| 【発明の名称】 |
渦巻き形ガスケット |
| 【発明者】 |
【氏名】山下 勢一
【氏名】古賀 肇
【氏名】荻野 耕三
|
| 【要約】 |
【課題】内輪を設けずとも、締付け時に内周側の座屈を生じない渦巻き形ガスケットを提供する。
【解決手段】ガスケット本体3の外周に、径方向外方に局部的に突出する支持突起部6aを有する支持フープ6aを接合する。ガスケット本体3の外周と外輪2の内周との間に、支持突起部6aの突出寸法に応じた隙間が形成され、ガスケット本体3の締付け時には、ガスケット本体3の外周側が径方向外方に移動する変形が許容され、内周側が内側へと移動する変形は小さくなる。これにより、内輪を設けずとも座屈を生じないようにすることができる。また、ガスケット本体3を構成するフープ4と同一の帯状金属製薄板を支持フープ6として用いることによっても、全体の製作費がより安価なものとなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 帯状の金属製薄板から成るフープと、帯状の軟質材から成るフィラーとを重ねて渦巻き状に形成されたガスケット本体と、このガスケット本体外周を囲う外輪とを備える渦巻き形ガスケットであって、ガスケット本体の外周に、上記フープとほぼ同一の帯状金属製薄板から成る支持フープを連結し、該支持フープに、径方向外方に局部的に突出して外輪内周に係合する支持突起部をガスケット本体の外周に沿う複数箇所に設けていることを特徴とする渦巻き形ガスケット。 【請求項2】 各支持突起部間に、支持突起部の周方向長よりも大きな周方向の間隔を置いて、これら支持突起部をガスケット本体の外周に設けていることを特徴とする請求項2の渦巻き形ガスケット。 【請求項3】 各支持フープの支持突起部を、ガスケット本体の最外周のフープに沿わせて接合される接合部分に対し、突出頂部側を幅方向の略中心位置で屈曲させて上記接合部分よりも幅を狭くすることにより、径方向外方に突出する形状に形成していることを特徴とする請求項1又は2の渦巻き形ガスケット。 【請求項4】 上記ガスケット本体における内周側のフィラーを、外周側のフィラーよりも摩擦係数の大きなフィラー材で形成していることを特徴とする請求項1、2又は3の渦巻き形ガスケット。 【請求項5】 外周側のフィラーが膨脹黒鉛又はPTFEから成り、内周側のフィラーが摩擦係数0.3以上の無機質フィラーから成ることを特徴とする請求項4の渦巻き形ガスケット。
|
【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、帯状の金属製薄板(フープ)と、シール性を備えた帯状の軟質材(フィラー)とを重ね合わせ、渦巻き状に巻き付けて形成されるガスケット本体と、これを保持する外輪とを備える渦巻き形ガスケットに関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、耐熱用途または耐食性用途において好適に使用される渦巻き形ガスケットとして、膨脹黒鉛製フィラーまたはPTFE製フィラーを用いてガスケット本体を形成し、これに、外輪と共に内輪を設け、これら外輪と内輪とがガスケット本体の外周面および内周面に各々接するように構成したものが知られている。 【0003】この渦巻き形ガスケットは耐熱性や耐食性に優れると共に、フィラー材の摩擦係数が、膨脹黒鉛では0.15、PTFEでは0.04程度と小さいためにフランジ面とのなじみ性が高く、これによってシール性も優れている。このように、これら膨脹黒鉛やPTFEの各フィラー材は、上記用途用の他のフィラー材では代用し難い利点を備えている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように摩擦係数の小さいフィラー材を用いて形成された従来の渦巻き形ガスケットでは、ガスケット本体の内側に内輪を設ける必要があるために、全体的な製作費が高くなるという問題を有している。 【0005】つまり、渦巻き形ガスケットがフランジ間に介装されて締付けられる過程で、ガスケット本体は厚さ方向に圧縮される。このとき、ガスケット本体の外周側は径方向外方へ、内周側は径方向内方へ変形する。