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【発明の名称】 水力機械の軸封装置
【発明者】 【氏名】タン トロンロン

【氏名】古川 武也

【氏名】稲垣 泰造

【要約】 【課題】回転軸からの漏水を確実に抑え、しかも摺動パッドおよび回転軸の摩耗、損傷を効果的に防ぐこと。

【解決手段】軸封装置はパッキンケース4と、パッキン室内に設けられる環状のパッキンセグメント5、6、7と、パッキンセグメント5、6、7に合わせてそれぞれ設けられる、調整ボルト8とを備える。パッキンセグメント5、6、7はそれぞれ基材と摺動パッドとからなる。それぞれ基材および摺動パッドは双方の接合面において不可分に結合される。摺動パッドは10重量%炭素繊維を含有するポリエーテルエーテルケトン樹脂で構成される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転軸を取り囲むように設けられ、軸方向に複数列にわたり並ぶパッキン室を備えたパッキンケースと、このパッキンケースの該パッキン室に各々設けられ、該回転軸から外部に流れる漏水を止める摺動パッドを有する環状のパッキンセグメントとを備え、前記パッキンセグメントの該摺動パッドは基材との結合体として構成され、前記摺動パッドおよび基材が双方の接合面において不可分に結合されてなる水力機械の軸封装置。
【請求項2】 前記摺動パッドと前記基材との結合体が周方向に複数区分に従い分割されることを特徴とする請求項1記載の水力機械の軸封装置。
【請求項3】 前記パッキンセグメントの背面にそれぞれ該摺動パッドの区分に従い設けられた複数個の調整機構を有し、前記回転軸と前記摺動パッドとの間隔を調整するにあたり、該調整機構を操作して当該間隔を調整するようにしたことを特徴とする請求項1記載の水力機械の軸封装置。
【請求項4】 少なくとも高圧側第1列および第2列の前記摺動パッドがそれぞれ周方向の不連続区間となる凹部を有し、前記凹部同士を周方向において互いに連通したことを特徴とする請求項1記載の水力機械の軸封装置。
【請求項5】 前記摺動パッドの該凹部の幅員が水の流動方向に沿って順次減少するようにしたことを特徴とする請求項4記載の水力機械の軸封装置。
【請求項6】 前記パッキンセグメントの該基材と該摺動パッドとが化学的な接着により不可分に、または機械的な接合によって一体に結合されることを特徴とする請求項1記載の水力機械の軸封装置。
【請求項7】 前記基材が耐食性を有する金属材料、または樹脂材料で構成されることを特徴とする請求項6記載の水力機械の軸封装置。
【請求項8】 前記摺動パッドがポリエーテルエーテルケトン、四ふっ化エチレン、ポリイミドから選ばれた1種の材料で構成されることを特徴とする請求項6記載の水力機械の軸封装置。
【請求項9】 前記摺動パッドを構成する樹脂材料がセラミックス繊維、ウィスカーまたは粒子のうちの少なくとも1種を含有し、セラミックスは炭素、ガラス、グラファイト、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムのいずれか1種からなることを特徴とする請求項6記載の水力機械の軸封装置。
【請求項10】 前記基材の、少なくとも接合界面領域が多孔質体からなり、前記摺動パッドの材料の一部を前記基材の該多孔質体内に含浸させて一体化したことを特徴とする請求項8記載の水力機械の軸封装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水力機械に係り、特に、水力機械の回転軸から外部への漏水を抑えるための軸封装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、水車、ポンプ水車などに水力機械においては主軸に直結されたランナ側の圧力水が外部に漏洩するのを抑えるために軸封装置を備えている。この軸封装置は回転軸を取り囲むように設けられるパッキンケースと、このパッキンケース内のパッキン室に配置される環状のパッキンセグメントとを備え、各パッキンセグメントの摺動パッドが回転軸に圧接状態に装着され、回転軸から外部への漏水を止めるように構成されている。
