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【発明の名称】 軸シール装置の異常予知システム
【発明者】 【氏名】小松 直隆

【氏名】松元 めぐみ

【氏名】川口 昭博

【氏名】佐々木 康弘

【氏名】久井 治

【要約】 【課題】シール装置において何らかの異常の兆候が見られた時点でプラントの運転を継続するか否かといった判断を支援する異常予知システムを提供することを目的とする。

【解決手段】シール前後に差圧を有するシール装置の異常予知システムにおいて、温度等のシール装置周りのプラント運転データを、プラント立ち上げの時のデータを基準として作成した計算モデルに入力して基準シール流量を求め、該基準シール流量と実流量との流量偏差からシール構成部材各部の劣化要因とその劣化度を推定した後、該劣化度計算部で求めた劣化度の進行とプラント立ち上げ時点を原点とした経過時間との関係を求め、その計算結果に基づき、操作者が知りたい時点における劣化度の予測や、操作者が知りたい劣化度に達するまでに要する時間を予測することを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 各種ポンプのシール装置や圧縮機の軸シール等のようにシール前後の差圧wを有するシール装置の異常予知システムにおいて、異常予知を行う上で必要となるシール前後の差圧、シール流量、シール流体温度、シール構成部材各部の温度等のシール装置周りのプラント運転データを検出するプラントデータ検出手段と、上記プラントデータ検出手段により検出したプラント運転データを、プラント立ち上げの時のデータを基準として作成した計算モデルに入力して基準シール流量を求める流量計算部と、上記流量計算部より求めた基準シール流量と、プラントデータ検出手段により検出した実流量との流量偏差からシール構成部材各部の劣化要因とその劣化度を推定する劣化度計算部と、前記劣化度計算部で求めた劣化度の進行とプラント立ち上げ時点を原点とした経過時間との関係を求める劣化進行計算部と、前記劣化度進行計算部の計算結果に基づき、操作者が知りたい時点における劣化度の予測や、操作者が知りたい劣化度に達するまでに要する時間を予測する劣化予測計算部と、を備えた事を特徴とする軸シール装置の異常予知システム。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種ポンプのシール装置に適用される漏洩制限型シール装置(例えば静圧シール装置)や圧縮機の端面部の軸シール等のシール装置の異常予知システムに関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、各種ポンプのシール装置の異常予知システムは次のような方法で行なわれている。
(a)過去における故障の事例を統計的手法を用いて、運転条件、時間等から流量変化やシールの故障との相関関係を調べて、故障に至る時間的予測や異常原因の確率的な解析処理により、原因の推定を行なう。
(b)シールリングにセンサを取り付け、応力や温度を計測し、シールの故障、あるいは劣化の進捗状況を把握する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記(a)の方法は、発電所の重要機器であるポンプ装置などでは、故障事例が少なく、統計的な処理をすることができないのが実情である。また、上記(b)の方法は、シールは重要な要素部品であり、圧力バウンダリになっているため、センサの取り付けにより新たな故障の原因となることも考えられ、最適の手段とはいえないのが実情である。
【0004】かかる課題を解決するために、シールの流量変動に対して、シールを構成する部材のどこが要因として考えられるか推定する異常診断システムを特願平10−93882において本出願人が提案している。しかしながら前記先願技術においても、操作者が知りたい時点において構成部材の劣化がどの程度進むか、操作者が知りたい劣化度に達するまでにどの程度時間がかかるかといった、異常予知システムまでは踏み込んでおらず、このシール装置において何らかの異常の兆候が見られた時点でプラントの運転を継続するか否かといった判断を支援する異常予知システムが従来は存在しなかった。
【0005】本発明は、かかる従来技術の課題に鑑み、シール装置において何らかの異常の兆候が見られた時点でプラントの運転を継続するか否かといった判断を支援する異常予知システムを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明はかかる課題を解決するために、 各種ポンプのシール装置や圧縮機の軸シール等のようにシール前後に差圧を有するシール装置の異常予知システムにおいて、異常予知を行う上で必要となるシール前後の差圧、シール流量、シール流体温度、シール構成部材各部の温度等のシール装置周りのプラント運転データを検出するプラントデータ検出手段(例えば圧力計などの圧力検出手段、流量計などの流量検出手段、熱電対などの温度検出手段)と、上記プラントデータ検出手段により検出したプラント運転データを、プラント立ち上げの時のデータを基準として作成した計算モデルに入力して基準シール流量を求める流量計算部と、上記流量計算部より求めた基準シール流量と、プラントデータ検出手段により検出した実流量との流量偏差からシール構成部材各部の劣化要因とその劣化度を推定する劣化度計算部と、前記劣化度計算部で求めた劣化度の進行とプラント立ち上げ時点を原点とした経過時間との関係を求める劣化進行計算部と、前記劣化度進行計算部の計算結果に基づき、操作者が知りたい時点における劣化度の予測や、操作者が知りたい劣化度に達するまでに要する時間を予測する劣化予測計算部と、を備えた事を特徴とする。