このような変形を抑制する力として、フープ材の内部応力と共に、フランジ端面とガスケット本体の表面との間に作用する摩擦力が作用する。すなわち、フィラー材の摩擦係数が高いと大きな摩擦力が生じて変形が抑制されるが、前記した膨脹黒鉛などのように摩擦係数の小さいフィラー材では、このような抑制力が小さいために、特に内周側へも変形が生じ易い。 【0006】そしてこの変形は、内周側の層の座屈変形、すなわち、内周側の層が円形状から中心側に反転して局部的に折れ曲がるような変形状態になり易く、この状態では、その外側の層との間に空間が生じ、これによって締付け圧がガスケット本体に均一に作用しなくなる結果、シール性が低下する。 【0007】したがって、膨脹黒鉛などの摩擦係数の小さなフィラー材を設けて構成される従来の渦巻き形ガスケットでは、上記のような内周側の座屈変形を抑えるための内輪を設けることが必要不可欠となっている。したがって、このために製作費が高くなるという問題を生じている。 【0008】本発明は、上記した従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、シール性に優れ、かつ、全体的な製作費をより安価なものとし得る渦巻き形ガスケットを提供することにある。 【0009】 【課題を解決するための手段】そこで、請求項1の渦巻き形ガスケットは、帯状の金属製薄板から成るフープと、帯状の軟質材から成るフィラーとを重ねて渦巻き状に形成されたガスケット本体と、このガスケット本体外周を囲う外輪とを備える渦巻き形ガスケットであって、ガスケット本体の外周に、上記フープとほぼ同一の帯状金属製薄板から成る支持フープを連結し、該支持フープに、径方向外方に局部的に突出して外輪内周に係合する支持突起部をガスケット本体の外周に沿う複数箇所に設けていることを特徴としている。 【0010】この構成においては、ガスケット本体の外周と外輪内周との間に、支持突起部の突出寸法に応じた隙間が形成される。したがって、ガスケット本体が厚さ方向に圧縮される際の径方向の広がりは、ガスケット本体の外周側が径方向外方に移動する変形が許容され、これによって、内周側の変形は小さくなる。これにより、内輪を設けずとも座屈を生じないようにすることができるので、全体の製作費をより安価なものとすることができる。 【0011】また上記では、支持突起部がガスケット本体を構成するフープと同一の帯状金属製薄板から成る支持フープを用いて形成され、したがって、これらフープ材を共用できるので、これによっても、全体の製作費をより安価なものとすることができる。 【0012】請求項2の渦巻き形ガスケットは、各支持突起部間に、支持突起部の周方向長よりも大きな周方向の間隔を置いて、これら支持突起部をガスケット本体の外周に設けていることを特徴としている。 【0013】このように、支持突起部の間隔を少なくとも支持突起部の周方向長よりも大きく、すなわち、支持突起部同士の間隔を極力広げて支持突起部の数を少なくすることで、シール性がさらに向上する。 【0014】つまり、ガスケット本体がフランジ間に介装されて締付けが行われる際には、支持突起部もガスケット本体外周によって広がり方向に押動され、外輪内周に沿う形状に変形する。この間、ガスケット本体の広がり変形に抗する介在物となる。したがって、このような支持突起部の変形が生じ難いと、ガスケット本体外周側での締付け面圧が不均一になり、これによって、シール性が損なわれるおそれがある。 【0015】そこで、各支持突起部が隣接する支持突起部に干渉されずに容易に変形するように、これら支持突起部間の間隔を広げ、また、必要最小限の数とすることで、これら支持突起部がガスケット本体の変形に及ぼす影響が極力小さくなり、これによって、ガスケット本体の締付け面圧をより均一にすることが可能になるので、シール性が向上する。 【0016】請求項3の渦巻き形ガスケットは、各支持フープの支持突起部を、ガスケット本体の最外周のフープに沿わせて接合される接合部分に対し、突出頂部側を幅方向の略中心位置で屈曲させて上記接合部分よりも幅を狭くすることにより、径方向外方に突出する形状に形成していることを特徴としている。 【0017】この構成によれば、支持突起部の端部側は、幅方向およびこれに直交する方向とは傾斜した面で接合部分に連なることになる。