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、互いに結合される2つの部材間をシールリングを用いて封止する2部材間の封止構造に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に産業用の機械では、内部の機構に潤滑油を供給することで、円滑な動きを保証し、性能の安定を確保するようにしている。特に、歯車を用いた減速機では、外部からグリースを供給して、歯車の噛み合い部分の潤滑を行うことが必須である。この場合、グリースの供給空間を外部と遮断する必要があるために、一般的にはシールリング等を用いた封止構造が採られている。ここでは、従来の封止構造を説明するに当たり、まず、対象となる減速機から説明する。
【0003】図6は減速機の一例として、内接噛合遊星歯車構造を採用した減速機の断面図を示し、図7は図6のVII−VII矢視図である。図6において、符号101で示すものは円筒状のケーシングである。このケーシング101は、筒壁を軸方向に貫通する複数のボルト挿通孔102を有している。ケーシング101内の中心部には、図示しないモータによって回転駆動される入力軸103の先端が図中右側から挿入されている。
【0004】ケーシング101内には、軸方向に間隔をおいて厚肉円板状の第1の支持ブロック(図中左側)104と第2の支持ブロック(図中右側)105とが互いに対向して配置されている。第1の支持ブロック104の外端面(図中左端面)は相手部材を取付けるフランジ面(合わせ面)104aとされ、ケーシング101の外側に若干突き出ている。これら第1、第2の支持ブロック104、105は、それぞれ軸受106a、106bを介してケーシング101の内周に回転自在に支持されている。なお、軸受106aの外側において、第1の支持ブロック104とケーシング101の隙間はオイルシール130により塞がれている。
【0005】両支持ブロック104、105は、入力軸103と平行に配した3本のキャリアピン150により一体に連結・固定され、全体でキャリアを構成している。図7に示すように、第1の支持ブロック104のフランジ面104aには、相手部材を取付けるためのボルトを締結する多数のねじ穴151が設けられている。ねじ穴151は、フランジ面104aに露出しているキャリアピン150の端面にも形成されている。そして、図8に示すように、これら多数のねじ穴151に固定用ボルト155をねじ込むことにより、相手部材200のフランジ面(合わせ面)200aを強固に連結・固定することができるようになっている。
【0006】又、ケーシング101内には、3本の偏心体軸108が入力軸103と平行に配設されている。これら偏心体軸108は、入力軸103と同心の円周上に周方向に等間隔で配設されており、前記各キャリアピン150の中間に位置している。そして、各々の偏心体軸108の両端部が、偏心体軸軸受109a、109bを介して第1の支持ブロック104及び第2の支持ブロック105の各偏心体軸軸受孔(開口)110a、110bにそれぞれ回転自在に支持されている。
【0007】各偏心体軸108の第1の支持ブロック104側には、前記偏心体軸軸受109aで支持されている部分より軸方向中間部寄りに伝動歯車113が取付けられている。
【0008】第1の支持ブロック104、第2の支持ブロック105の径方向の中心には、それぞれ中心孔114、115が形成されており、それら中心孔114、115に前記入力軸103が第2支持ブロック105側から挿入されている。
【0009】入力軸103の先端は、第1支持ブロック104の中心孔114内にわずかに入った位置にあり、その入力軸103の先端に、前記各偏心体軸108に固定した伝動歯車113と噛合するピニオン116が形成され、これにより、入力軸103の回転がピニオン116及び伝動歯車113を介して3本の偏心体軸108に等しく分配されるようになっている。
【0010】各偏心体軸108の軸方向の中央部には、軸方向に並んで2つの偏心体117a、117bが設けられている。これら偏心体117a、117bは、互いに180°位相がずれている。
