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【発明の名称】 回転軸シール
【発明者】 【氏名】細川 敦

【氏名】小畑 博美

【氏名】藤井 俊郎

【氏名】横町 尚也

【要約】 【課題】特に高圧下で使用され、リップ先端部の変形が少なくて、摩耗が少なく、耐久性に優れ、かつ、面接触を防止した密封性の安定した回転軸シールを提供する。

【解決手段】リップ先端部13bの先端角部14が、未加圧状態で、回転軸32に締め代なしの線接触乃至微小に離間し、かつ、流体収納室33の加圧状態で、先端角部14が、回転軸32に接触するよう形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングと回転軸の間に介装され、該回転軸に摺接するシールエレメントと、該シールエレメントより流体収納室側に配設されて上記回転軸に摺接するゴム製リップ先端部とを、備えた回転軸シールに於て、該リップ先端部の先端角部が、未加圧状態で、上記回転軸に締め代なしの線接触乃至微小に離間し、かつ、該流体収納室の加圧状態で、該回転軸に接触するよう形成されたことを特徴とする回転軸シール。
【請求項2】 リップ先端部は回転軸の軸心に対して所定の傾斜角度を有し、かつ、該回転軸の軸心に対して所定の傾斜角度を成す勾配受け面を有するサポート金具を付設して、流体収納室側へしだいに縮径する上記リップ先端部の背面を保持するように構成した請求項1記載の回転軸シール。
【請求項3】 所定の傾斜角度を10°〜45°とした請求項2記載の回転軸シール。
【請求項4】 サポート金具の勾配受け面の先端角部にアール状面取り部を形成した請求項2又は3記載の回転軸シール。
【請求項5】 ゴム製リップ先端部のJIS硬度を、87〜96に設定した請求項1,2,3又は4記載の回転軸シール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、回転軸シールに関し、特にカーエアコン用コンプレッサ等に於ける高圧流体を密封するのに用いられる回転軸シールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来のこの種の回転軸シールとしては、図8に示すようなものが知られている。即ち、この回転軸シールは、コンプレッサのケース等のハウジング31と、回転軸32の間に介装され、流体収納室内の流体や気体を密封する。
【0003】その構造は、アウターケース34にゴム製シール部材35が接着され、さらに、螺旋溝付きの第1シールエレメント36・第2シールエレメント37を、第1インナーケース38・ワッシャ39・第2インナーケース40等を介して、アウターケース34内に(かしめにて)一体化されている。
【0004】ゴム製シール部材35は、流体収納室33側へしだいに縮径するリップ先端部41を有するが、回転軸32にこのリップ先端部41の先端が帯状に面接触して密封作用をなす。即ち、静止時は流体収納室33の圧力、及びリップ先端部41自身のゴム弾性力によって、流体が完全に密封される。
【0005】そして、回転軸32の回転時には、リップ先端部41と回転軸32の摺接部から僅かな漏れを発生したとしても、第1・第2シールエレメント36,37の螺旋溝(スクリュ溝)のハイドロダイナミック効果により上記漏れを(図8の左方向へ)押しもどし、回転軸シール全体としては密封を行いえる構造である。
【0006】具体的に述べると、図9(イ)に示すように、回転軸32への非装着状態(自由状態)のゴム製シール部材35に於て、リップ先端部41には、締め代Gを設けて、回転軸32の外径より内方に締め代部42を形成していた。図9(ロ)に示すように、ゴム製シール部材35に於て、締め代部42には、ゴムの弾性による緊迫力F4 が、回転軸32の外周面に対して働く。そして、図9(ハ)に示すように、流体収納室33の加圧状態で(流体の圧力Pにより)加圧されたゴム製シール部材35に於て、締め代部42には、(圧力Pの加圧による)自封力F5 と、(常時作用する)緊迫力F4 が働き、結果、締め代部42には、回転軸32の外周面に対して、全体力F6 (=F4 +F5 )が働く。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】上述の従来のシールに於て、流体収納室33の圧力が高い場合、(図8と図9(ハ)中に矢印P方向に高圧力が作用して)リップ先端部41の先端角部が大きく変形し、回転軸32と帯状面接触状態となり、密封性(シール性)が不安定となり、かつ、第1シールエレメント36の密封性(シール性)にも影響し、早期に漏れが発生するという問題、及び、リップ先端部41の回転軸32との接触部位の摩耗も大きいという問題がある。