これによって、突出頂部側は、径方向の曲げ剛性と共に、幅方向の曲げ剛性もより大きくなる。この結果、所定の突出長の成形形状で安定して保持される。このように、形状精度に優れる支持突起部を介してガスケット本体が外輪の内側に支持されることで、ガスケット本体と外輪との同心性が向上した組付状態が得られ、ひいては、管フランジ間に装着したときのガスケット本体と管との同心性も良好な介装状態を得ることができるので、これによっても良好なシール性を得ることができる。 【0018】請求項4の渦巻き形ガスケットは、上記ガスケット本体における内周側のフィラーを、外周側のフィラーよりも摩擦係数の大きなフィラー材で形成していることを特徴としている。 【0019】この構成によれば、内周側のフィラーが摩擦係数の大きなフィラー材で形成されていることから、内周側が内側へと移動する変形は上記のフィラーとフランジ端面との間に生じる摩擦力によって抑えられる。この結果、締付け圧がより高くなり、これに伴って径方向の広がり変形が大きくなる場合でも、これに応じて摩擦係数の小さな外周側のフィラーが径方向外方に広がり、内周側の変形はより確実に抑えられることになって、良好なシール性を維持することができる。 【0020】なお、上記のように、ガスケット本体の外周側と内周側とで相互に異なるフィラー材を用いる構成においては、例えば請求項5のように、外周側のフィラーが膨脹黒鉛又はPTFEから成る場合に、内周側のフィラーを摩擦係数0.3以上の無機質フィラーで形成することにより、上記した効果をより確実に得ることができる。 【0021】ここでいう摩擦係数は、ステンレス製のスライド板(表面粗さHmax=6μ程度)に所定のフィラー材を用いて形成されたガスケットを重ね、上下方向に所定の締付荷重を負荷した状態で、スライド板とガスケットとを相対的に摺接させる際に必要な荷重(剪断荷重)を求め、この剪断荷重と締付荷重との比を算出することによって得られる値である。 【0022】このような測定法によれば、膨脹黒鉛の摩擦係数は0.15程度、PTFEの摩擦係数は0.04程度であって、これらを外周側のフィラーとして用いる一方、これに組合せて、内周側に摩擦係数0.3以上の無機質フィラーを用いることで、外周側のフィラーがフランジ端面によくなじんだ変形状態となってシール性が向上し、しかも、前記のように内周側が内側へと移動する変形がより確実に阻止され座屈変形が防止される結果、良好なシール性が維持される。 【0023】なお、摩擦係数0.3以上の無機質フィラーとしては、アルミナやシリカ等のセラミックファイバー又はガラスファイバー、金属繊維(例えばステンレスファイバー)、粉体を用いた成形体(例えばマイカシート)等からなるフィラー等を挙げることができる。 【0024】 【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図1(a)に示すように、本実施形態の渦巻き形ガスケット(以下、単にガスケットという)1は、リング形状の外輪2と、この外輪2の内側に保持されたリング状のガスケット本体3とから成っている。 【0025】ガスケット本体3は、ステンレス薄鋼板等から成る帯状の金属薄板(以下、フープという)4と、このフープ4と同一幅に形成された軟質材より成る帯状の緩衝材(以下、フィラーという)5とを重ね合わせ、渦巻き状に巻装して形成されている。さらに詳細には、このガスケット本体3の内周側と外周側とには、同図(b)に示すように、フィラー5を介装せずにフープ4のみが相互に重なる2〜3巻き程度の空巻き部分4a・4bがそれぞれ設けられ、これら空巻き部分4a・4bの内端部と外端部とが、それぞれ隣接する層にスポット溶接等によって接合されて、全体として所定の内外径を有するリング状に形成されている。 【0026】内周側と外周側との各空巻き部分4a・4bの間でフープ4とフィラー5とが交互に重なる層は、例えばガスケット本体3の径方向の幅が10mm程度のものでは10〜15巻き程度巻装して形成されている。