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【発明の名称】 水膨張性シール材
【発明者】 【氏名】杉村 正義

【氏名】安重 聡

【氏名】前田 直己

【要約】 【課題】水膨張性シール材からの水膨張成分の溶出が少なく、水との接触により速やかにしかも全体的に膨張し、かつ、作業時の取扱いが容易な水膨張性シール材を提供すること。

【解決手段】内部が中空かつゴム弾性を有する長尺状基体の内部に水膨張性物質を充填するとともに、前記長尺状基体の外表面から内部へ貫通した1つ以上の連通孔もしくは切り欠き部を設けるようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ゴム弾性を有する長尺状基体の内部を中空状にし、該内部に水膨張性物質を充填するとともに、前記長尺状基体の外表面から内部へ1つ以上の連通孔もしくは切り欠き部を設けた水膨張性シール材。
【請求項2】 前記連通孔もしくは切り欠き部に吸水性繊維からなるひも状もしくはシート状の吸水体を挿入した請求項1に記載の水膨張性シール材。
【請求項3】 前記連通孔もしくは切り欠き部を透水性の膜または層で閉塞した請求項1に記載の水膨張性シール材。
【請求項4】 前記透水性の膜または層が不織布から形成される請求項3記載の水膨張性シール材。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、土木、建築におけるコンクリート、スチール製品のジョイント部、コンクリート打設の打継部、あるいは土木工事用セグメントの目地部分に装着される特に水膨張性シール材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の水膨張シール材としては、天然ゴム、クロロプレンゴム或いはブチルゴムに吸水性樹脂(ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩など)を加えたものや、水膨張性ウレタン樹脂を使用したものが知られている。そして、使用箇所の形状に合わせこれらの材料を成形して使用している(特開平3−134390号公報)。また、その他にも例えば、特開平4−24397号公報や特開平9−195692号公報には、水膨張性ゴム層と非膨張ゴム層とを積層した水膨張性シール材が開示されている。さらに、実公平5−34379号公報には水膨張性ゴム層の上に水溶性フィルムを積層した水膨張性シール材が開示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前述した水膨張性シール材のうち天然ゴム、クロロプレンゴムあるいはブチルゴムに吸水性樹脂を混合したものはいずれもゴム成分に膨張性物質が分散しているため水と接触しても膨張がゴム表面から徐々にしか起こらず、完全に膨張するまで充分な止水効果が得られなかった。また、長期間水に浸漬すると吸水性樹脂等の膨張性物質が膨張に伴い溶出し、膨張率が低下するなどの問題があった。さらに、膨張性物質の添加量を増やした場合、膨張速度は上がったが膨張に伴う膨張性物質の溶出量も増えるため乾燥と吸水を繰り返すと膨張率が急速に低下する問題があった。水膨張性ウレタン樹脂を使用したシール材はこのウレタン樹脂そのものがゴム弾性を有するシール材となり得るが、ウレタン樹脂そのものやゴムに混練した場合でも水に接した表面から先に膨張が始まるため内部まで膨張するには時間がかかり、やはり止水効果の早期実現は困難であった。
【0004】さらに、これらの水膨張性シール材の少なくとも一部は水膨張性層で形成されているため、水膨張性樹脂の種類によっては表面が粘着する。そのため、被着体の凹部にこれらのシール材を組み込む際にシール材が組み付けにくく、またシール材同士が接着してしまったりして手間がかかるという問題があった。そこで、本発明の目的とするところは前述した課題を解決し、すなわち、水膨張性シール材からの膨張性物質の溶出が少なく、水との接触により速やかにしかも全体的に膨張し、かつ、作業時の取扱いが容易な水膨張性シール材を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、ゴム弾性を有する長尺状基体の内部を中空状にし、該内部に水膨張性物質を充填するとともに、前記長尺状基体の外表面から内部へ1つ以上の連通孔もしくは切り欠き部を設けた水膨張性シール材により前述の課題を解決した。
【0006】本発明の内部が中空かつゴム弾性を有する長尺状基体は、断面形状が中空であれば円形、台形、四角形などどのような形であってもよく、本発明の水膨張性シール材が組み込まれる構造物の被シール部の形状に合わせて任意に形成される。また、この長尺状基体を構成する材料としては、天然ゴム、合成ゴムおよび合成樹脂等が使用できるが、この長尺状基体の内部に充填される水膨張性物質の膨張に追従するため適度な伸縮性を有することが必要である。具体的にはイソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴムが挙げられる。
