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【発明の名称】 バルブ用シート又はパッキン
【発明者】 【氏名】山本 康彰

【氏名】草野 広男

【氏名】柳生 秀樹

【要約】 【課題】摩耗特性及びシール特性に優れ、しかも相手部材を損傷させにくいバルブ用シート又はパッキンの提供。

【解決手段】ふっ素樹脂に酸素濃度100torr以下の不活性ガス雰囲気下で、該ふっ素樹脂の融点以上に加熱された状態で電離性放射線を照射線量1kGy 〜10MGy の範囲で照射してなる改質ふっ素樹脂を樹脂成分として含有するバルブ用シート又はパッキン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】ふっ素樹脂に酸素濃度100torr以下の不活性ガス雰囲気下で、該ふっ素樹脂の融点以上に加熱された状態で電離性放射線を照射線量1kGy 〜10MGy の範囲で照射してなる改質ふっ素樹脂を含有する樹脂成分からなることを特徴とするバルブ用シート又はパッキン。
【請求項2】改質ふっ素樹脂単独を樹脂成分として含有する請求項1記載のバルブ用シート又はパッキン。
【請求項3】改質ふっ素樹脂と未改質ふっ素樹脂、ポリイミド及びエンジニアリングプラスチックスの少なくとも1種を樹脂成分として含有する請求項1記載のバルブ用シート又はパッキン。
【請求項4】前記樹脂成分に加えて繊維状充填剤を含有する請求項1記載のバルブ用シート又はパッキン。
【請求項5】前記ふっ素樹脂は、テトラフルオロエチレン系重合体、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のバルブ用シート又はパッキン。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、低摩擦性及びシール特性に優れ、且つ相手部材に損傷を与えにくいバルブ用シート又はパッキンに関し、特にボールバルブ用ボールシート又はグランドパッキンとして好適なバルブ用シート又はパッキンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】バルブは種々の環境下で使用され、流体の多様化、生産の自動化等に伴い、多種、多様なものが用いられている。その中でも近年多く採用されるものにボールバルブがあり、電力業界、天然ガスパイプライン、石油精製、化学プラント、一般化学工場等で需要が増大している。ボールバルブは流体抵抗が小さい、流体の封止性が高い、構造的に自動化に適している、バルブ形状がコンパクト、メンテナンスが容易等の特徴を有しており、このボールシート及びグランドパッキンには耐熱性、耐薬品性等に優れたテトラフルオロエチレン系重合体(以下「PTFE」という)が広く用いられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、バルブは圧縮と圧力開放の繰返し披露を受け、しかも遥動的な抵抗を受けるため、PTFEが摩耗してしまい流体が漏洩する危険性があり、比較的短時間で交換する必要があった。このため、メンテナンスや生産ラインの一次停止により、生産効率が低下するという問題がある。摩耗を防ぐ手段としてはカーボン繊維やグラファイト等をPTFE中に多量に充填する方法があるが、摩擦係数が高くなり、その結果バルブ開閉時の開閉力が大きくなったり、流体によっては充填材が膨潤したり溶出したりするという問題がある。
【0004】従って、本発明の目的は、耐摩耗特性に優れ、しかも相手部材を損傷させにくいバルブ用シート又はパッキンを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】ふっ素樹脂に酸素濃度100torr以下の不活性ガス雰囲気下で、該ふっ素樹脂の融点以上に加熱された状態で電離性放射線を照射線量1kGy 〜10MGy の範囲で照射してなる改質ふっ素樹脂を含有する樹脂成分バルブ用シート又はパッキンを提供する。
【0006】本発明において、改質ふっ素樹脂は、PTFE、テトラフルオロエチレン−パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)系共重合体(以下「PFA」という)及びテトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン系共重合体(以下「FEP」という)から選ばれるふっ素樹脂に、酸素濃度100torr以下、好ましくは10torr以下の不活性ガス雰囲気下で、該ふっ素樹脂の融点以上に加熱された状態で電離性放射線を照射線量1kGy 〜10MGy の範囲で照射することにより得ることができる。
【0007】上記PTFEの中には、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロピレン、(パーフルオロアルキル)エチレン、あるいはクロロトリフルオロエチレン等の共重合性モノマーに基づく重合単位を0.2モル%以下含有するものも含まれる。また、上記共重合体形式のふっ素樹脂の場合、その分子構造の中に少量の第3成分を含むことは有り得る。