【0003】通常、長時間の摺動に耐えられるように摺動パッドは耐摩耗性を有するカーボン、セラミックス等の材料で作られている。この材料は摩耗自体は他の材料と比べて少ないものの、典型的な脆性材料であることから、使用条件によっては修復不能な損傷が生じるなど、唯一無二の材料とはいえない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】水力機械の回転軸は様々な要因が重なってもたらされる励振力のために通常よりも大きい軸振動を生じることが避けられない。回転軸にこうした過大な軸振動が生じると、カーボン等の典型的な脆性材料からなる摺動パッドは回転軸の変位および変形に追従できず、多くの場合、損傷してしまう。
【0005】さらに、水力機械に導かれる水には土砂などの異物が多量に含まれている場合があり、このような運転条件の悪化が起こると、柔らかいカーボンは土砂によるアブレーシブ(abrasive)摩耗のために短時間のうちに摩耗が進み、寿命が極度に短くなってしまう。
【0006】一方、セラミックスからなる摺動パッドでは材質が硬く、回転軸とのなじみが良好でないことから、回転軸に損傷を与えることがある。また、一般に、セラミックスは耐熱衝撃性が低く、水の断続的な供給で引き起こされる熱衝撃のために摺動パッドの水と触れる部分にクラック等を発生することがある。
【0007】さらに、摺動パッドを支える金属のベースへの固定は機械的結合に頼らざるを得ない。この場合、強度を確保するために厚さが増してベースへの熱の伝達が十分でなくなり、摺動面側の温度上昇が激しくなって摩耗が進み易くなる。また、熱衝撃を受ける程度も大きくなり、破損が生じ易くなる。
【0008】上記の摺動パッドおよび回転軸における摩耗、損傷などの不具合の多くは未解決のままであり、水力機械の高圧化、高速化が一層進むことを考慮したとき、速やかに解決することを求められる。
【0009】そこで、本発明の目的は回転軸からの漏水を確実に抑え、しかも摺動パッドおよび回転軸の摩耗、損傷を効果的に防ぐようにした水力機械の軸封装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明はパッキンセグメントの摺動パッドが基材との結合体として構成され、摺動パッドが双方の接合面において不可分に結合される。
【0011】本発明においては摺動パッドと基材とが、望ましくは、化学的な接着により不可分に、または他の結合方法によって一体に結合される。摺動パッドには耐摩耗性樹脂材料から、特に耐摩耗性に優れた、たとえばセラミックス繊維、ウィスカーまたは粒子を含浸させた樹脂材料を選定する。この樹脂材料を基材の一部に含浸させるために基材はその接合界面領域が、望ましくは、多孔質体として構成される。
【0012】この耐摩耗性樹脂材料からなる摺動パッドは、望ましくは、特に高圧側複数列については回転軸との間に適正な間隙を保って使用する。これにより、回転軸からの漏水を確実に止めることができ、しかも摺動パッドおよび回転軸の摩耗、損傷を防ぐことが可能になる。
【0013】さらに、本発明は、望ましくは、摺動パッドと基材との結合体が周方向に複数区分に従い分割される。
【0014】摺動パッドをそれぞれ区分に従い分割することにより回転軸と摺動パッドとの間隙を個別に調整することができる。
【0015】また、望ましくは、本発明は、パッキンセグメントの背面にそれぞれ摺動パッドの区分に従い設けられる複数個の調整機構を有する。
【0016】この調整機構を用いて回転軸と摺動パッドの間隙を零から予め決められた値に調整するとき、極めて容易に調整することが可能になる。
【0017】さらに、本発明は、望ましくは、少なくとも高圧側第1列および第2列の摺動パッドが周方向の不連続区間となる凹部を有し、この凹部同士を周方向において互いに連通する。
【0018】このような凹部からなる不連続区間を配置することにより土砂を含む漏水が回転軸を伝わりながら、摺動パッドに流れても、凹部に流れたところで土砂が凹部に落ち、土砂を確実に分離することができる。これにより、アブレーシブ摩耗によって摺動パッドが損傷するのを防ぐことが可能になる。