【0011】一方、第1、第2の支持ブロック104、105の間には、ケーシング101の内径よりやや小さい外径の円板状の2枚の外歯歯車118a、118bが軸方向に並べて配置されている。各外歯歯車118a、118bには、前記偏心体軸108が貫通する3つの偏心体軸受孔119a、119b(図6)が設けられており、各偏心体軸受孔119a、119bに、前記各偏心体117a、117bが偏心体軸受120a、120bを介して嵌合されている。これにより、外歯歯車118a、118bは、その中心が入力軸103の回転中心に対して所定距離だけ偏心した状態に支持され、偏心体軸108の1回転毎に、入力軸103の中心に対して1回転だけ揺動回転するようになっている。
【0012】このように、外歯歯車118a、118bが配置されることにより、両支持ブロック104、105間には、第1支持ブロック104側から第2の支持ブロック105側に向かって順に、伝動歯車113、外歯歯車118a、外歯歯車118bが互いに隣接して並んでいる。
【0013】偏心体軸108を支持する図6中左側の偏心体軸軸受109aと伝動歯車113は、左側の偏心体117aの端面と、第1の支持ブロック104の偏心体軸軸受孔110a内周に係合したスナップリング160とで挟まれており、それにより偏心体軸108上で位置決めされている。
【0014】又、前記偏心体軸受120a、120bとしては、ここではニードル軸受が用いられている。そして、この偏心体軸受120a、120bの軸方向の位置決めが次のように行われている。
【0015】即ち、第1の支持ブロック104寄りの左側の偏心体軸受120aは、図6において左端側が前記伝動歯車113の側面で直接位置決めされ、右端側が両偏心体117a、117b間に設けたフランジ122により位置決めされている。又、第2の支持ブロック105寄りの偏心体軸受120bは、左端側が両偏心体117a、117b間に設けた前記フランジ122により位置決めされ、右端側が止め板123により位置決めされている。
【0016】止め板123は、偏心体軸108を支持する図6中右側の偏心体軸軸受109bにより押さえられ、偏心体軸軸受109bは、第2の支持ブロック105の偏心体軸軸受孔110b内周に係合したスナップリング161により押さえられている。
【0017】外歯歯車118a、118bは外歯124を有しており、この外歯歯車118a、118bの外周側には、外歯歯車118a、118bが噛合する内歯歯車125が配設されている。内歯歯車125はケーシング101の内周に、ケーシング101と一体に形成されており、外ピン126からなる内歯を有している。なお、外ピン126は、ピン押さえリング127により抜け落ちないように内側から止められている。
【0018】外歯歯車118a、118bには、その中心に、入力軸103の貫通する中心孔123a、123bが形成され、又、キャリアピン150に対応する位置に、嵌挿孔128a、128bが形成されている。そして、この嵌挿孔128a、128bをキャリアピン150が貫通している。
【0019】キャリアピン150は、第2の支持ブロック105が受けた回転力を、第1の支持ブロック104に伝達するものであり、外歯歯車118a、118bの嵌挿孔128a、128bは、外歯歯車118a、118bが揺動してもキャリアピン150と干渉しないだけの大きさの円孔として形成されている。
【0020】次に、このように構成された減速機の動きについて説明する。
【0021】この減速機は、図8に示すように、ケーシング101をフレーム220にボルト170で締結することによりフレーム220に装備される。そして、フレーム220に支持したモータ230の軸231を入力軸103に結合し、第1の支持ブロック104の相手部材取付フランジ面104aに相手部材200をボルト155で締結することにより、相手部材200に対し回転出力を伝達できるようになる。
【0022】モータ230を駆動することにより入力軸103が回転すると、その回転は、第1減速段であるピニオン116、伝動歯車113を介して減速され、3本の偏心体軸108に伝達される。3本の偏心体軸8には、それぞれ2つの偏心体117a、117bが設けられており、当該偏心体117a、117bが同方向に同一速度で偏心回転することにより、2枚の外歯歯車118a、118bが入力軸103に対して揺動回転を行う。