【0007】尚、本発明において、前記流量計算部と、劣化度計算部と、劣化予測計算部は計算機内に組み込まれており、計算機として一体化されている場合が通常である。又、劣化進行計算部は図1(C)に示すように劣化度計算部で求めた劣化度の進行グラフと、プラント立ち上げ時点を原点とした経過時間との関係より求める事が出来る。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明を図に示した実施例を用いて詳細に説明する。但し、この実施例に記載される構成部品の寸法、形状、その相対配置などは特に特定的な記載がない限り、この発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく単なる説明例に過ぎない。図1(A)は本発明の基本構成を示すブロック図、(B)は簡単なシール装置とその測定点の概念図、(C)は劣化進行計算部の概念を示すグラフ図である。
【0009】シール装置Aは、被シール部材Aとシール部材Aとその隙間のシール空隙Bからなり、その隙間Bを高圧側Pから低圧側Pに向かって流れるシール流量Qはシール隙間形状(隙間の高さC、隙間の長さL)、シール隙間前後の圧力差(P−P=差圧)、シール隙間を流れる流体の特性(粘度)によって決まる。流体の特性(粘度)はシール流体温度TL、シール構成部材各部の温度T、Tやシール隙間B前後の圧力差(P−P=差圧)等によって定まる。シール隙間Bは、シール隙間を構成する部材A、Aに発生する流体圧による圧力変形や周囲の温度変化に伴う熱変形、シール部材A、Aに作用する力の釣り合いによって決まる。
【0010】したがって、シール流量Qの変動はこれらの条件が何らかの要因(例えば摺動部の摩擦力の増減やシール部周りにおける圧力分布の経時変化、シール部表面への付着物の堆積など)により時間と共に変化することにより発生すると考えられる。このため、本発明では、例えば圧力計などの圧力検出手段、流量計などの流量検出手段、熱電対などの温度検出手段等のシール装置周りのプラント運転データ検出手段(S1)でシール隙間前後の圧力差(P−P)、シール流体温度TL、シール構成部材各部の温度T、T、シール隙間前後の圧力差(P−P=差圧)及び実際のシール流量Qを検出してデジタル変換を行う。
【0011】流量計算部(S2)ではプラント立ち上げ時のデータを基準として作成した計算モデルに上記シール前後の圧力データ(P、P)、シール流体温度データTL、シール構成部材各部の温度データT、Tを入力して隙間形状(隙間の高さC)、シール隙間前後の圧力差(P−P)、シール隙間を流れる流体の特性(粘度)を計算して計算流量Qcalを求める。
【0012】劣化度計算部(S3)では、劣化要因(例えば摺動部の摩擦力の増減や固定シール部における圧力分布の経時変化、シール表面への付着物の堆積など)とその度合い(劣化度)の条件を変えてプラントデータ検出手段により検出した実際のシール流量Qと上記計算流量Qcalとを比較器で比較し、両者の偏差が最小となるような劣化要因と劣化度の組み合わせを検索する。
【0013】劣化度進行計算部(S4)では劣化度計算部(S3)で求めた劣化要因ならびに劣化度とプラント立ち上げ時点を原点とした経過時間とを記録し、各劣化要因毎に劣化度Rとプラント立ち上げ時点を原点とした経過時間tとの関係式を求め劣化度計算部(S3)が起動するたびに更新していく。
【0014】例えば図1(C)ではt、t、tの各経過時点における劣化度Rを×△○で夫々表している。劣化予測計算部(S5)では劣化度進行計算部(S4)で求めた計算式から、操作者が知りたい時点Tαにおける劣化度の予測や、操作者が知りたい劣化度に達するまでに要する時間TRを予測する。
【0015】例えば図1(C)の例でいけば×△○を結ぶ予測線図R、R、Rを描けば限界点に達するまでの予測時間TR、TR、TRが描けることになる。尚、(S6)は立上げ時データ及びタイマ記憶部である。
【0016】これを具体的に求めると、劣化度をR、プラント立ち上げ時点を原点とした経過時間をtとしたとき両者の関係が、R=F(t、u) …(1)
(ここでF(t、u)は経過時間tとプラントの運転状態(例えばシール隙間前後の圧力差やシール流体温度、シール部材各部の温度など)uの関数であることを表す。)で表せられるとすれば、経過時間t毎の(ここでt0はプラント立ち上げ時点を原点とした現在の経過時刻)における劣化度Rは、R=F(t、u) …(1)‘で表される。
【0017】一方、操作者が知りたい劣化度Rαに達するまでの経過時刻tαは、 tα=F(Rα、u)−1 …(2)
で表される。ここでF(Rα、u)−1は劣化度Rとプラントの運転状態uとの関数であることを表す。
【0018】このように式(1)‘からプラント立ち上げ時点を原点とした経過時間tと運転状態uからその時点の劣化度Rを順次経過時間t1、t2、t3毎に求めることにより、そのデータを基に図1に示すような予測線図R、R、Rに沿った関数を求めることが出来、この関数式を元に逆に(2)式から劣化度Rαからその劣化度に達する時刻tαの予測が可能となる。