【0019】また、本発明は、望ましくは、凹部の幅員が水の流動方向に沿って順次減少するようにする。凹部の幅員を低圧側に向かって順次減少することにより漏水の圧力を段階的に下げることが可能になる。
【0020】さらに、本発明は、セグメントの基材と摺動パッドとが化学的な接着により不可分に、または機械的な接合によって一体に結合される。
【0021】このような化学的接着法、または機械的接合法を用いることにより強固な結合体を得ることが可能になり、摺動パッドの損傷を少なくすることができる。また、摺動パッドの厚さ寸法を薄くすることができ、摺動パッドが摩擦等によって温度が上昇するときも、発生した熱を効率よく基材に伝えることができる。
【0022】また、本発明は、望ましくは、基材が耐食性を有する金属材料、または樹脂材料で構成される。
【0023】さらに、本発明は、望ましくは、摺動パッドがポリエーテルエーテルケトン、四ふっ化エチレン、ポリイミドから選ばれた1種の材料で構成される。
【0024】また、本発明は、望ましくは、摺動パッドを構成する樹脂材料がセラミックス繊維、ウィスカーまたは粒子のうちの少なくとも1種を含有し、セラミックスは炭素、ガラス、グラファイト、アルミナ、シリカ、窒化ケイ素、チタン酸カリウム、ホウ酸アルミニウムのいずれか1種からなる。
【0025】さらに、本発明は、望ましくは、基材の、少なくとも接合界面領域が多孔質体からなり、摺動パッドの材料の一部を基材の多孔質体内に含浸させて一体化して構成される。
【0026】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1において、軸封装置は回転軸1を取り囲むようにランナ背圧室2に隣接して設けられている。回転軸1は圧力水が流動するランナ3を備える。この軸封装置はパッキンケース4と、このパッキンケース4内の後記のパッキン室にそれぞれ装着される、環状のパッキンセグメント5、6、7と、このパッキンセグメント5、6、7に合わせてその外周部に各々に設けられる調整機構、たとえば、パッキンケース4のねじ孔と螺合する調整ボルト8とから構成されている。
【0027】このパッキンケース4はケース本体9と、ケース本体9内の空間を独立した3個の部屋に区画している3枚の仕切り板10a、10b、10cとを備えている。本実施の形態において、各部屋は軸方向に順に第1パッキン室11、第2パッキン室12、第3パッキン室13と称する。この第1パッキン室11内にパッキンセグメント5が装着される。また、第2パッキン室12内にパッキンセグメント6が装着され、第3パッキン室13内にパッキンセグメント7が装着される。
【0028】一方、調整ボルト8はそれぞれパッキンセグメント5、6、7の外周部にそれぞれ当接可能にケース本体9に形成されるねじ孔と螺合している。また、調整ボルト8は後記の各摺動パッドを回転軸1に圧接するために周方向に等分した位置にパッキンセグメント5、6、7の摺動パッドに合わせてそれぞれ設けられている。
【0029】また、詳細を図2に示すように、周方向に等分に分割しているパッキンセグメント5はステンレス鋼からなる基材14と、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる摺動パッド15とから構成されている。同様に、周方向に等分に分割しているパッキンセグメント6はステンレス鋼からなる基材16と、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる摺動パッド17とから構成され、同様に、周方向に等分に分割しているパッキンセグメント7はステンレス鋼からなる基材18と、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる摺動パッド19とから構成されている。
【0030】さらに、高圧側第1列および第2列の摺動パッド15、17は短い不連続区間を有する。不連続区間では水の流れを止めるパッド材料を使用しない。摺動パッド15はパッド間に形成される凹部20を有する。凹部20は中心線Cに倣い軸方向に形成されている。摺動パッド17は隣接する2個のパッド間にわたって形成される凹部21を有する。凹部21は中心線Cと平行を保って軸方向に形成されている。低圧側の摺動パッド19は全周にわたって連続しており、不連続区間を持たない。摺動パッド17の凹部21の幅は摺動パッド15の凹部20の幅よりも狭く形成されている。