そして、フィラー5は、内側1〜5巻き程度の領域(以下、内側領域という)Sinでは、例えばアルミナ、シリカ等のセラミックファイバーやガラスファイバーなどの無機質フィラー材を用いて形成され、内側領域Sinを除くほぼ全体の領域(以下、主領域Smという)では、例えば膨脹黒鉛やPTFE等を用いて形成されている。 【0027】すなわち、主領域Smと内側領域Sinとで、相互に摩擦係数の異なるフィラー材を組合わせて構成されている。例えば、通常の管フランジの平面座に当接させたときの摩擦係数は、膨脹黒鉛で0.15、PTFEで0・04程度であるのに対し、上記した各無機質フィラー材ではそれぞれ0.3以上である。このように、主領域Smでは、摩擦係数が極力小さなフィラー材を用いる一方、内側の一部の領域Sinに、これよりも摩擦係数の大きなフィラー材を用いて形成されている。 【0028】なお、フープ4は、その幅方向(同図(b)において上下方向)の中央領域が、径方向外方に膨出するように断面略くの字状に成形されている(以下、この領域を膨出部4c、この膨出部を挟む両端側の断面平坦な領域を平坦部4dという)。フィラー5も、このようなフープ4の成形形状に沿うように変形されて、フープ4の各層間に巻き込まれた構成となっている。 【0029】外輪2は、例えば冷間圧延鋼板やステンレス鋼板等の板材を用い、厚さをガスケット本体3の厚さよりも所定の寸法だけ薄くして形成されている。また、その内周面には、上記のようなフープ4における膨出部4cの形状に合わせて、径方向外方に凹入する断面V字状の内周溝2aが形成されている。 【0030】この外輪2の内側に、ガスケット本体3が、その外周と外輪2の内周との間に所定の隙間を設けて、この外輪2の内側に保持されている。この隙間は、最外周のフープ4における上記膨出部4cの頂部と、内周溝2aの底部との間の空隙寸法δが、後述する適正締付圧やガスケット本体3の内外径寸法に応じて、0.5〜4mmの範囲に設定されている。 【0031】上記のようにガスケット本体3を外輪2の内側に保持するために、ガスケット本体3の外周には、同図(a)に示すように、ガスケット本体3の外周を3等分する各箇所に、それぞれ、フープ4と同一の帯状金属製薄板を用いて成形された支持フープ6…がスポット溶接等により接合されている。これら支持フープ6の長さ方向のほぼ中央領域に、径方向外方に略円弧状に突出する支持突起部6a…がそれぞれ形成されている。これら支持突起部6a…の各突出頂部側が、同図(c)に示すように、外輪2の内周溝2aに嵌入して、ガスケット本体3が外輪2に支持されている。 【0032】各支持フープ6…は互いにほぼ同一形状に形成されており、以下では、同図(a)において左側に図示している支持フープ6を例に挙げて、その詳細形状について説明する。 【0033】上記支持フープ6は、図2(a)に示すように、支持突起部6aを挟んで両側(以下、接合部分6bという)が、ガスケット本体3における最外周のフープ4に外側から密着して重なるようにこのフープ4と同一の断面形状に成形されて、このフープ4に適当箇所s…でスポット溶接により接合されている。 【0034】支持突起部6aは、同図(b)に示すように、各端部側の接合部分6b・6bから支持突起部6aの中央に向かうにつれて次第に幅が狭くなるような絞り領域6c・6cを介して、各接合部分6b・6bに連なる形状に形成されている。これにより、支持突起部6aの中央領域(突出頂部領域)では、同図(c)に示すように、幅方向の中心で屈曲させて折り曲げられた面が、フープ4における前記膨出部4cの幅よりも狭い幅で互いに略平行に対面する形状に成形されている。このような形状によれば、この突出頂部領域に対し、径方向(図において上下方向)に充分な剛性が付与され、これによって、突出寸法が所定の成形寸法で安定して保持される。なお、この突出頂部領域は、後述する外輪2への組付時に、図において左右方向に適宜の弾性変形を生じさせることが可能である。 【0035】同図(d)には、幅がフープ4よりも幾分狭まった絞り領域6cでの断面形状を示している。この領域6cでは、幅方向の中心を挟んで両側はフープ4の膨出部4cよりもやや傾斜角が大きな面となっており、このような傾斜面、すなわち、支持突起部6aの突出方向と交差するような面を介して、前記支持突起部6aが接合部分6bに連なる形状となっていることから、この絞り領域6cの傾斜面が、支持突起部6aの突出形状を補強するリブとしての機能を備え、これによっても、支持突起部6aの成形形状が安定して保持される。 