【0023】ここで、ケーシング101即ち内歯歯車125が固定されているので、外歯歯車118a、118bは、内歯歯車125によって自由な自転が拘束された状態で、内歯歯車125に内接しながら揺動することになる。今、例えば外歯歯車118a、118bの歯数をN、内歯歯車25の歯数をN+1とした場合、その歯数差は1であるから、偏心体軸108が1回転する毎に、外歯歯車118a、118bは内歯歯車125に対して1歯分だけずれる(自転する)ことになる。
【0024】この「ずれ」、即ち外歯歯車118a、118bの自転は、3本の偏心体軸108を介して第1、第2の支持ブロック104、105に伝達される。第1、第2の支持ブロック104、105に伝わった回転力は、両支持ブロック104、105がキャリアピン150を介して一体化されていることで、合力となって第1の支持ブロック104から、同支持ブロック104に連結された相手部材200に取り出される。なお、両支持ブロック104、105は、偏心体軸108が1回転すると、−1/N回転に減速される。
【0025】ところで、このような歯車や軸受を多数使用し、各摩擦接触部分に大きな力の働く減速機では、グリースの供給が不可欠である。特に、この内接噛合遊星歯車構造を採用した減速機では、偏心体軸108の周辺が特に高度の潤滑を必要とするので、図8に示すように、偏心体軸108を取り付けている偏心体軸軸受孔110aの1つからグリースを供給し、内部に行き渡らせるようにしている。
【0026】この場合、偏心体軸軸受孔110aのフランジ面104a上の開口部は、相手部材200のフランジ面200aによって塞がれている。そこで、相手部材200に、偏心体軸軸受孔110aに連通し且つそれよりも小径の給油孔202を明けて、そこからグリースをケーシング101の内部に供給するようにしている。なお、ケーシング101の内部に行き渡ったグリースは、フレーム220に設けた排出孔221より外部に排出される。図8の矢印A、Bはグリースの入出を示し、網目で示す部分はグリースの行き渡る空間を示す。
【0027】ところで、減速機の出力を取り出す第1の支持ブロック104のフランジ面104aには、ボルト155で締め付けることにより、相手部材200のフランジ面200aを密着させるだけであるから、両フランジ面104a、200a間には、グリースの漏れを防ぐための封止手段を介在させる必要がある。
【0028】この点、従来では、相手部材200を取り付ける際に、漏れ防止のための液状パッキンを減速機側のフランジ面104aに塗布してフランジ面104a、200a同士を合わせることにより、両フランジ面104a、200aの隙間からのグリース漏れを防止している。
【0029】
【発明が解決しようとする課題】ところが、液状パッキンは、シール性確保のために限られた時間内に塗布作業を完了させる必要があり、塗るのが難しいという問題がある。しかも、相手部材200や第1の支持ブラケット104のフランジ面(合わせ面)200a、104aには、図9に示すように、固定ボルト155を通すための多数のボルト挿通孔201やねじ孔151等があり、これらがシールする必要のある偏心体軸軸受孔110aと近接しているので、液状パッキンが塗りにくかった。特に、図10に示すように、孔の大きさによっては、面取りを施したようなときにボルト挿通孔201と偏心体軸軸受孔110aとが重なることもあり(重なり部分を符号208のハッチングで示す)、シール面が切れて、有効なシールを確保できない場合もあった。
【0030】又、液状パッキンなどを塗布しない一般的な封止構造の例として、図11、図12に示すように、互いに結合される2つの部材301、302の合わせ面301a、302aにOリング305、315を配置して、少なくとも一方の部材301に形成された開口303をこれらのOリング305、305によってシールする例が知られている。
【0031】図11の例の場合は、太めのOリング305を、開口303の周縁に形成した段差部304に嵌め込み、大きい潰し代S1の分だけ押圧力(シール圧)をかけることで、Oリング305を潰して、必要なシール性能を確保するようにしている。この場合は、太めのOリング305を使用するので取り扱いがやりやすい。又、Oリング305の変形量が大であるから、シール効果の持続性が長い上に、シール面の非平面度を吸収する効果も期待できる。しかし、Oリング305の剛性が大であるため両部材301、302の結合による押圧力を大にしないと、十分にOリング305を変形させることができない。又、Oリング305を全周にわたって確実に変形させて密封状態とするためには、両部材301、302の結合力を高める必要あり、結合力付与手段であるボルト等の大型化や、部材301、302それ自体の剛性のアップも図らなければならない。