【0031】一方、図3(a)(b)(c)にパッキンセグメント5の詳細を示している。図示は省略するが、パッキンセグメント6、7も同様に構成される。図3(a)において、ステンレス鋼からなる基材14の表面に多孔質中間層22が形成されている。この多孔質中間層22には10重量%炭素繊維を含有するポリエーテルエーテルケトン樹脂を含浸している。この多孔質中間層22に重ねて10重量%炭素繊維を含有するポリエーテルエーテルケトン樹脂からなる摺動パッド15が形成され、基材14と摺動パッド15とが不可分に結合したパッキンセグメント5として構成されている。基材14と多孔質中間層22との結合には、図3(b)、(c)に示すように、剥離の起こりにくい小突起を使用している。
【0032】本実施の形態の軸封装置は、望ましくは、組み立てにおいて次のように寸法を規定する。高圧側第1列の摺動パッド15と回転軸1との間の間隙は、好ましくは、200〜400μmであり、より好ましくは250〜350μmである。さらに、中間の第2列の摺動パッド17と回転軸1との間の間隙は、好ましくは、50〜150μmであり、より好ましくは、80〜120μmである。また、低圧側の摺動パッド19と回転軸1との間にはどのような隙間もない。すなわち、摺動パッド19と回転軸1とは互いに密着している。各摺動パッドの間隙の調整はパッキンケース4と螺合している調整ボルト8を用いて行う。
【0033】本実施の形態は上記構成からなるもので、運転中、回転軸1の表面に流れた漏水が高圧側のパッキンセグメント5に流れる。漏水は回転軸1とパッキンセグメント5の摺動パッド15との間の微少な隙間を通って中間のパッキンセグメント6に流れる。この漏水のうち、一部は、さらに回転軸1とパッキンセグメント6の摺動パッド17との間の微少な隙間を通って低圧側のパッキンセグメント7に流れる。このパッキンセグメント7の摺動パッド19と回転軸1とは密着しており、漏洩した水は摺動パッド19から外へは流出しない。このように、回転軸1を伝わり微量の漏水が流れても、軸封装置から外部にかけて流出するのを防ぐことができる。
【0034】一方、漏水中に土砂が含まれていると、これが漏水と共に軸封装置内を流動する。土砂を含む漏水が隙間を通って摺動パッド15に流れたとき、漏水は回転軸1の回転運動に連れて凹部20に達し、そこで重さのある土砂が分離されて凹部20に落ちる。この漏水の一部は摺動パッド15から隙間を通って摺動パッド17に流れる。ここでも、漏水は回転軸1の回転運動に連れて凹部21に達し、重さのある土砂が分離されて凹部21に落ちる。
【0035】こうして、漏水中から土砂を速やかに分離して摺動パッド15、17内に長時間留まるのを抑えることが可能になる。これにより、摺動パッド15、17、19がアブレーシブ摩耗によって短時間のうちに損傷するのを防ぐことができる。また、回転軸1の表面が土砂のために傷つくのを防ぐことができる。
【0036】この凹部20、21の幅員は高圧側が広く、低圧側に向かうに従いその幅が狭く形成されるので、漏水の圧力を段階的に下げることができる。
【0037】
【発明の効果】本発明によれば、パッキンセグメントの基材と摺動パッドとを双方の接合面において不可分に結合した結合体を構成し、パッキンケース内に組み込むようにしたので、回転軸から漏水を確実に止めることができ、しかも摺動パッドおよび回転軸の摩耗、損傷を防ぐことが可能になる。
【出願人】 【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
【出願日】 平成11年10月5日(1999.10.5)
【代理人】 【識別番号】100100516
【弁理士】
【氏名又は名称】三谷 惠 (外1名)
【公開番号】 特開2001−108112(P2001−108112A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−283824