【0036】また、この絞り領域6cでは、最外周のフープ4の膨出部4cを幅方向両側から挟み込むような形状となっており、これによって、ガスケット本体3の幅方向中心位置に沿って支持突起部6aが径方向外方に突出するような位置関係も安定して保持される。なお、この絞り領域6cでは径方向に対して傾斜した面であることから、後述する外輪2への組付時には、この絞り領域6cに、最外周のフープ4との間の空間に応じて、径方向内方への適度の弾性変形を生じさせることが可能である。 【0037】上記のような支持フープ6が、図1(a)に示したように、ガスケット本体3の外周3箇所にそれぞれ取付けられ、各支持突起部6aの突出頂部が内接する円の直径が、外輪2の内径を超えて前記内周溝2aの底部の径にほぼ合致するように設定されている。 【0038】次に、ガスケット本体3の外輪2への組付け手順について説明する。まず、2箇所の支持フープ6・6の各支持突起部6a・6aを外輪2の内周溝2aに嵌め込み、この状態で、これら2箇所の支持フープ6・6間で、ガスケット本体3と外輪2との間の隙間が小さくなるように押圧する。このような押圧力に応じて、外輪2の内周溝2aに嵌入している各支持突起部6aには、前記した絞り領域6c・6cに径方向の弾性変形が適度に生じて、上記の隙間が狭くなる。 【0039】これによって、この領域とは反対側では隙間が広くなり、これに伴い、残りの支持フープ6における支持突起部6aの突出頂部が、外輪2の内周縁よりも外側の位置から半径方向内方へと移動する。そこで例えば、外輪2の内周縁近傍の位置にきたときに、支持突起部6aの突出頂部を外輪2の内周溝2a側に押すことで、この支持突起部6aに前記したように幾分かの弾性変形を生じさせ、これによって、外輪2の内周縁を越えて突出頂部を内周溝2a内に嵌め込むことで、ガスケット本体3の外輪2への組付が行われる。このように、上記の支持フープ6の支持突起部6aには適度の弾性変形が生じ得ることから、ガスケット本体3の外輪2への組付を容易に行うことが可能である。 【0040】このような組付け状態においては、各支持突起部6aが弾性回復して外輪の内周溝2aに均等に嵌入し、ガスケット本体3は外輪2とほぼ同心位置に保持される。また、厚さ方向にも、ガスケット本体3は外輪2と厚さ方向の中心が合致した位置で保持される。 【0041】上記構成のガスケット1は、図3に示すように、例えば一対の管11・12を相互に連結する場合に、これら管11・12の管端に設けられているフランジ11a・12a間に介装される。この場合、各フランジ11a・12aのボルト穴に貫挿される各ボルト13…が、外輪2の外周に外側から接するように組立てられることで、このガスケット1、ひいてはガスケット本体3が管11・12とほぼ同心状に位置するように位置決めされる。そして、各ボルト13にナット14が螺合されて締結力が加えられると、ガスケット本体3が厚さ方向に圧縮される。そして、このような変形を生じさせながら、各フランジ11a・12aの相対向する座面が外輪2の両面にそれぞれ当接した状態とすることで、これら管11・12の連結作業が終了する。 【0042】このような作業中、ガスケット本体3での上記した圧縮変形に伴い、このガスケット本体3は径方向にも変形する。そして、本実施形態における渦巻き形ガスケット1では、外輪2の内周面とガスケット本体3との間に、支持フープ6の支持突起部6aが局部的に介在しているものの、ほぼ全周にわたって所定の隙間が形成されている。また、このガスケット本体3の内周側には、前記した内側領域Sinに摩擦係数の大きなフィラー材が設けられているので、このガスケット本体3は、内周面が内側に向かうような変形は殆ど生じることなく、ガスケット本体3の外周面が径方向外方へと広がる変形のみが生じる。すなわち、ガスケット本体3の内側領域Sinに、上記のように摩擦係数の大きなフィラー材が設けられていることによって、この領域でのフィラー材に対し、これらがフランジ11a・12aの各座面に沿って摺動することが摩擦力によって阻止され、これにより、内周面が内側に向かう変形が阻止される。 