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【発明の名称】 組合せオイルリング
【発明者】 【氏名】鮎沢 紀昭

【氏名】石田 政男

【要約】 【課題】スペーサエキスパンダに対するサイドレールの回転防止効果を長期にわたって維持できる組合せオイルリングを提供する。

【解決手段】組合せオイルリング1は2本のサイドレール2,3とスペーサエキスパンダ4からなる。サイドレール2,3は内周面にブラスト処理を施し、表面粗さを3〜20μmRzとする。スペーサエキスパンダ4はサイドレール2,3を押圧するための耳部7,8を有し、そのサイドレール押接側の面9,10の周方向中央部に突起11,12を有する。突起11,12はサイドレール2,3の押接面が平面で、半径方向厚さが0.07mm以上0.2mm以下である。なお、突起11,12は耳部7,8の周方向片側部分に形成してもよい。また、耳部に突起を形成せずに、耳部7,8の周方向両端部の根元が凹曲面をなし、先端に行くに従って周方向幅が狭くなるような耳部形状としてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 上下2本のサイドレールと、それらの間に配置するスペーサエキスパンダとを備え、スペーサエキスパンダに形成されている上下の耳部により前記2本のサイドレールが押圧される3ピース形の組合せオイルリングにおいて、前記スペーサエキスパンダの耳部におけるサイドレール押接側の面の周方向中央部に突起が設けられ、この突起の半径方向厚さが0.07mm以上0.2mm以下であることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項2】 上下2本のサイドレールと、それらの間に配置するスペーサエキスパンダとを備え、スペーサエキスパンダに形成されている上下の耳部により前記2本のサイドレールが押圧される3ピース形の組合せオイルリングにおいて、前記スペーサエキスパンダの耳部におけるサイドレール押接側の面の周方向の中央部を含む片側部分に突起が設けられ、この突起の半径方向厚さが0.07mm以上0.2mm以下であることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項3】 前記突起のサイドレール押接面が平面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の組合せオイルリング。
【請求項4】 前記突起の周方向幅は、0.2mm以上0.7mm以下であることを特徴とする請求項3記載の組合せオイルリング。
【請求項5】 上下2本のサイドレールと、それらの間に配置するスペーサエキスパンダとを備え、スペーサエキスパンダに形成されている上下の耳部により前記2本のサイドレールが押圧される3ピース形の組合せオイルリングにおいて、前記スペーサエキスパンダの耳部は、周方向両端部の根元が凹曲面をなし、先端に行くに従って周方向幅が狭くなっていることを特徴とする組合せオイルリング。
【請求項6】 前記スペーサエキスパンダの耳部は、周方向両端部の根元の凹曲面の半径が1mm以上20mm以下、サイドレールと接触する部分の周方向幅が0.4mm以上0.7mm以下であることを特徴とする請求項5記載の組合せオイルリング。
【請求項7】 サイドレールの内周面にブラスト処理が施されてサイドレール内周面の表面粗さが3〜20μmRzであることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の組合せオイルリング。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関やコンプレッサなどのピストンに装着され、オイルコントロールを行う組合せオイルリングに関する。
【0002】
【従来の技術】最近の内燃機関では高出力化や燃費の向上に加え、潤滑油消費量の低減が求められている。このため、特にガソリンエンジン等においては、3ピース形の組合せオイルリングが多用されている。3ピース形の組合せオイルリングは、上下2本のサイドレールの間にスペーサエキスパンダを配置した構造をなし、上下のレールが別々であるので、シリンダボアの変形に追従し易く、また、上下レールがピストンのオイルリング溝の上下面にも接触するので、シール効果に優れており、潤滑油消費量の低減に効果がある。