【0032】又、図12の例の場合は、細めのOリング315を、開口303の周囲の合わせ面301a上に形成した環状溝314に嵌め込み、小さい潰し代S2の分だけ押圧力(シール圧)をかけることで、Oリング315を潰して、必要なシール性能を確保するようにしている。この場合は、弱い押圧力で高いシール性を発揮できる。しかし、細いOリング315は柔らかいので取り扱いにくく、脱落しないように環状溝314に嵌め込む必要があり、精度の良い溝の形成に手間と時間がかかるという問題がある。又、シール圧が小さくてもシール可能であるが、合わせ面301a、302aの平坦度が低いと、均一な変形量をOリング315に与えることができないため、シール性が低下するという問題もある。
【0033】本発明は、上記事情を考慮し、取り扱いが容易で、取り付ける相手側の構造も簡略化することができ、しかも、シール圧を特別大きくしないでも、高いシール性能を確保することのできるシールリングを合理的に使用した2部材間の封止構造を提供することを目的とする。
【0034】
【課題を解決するための手段】請求項1の発明は、互いに合わせ結合される2つの部材の合わせ面の少なくとも一方に開口が臨まされた構造における前記開口付近を、可撓性材料よりなるシールリングを用いて封止する、2部材間の封止構造において、前記一方の部材の開口の内周面に半径方向内側に突出する段差部を形成し、前記シールリングを、該段差部に押し込まれるドーナツ状のシールリング本体と、該シールリング本体より前記他方の部材側に突出した環状の膨出部とを備えたものとし、両部材を合わせ結合したときに、他方の部材の合わせ面に該環状の膨出部が押圧接触されるように、前記段差部の合わせ面からの深さ、シールリングの前記本体及び膨出部の高さを設定したことにより、上記課題を解決したものである。
【0035】この発明では、両部材を合わせ結合したときに、他方の部材の合わせ面に前記環状の膨出部が押圧接触されるように、前記段差部の合わせ面からの深さ、シールリングの前記本体及び膨出部の高さが設定される。そして他方の部材の合わせ面で環状の膨出部を押圧変形させることにより、2部材間のシールを行う。
【0036】従って、シールリングの本体部分(シールリング本体)を潰さずに、局部的に突出した環状の膨出部のみを変形させればよいので、小さなシール圧で所定のシール性能を確保することができる。又、シールリング本体には押圧力をかける必要がないので、シールリング本体を大きめ(厚め)で剛性大に形成することができ、扱いやすく設計することができる。従って、開口の内周面に形成した段差部に安定的に簡単に装着することができ、液状パッキンを合わせ面に塗布したり、合わせ面にシール材を収容するための溝を形成するなどの面倒がなく、加工及び組み付け作業の容易化を図ることができる。
【0037】又、シール圧が小さくてすむので、2つの部材を結合する力を特に大きくする必要がなく、シール性確保のために結合力をアップしたり、2つの部材の剛性を高めたりする必要がなくなる。又、シール圧を小さくできることから、シールリングに隣接する部材にかかる予圧を小さくすることができる。
【0038】更に、段差部にシールリング本体を押し込んでいるので、シール圧を段差部で確実に受け止めることができ、段差部の背後に軸受等が存在する場合でも、シール圧の影響が軸受に及ばないようにすることができる。
【0039】なお、環状膨出部は、他方の部材の合わせ面に対向するシールリング本体の表面の最内周部、中央部、最外周部のどこに配置してもよいが、最内周部に配置するの好ましい(請求項2)。そうした場合、近接して他の開口が隣りにある場合にも、確実に当該開口のみをシールすることができるようになる。
