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【発明の名称】 ピストンリング
【発明者】 【氏名】富士岡 泰雄

【氏名】影山 裕史

【要約】 【課題】製造簡単でかつブローバイガス等の流体漏れを極めて有効に防止することができるピストンリングを提供すること。

【解決手段】一部を切断したリング状に形成され、合い口3を広げてピストンの外周面に嵌装され、ピストンのシリンダ嵌入時にその両者間に形成される隙間を塞ぐピストンリング1の合い口3に弾性材5の嵌合部14を介在させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】一部を切断したリング状に形成され、切断部を広げてピストンの外周面に嵌装され、前記ピストンのシリンダ嵌入時にその両者間に形成される隙間を塞ぐピストンリングにおいて、前記切断部に弾性材を介在させたことを特徴とするピストンリング。
【請求項2】前記弾性材は、前記切断部以外に、ピストンをシリンダに嵌入したときにピストンヘッドとシリンダヘッドとの間に形成される燃焼室側に面するピストンリングの上面とピストンリングの内側に沿った内周面とに設けられることを特徴とする請求項1記載のピストンリング。
【請求項3】前記切断部は、この切断部をピストンリングの径方向に正対して見たときの形状が、ピストンリングの前記上面側で広くかつ下面側で狭い先細り形状であることを特徴とする請求項1または2記載のピストンリング。
【請求項4】前記切断部は、この切断部をピストンリングの径方向に正対して見たときの形状が円形状または楕円形状であることを特徴とする請求項1または2記載のピストンリング。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はピストンリングに関する。
【0002】
【従来の技術】ピストンリングは、その一部を切断した鋳鉄または鋼鉄製の弾力のあるリングであって、切断部を広げてピストンの外周面に形成したリング溝に嵌装され、前記ピストンのシリンダ嵌入時にその両者間に形成される隙間を塞ぐ。
【0003】また、ピストンリングは、燃焼室の気密を保ちクランクケースへのガス漏れであるいわゆるブローバイガスを防いだり、ピストンが受けた熱をシリンダ壁に伝えたり、シリンダ壁を潤滑するオイルのうち余分なものを欠き落として燃焼室に入るのを防いだりする。
【0004】ピストンリングがこのような気密作用等を満足に奏するためには、常にシリンダ壁に密着していることが必要である。このため、ピストンリングは、これをシリンダに組み込んだときに、外側に張り広がる力(以下「張力」という。)が生じるように作られる。
【0005】この張力を得るために、ピストンリングは前記の如く一部を切断してある。ピストンリングの切断部分を合い口といい、合い口はわずかな隙間を確保した状態で突き合わされる。突き合わされる面のことを合い口面という。また、前記隙間を合い口隙間といい、ピストンリングは、この合い口隙間の分だけ伸び縮んで合い口隙間の大きさに応じた張力を生み出す。
【0006】また、ピストンリングをピストンに嵌め込むときは、リングの合い口を広げて行う。合い口の形状には、ピストンリングの周方向に対して直角に切ったバット・ジョイント型,斜めに切ったアングル・ジョイント型,段付き状に切った、いわゆるステップカットしたラップ・ジョイント型などがある。そして、ピストン作動時における高熱状態の中でエンジン性能が低下しないように、合い口隙間から燃焼ガスが漏れないように作られる。
【0007】しかし、燃焼ガスは僅かずつでも合い口隙間から漏れてブローバイガスになる。そして、合い口隙間が大き過ぎるとブローバイガスの量が多くなる。そして、反対に小さ過ぎるとピストン作動時のピストンリングの熱膨張によって合い口が接触してしまい張力が大き過ぎるため、ピストンリングやシリンダ壁を損傷したりあるいはそれらに焼きつきを起こしたりする虞がある。
【0008】したがって、ピストンリングの合い口隙間の設定を有効に設定することは重要であり、特に近年の排ガス規制に対処するためにも合い口隙間から漏れるブローバイガスの低減を一層図ることが求められている。
【0009】そこで、例えば特開平8−82375号公報に開示されているラップ・ジョイント型のピストンリングの技術のように、リングを段付きに切断後、合い口を押圧して平面化することで合わせ面同士を密着させる技術が知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記技術をもってしても有効にブローバイガス等の流体漏れを極めて有効に防止するのは難しかった。
【0011】本発明は上記実状に鑑みて発明されたものであって、その解決しようとする課題は、製造簡単でかつブローバイガス等の流体漏れを極めて有効に防止することができるピストンリングを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために本発明のピストンリングは、次の手段を採用した。