【0003】組合せオイルリングは、ピストン及びシリンダ装着時には、上下のサイドレールの合い口とスペーサエキスパンダの合い口を90°以上ずらして配置するが、運転中に、サイドレールがスペーサエキスパンダに対して回転して、上下のサイドレールの合い口とスペーサエキスパンダの合い口が一致することがある。上下のサイドレールの合い口とスペーサエキスパンダの合い口が一致すると、シール性能が低下し、潤滑油消費量が増加する場合がある。スペーサエキスパンダに対するサイドレールの回転防止には、スペーサエキスパンダのサイドレール押圧部である耳部のサイドレールとの接触面積を小さくして接触面圧を高くすることが効果的であるが、耳部の周方向の幅をそのまま小さくすることは、製造上、及び耳部の強度の面から困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】スペーサエキスパンダに対するサイドレールの回転を防止する従来技術に実用新案登録第2594891号がある。この技術は、スペーサエキスパンダ2の耳部3の中央に凹部7を設け、その両側の突起6でサイドレール1の内周面1aを押圧することにより、サイドレール1との接触面積を小さくして接触面圧を高くしている。しかしながら、図2に示されているように、突起6は円弧面をなすのでサイドレール1と線接触で当たり、しかも凹部7の凹みが浅いため、耳部3の摺動による摩耗で、次第にサイドレール1との接触面積が大きくなって接触部の面圧が下がり、サイドレール1が回転し易くなってしまう。また、スペーサエキスパンダの耳部の周方向の長さが短いものや耳部の先端が狭い形状のものについては凹み加工が困難である。
【0005】また、スペーサエキスパンダに対するサイドレールの回転を防止する従来技術に実開平1−78768号がある。この技術は、スペーサエキスパンダ2の耳部8に細かな凹凸9を設け、サイドレール3との摩擦力を大きくして、サイドレール3の回転を防止する。しかしながら、この技術も、スペーサエキスパンダ2の耳部8の摺動による摩耗で、細かな凹凸9が摩滅し、サイドレール3が回転し易くなる。
【0006】本発明の課題は、スペーサエキスパンダに対するサイドレールの回転防止効果を長期にわたって維持できる組合せオイルリングを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、上下2本のサイドレールと、それらの間に配置するスペーサエキスパンダとを備え、スペーサエキスパンダに形成されている上下の耳部により前記2本のサイドレールが押圧される3ピース形の組合せオイルリングにおいて、前記スペーサエキスパンダの耳部におけるサイドレール押接側の面の周方向中央部に突起が設けられ、この突起の半径方向厚さが0.07mm以上0.2mm以下であることを特徴とする。
【0008】本発明は次の構成でもよい。即ち、上下2本のサイドレールと、それらの間に配置するスペーサエキスパンダとを備え、スペーサエキスパンダに形成されている上下の耳部により前記2本のサイドレールが押圧される3ピース形の組合せオイルリングにおいて、前記スペーサエキスパンダの耳部におけるサイドレール押接側の面の周方向の中央部を含む片側部分に突起が設けられ、この突起の半径方向厚さが0.07mm以上0.2mm以下であることを特徴とする。
【0009】前記突起のサイドレール押接面は平面に形成されているのが望ましく、周方向幅は0.2mm以上0.7mm以下であるのが望ましい。
【0010】前記耳部に形成した突起によって、スペーサエキスパンダの耳部とサイドレールとの接触面積が小さくなり接触面圧が高くなるため、スペーサエキスパンダに対するサイドレールの回転を防止できる。そして、突起の半径方向厚さが厚いので、サイドレールの回転防止効果を長期にわたって維持でき、この効果は突起のサイドレール押接面が平面であればより効果的である。なお、耳部の周方向片側部分に突起を設けたものの方が、スペーサエキスパンダの耳部の周方向幅がより小さい場合にも対応できる。
【0011】また、本発明は、次の構成でもよい。即ち、上下2本のサイドレールと、それらの間に配置するスペーサエキスパンダとを備え、スペーサエキスパンダに形成されている上下の耳部により前記2本のサイドレールが押圧される3ピース形の組合せオイルリングにおいて、前記スペーサエキスパンダの耳部は、周方向両端部の根元が凹曲面をなし、先端に行くに従って周方向幅が狭くなっていることを特徴とする。
【0012】このスペーサエキスパンダの耳部は、周方向両端部の根元の凹曲面の半径が1mm以上20mm以下、サイドレールと接触する部分の周方向幅が0.4mm以上0.7mm以下であるのが望ましい。
【0013】耳部の周方向両端部の根元が凹曲面をなし、先端に行くに従って周方向幅を狭くした耳部形状によって、スペーサエキスパンダの耳部とサイドレールとの接触面積が小さくなり接触面圧が高くなるため、スペーサエキスパンダに対するサイドレールの回転を防止できる。そして、耳部のサイドレールとの接触部の板厚を確保できるため、サイドレールの回転防止効果を長期にわたって維持できる。また、耳部の根元側の部分の周方向幅を大きくとれるので、耳部の強度を確保できる。また、スペーサエキスパンダの耳部の周方向幅がより小さい場合にも対応できる。