【0043】したがって、本実施形態のガスケット1では、締付け後には、ガスケット本体3の外周側に、外輪2の内周面に全周にわたって接するような広がり変形が生じた介装状態となる。すなわち、各支持フープ6の支持突起部6aにも、外輪2の内周溝2aに沿うような塑性変形が生じ、また、外周側のフープ4およびフィラー5には周方向、すなわち伸び方向の塑性変形が生じて、一部領域に厚さの薄い支持フープ6が介在した状態で、最外周のフープ4が外輪2の内周溝2aに全周にわたって一様に嵌入した介装状態となる。 【0044】以上の説明のように、本実施形態の渦巻き形ガスケット1においては、ガスケット本体3の外周と外輪2の内周との間に、支持フープ6の支持突起部6aの突出寸法に応じた隙間が形成されているので、ガスケット本体3が厚さ方向に圧縮される際の径方向への広がりは、主としてガスケット本体3の外周側が径方向外方に移動する変形によって生じ、内周側が内側へと移動する変形が抑えられる。これにより、内輪を設けずとも座屈を生じないようにすることができるので、全体の製作費をより安価なものとすることが可能である。 【0045】また上記では、支持突起部6aがガスケット本体3を構成するフープ4と同一の帯状金属製薄板から成る支持フープ6を用いて形成され、したがって、これらフープ4と支持フープ6とに同じフープ材を共用できるので、これによっても、全体の製作費をより安価なものとすることができる。 【0046】さらに、上記のガスケット1では、各支持突起部6aの数を、ガスケット本体3が外輪2の内周に保持されるに必要な最小限の数として、これら支持突起部6a間に、充分に大きな周方向の間隔を設けているので、ガスケット本体3がフランジ11a・12aと同心状に位置決めされて締付けが行われる際、各支持突起部6aも、他の支持突起部6aに干渉されずに外輪2の内周に沿う形状に容易に変形する。したがって、これら支持突起部6aがガスケット本体3の変形に及ぼす影響が極力小さくなるので、ガスケット本体3の締付け面圧がより均一になり、これによってシール性が向上する。 【0047】また上記の渦巻き形ガスケット1は、支持フープ6の支持突起部6aが、その突出頂部側を両側の接合部分6b・6bよりも幅を狭くして径方向外方に突出する形状に形成され、これによって、前記のように、適度の弾性変形能と共に、形状の安定性を備えた構成となっている。これにより、外輪2への組付作業が容易になり、しかも、組付後には外輪2との同心性が確保され、かつ、厚さ方向のズレもない組付状態となっているので、特にガスケット1の径が小さい場合でも、フランジ11a・12a間にガスケット本体3を同心上に位置させて締付けることが容易になって、良好なシール性が得られる。 【0048】さらに、上記の渦巻き形ガスケット1は、ガスケット本体3における内側領域Sinのフィラー5を、主領域Smよりも摩擦係数の大きなフィラー材で形成しており、これによって、内周側の内側への変形がより確実に抑えられる。したがって、主領域Smに膨脹黒鉛やPTFE等のように摩擦係数が小さいフィラー材を用い、かつ、締付面圧をより高くした締付け状態でも、内周側の座屈変形がより確実に抑えられ、良好なシール性を確実に得ることができる。特に、主領域Smの膨脹黒鉛やPTFE等のフィラー材は、フランジ端面によくなじんだ変形状態となるので、これによってさらにシール性が向上する。 【0049】 【実施例】以下、ガスケット本体3の形状、およびフィラー材を種々変えて構成した渦巻き形ガスケットでの試験例について説明する。これら試験例におけるガスケット本体の形状寸法は、内径171.4mm、外径209.6mm、厚さ4.5mmである。フープはSUS304(厚さ0.2mm)を用いて作製されている。外輪はSPCCから成り、内径213.6mm、外径317.5mm、厚さ3.2mmに形成されている。 【0050】表1に示す試験No.1は、ガスケット本体と外輪との間に隙間を設けずに形成したもの、試験No.2〜No.7は、上記実施形態に示したように、外周3箇所に、それぞれ突出寸法2.7mmの支持突起部を設けて形成したものである。 【0051】 【表1】