【0040】なお、シールリング本体を押し込む段差部は、開口の内周縁に切欠を設けることで形成してもよいが、スナップリングという簡易な手段で、段差部を形成することもできる(請求項3)。そうする場合には、開口の内周面に溝を形成し、その溝にスナップリングを係合すればよく、簡単にシールリングを受けるための段差部を確保することができる。
【0041】通常、例えば図6〜図8を用いて詳述したように、スナップリングは軸受の位置規制のために使用されるので、軸受を係止するためのスナップリングで前記段差部を形成してもよい(請求項4)。そうした場合は、スナップリングによってシールリングに作用するシール圧(押圧力)を受け止めることができるので、軸受にシール圧が予圧として作用することを防止できる。従って、軸受に予圧がかかって、劣化が早まったり、回転効率が低下したりすることがない。この効果は特に図6〜図8で示したような精巧な内部構造を有する減速機に本発明を適用する場合に有効である。
【0042】又、他方の部材の合わせ面は平坦であってもよいが、合わせ面上に一方の部材の開口内に進入する凸部を設け、該凸部の端面でシールリングの環状膨出部を押圧変形させて、凸部の端面とシールリングの環状膨出部の押圧接触により開口をシールするようにしてもよい(請求項5)。
【0043】又、シールリング本体の内径を段差部の内径よりも小さくすることで、シールリング本体の内周部を段差部よりも内周側に突出させ、その段差部よりも内周側に突出したシールリング本体の内周部に環状膨出部を配置してもよい(請求項6)。そうした場合は、シールリングの内周側部分を撓みやすくすることができ、その撓みやすい部分に配置した環状膨出部によって、一層小さいシール圧で確実なシールを行うことができる。
【0044】又、他方の部材には開口はあってもなくてもよいが、他方の部材に、一方の部材に形成した開口と連通し且つ該開口よりも小さい開口を形成し、両部材の開口を潤滑油の流通路として利用するようにしてもよい(請求項7)。
【0045】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0046】図1は本発明の実施形態のシールリング5を用いて、2つの部材1、2間をシールした封止構造を示す概略断面図である。第1の部材1と第2の部材2は、互いに合わせ面1a、2aを合わせて結合されるもので、第1の部材1に開口3が形成されている。開口3の内周縁(内周面)には、矩形断面の切欠を形成することによって、結果として半径方向内側に向けて突出形成された段差部4が設けられている。
【0047】シールリング5は、ゴムや樹脂等の可撓性材料により一体成形されたもので、シールリング本体5aと環状膨出部5bとを備えている。
【0048】シールリング本体5aは全体がドーナツ状とされ、段差部4よりも若干大きめに作られており、ある程度の力で段差部4に押し込めるようになっている。
【0049】環状膨出部5bは、シールリング本体5aより第2の部材2側に突出し、両部材1、2を結合したときに第2の部材2の合わせ面2aに押圧接触されるものであり、第2の部材2の合わせ面2aに対向するシールリング本体5aの表面の最内周部に形成されている。この場合、シールリング本体5aの内径D2は、段差部4の最内周縁の内径D1よりも小さく設定されている。
【0050】段差部4の深さh1及びシールリング本体5a及び環状膨出部5bの高さh2、h3に関しては、相手側の第2の部材2を第1の部材1に合わせ結合したときに、環状膨出部5bが押圧接触されて変形し、且つ合わせ面2aがシールリング本体5aの上面にも押圧接触されるが、あまり強くは圧接しない程度に設定されている。
【0051】図示の封止構造を得るには、開口3の内周縁の段差部4にシールリング5のシールリング本体5aを押し込む。そして、その状態で第2の部材2を第1の部材1に結合することで、第2の部材2の合わせ面2aにより、シールリング5の環状膨出部5bを押圧変形させ(潰し)、第2の部材2の合わせ面2aとシールリング5の環状膨出部5bの押圧接触により、合わせ面1a、2aに臨む開口3をシールする。
【0052】その場合、シールリング本体5aの内径D2と段差部4の内径D1との関係から、シールリング本体5aの内周部が段差部4よりも内周側に突出するので、シールリング5の内周側部分が撓みやすくなり、その部分にある環状膨出部5bを小さい力で変形させることができる。