【0008】電離性放射線としては、γ線、電子線、X線、中性子線、あるいは高エネルギーイオン等が使用される。電離性放射線の照射を行うに際しては、ふっ素樹脂をその結晶融点以上に加熱しておく必要がある。例えばふっ素樹脂としてPTFEを使用する場合には、この材料の結晶融点である327℃よりも高い温度にふっ素樹脂を加熱した状態で電離性放射線を照射する必要があり、また、PFAやFEPを使用する場合には、前者が310℃、後者が275℃に特定される融点よりも高い温度に加熱して照射する。ふっ素樹脂をその融点以上に加熱することは、ふっ素樹脂を構成する主鎖の分子運動を活発化させることになり、その結果、分子間の架橋反応を効率良く促進させることが可能となる。但し、過度の加熱は、逆に分子主鎖の切断と分解を招くようになるので、このような解重合現象の発生を抑制する意味合いから、加熱温度はふっ素樹脂の融点よりも10〜30℃高い範囲内に抑えるべきである。
【0009】本発明のバルブ用シート又はパッキンを得る方法としては、ふっ素樹脂を所定形状に成形してから特定雰囲気下で電離性放射線を照射する方法、あるいは特定雰囲気下で電離性放射線が照射された改質ふっ素樹脂の微粉末を所定形状に成形する方法等をあげることができる。
【0010】本発明のバルブ用シート又はパッキンは、改質ふっ素樹脂単独で構成する場合、改質ふっ素樹脂と未改質ふっ素樹脂、ポリイミド及びエンジニアリングプラスチックスの少なくとも1種とで構成する場合、改質ふっ素樹脂と繊維状充填剤とで構成する場合、改質ふっ素樹脂と未改質ふっ素樹脂、ポリイミド及びエンジニアリングプラスチックスの少なくとも1種と繊維状充填剤とで構成する場合のいずれであってもよい。
【0011】エンジニアリングプラスチックの代表例としては、ポリオキシベンゾイルエステルをあげることができる。また、繊維状充填剤としては、ガラス繊維やカーボン繊維をあげることができ、摩擦係数低減と相手材の損傷を極力小さくするという観点から、含有量は10重量%以下とすることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】[実施例1]厚さ1.0mmのPTFEシートに対し、酸素濃度1torr、窒素濃度755torrの雰囲気下、340℃の加熱温度のもとで電子線を120kGy 照射して改質を行い、バルブ用シートを得た。
【0013】[実施例2]PTFEモールディングパウダ(商品名:G−163、旭硝子社製、平均粒径40μm)に対し、酸素濃度1torr、窒素濃度755torrの雰囲気下、340℃の加熱温度のもとで電子線を120kGy 照射し改質を行った。この改質PTFEを約20μmの平均粒径になるまでジェットミルで粉砕した。この改質PTFE粉体20重量%とPTFEモールディングパウダ(商品名:G−163、旭硝子社製、平均粒径20μm、未改質)80重量%の割合でを混合し、360℃、圧力30MPaで成形し、バルブ用シートを得た。
【0014】[実施例3]実施例2で得た改質ふっ素樹脂粉体15重量%とPTFEモールディングパウダ(商品名:G−163、旭硝子社製、平均粒径20μm、未改質)75重量%とポリオキシベンゾイルエステル(商品名:エコノールS330、住友化学社製)の割合でブレンドし、360℃、圧力30MPaで成形し、バルブ用シートを得た。
【0015】[実施例4]実施例2で得た改質ふっ素樹脂粉体30重量%とPFA(三井デュポン・フロロケミカル製340−J)70重量%の割合でヘンシルミキサでドライブレンドし、40mm押出機で溶融混練してペレット化した。ペレットを熱プレス機を用いて300〜350℃で成形し、バルブ用シートを得た。
【0016】[比較例1]PTFEモールディングパウダ(商品名:G−163、旭硝子社製、平均粒径20μm、未改質)を360℃、圧力30MPaで成形し、バルブ用シートを得た。
【0017】[比較例2]PTFEモールディングパウダ(商品名:G−163、旭硝子社製、平均粒径20μm、未改質)30重量%とPFA(三井デュポン・フロロケミカル製340−J)70重量%の割合でヘンシルミキサでドライブレンドし、40mm押出機で溶融混練してペレット化した。ペレットを熱プレス機を用いて300〜350℃で成形し、バルブ用シートを得た。
【0018】[比較例3]PTFEモールディングパウダ(商品名:G−163、旭硝子社製、平均粒径20μm、未改質)75重量%とガラス繊維(日東紡PF A−001)25重量%をヘンシルミキサでドライブレンドし、360℃、圧力30MPaで成形し、バルブ用シートを得た。
【0019】実施例及び比較例で得たバルブ用シートについて、耐摩耗性及び相手材損傷性について評価を行ない、結果を表1に示した。評価試験にはストラス型摩擦摩耗試験装置を使用し、JIS K7218に準じ、S45Cに0.5mm厚さの試験体を貼り付け、相手材にはADC12を用い、圧力0.4MPa、速度1.5m/minの条件の下、常温で5時間試験を行った。
【0020】
【表1】

【0021】
【発明の効果】以上説明してきた本発明によれば、実施例と比較例との対比からも明らかなように、耐摩耗性に優れ、且つ相手部材を損傷させにくいバルブ用シート又はパッキンを実現することが可能となる。
【出願人】 【識別番号】000005120
【氏名又は名称】日立電線株式会社
【出願日】 平成11年9月16日(1999.9.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−82611(P2001−82611A)
【公開日】 平成13年3月30日(2001.3.30)
【出願番号】 特願平11−261405