【0008】そこで、本発明は、特に(CO2 等の高圧冷媒を使用する)高圧下で使用され、リップ先端部の変形が少なくて、摩耗が少なく、耐久性に優れ、かつ、面接触を防止した密封性の安定した回転軸シールを提供する。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、ハウジングと回転軸の間に介装され、該回転軸に摺接するシールエレメントと、該シールエレメントより流体収納室側に配設されて上記回転軸に摺接するゴム製リップ先端部とを、備えた回転軸シールに於て、該リップ先端部の先端角部が、未加圧状態で、上記回転軸に締め代なしの線接触乃至微小に離間し、かつ、該流体収納室の加圧状態で、該回転軸に接触するよう形成されたものである。
【0010】また、リップ先端部は回転軸の軸心に対して所定の傾斜角度を有し、かつ、該回転軸の軸心に対して所定の傾斜角度を成す勾配受け面を有するサポート金具を付設して、流体収納室側へしだいに縮径する上記リップ先端部の背面を保持するように構成したものである。
【0011】また、所定の傾斜角度を10°〜45°としたものである。また、サポート金具の勾配受け面の先端角部にアール状面取り部を形成したものである。また、ゴム製リップ先端部のJIS硬度を、87〜96に設定したものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態に基づき本発明を詳説する。
【0013】図1は本発明に係る回転軸シールを示し、例えば、流体収納室33側に高圧の冷媒(CO2 等)が作用するカーエアコンコンプレッサ等に使用される。
【0014】即ち、この回転軸シールは、コンプレッサのケース等のハウジング31と、回転軸32(の外周面)との間に介装され、高圧の冷媒等の流体を密封するのに用いられる。
【0015】具体的構成は、図1に示すように、内鍔部2,3を有する金属製アウターケース1と、このアウターケース1の円筒部4の外周面と内鍔部2の両面に接着・溶着・焼付等によって固着一体化されたゴム製シール部材5と、螺旋溝6…付きの第1シールエレメント7・第2シールエレメント8と、第1インナーケース9と、ワッシャ10と、第2インナーケース11と、サポート金具12と、から成る。
【0016】ゴム製シール部材5は、ハウジング31内周面に弾発的に接して密封作用を成すため(自由状態では)凹凸波状に外周面が形成された円筒部被覆部5aと、一方の内鍔部2の内外両面を被覆する断面U字形の内鍔外被部5bと、この断面U字形の内鍔外被部5bの内周側から流体収納室33側へ突設されたリップ部13と、から構成されている。
【0017】このリップ部13は、さらに、短円筒部13aと、流体収納室33側へしだいに縮径するリップ先端部13bとから成り、リップ部13は略同一の肉厚で、(図1のように)断面“へ”の字状に折曲がった形状である。このリップ先端部13bの先端角部14は、未加圧状態では回転軸32(の外周面)に締め代なしの線接触乃至微小に離間するように、形状・寸法が設定されている。なお、締め代とは、図9に示す従来例の符号Gに相当し、締め代なしとは、G≒0のことを指し、微小に離間とは、G<0を指す。
【0018】ところで、このゴム製シール部材5の内鍔外被部5bの反流体収納室側部乃至内径部、及び、短円筒部13aと、リップ先端部13bに密着して支持するように、サポート金具12が、第1シールエレメント7とこのゴム製シール部材5との間に、介装されている。
【0019】図2と図1に示すように、回転軸32の軸心Lに対して、リップ先端部13bは10°〜45°の傾斜角度を有するので、これに対応させてサポート金具12は、上記軸心Lに対して、10°〜45°の傾斜角度θを成すように勾配受け面Aを先端に有する。