(1)一部を切断したリング状に形成され、切断部を広げてピストンの外周面に嵌装され、前記ピストンのシリンダ嵌入時にその両者間に形成される隙間を塞ぐピストンリングにおいて、前記切断部に弾性材を介在させたことを特徴とする。
【0013】なお、ピストンリングは金属を、また弾性材は樹脂またはゴムを用いると好適である。
(2)前記弾性材は、前記切断部以外に、ピストンをシリンダに嵌入したときにピストンヘッドとシリンダヘッドとの間に形成される燃焼室側に面するピストンリングの上面とピストンリングの内側に沿った内周面とに設けることが好ましい。
【0014】(3)前記切断部は、この切断部をピストンリングの径方向に正対して見たときの形状が、ピストンリングの前記上面側で広くかつ下面側で狭い先細り形状であるものでもよい。
【0015】(4)前記切断部は、この切断部をピストンリングの径方向に正対して見たときの形状が円形状または楕円形状でも適用できる。しかして、このような構成の本発明のピストンリングは上記構成であるから次のような作用効果を奏する。
【0016】本発明では、ピストンリングの切断部(以下「合い口」という。)に弾性材を介在させてあるが、例えばピストンリングと弾性材とを接着材等で固定しておいた場合、ピストンリングをピストンに嵌め込むためにリングの合い口を広げると、それに応じて弾性材が延びるので、弾性材をピストンリングに介在させたことが合い口を広げる上で妨げにならない。したがって、ピストンリングのピストンへの取付への支障もない。
【0017】また、合い口にできる隙間(以下「合い口隙間」という。)にそれよりも大きな弾性材を介在しておけば、ピストンリングの張力によって弾性材は常時ピストンリングの周方向に両側から押圧された状態になる。このため、合い口の加工精度がそれほど良くなくともその精度の悪さを弾性材が吸収するので、合い口の密閉度が高まりシール性が向上するので、合い口隙間からブローバイガスが漏れることはない。
【0018】さらに、弾性材を合い口隙間に入れたときにピストンリングに所望の張力を得られるように、弾性材と合い口隙間との大きさを設定しておけば、合い口隙間が小さ過ぎることに起因してピストンリングの張力が得られなくなることもない。このため、従来技術の問題点であったピストンリングの破損,シリンダ壁の損傷および焼きつき等を起こしたりすることもない。
【0019】加えて、弾性材を前記合い口以外にピストンリングの上面と内周面とに設けておけば、ピストンリングをピストンのリング溝に嵌装したときに、ピストンリングの上面と内周面とに設けた弾性材は、ピストンリングとリング溝との間に介在されるので、ピストンリングは、その上面と内周面が直接リング溝に触れなくなる。よって、ピストンリングの背面および上面は、表面あらさが弾性材によって吸収されてしまうので、その加工精度を高めなくともよいため製造が簡単になる。
【0020】また、合い口隙間は、その隙間幅が一定ではなく、ピストンの往復運動によって変化する。このため、合い口隙間に介在してある弾性材にはピストンの往復運動に合わせて応力が発生するので、弾性材はこれを合い口隙間に接着剤等で固着してあっても経年変化するに連れて分離し易くなることが考えられる。
【0021】一方、エンジンの作動行程のうち爆発および圧縮行程の作動時にピストンリングの上面に圧力が特に加わる。このため、前記合い口の形状を、ピストンリングの径方向に正対して見たときに、ピストンリングの前記上面側で広くかつ下面側で狭い先細りになるようにしておけば、ピストンリングに係る上からの圧力に対しては先細り形状の合い口面が妨げとなって、弾性材は合い口に一層密着してシール性が極めて高まる。よって、ガス漏れには極めて有効になる。
【0022】なお、ピストン作動中に弾性材に下からかかる力は上からかかる力に比して小さいが、この場合、前記合い口隙間は、力の向きから考慮すると末広がりになるため、弾性材が剥がれ易い。
【0023】そこで弾性材の形状を例えば円形状または楕円形状にしておけば、上下いずれの側からの力に対しても弾性材は取れにくくなる。また、合い口における弾性材との接触長さは、円形の合い口隙間の方が長いため、円形の合い口隙間にした方がガス漏れは少なくなる。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明のピストンリングの実施の形態を添付した図面に基いて説明する。
〈実施の形態〉図1〜図3を用いて、本発明のピストンリングの実施の形態を説明する。
【0025】本発明に係るピストンリング1が従来のピストンリングと大きく異なる点は、ピストンリング1の切断部である合い口3にできた合い口隙間4に弾性材5を介在させたことにある。
【0026】図1に示すように、弾性材5は、これをピストンリング1に備えたときに、合い口隙間4だけでなくピストンをシリンダに嵌入したときにピストンヘッドとシリンダヘッドとの間に形成される燃焼室側に面するピストンリング1の上面7とピストンリング1の内側に沿った内周面9とにも配されるようにその形状が特定されている。