【0052】上記表において、試験No.1〜No.3のものは、油圧試験機でガスケットを中板に挟み、500kg/cm2の締付圧を印加して10分間保持した後、ガスケットを取り出して変形状態を観察した。試験No.1のものは、ガスケット本体内周側に座屈が発生しているのに対し、試験No.2のものは、ガスケット本体内径が約1mm程度、均等に収縮していたが、局部的な座屈は発生していなかった。しかしながら、試験No.2のものでも、締付圧が1400kg/cm2程度に高くなと内周側に座屈が発生した(No.3)。 【0053】そこで、ガスケット本体における内周側のフィラー材を外周側(主領域)のフィラー材(膨脹黒鉛、PTFE)よりも摩擦係数の大きな各種フィラー材で形成し、これらガスケット(試験No.4〜No.7)について上記同様の試験を行った。なお、上記表1中における各フィラー材の摩擦係数を次の表2に示す。 【0054】 【表2】
【0055】表1中の試験No.4およびNo.6から明らかなように、ガスケット本体の内側領域に摩擦係数の大きなフィラー材を配することによって、締付け圧の増加に伴うガスケット本体の径方向の変形は、内周側で摩擦力によって拘束され、これにより、内周側の座屈が防止される。なお、主領域のフィラー材が膨脹黒鉛やPTFEから成る場合、内周側に摩擦係数が0.3より小さい柔軟処理を施したセラミックファイバーをフィラー材として用いた試験No.5およびNo.7のものでは内周側の変形抑制効果が充分には得られていない。したがって、これらの場合には摩擦係数が0.3以上の無機質フィラー、例えば上記したアルミナやシリカ等のセラミックファイバー、或いはガラス質のファイバーや金属のファイバー、または、これらの粉体を用いた成形体(例えば焼結体や多孔体)、マイカシート等からなるフィラーを内周側に設けて構成することが好ましい。 【0056】なお、表2における各フィラー材の摩擦係数は、図4(a)に示す試験機を用いて測定した。すなわち、ステンレス(SUS304)製のスライド板21の上下各面に、それぞれ同一種類のフィラー材で構成された被測定用ガスケット22・22を配置し、これらに、油圧プレス機23によって上下方向に荷重を負荷して所定の締付荷重Fgで保持する。この状態でサドルモータ24を作動し、スライド板21を水平方向に移動させて、このときの剪断荷重Wgを記録計25に記録する。そして、これら締付荷重Fgと剪断荷重Wgとから、摩擦係数μを、μ=Wg/(2Fg)により算出した。 【0057】このときのステンレス製スライド板21の表面粗さ(Hmax)は6μm、被測定用ガスケット22の寸法は内径69mm、外径89mmであり、締付荷重Fgを3000kgf、スライド板移動速度を17mm/minに設定して測定を行った。 【0058】同図(b)(c)に、フィラー材として膨張黒鉛を用いたガスケットでの締付荷重Fgと剪断荷重Wgとの記録結果の一例を示している。同図(b)のように、締付荷重Fgを3000kgfに保持した状態でスライド板移動を開始すると、同図(c)に示すような剪断荷重Wgの変化が表れる。スライド板の移動に伴い締付荷重Fgもわずかに変化しているが、摩擦係数μは、各々の最大値を採用して算出した。したがって、同図から、膨張黒鉛の摩擦係数μは、締付荷重Fg=3000kgf、剪断荷重Wg=900kgfから、μ=900/(2×3000)=0.15となる。 【0059】以上に、本発明における一実施形態および実施例について説明したが、本発明は上記実施形態や実施例に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更することが可能である。例えば上記では、支持突起部6aを周方向3箇所に設けた例を示したが、ガスケット本体3の外周を4等分する4箇所に設ける構成や、ガスケット本体3の径が大きくなって重量が大きくなる場合に、これを支持するのに必要な任意の数まで増やして構成することも可能である。 【0060】また上記では、支持突起部6aを3箇所設ける場合に、各支持突起部6a毎に個別の支持フープ6を設けて構成したが、例えば、ガスケット本体3のほぼ全周にわたる支持フープを設け、この支持フープに、複数の支持突起部6aを設けて構成することも可能である。 