【0053】この実施形態のシールリング5、及び該シールリング5を用いた2部材1、2間の封止構造では、剛性の高いシールリング本体5aをほとんど潰さずに、局部的に突出した環状膨出部5bのみを変形させてシールするので、小さなシール圧で所定のシール性能を発揮することができる。又、シールリング本体5aに対しては特に押圧力をかける必要がないので、シールリング本体5aを大きめ(厚め)で剛性大に形成することができ、扱いやすく設計することができる。
【0054】従って、開口3の内周縁に形成した段差部4に安定した姿勢で簡単に装着することができ、従来のように液状パッキンを合わせ面に塗布したり、合わせ面にシール材を収容するための環状溝を形成したりする必要がなく、加工及び組み付けの容易化を図ることができる。
【0055】又、シール圧が小さくてすむことから、2つの部材1、2を結合する力を特別に大きく設定する必要がなく、シール性確保のために結合力をアップしたり、2つの部材1、2の剛性を高めたりする必要がない。又、シールリング5に隣接する部材がある場合には、それにかかる予圧を小さくすることもできる。
【0056】なお、環状膨出部を設ける位置は、図2の(A)〜(C)に示すように任意に設定することができる。
【0057】(A)のシールリング5では、シールリング本体5aの表面の最内周部に環状膨出部5bを設けている。
【0058】(B)のシールリング15では、シールリング本体5aの表面の中央部に環状膨出部15bを設けている。
【0059】(C)のシールリング25では、シールリング本体25aの表面の最外周部に環状膨出部25bを設けている。
【0060】このうち、最も望ましいのは(A)のものである。この(A)のシールリング5によれば、近接して他の開口が隣りにある場合にも、確実に当該開口のみをシールすることができるようになる。又、図1の例のように、シールリング本体5aの内径D2が、段差部4の最内周縁の内径D1よりも小さく設定されている場合には、シールリング本体自体の撓みも有効に利用できる。
【0061】次に本発明の封止構造を減速機に適用した例を説明する。
【0062】図3は本発明の封止構造を適用した減速機の断面図である。本図において、図8と同一の構成要素には同一符号を付して説明を省略する。
【0063】この減速機では、第1の支持ブロック104のフランジ面104aと、相手部材200のフランジ面200aとの隙間からの漏れ防止に本発明の封止構造が適用されている。フランジ面104aには、シールすべき3つの偏心体軸軸受孔110aが開口しており、その3つの開口について、それぞれ本発明の封止構造が適用されている。図3では、そのうちの給油孔202につながる開口についての封止構造のみが図示されている。図示されていない2つの封止構造は、給油孔がない部分に適用されており、給油孔の有る無しだけが異なる。
【0064】図4はその封止構造に使用されているシールリング35を拡大して示し、図5は図3の封止構造部分を拡大して示す。
【0065】シールリング35は、図4に示すように、矩形のシールリング本体35aと、そのシールリング本体35aの上面の内周部に突設された環状膨出部35bとからなる。環状膨出部35bは断面が左右対称の山形をなしている。
【0066】一方、この減速機では、図7、図8を用いて先に説明したように、偏心体軸軸受孔110aの内周に、偏心体軸108を支持する軸受109aが嵌合されており、軸受109aが、偏心体軸軸受孔110aの内周に係止されたスナップリング160により軸方向に位置決めされている。この場合、偏心体軸軸受孔110aの内周面より内方に突出するスナップリング160が、シールリング35を保持するための段差部34を形成している。
【0067】そして、図5に示すように、スナップリング160によって形成された段差部34に、シールリング35のシールリング本体35aが押し込まれている。シールリング35の寸法は、外径が、段差部34に対してある程度の力を込めて押し込めるよう偏心体軸軸受孔110aの内径よりも若干大きめに設定され、内径D2が、段差部34を構成するスナップリング160の内径D1よりも小さく設定されている。又、シールリング本体35aの高さH2が、段差部34の深さH1よりも小さく設定され、シールリング本体35aと環状膨出部35bの高さH2、H3の合計H4が、段差部34の深さH1よりも大きく設定されている。