【0020】具体的には、サポート金具12は、軸心Lに直交する平板部15と、軸心Lを中心とする短円筒状の円筒部16と、から成り、断面略L字形であるが、その円筒部16の(流体収納室33側の)先端部16aを、先端へしだいに縮径するように折曲部17にて前記傾斜角度θをもって折曲げて、該先端部16aの外周面を前記勾配受け面Aとしている。折曲部17は、シール部材5の短円筒部13aとリップ先端部13bの折曲内隅部に、対応して、密着する。そして、図2(ロ)に示すように、サポート金具12の勾配受け面Aの先端角部にアール状面取り部20を形成するのが、良い。即ち、圧力Pが作用したとき、サポート金具12の先端角部がリップ部13のリップ先端部13bに食い込んでリップ先端部13bに亀裂が入るのを、有効に防止できる。
【0021】なお、図1に示したように、ゴム製シール部材5が予め接着等で一体化されたアウターケース1であって、他方の内鍔部3を形成しないストレート状態(円筒状態)で、サポート金具12、第1シールエレメント7、第1インナーケース9、ワッシャ10、第2シールエレメント8、第2インナーケース11を順次嵌込み、その後、かしめ加工にて内鍔部3を形成して、全体を一体化する。
【0022】サポート金具12、第1・第2インナーケース9,11、ワッシャ10、及び、アウターケース1の材質は鋼等の金属とし、かつ、第1・第2シールエレメント7,8はPTFE等のふっ素系樹脂とし、さらに、シール部材5は耐冷媒性を考慮してHNBRを用いるが、特に好ましいのは、受圧時の変形を防止するため(配合によって)JIS硬度を87〜96に設定したものが良い。JIS硬度が87未満であると変形が多くなり、逆に96を越すと弾性がやや不足する。
【0023】そして、シール機能を説明すると、図4(イ)に示すように、流体収納室33の未加圧時の装着状態では、リップ先端部13bの先端角部14が、回転軸32の外周面に締め代なしの線接触乃至微小に離間し、図4(ロ)に示すように、流体収納室33の加圧状態で、リップ部13に圧力Pが作用することで、先端角部14には、回転軸32の外周面に対して、(加圧による)自封力F1 が働き、先端角部14が、回転軸32に線接触するようになる。また、この場合、従来例(図9)のような締め代部(42)がないため、回転軸32の外周面に対して、ゴムの弾性による緊迫力(F4 )は発生せず(又は発生したとしても微小であり)、リップ先端部13b(の先端角部14)の回転軸32に作用する力は、従来例(図9)に比べ、緊迫力(F4 )分小さくなる。
【0024】従って、回転軸32に作用する力が小さくなり、結果として、リップ先端部13bの(接触面圧が低くなって)摩耗が低減される。また、特に(CO2 等の)高圧冷媒を使用する場合は、負圧になることはなく、絶えず加圧されている状態にあるため、回転軸32の静止時に於ける密封に有効である。
【0025】また、リップ先端部13bに圧力Pが作用した際、裏面側(内径側)から、サポート金具12の勾配受け面Aによって受持(サポート)され、変形防止が図られ、高圧力下でのリップ先端部13bの密封(シール)性能を良好に維持できる。
【0026】このように、軸心Lに対して、10°≦θ≦45°なる式を満たす傾斜角度θの勾配受け面Aを、サポート金具12に形成して、リップ先端部13bの傾斜角度と略一致して、これを裏面(背面)側から確実に保持(サポート)して、受圧(符号P参照)時の変形を防止できる。リップ先端部13bの傾斜角度を10°〜45°に維持することによって、優れたシール性(密封性)を発揮できる。
【0027】図3は、別の実施の形態を示し、従来のオイルシールに於て提案されている実公平2−47311号公報記載のバックアップリング45を、ゴム製シール部材5のリップ部13の保持に適用した場合を示す。即ち、このバックアップリング45ではその先端45aが直角90°に曲がっている。そして、先端角部14の締め代は、零(乃至マイナス、即ち微小離間)に設定される。
【0028】なお、図1と図4(イ)に示すように、未加圧状態のリップ先端部13bの先端角部14と回転軸32との距離δを、回転軸32の外径寸法Dの7%以下とするのが好ましく、リップ先端部13bの先端角部14の摩耗を防ぐと共に、優れたシール性(密封性)を発揮できる。仮に、7%を越えると、リップ部13が圧力P(図4(ロ)参照)を受けても、リップ先端部13bが回転軸32に必要十分に接触せずに、流体が漏洩し、確実な密封が期待できない。