【0007】長尺状基体の形状は中空であれば断面形状が円・三角・四角等どのような形でもよく、水膨張性シール材が嵌め込まれる構造物の被シール部の形状に合わせて形成される。そして長尺状基体の厚さは、材質や断面形状だけでなく内部に充填される水膨張性物質の材質や量により変化するが、断面積が10cm以下の場合の断面積増加倍率が9倍以下であれば1〜10mm程度が好ましい。この場合、1mmよりも薄いと膨張時に亀裂が生じる恐れがあり、10mmよりも厚いと膨張しにくくなる。なお、上記断面の面積が10cmより大きいか、もしくは断面積が10cm以下の場合であっても断面積増加倍率が9倍を越える場合には、より厚くする必要がある。
【0008】つぎに外部から水を浸透させるために設けられる連通孔もしくは切り欠き部について説明する。その形状、大きさ、位置及び個数は任意に設定できるが、長尺状基体内部に充填される水膨張性物質が外部に流出しないように考慮する必要がある。例えば、連通孔にひも状の吸水体を挿通すると、内部からの水膨張性物質の流出を防止するとともに外部からの水を導きやすくできる。また、連通孔の表面を透水性の膜や繊維で覆うことによって、水膨張性物質の流出を防ぐようにしてもよい。この連通孔の大きさは長尺状基体の大きさ、厚さ、材質等により変化するが、長尺状基体の直径を30mmとした場合0.1mm〜5mmが適当である。なお、連通孔の大きさと数の関係については、孔の大きさが小さい程数多く設ける必要があることは勿論である。
【0009】さらに、切り欠き部の場合も、長尺状基体の長手方向に沿って、あるいは螺旋状に端から端まで1つの切り欠き部を設けたり、一定間隔を置いて短い切り欠き部を多数設けることが考えられるが、前述の如く内部からの水膨張性物質の流出を考慮して、切り欠き部を透水性の膜や層で長尺状基体の外表面あるいは内表面に貼り付けもよいし、図4に示すように切り欠き部の各端面に溝を設け、透水性の膜を嵌め込むことも可能である。水膨張性樹脂の溶出を防ぐために用いる透水性の膜や層として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ナイロン、ビニロン、アクリル、レーヨン、キュプラ、綿、羊毛、パルプ、麻、ガラス等の繊維からなるシート状の繊維がよい。なお、水膨張性シール材に連通孔または切り欠き部を設ける場合は、この水膨張シール材が設置される構造物における被着体の形状や水の進入経路を勘案設定することが重要である。
【0010】本発明に使用する水膨張性物質としては、特開昭62−277457号公報に記載されるようなアクリル酸系、ポリビニルアルコール系、無水マレイン酸系、ウレタン系など各種の水膨張性樹脂が挙げられる。これらの水膨張性樹脂でも膨張率の制御のしやすさ、取扱いの簡便さなどからアクリル酸系やポリビニルアルコール系が好ましい。また、この水膨張性樹脂は通常粉体状もしくは粒状の固形であることが多いが、前記長尺状基体の中空部に充填して使用するためには、この水膨張性樹脂の粒径や形状を考慮して選択しなければならない。長尺状基体に充填された状態で水との接触性を考えれば粒径はある程度大きくする必要があるが、膨張性を考慮すると充填率を高めるため粒径は小さい方がよい。そこで、両者のバランスを取るため粒径の異なった水膨張性樹脂を組み合わせて使用することも好ましい。
【0011】この水膨張性樹脂の粒径は上述したような理由により概ね10〜500μm程度であることが好ましい。本発明で使用される水膨張性樹脂は1種類単独で用いても、膨張傾向を考慮して膨張倍率及び膨張速度の異なる数種の水膨張性樹脂を混合して使用してもよい。さらに、膨張率の制御等のため炭酸カルシウム、タルク、クレイ、珪砂などの充填材及びセルロース繊維、綿状パルプなどの非膨張性物質を混合して使用することもできる。場合によっては、水膨張性樹脂を有機溶媒や液状の可塑剤中に分散または溶解させて液状物にしてから長尺状基体内へ充填を行ってもよい。なお、充填された水膨張性樹脂を速やかに膨張させるため、連通孔や切り欠き部に挿通される吸水体としては、綿などの吸水性の繊維や糸などが考えられる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下本発明を実施例を用いて詳細に説明する。図1は本発明のシール材に係る水膨張性シール材の実施例を示す斜視図で、図中1は中空長尺状基体、2は水膨張性樹脂を充填する中空部、3は外表面部から中空部へ水を浸透させるための連通孔となるものであり、4は吸水体である。図2は本発明に係る水膨張性シール材の他の実施例を示す斜視図で、5は水膨張性樹脂が外部に流出しないために水膨張性樹脂の表面を覆った透水性膜(不織布)である。図3は本発明に係る水膨張性シール材の他の実施例を示す斜視図で、6はシート状水膨張性物質である。
【0013】
【実施例1】 次に本発明の水膨張性シール材の製造方法について説明する。先ず中空長尺状基体を引張強度10〜15MPa、伸び500%〜700%のクロロプレンゴムを用いて通常の押し出し成形により製造した。この時の長尺状基体の寸法は、直径が30mmの円形、厚みは約2.5mm、長さは約5mとした。ついで、この中空長尺状基体に30mm間隔で直径約0.5mmの連通孔を開け、ここに綿製の糸を内部に約20mm外部に約30mm突出させるように挿入した。そして長尺状基体を宙づりにし一方の端を閉塞した後、上方の一端から粒径約100〜150μm、吸水倍率100倍のアクリル酸系吸水性樹脂と重質炭酸カルシウムの混合粉体(重量で前者:後者=1:1)を注ぎ込み前記長尺状基体の中空部に充填し、その後もう一方の端部を閉塞し図1に示す形状の水膨張性シール材を製造した。
