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【発明の名称】 メカニカルシール
【発明者】 【氏名】長 亮丞

【氏名】青池 浩

【氏名】内山 真己

【要約】 【課題】横方向に延びる回転軸の外周に配置される静止側密封要素が、その重量によって傾くことによる密封性能の低下を防止する。

【解決手段】横方向に延びる回転軸2の外周に配置される静止側密封要素4が、そのリテーナ41の後端近傍の外周を作動用Oリング5を介してハウジング1の内周面に支持され、回転側密封要素3寄りの外周を下側から低摩擦係数の材料からなるパッド7を介して径方向コイルスプリング8により支持されることによって、ハウジング1と略同心的に保持されると共に、軸方向及び径方向に対する追随作動性が確保される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 横方向に延びる回転軸の外周に配置される静止側密封要素が、回転側密封要素と反対側の端部寄りの外周を作動用パッキングを介してハウジングの内周面に支持され、前記回転側密封要素寄りの部分を下側から低摩擦摺動片を介して弾性支持体により支持されることにより、前記ハウジングと略同心的に保持されたことを特徴とするメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は回転軸の軸周を密封するメカニカルシールに関する。
【0002】
【従来の技術】回転軸が横方向(例えば水平)に延びるポンプ等の軸封手段として使用されるメカニカルシールとしては、図3に示されるようなものが用いられる。すなわちこの種のメカニカルシールは、軸心が略水平な回転軸106の外周に固定された回転側密封要素101に対して密封的に摺接される静止側密封要素102が、回転側密封要素101と反対側の端部寄りの外周を作動用Oリング103を介してハウジング107の内周面に軸方向移動可能な状態に保持されると共に、回転側密封要素101寄りの外周部がコイルスプリング104により回転側密封要素101側へ軸方向に付勢され、係合手段105によって回り止めされた構造を有する。
【0003】上記構成において、作動用Oリング103による静止側密封要素102の支持位置は、この静止側密封要素102の重心Gより後方へずれているが、この種のメカニカルシールは、一般的には回転軸106の軸径φが200mm以下のものについて多く用いられ、この場合は静止側密封要素102の重量が比較的小さいため、作動用Oリング103の弾性によって、この静止側密封要素102は軸心が略水平になるように、言い換えればハウジング107と同心的に支持される。
【0004】しかしながら、大型の排水ポンプや水車等、軸径がφ300mm以上の回転軸を軸封するためのメカニカルシールも、基本的に同様の構造のものを採用した場合、静止側密封要素102の重量が数十kgにも及ぶため、作動用Oリング103の弾性では静止側密封要素102をその軸心が水平となるように支持することが困難になる。
【0005】図4はそのような場合の例を示すもので、回転側密封要素(図示省略)と密封的に摺接される摺動材102aをリテーナ102bの端部にホルダ102cで嵌合固定した構造の静止側密封要素102は、その重量によって作動用Oリング103の下部103aを潰すように全体的に下方へ変位すると共に、前記作動用Oリング103によるハウジング107との嵌合部を中心にして、その軸心O’がハウジング107の軸心Oに対して角度θをなすように下方へ傾斜した状態となっている。
【0006】このため、符号C1あるいはC2で示される部分で静止側密封要素102の一部がハウジング107とのカジリを発生し、その結果、メカニカルシールが必要とする重要な機能の一つである軸方向及び径方向の追随作動性が損なわれ、密封性能に悪影響を及ぼすおそれがある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その主な技術的課題とするところは、横方向に延びる回転軸の外周に配置される静止側密封要素が、その重量によって傾くことによる密封性能の低下を有効に防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上述した技術的課題を有効に解決するための手段として、本発明に係るメカニカルシールは、横方向に延びる回転軸の外周に配置される静止側密封要素が、回転側密封要素と反対側の端部寄りの外周を作動用パッキングを介してハウジングの内周面に支持され、前記回転側密封要素寄りの部分を下側から低摩擦摺動片を介して弾性支持体より支持されることにより、前記ハウジングと略同心的に保持された構造としたものである。すなわち、下側から弾性支持体で付勢された低摩擦摺動片が、静止側密封要素における回転側密封要素寄りの下部に低摩擦で摺動自在に接触することによって、この静止側密封要素を回転軸と同心的に支持し、かつ軸方向及び径方向に対して移動可能な状態を確保するものである。
【0009】
【発明の実施の形態】図1及び図2は、本発明に係るメカニカルシールの好ましい一実施形態を示すものである。この図において、参照符号1は大型水車等における機体に固定されたハウジング、参照符号2はこのハウジング1に水平方向に開設された軸孔の内周に同心的に挿通された回転軸である。
【0010】すなわち、回転軸2は軸心がほぼ水平であり、その軸周を密封するメカニカルシールは、回転軸2の外周に密封的に固定された回転側密封要素3と、この回転側密封要素3に軸方向に対向して前記回転軸の外周に遊挿されると共にハウジング1の内周に作動用Oリング5を介して挿入された静止側密封要素4と、この静止側密封要素4を弾性付勢して前記回転側密封要素3に摺接させる軸方向コイルスプリング6とを備える。
【0011】静止側密封要素4は、円筒部41a及びその先端から外径側へ展開したフランジ部41bを有する環状のリテーナ41と、前記フランジ部41bの前面外周部に円周方向複数配置されたボルト43によって固定された環状のホルダ42と、外周部が前記フランジ部41bとホルダ42の間にパッキング44,45を介して密嵌固定され回転側密封要素3に摺接される環状の摺動材46とからなる。