【0029】次に、図5と図6は、本発明の他の実施の形態を示す。図1,図2と比較すれば明らかな如く、次の構成が相違している。
【0030】即ち、図1の第1シールエレメント7を省略し、その分、十分な肉厚寸法Tのサポート金具12とすると共に、このサポート金具12は(図1の折曲部17等を省略して)先端面をシール部材5のリップ部13の裏面(背面)側に密着受持する形状として、勾配受け面Aを形成したものである。
【0031】この勾配受け面Aが、回転軸の軸心Lをなす傾斜角度θは前実施の形態と同様の数値範囲に設定される。それ以外も、同一符号は同様の構成であるので、説明を省略する。
【0032】また、図7に、本発明のさらに別の実施の形態を示す。図4と図6と比較すれば明らかな如く、次の構成が相違している。
【0033】即ち、図7(イ)に示すように、回転軸32へ装着した未加圧状態で、サポート金具12は、リップ部13(のリップ先端部13b)の裏面(背面)側に密着受持する勾配受け面Aを有すると共に、リップ部13(の短円筒部13a)の裏面(背面)側と、サポート金具12の円筒部16と、の間に、隙間部Sを有するよう構成したものである。
【0034】そして、図7(ロ)に示すように、加圧運転時、流体収納室33側に於てリップ部13に圧力Pが作用することで、リップ部13(の短円筒部13a)が、隙間部Sに侵入するよう弾性変形する。
【0035】このとき、リップ部13のリップ先端部13bが、回転軸32から離間する方向に、勾配受け面A上に沿って引張られる。即ち、リップ先端部13bの先端角部14には、回転軸32から離間する方向に引張力F2 が働く。
【0036】このように、リップ先端部13bの先端角部14には、回転軸32から離間する方向に引張力F2 が働く。また、先端角部14には、(既述の如く)自封力F1 が働き、結果、回転軸32の外周面に対して、全体力F3 (=F1 −F2 )が働く。
【0037】従って、図4に示す(隙間部Sが存在しない)場合に比べ、回転軸32に作用する力が(引張力F2 分)小さくなり、リップ先端部13bの摩耗が一層低減される。さらに、従来例(図9)と比べると、従来例(図9)の締め代部(42)(締め代G)が存在しないことと、隙間部Sを有することと、の相乗効果により、(緊迫力F4 と引張力F2 分小さくなり)リップ先端部13bの摩耗が一層低減される。
【0038】
【発明の効果】本発明は上述の構成により次のような著大な効果を奏する。
【0039】■ 回転軸32への装着時(未加圧状態)において緊迫力が発生しない(乃至微小な緊迫力である)ため、流体収納室33の加圧状態下で、回転軸32に作用する力が小さくなり、リップ先端部13bの摩耗が低減される。
【0040】■ 特にリップ先端部13bが回転軸32に摺接する接触面積の増加を防ぎ、発熱・摩耗を防止できて、長寿命である。そして、流体収納室33の圧力が常に正圧である使用条件に好適である。
【0041】■ (請求項2によれば、)リップ先端部13bの背面に勾配受け面Aが確実に密着して保持して、リップ先端部13bの受圧時の変形を防止するので、優れたシール性能及び耐久性を発揮する。
【0042】■ (請求項3によれば、)リップ先端部13bの背面に勾配受け面Aが確実に密着して保持して、リップ先端部13bの受圧時の変形を防止するので、一層優れたシール性能及び耐久性を発揮する。
【0043】■ (請求項4によれば、)リップ先端部13bの背面に、サポート金具12の先端角部が食い込んで、亀裂を発生することを有効に防止し、ゴム製シール部材5の寿命が延びる。
【0044】■ (請求項5によれば、)ゴム硬度が高いため、サポート金具12との相乗効果によって、シール性能及び耐久性が、一層良好となる。
【出願人】 【識別番号】000003263
【氏名又は名称】三菱電線工業株式会社
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機製作所
【出願日】 平成11年9月2日(1999.9.2)
【代理人】 【識別番号】100080746
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 武嗣
【公開番号】 特開2001−74145(P2001−74145A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−248879