【0014】
【実施例2】 中空部に充填する混合粉体を粒径約100〜150μmのアクリル酸系水膨張性樹脂と重質炭酸カルシウム(重量で前者:後者=1:2)とした以外は実施例1と同様の方法で図1に示すような形状の水膨張性シール材を製造した。
【0015】
【実施例3】 引張強度10〜15MPa、伸び500%〜700%クロロプレンゴムを用いて長尺状基体を通常の押し出し成形により製造した。この時の長尺状基体の寸法は、幅が100mm、厚みは約2.5mm、長さは約5mとした。ついで、この長尺状基体に30mm間隔で直径約5mmの穴を開け、この穴の部分を覆うように幅30mm、厚さ0.2μmのポリオレフィン系の不織布を連通孔部分に接着剤がつかないよう注意しながら接着した。次に長尺状基体を不織布が内面になるようにしてその長手方向両端部を加硫接着し、直径が30mm、長さ約5mの中空長尺状基体を構成した。そしてこの長尺状基体を宙づりにし一方の端を閉塞した後、上方の一端から粒径約100〜150μm、吸水倍率100倍のアクリル酸系水膨張性樹脂と7号珪砂の混合粉体(重量で前者:後者=1:1)を注ぎ込み前記長尺状基体の中空部に充填し、その後もう一方の端部を閉塞し図2に示すような形状の水膨張性シール材を製造した。
【0016】
【実施例4】 引張強度10〜15MPa、伸び500%〜700%クロロプレンゴムを用いて長尺状基体を通常の押し出し成形により製造する。この時の長尺状基体の寸法は、幅が100mm、厚みは約2.5mm、長さは約5mとした。ついで、この長尺状基体に30mm間隔で直径約5mmの穴をあけ、この穴の部分を覆うように幅30mm、厚さ0.2μmのポリオレフィン系の不織布を連通孔部分に接着剤がつかないよう注意しながら接着した。次に粒径約100〜150μm、吸水倍率100倍のアクリル酸系水膨張性樹脂と綿状パルプを(重量で前者:後者=1:2)混合したものを不織布で挟みシート状に成型したのち、さらにこのシートを円筒状になるように巻き直径約25mmの巻物を成形した。ついでこの巻物を前記長尺状基体上に載せ、その長手方向の両端部を突き合わせるようして円筒状に形成し両端部を加硫接着し、更に円筒形状の両端部を閉塞して図3に示す形状の水膨張性シール材を製造した。
【0017】本発明に係る水膨張性シール材の形状は、図1〜3等では長手方向に沿って直線状に連通孔を設けているが、さまざまな位置に設けても問題ない。また、長尺状基体に等間隔で対向するように連通孔を設けて吸水体が長尺状基体と水膨張性樹脂を貫通するようにしてもよい。また、連通孔及び切り欠き部となる部分のゴムを予め厚く成形したり、必要に応じて連通孔及び切り欠き部の周囲にゴムを貼り付ける等の補強を加えてもよい。
【0018】実施例1〜4で製造した水膨張性シール材を、精製水に浸漬し直径寸法の膨張率を測定した結果を表−1に示す。なお、比較例では膨張性シール材全体の膨張率をほぼ同じくして比較するため、比較例1として直径30mmで膨張倍率3倍型の加硫ゴム系水膨張シール材(実施例2及び4相当)、比較例2として直径30mmで膨張倍率8倍型の加硫ゴム系水膨張シール材(実施例1及び3相当)を精製水浸漬し、直径寸法の増加率を測定した結果を表1と表2に示す。表2は表1の数値を分かりやすくするためグラフ化したものである。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】この試験において、実施例1、実施例3、比較例2の結果と実施例2、実施例4,比較例1の結果を比較すると、それぞれ比較例よりも膨張が速く始まることが確認された。また、比較例は長期間浸漬すると膨張低下が顕著に現れるのに対し、実施例のシール材では、長期間浸漬しても膨張低下がなく安定した膨張傾向を示すことが確認された。また、比較例1と2では、膨張倍率の大きい水膨張性シール材の方が膨張率の低下が著しいことが確認された。
【0022】
【発明の効果】以上説明したように本発明に係る水膨張性シール材は、長尺状基体の外表面から内部へ1つ以上の連通孔もしくは切り欠き部を設けるため長尺状基体内部に充填した水膨張性物質に水が即時に浸透し膨張する。また、連通孔もしくは切り欠き部周囲に透水性の膜や層を設けるため、水膨張性物質の溶出が殆どなく長期的に安定した膨張性を有するので、構造物に嵌め込んだ場合高い止水性を保持することができる。さらに水膨張性物質を混練した水膨張性シール材のような表面の粘着性がないので構造物への取り付け容易になり、作業性が著しく向上する。
【出願人】 【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
【識別番号】592082206
【氏名又は名称】スリーボンドユニコム株式会社
【識別番号】000201504
【氏名又は名称】前田製管株式会社
【出願日】 平成11年10月12日(1999.10.12)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−108110(P2001−108110A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−289215