【0061】さらに上記では、支持突起部6aの両端に接合領域6b・6bを設け、これら接合領域6b・6bをガスケット本体3の最外周のフープ4にスポット溶接により接合した構成を示したが、例えば、支持突起部6aの片側のみに接合領域6bを設け、支持突起部6aを、いわゆる片持ち梁の構造でガスケット本体3の外周から突出させた構成とすることも可能である。このような構成によれば、フランジ間に介装して締付ける際に、支持突起部6aがさらに容易に変形することになって、ガスケット本体3の広がり変形に抗する影響が小さくなるので、締付け面圧の均一性が向上し、これによって、シール性がさらに向上する。 【0062】 【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1の渦巻き形ガスケットにおいては、ガスケット本体の外周と外輪の内周との間に、支持フープの支持突起部の突出寸法に応じた隙間が形成されているので、ガスケット本体が厚さ方向に圧縮される際の径方向への広がりは、主としてガスケット本体の外周側が径方向外方に移動する変形によって生じ、内周側が内側へと移動する変形が小さくなる。これにより、内輪を設けずとも座屈を生じないようにすることができるので、全体の製作費をより安価なものとすることができる。また、支持突起部がガスケット本体を構成するフープと同一の帯状金属製薄板から成る支持フープを用いて形成され、したがって、同一のフープ材を共用できるので、これによっても、全体の製作費をより安価なものとすることが可能となる。 【0063】請求項2の渦巻き形ガスケットにおいては、各支持突起部間の間隔を、支持突起部の周方向長よりも大きくして構成されており、これによって、ガスケット本体の締付けが行われる際、これら支持突起部も、隣接する支持突起部に干渉されずに外輪内周に沿う形状に容易に変形する。この結果、これら支持突起部がガスケット本体の変形に及ぼす影響が極力小さくなるので、ガスケット本体の締付け面圧をより均一にすることが可能になり、これによってシール性が向上する。 【0064】請求項3の渦巻き形ガスケットにおいては、支持フープの支持突起部が、突出頂部側を幅方向の略中心位置で折り曲げて幅を狭くして径方向外方への突出形状に形成されているので、径方向の曲げ剛性と共に、幅方向の曲げ剛性もより大きく、したがって、所定の突出長の成形形状で安定して保持される。このように形状精度に優れることで、ガスケット本体と外輪との同心性が向上した組立状態が得られ、ひいては、管フランジ間に装着したときのガスケット本体と管との同心性も良好な装着状態を得ることができるので、これによっても良好なシール性を安定して得ることができる。 【0065】請求項4・5の渦巻き形ガスケットにおいては、ガスケット本体における外周側のフィラーを例えば膨脹黒鉛又はPTFEで形成する一方、内周側のフィラーを外周側のフィラーより摩擦係数の大きな例えば摩擦係数0.3以上の無機質フィラーで形成しているので、内周側が内側へと移動する変形は上記のフィラーとフランジ端面との間に生じる摩擦力によって抑えられる。この結果、締付け圧がより高く、これによって圧縮に伴う径方向の広がり変形が大きくなる場合でも、これに応じて摩擦係数の小さな外周側のフィラーが、径方向外方に広がる変形が生じることになり、内周側の内側への変形がより確実に抑えられるので、さらに良好なシール性を得ることができる。
|
| 【出願人】 |
【識別番号】000229737 【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
|
| 【出願日】 |
平成11年10月13日(1999.10.13) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091683 【弁理士】 【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
|
| 【公開番号】 |
特開2001−108111(P2001−108111A) |
| 【公開日】 |
平成13年4月20日(2001.4.20) |
| 【出願番号】 |
特願平11−290717 |
|