【0068】このような寸法関係により、相手部材200を第1の支持ブラケット104のフランジ面104aに結合することで、相手部材200のフランジ面200aにより、シールリング35の環状膨出部35bを押圧変形させ(潰し)、相手部材200のフランジ面200aとシールリング35の環状膨出部35bの押圧接触により、フランジ面104a、200aに臨む偏心体軸軸受孔110aの開口をシールしている。
【0069】この場合も、シールリング本体35aの内径D2とスナップリング160の内径D1との関係から、シールリング35の内周側部分が撓みやすくなり、その部分に存在する環状膨出部35bを小さい力で変形させることができる利点が得られる。
【0070】このような封止構造を採用したことにより、小さなシール圧で所定のシール性能を発揮することができる。又、シールリング本体35aには押圧力がかからないので、シールリング本体35aを大きめ(厚め)で剛性大に形成することができ、扱いやすくなる。従って、段差部34に対してシールリング35を安定的に簡単に装着することができ、従来のように、液状パッキンを(孔が多くて塗りにくい)合わせ面に塗布したり、シール材を収容するための環状溝を合わせ面に形成してそこに(扱いにくい細めの)Oリングを装着したりする必要がなくなる。その結果、加工及び組み付け作業の容易化が図れる。又、シール圧が小さくて済み、それでいてシール材を大きく変形させることができるため相手部材200を結合する力を特に大きくする必要がなく、シール性確保のために結合力をアップしたり、相手部材200や第1の支持ブロック104の剛性を高めたりする必要がなく、且つ良好なシール性能を長期にわたって維持することができる。
【0071】又、軸受109aを係止するスナップリング160によって、シールリング35を保持するための段差部34を形成しているので、シールリング35の力を受けるためのスナップリングや段差部を別に設ける必要がなく、構造の簡略化が図れる。更に、スナップリング160でシールリング35のシール圧を受けることになるので、軸受109aにシール圧が予圧として作用することもなく、軸受109aに予圧がかかって劣化が早まったり、回転効率が低下したりすることがない。
【0072】なお、上記実施形態では、相手側の部材(図1における他方の部材2、図5における相手部材200)の合わせ面2aやフランジ面200aが平坦な面とされている場合を説明したが、他方の部材2の合わせ面2aや相手部材200のフランジ面200a上に、一方の部材1の開口3内や第1の支持ブロック104の偏心体軸軸受孔110a内に進入する凸部を設け、該凸部の端面でシールリングの環状膨出部を押圧変形させ、凸部の端面とシールリングの環状膨出部の押圧接触により開口をシールするようにしてもよい。その場合は、環状膨出部の高さは凸部の突出高さに応じて変更する。
【0073】又、上記実施形態で示した封止構造は、減速機ばかりでなく、他の一般機械の合わせ面のシールを行う必要のある箇所に広く適用することができる。
【0074】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、取り扱いが容易で、取り付ける相手側の構造を簡略化することができ、しかも、小さなシール圧で所定のシール性能を発揮することができる。
【0075】従って、従来のように、液状パッキンを合わせ面に塗布したり、合わせ面にシール材を収容するための環状溝を形成したりする必要がなく、加工及び組み付け作業の容易化が図れる。
【0076】又、シール圧が小さくてすむので、部材同士を結合する力を特に大きくする必要がなく、シール性確保のために結合力をアップしたり、部材そのものの剛性を高めたりする必要がなくなる。
【出願人】 【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
【出願日】 平成11年11月16日(1999.11.16)
【代理人】 【識別番号】100089015
【弁理士】
【氏名又は名称】牧野 剛博 (外2名)
【公開番号】 特開2001−141061(P2001−141061A)
【公開日】 平成13年5月25日(2001.5.25)
【出願番号】 特願平11−325530