【0012】ハウジング1の内周は、静止側密封要素4を収容可能であって回転側密封要素3側が大径となる段差形状となっており、中間の環状段差部1aには、軸方向に延びる複数のスプリング保持穴1b及び切欠部1cが円周方向交互に形成されている。静止側密封要素4を回転側密封要素3へ向けて付勢する複数の軸方向コイルスプリング6は、それぞれ前記スプリング保持穴1bの底面と前記静止側密封要素4のリテーナ41におけるフランジ部41bの背面との間に適当に圧縮された状態で配置されている。
【0013】静止側密封要素4のリテーナ41における円筒部41aの後端(回転側密封要素3と反対側の端部)近傍の外周面には環状溝41cが形成されており、作動用Oリング5は、この環状溝41cに装着されて、ハウジング1における環状段差部1aの小径側の内周面1dに軸方向摺動可能に密接している。また、前記リテーナ41におけるフランジ部41bの背面側(回転側密封要素3と反対側)には板状の突部41dが形成されており、この突部41dがハウジング1に形成された切欠部1cと摺動自在に掛合することによって、静止側密封要素4の回り止めがなされている。
【0014】ハウジング1における環状段差部1aの大径側(回転側密封要素3側)には、静止側密封要素4のリテーナ41におけるフランジ部41bの下側となる位置に、半径方向に延びる複数(図示の例では三本)の貫通孔1eが形成されている。そしてこの各貫通孔1eには、上面が前記リテーナ41のフランジ部41bの外周面に接触する低摩擦摺動片としてのパッド7と、その下側の弾性支持体としての径方向コイルスプリング8がそれぞれ収容され、前記径方向コイルスプリング8の下端がプラグ9で支持されている。
【0015】パッド7は、銅合金等のような、低摩擦係数の材料からなるものであり、その上端面が平滑に仕上げられている。このため、静止側密封要素4のリテーナ41におけるフランジ部41bの下部外周面に対する摩擦抵抗が極めて小さく設定されている。
【0016】径方向コイルスプリング8は、三本合計で、静止側密封要素4をハウジング1と同心的に支持することができるように、その線径や自由長、圧縮量等による必要な荷重が設定される。
【0017】各径方向コイルスプリング8の下端を支持するプラグ9は、ハウジング1の各貫通孔1eにその下端開口から挿入された軸部91及びその下端の固定フランジ92からなり、この固定フランジ92の外周部に挿通された複数の螺子部材93によって、ハウジング1の下部外周面に固定されている。また、前記固定フランジ92とハウジング1との間はOリング94によって密封されている。
【0018】以上の構成において、回転側密封要素3は回転軸2と共に回転し、一方、静止側密封要素4は、そのリテーナ41に形成された突部41dがハウジング1に形成された切欠部1cと摺動自在に掛合することによって、非回転状態に保持されると共に、軸方向コイルスプリング6の付勢力で先端の摺動材46が前記回転側密封要素3に押し付けられることによって、この摺動材46との間に密封摺動面Sが形成され、図1における右側に存在する機内空間A内の密封対象流体が、図1における左側に存在する機外の大気B中へ漏洩するのを防止している。
【0019】ところで、上述のメカニカルシールは、大型の排水ポンプや水車等のような大径の回転軸2の外周に配置されるものであるため、静止側密封要素4の重量が数十kgにも及ぶものである。しかし、この静止側密封要素4は、その重心の軸方向両側で、円筒部41aの後端近傍の外周面が作動用Oリング5を介してハウジング1に支持され、またフランジ部41bの下部がパッド7を介して径方向コイルスプリング8によってハウジング1に支持され、これによって静止側密封要素4の傾斜が防止され、ハウジング1との同心性が保持される。
【0020】静止側密封要素4は、径方向コイルスプリング8の弾性によって、径方向への作動性が確保されており、また、リテーナ41の円筒部41aの後端近傍に装着された作動用Oリング5が、ハウジング1の小径内周面1dに軸方向摺動可能に密接すると共に、低摩擦係数のパッド7を介して摺動自在に支持されていることによって、軸方向への作動性が確保されている。このため、回転軸2の軸方向及び径方向の僅かな挙動や、密封摺動面Sの摩耗に対して静止側密封要素4が良好に追随し、密封摺動面Sにおける良好な密接状態を維持することができる。
【0021】静止側密封要素4の形状、寸法、重量等は、機器の取り合い寸法によって千差万別であるが、上記構成によれば、静止側密封要素4の同心性を保持する手段として径方向コイルスプリング8を用いているため、静止側密封要素4の重量に対応した支持荷重の調整が容易である。
【0022】また、静止側密封要素4(リテーナ41)の軸方向作動によって、パッド7が摩耗すると、これによってハウジング1に対する静止側密封要素4の同心性が悪化することが考えられるが、このような場合でも、シール全体を分解する必要はなく、プラグ9を取り外して貫通孔1eから径方向コイルスプリング8及び摩耗したパッド7を抜き出し、パッド7のみを新品と交換することによって、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0023】なお本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではない。例えば、図示の例では径方向コイルスプリング8及びパッド7が軸方向に対して一列に配置されているが、静止側密封要素4(リテーナ41)の形状や重量によっては、軸方向に対して二列以上配置しても良い。
【0024】
【発明の効果】以上の説明のとおり本発明に係るメカニカルシールによると、軸径の大きな機器に使用される大重量の静止側密封要素を有するものであっても、この静止側密封要素が、弾性支持体で付勢された低摩擦摺動片を介して、弾性的にかつ軸方向摺動自在に支持されることによって、ハウジングとの同心性が保持されると共に、軸方向及び径方向に対して移動可能な状態を確保されるので、軸心に対する密封摺動面の垂直性及び軸変位等に対する良好な追随作動性が維持され、優れた密封性能が得られる。
【出願人】 【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
【出願日】 平成11年9月7日(1999.9.7)
【代理人】 【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
【公開番号】 特開2001−74147(P2001−74147A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−252657