【0014】前記組合せオイルリングにおいて、サイドレールの内周面にブラスト処理を施してサイドレール内周面の表面粗さを3〜20μmRzとするのが、スペーサエキスパンダに対するサイドレール回転防止効果の点でより好ましい。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態1を図1により説明する。
【0016】図1において、組合せオイルリング1は、環状で合い口を備えている上下2本のサイドレール2,3と、それらの間に配置し環状で合い口を備えているスペーサエキスパンダ4とからなっている。
【0017】スペーサエキスパンダ4は、軸方向に波形をなす周期要素が周方向に多数連なって構成されている。以下、具体的に説明すると、スペーサエキスパンダ4は、水平な上片5と下片6とが軸方向及び周方向に離間して周方向に交互に多数配置し、隣接する上片5と下片6とが連結片15で接続されている。上片5と下片6の外周側の端部は内周側に対して一段高く形成され、サイドレール2,3の支持部5a,6aを形成している。上片5と下片6の内周側の端部には、サイドレール2,3を押圧するための耳部7,8がアーチ形状をなして上下に起立形成されており、この耳部7,8のサイドレール押接側の面9,10の周方向中央部に突起11,12が形成されている。突起11,12はサイドレール2,3の押接面が平面に形成されており、半径方向厚さは0.07mm以上0.2mm以下で、周方向幅は0.2mm以上0.7mm以下である。また、突起11,12のサイドレール押接面は、サイドレール2,3をシリンダ内壁の他に、オイルリング溝の上下面にも密着させるように傾斜面に形成されている。
【0018】前記突起11,12は、耳部7,8の成形時に型により容易に成形できる。
【0019】サイドレール2,3の内周面にはブラスト処理が施されて、サイドレール2,3の内周面の表面粗さは3〜20μmRzとされている。
【0020】スペーサエキスパンダ4は、ピストンのオイルリング溝内に、両合口端部が突き合わされて縮められた状態で装着され、半径方向外方への拡張力を生じるようにされ、上下のサイドレール2,3を上下片5,6のサイドレール支持部5a,6aで上下(軸方向)に離隔保持し、上下の耳部7,8が上下のサイドレール2,3の内周面をそれぞれ押圧することによって、各サイドレール2,3の外周面をシリンダ内壁に密着させるとともに、各サイドレール2,3の内周側の端部をオイルリング溝の上下面に密着させる。
【0021】この際、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8は突起11,12がサイドレール2,3の内周面に接触してサイドレール2,3を押圧するため、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8とサイドレール2,3との接触面積が小さくなり接触面圧が高くなる。その結果、スペーサエキスパンダ4に対するサイドレール2,3の回転を防止できる。そして、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8の突起11,12は、半径方向厚さが厚く、サイドレール押接面が平面に形成されているので、サイドレール2,3の回転防止効果を長期にわたって維持できる。また、スペーサエキスパンダ4の耳部7の周方向両端は、連結片15を介して、軸方向反対側の耳部8の周方向端部に連結している。使用状態において、スペーサエキスパンダ4とサイドレール2,3は、耳部7,8とサイドレール支持部5a,6aでのみ接触し、連結片15は自由な(振動・変形の際、摩擦力が働かない)状態にある。従って、耳部7,8の周方向両端は、連結片15の振動や変形の影響を受け易い部位である。スペーサエキスパンダ4は耳部7,8の周方向の中央部に突起11,12が形成されている。このため、連結片15の振動や変形の影響がサイドレール2,3に及び難く、安定した接触が得られ、結果として、サイドレール2,3とスペーサエキスパンダ4の相対的な回転が防止される。
【0022】図2は、本発明の別の実施形態2を示す。本実施形態2の組合せオイルリング1は、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8の突起11,12の位置が上記実施形態1と相違しているのみで、他の構成は上記実施形態1と同じである。