【0027】すなわち、弾性材5の概観は、ピストンリング1と同様にリング状をしている。詳しくは、弾性材5をピストンリング1に組み込んだときに、ピストンリング1の上面7および背面9にそれぞれ対応して位置する天板部11および背板部13と、合い口隙間4に嵌合される形状にされているとともに合い口隙間4の隙間幅Aよりも幾分厚みがある嵌合部14とを一体成形してなるものである。なお、嵌合部14の厚みとは、弾性材5の周方向における寸法のことである。
【0028】また、この実施の形態では、ピストンリング1は、バット・ジョイント型であり、例えば鋳鉄または鋼鉄製である。また、弾性材5は軟質性の樹脂またはゴムであってピストンリング1に対する固体充填材として使用される。そして、弾性材5は、例えば接着剤等の固定手段でピストンリング1に一体化される。
【0029】そして、前記のように、ピストンリング1は、バット・ジョイント型であり、その横断面は矩形状である。よって、合い口隙間4は直方体形状の隙間となる。このため、弾性材5の嵌合部14も直方体形状を呈するように形成されている。
【0030】また、弾性材5の嵌合部14における横断面は、矩形であるが、嵌合部14以外の箇所での横断面はLの字を横倒しにした如き形状をしている。
〈実施の形態の作用効果〉しかして、ピストンリング1は、合い口隙間4に弾性材5を介在させてピストンリング1と弾性材5とを一体化したので、ピストンリング1をピストンに嵌め込むために合い口3を広げた場合は、それに応じて弾性材5が延びる。このため、弾性材5の嵌合部14をピストンリング1の合い口隙間4に介在させてもピストンリング1のピストンへの取付けには何ら支障ない。
【0031】また、合い口隙間4の隙間幅Aよりも嵌合部14の厚み寸法が大きめであるので弾性材5をピストンリング1に取り付けて合い口隙間4に嵌合部14が嵌合されると、ピストンリング1に張力が生じこのときの張力によって嵌合部14は常時ピストンリング1の周方向に押圧された状態になる。
【0032】このため、合い口3の加工精度がそれほど良くなくともその精度の悪さを弾性材5が吸収するので、合い口3の密閉度が向上し、シール性が高まる。よって合い口隙間4からのブローバイガスの漏れを極めて良好に防止できる。
【0033】さらに、弾性材5の嵌合部14を合い口隙間4に入れたときにピストンリングに所望の張力を得られるように嵌合部14と合い口隙間4との大きさを設定しておけば、合い口隙間4が小さ過ぎることに起因してピストンリング1の張力が得られなくなることはない。このため、ピストンリング1が破損したり、シリンダ壁の損傷や焼きつきを起こしたりすることもない。
【0034】加えて、ピストンリング1の上面7および背面9にそれぞれ弾性材5の天板部11および背板部13を配してあるので、ピストンリング1の上面7および背面9は、直接、ピストンのリング溝に触れなくなる。よって、ピストンリング1の上面7および背面9にあっては、その加工精度をさほど高める必要がないので、ピストンリング1の製造が簡単にできる。
【0035】また、合い口隙間4に介在してある嵌合部14にはピストンの往復運動に合わせて応力を生じる関係で、嵌合部14を合い口隙間4に固着してあっても経年変化によって分離してしまうことが考えられる。
【0036】そして、エンジンの作動行程のうち爆発および圧縮行程の作動時にピストンリング1の上面7に圧力が特に加わる。このため、ピストンリング1の径方向に正対してピストンリング1を見たときの合い口隙間4の形状が図2に示すようにピストンリング1の上面7側で広くかつ下面側で狭い先細り形状にしておけば、上からの圧力を受けても合い口面4aが妨げとなって嵌合部14が外れ難くなる。
【0037】なお、下から嵌合部14にかかる力は上から嵌合部14にかかる力に比して小さいが、ピストンリング1の径方向に正対して合い口隙間4を見たときに、その形状が円形状または楕円形状のごとく合い口の形状をそこに嵌合される嵌合部14を囲繞するように設定しておけば、上下いずれの側からの力に対しても嵌合部14は外れにくくなる。
【0038】また、合い口3における嵌合部14との接触長さは、円形等の合い口隙間の方が長いため、円形等の合い口隙間にした方がガス漏れは少なくなる。合い口隙間4の形状を前記のように変えた場合は、それに応じて嵌合部14の形状も変形させることはあえて述べるまでもない。
【0039】
【発明の効果】本発明のピストンリングによれば、その製造を簡単にすることができるばかりか本発明のピストンリングをピストンに適用すればブローバイガス等の流体漏れを極めて有効に防止することができる。
【出願人】 【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
【出願日】 平成11年10月20日(1999.10.20)
【代理人】 【識別番号】100089244
【弁理士】
【氏名又は名称】遠山 勉 (外3名)
【公開番号】 特開2001−116145(P2001−116145A)
【公開日】 平成13年4月27日(2001.4.27)
【出願番号】 特願平11−298447