【0019】
【実施例】図2に本発明を縦型の端面型軸シールに適用した第1実施例を示す。同図において、一点鎖線で囲まれた部分はシールシステムの一部を表している。1は圧力計でシール前後の、高圧側と低圧側の差圧を検出する。2は熱電対でシール流体温度やシール構成部材各部の温度を検出する。前記プラントデータ検出手段がこれら1、2にあたりこれらの出力はデジタル変換された後、信号線を介してシールシステム外部にある計算機3に取り込まれる。計算機3上では異常予知プログラム4(図示せず)が作動している。このプログラムは後述する流量計算部(S2)、劣化度計算部(S3)、劣化度進行計算部(S4)、劣化予測計算部(S5)から成り立っている。
【0020】なお、各部は計算機3上で動作するプログラムにおける処理区分を表す。流量計算部(S2)では、予め求めたプランと立ち上げ時のデータを基準として作成した計算モデルに、(1)圧力計1で検出したシール前後の差圧データ(P−P
(2)熱電対2で検出したシール流体温度データTL(3)シール構成部材の温度データT、Tをもとに、シール面で構成されるシール隙間における圧力変形、熱変形を計算してシール隙間形状C、Lを計算する。この隙間形状C、Lの計算結果と、シール隙間を流れる流体の粘度の計算値、圧力計1で検出したシール隙間前後の圧力差(P−P)とから計算流量Qcalを求める。
【0021】劣化度計算部(S3)では、劣化要因、例えば摺動部(本実施例ではスリッパシール101)における摩擦力の増減や固定シール部(本実施例ではOリング102)における圧力分布の経時変化、シール表面への付着物の堆積など)とその度合い(劣化度)の条件を逐一変えながら流量計5で検出したシール隙間を流れるシール部の実流量Qと上記計算流量Qcalとを比較器(S7)で比較する。そして、両者の偏差が最小となるような劣化要因と劣化度の組み合わせを探索する。
【0022】劣化度進行計算部(S4)では劣化度計算部(S3)で求めた劣化要因ならびに劣化度とプラント立ち上げ時点を原点とした経過時間を記録し、各劣化要因毎に劣化度Rとプラント立ち上げ時点を原点とした経過時間tとの関係式を求め、劣化度計算部(S3)が起動するたびにこの関係式を更新していく。
【0023】劣化予測計算部(S5)では劣化度進行計算部(S4)で求めた関係式から、操作者がキーボードを介して入力した時刻tにおける劣化度の予測や、同様に操作者がキーボード(図示せず)を介して入力した劣化度Rαに達するまでに要する時間tαを予測し結果を画面やプリンタ(図示せず)に出力する。
【0024】このようにして軸シール機構の異常予知を行う。なお、プラントデータ検出手段(S1)から計算機へのデータ取込は、各センサのアンプ出力(例えば電圧値や電流値)をA/Dボードなどの変換手段を介して行う場合、プラントの運転データが格納されているコンピュータからLANなどのネットワークを介して行う場合、電話回線やインターネットを介して行う場合、 などが例としてあげられる。
【0025】また、図2において、シールリング201a、リテーナ202、インサート203a、クランプ204は静止側の部材を表し、シールランナー301、リテーナ302、クランプ304は軸305とともに回転する部材を表す。シール隙間はシールリング201aとシールランナ301の相対する面により構成され、シール面を境に図右方が高圧側、図左方が低圧側である。
【0026】図3は本発明を横型の端面型軸シールに適用した第2実施例を示す。同図において、図1同様、一点鎖線で囲まれた部分はシールシステムの一部を表している。1は圧力計でシール前後の、高圧側と低圧側の差圧を検出する。2は熱電対でシール流体温度やシール構成部材各部の温度を検出する。プラントデータ検出手段がこれら1、2にあたり、これらの出力は信号線を介してシールシステム外部にある計算機3に取り込まれる点は前記実施例と同様である。尚、計算機3に取り込まれてからの処理は第一実施例と同じであるので説明は省略する。
【0027】なお、図3において、静止環201b、リテーナ202、押し付けばね203bは静止側の部材を表し、回転環301、スリーブ302、軸303とともに回転する回転側の部材を表す。シール隙間は静止環201bと回転環301の相対する面により構成され、シール面を境に図上方が高圧側、図下方が低圧側である。また、本例において、摺動部はセカンダリシール101、固定シール部は背面Oリング102に相当する。
【0028】
【発明の効果】以上記載のごとく、本発明によれば、従来実現が困難であった軸シールシステムの異常予知が可能となり、今まで以上にプラントを安全に稼動させることができる。
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【出願日】 平成11年10月8日(1999.10.8)
【代理人】 【識別番号】100083024
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌久 (外1名)
【公開番号】 特開2001−108102(P2001−108102A)
【公開日】 平成13年4月20日(2001.4.20)
【出願番号】 特願平11−288698