【0023】本実施形態2においては、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8の突起11,12が、耳部7,8におけるサイドレール押接側の面9,10の周方向の中央部を含む片側部分に設けられている。突起11,12は、上記実施形態1と同じように、サイドレール2,3の押接面が平面に形成されており、半径方向厚さは0.07mm以上0.2mm以下で、周方向幅は0.2mm以上0.7mm以下である。また、突起11,12のサイドレール押接面は、サイドレール2,3をシリンダ内壁の他に、オイルリング溝の上下面にも密着させるように傾斜面に形成されている。なお、本実施形態2では、上下の耳部7,8の突起11,12は、上下とも周方向において同じ側(図示のものは左側)に設けたが、これに限ることは無く、上下の突起11,12とも周方向における左右どちらの側に設けてもよい。
【0024】前記突起11,12は、耳部7,8の成形時に型により容易に成形できる。
【0025】本実施形態2の組合せオイルリング1は、上記実施形態1と同じようにして、スペーサエキスパンダ4に対するサイドレール2,3の回転防止効果を長期にわたって維持できる。また、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8の突起11,12が周方向の中央部を越えて延びているので、上記実施形態1で説明したように、突起11,12の耳部中央部付近でサイドレール2,3と安定した接触が得られ、結果として、サイドレール2,3とスペーサエキスパンダ4の相対的な回転が防止される。なお、上記実施形態1の組合せオイルリングに比べて、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8の周方向幅がより小さい場合にも対応できる。
【0026】図3は、本発明の更に別の実施形態3を示す。本実施形態3の組合せオイルリング1は、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8が上記2つの実施形態1,2のような突起11,12を形成しておらず、上下の耳部7,8の周方向両端部の根元が凹曲面13,14をなし、先端に行くに従って周方向幅が狭くなっている形状をなしている。耳部7,8は、周方向両端部の根元の凹曲面13,14の半径が1mm以上20mm以下、サイドレール2,3と接触する部分の周方向幅が0.4mm以上0.7mm以下である。また、耳部7,8のサイドレール押接面は平面に形成されているとともに、サイドレール2,3をシリンダ内壁の他に、オイルリング溝の上下面にも密着させるように傾斜面に形成されている。耳部7,8以外の構成は前記実施形態1と同じである。
【0027】前記耳部7,8は、軸方向波形の成形時に型により容易に成形できる。
【0028】本実施形態3の組合せオイルリング1も、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8とサイドレール2,3との接触面積が小さくなり接触面圧が高くなる。その結果、スペーサエキスパンダ4に対するサイドレール2,3の回転を防止できる。そして、耳部7,8のサイドレール2,3との接触部の板厚を確保できるため、サイドレール2,3の回転防止効果を長期にわたって維持できる。また、耳部7,8の根元側の部分の周方向幅を大きくとれるので、耳部7,8の強度を確保できる。また、スペーサエキスパンダ4の耳部7,8の周方向幅がより小さい場合にも対応できる。
【0029】本発明は、上記実施形態1,2,3で説明した組合せオイルリング(軸方向に波形をなす周期要素が周方向に多数連なったスペーサエキスパンダを有する組合せオイルリング)に限定されるものではなく、半径方向に波形をなす周期要素が周方向に多数連なったスペーサエキスパンダを有する組合せオイルリングや、略コ字形断面を有する周期要素が周方向に多数連なったスペーサエキスパンダを有する組合せオイルリングにも適用できるものである。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように本発明の組合せオイルリングは、スペーサエキスパンダに対するサイドレールの回転防止効果を長期にわたって維持でき、組合せオイルリングの信頼性を高めることができる。
【出願人】 【識別番号】000215785
【氏名又は名称】帝国ピストンリング株式会社
【出願日】 平成11年11月8日(1999.11.8)
【代理人】 【識別番号】100085822
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 健一
【公開番号】 特開2001−132840(P2001−132840A)
【公開日】 平成13年5月18日(2001.5.18)
【出願番号】 特願平11−316510