| 【発明の名称】 |
リップ型シール |
| 【発明者】 |
【氏名】池田 康浩
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| 【要約】 |
【課題】軸回転時に機内空間S1が高圧になっても、エラストマ製リップ部材12の先端リップ部124の摺動負荷が増大せず、軸停止時の密封性能を長期間維持することが可能なリップ型シールを提供する。
【解決手段】ハウジング1の内周に固定される筒状ケース11の内周に、エラストマ製リップ部材12と、その本体部分123を背面側から支承する内側バックアップリング13と、その背面側に配置された合成樹脂(PTFE)製リップ部材14が保持されている。エラストマ製リップ部材12の先端リップ部124の内周面には軸回転時に漏れ方向のポンピング作用を生じる螺子溝125が形成され、合成樹脂(PTFE)製リップ部材14の先端リップ部143の内周面には漏れと反対方向のポンピング作用を生じる螺子溝144が形成されている。これによって、エラストマ製リップ部材12の先端リップ部124の背面空間S3の圧力が、機内空間S1の圧力と拮抗し、前記先端リップ部124の摺動負荷を緩和する。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 密封空間側へ延びる内径側の先端リップ部が回転軸の外周面と密封的に摺接されるエラストマ製リップ部材と、その背面側に配置され密封空間側へ延びる内径側の先端リップ部が前記エラストマ製リップ部材の先端リップ部より反密封空間側で前記回転軸の外周面と密封的に摺接される合成樹脂製リップ部材とを備え、前記エラストマ製リップ部材の先端リップ部内周面に軸回転時に漏れ方向のポンピング作用を生じるポンピング螺子が形成され、前記合成樹脂製リップ部材の先端リップ部内周面に軸回転時に漏れと反対方向のポンピング作用を生じるポンピング螺子が形成されたことを特徴とするリップ型シール。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、各種回転機器を軸封するリップ型シールにおいて、密封対象流体が著しく高圧になるような条件での耐圧性及び密封性を向上させる技術に関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来から、圧縮機等に使用される軸封装置として、図4に示すようなリップ型シール100がある。この種のリップ型シール100は、軸受部ハウジング1の内周にOリング3を介して密嵌固定される金属製の筒状ケース101の内周に、エラストマ製リップ部材102と、このエラストマ製リップ部材102をその背面側(密封対象の機内空間S1と反対側)から支承する金属製の内側バックアップリング103と、この内側バックアップリング103の背面側に配置されたPTFE等の合成樹脂からなるリップ部材104と、更にこの合成樹脂製リップ部材104の背面側に添設された金属製の外側バックアップリング105が、それぞれの外径部を互いに密着した状態で保持された構造を備える。 【0003】この種のリップ型シール100において、エラストマ製リップ部材102は、機内空間S1側へ延びる内径側の先端リップ部102aが回転軸2の外周面と密接することによって、主に軸停止時に機内空間S1内の高圧流体の漏れを阻止するものである。一方、合成樹脂製リップ部材104は、その先端リップ部104aの内周面に軸回転時に流体をエラストマ製リップ部材102側へ送り出す方向性の螺旋溝(図示省略)が形成されており、すなわち主に軸回転時に、エラストマ製リップ部材102の摺動部を通過した機内空間S1内の密封対象流体が大気S2側へ漏れるのを阻止するものである。また、機内空間S1が高圧になった時のエラストマ製リップ部材102の変形は、内側バックアップリング103によって規制される。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、回転軸2の偏心や、摺動による摩耗等に対する追随性を確保する必要から、エラストマ製リップ部材102の先端リップ部102aは内側バックアップリング103で支承されていないため、機内空間S1が高圧になると、その圧力によって前記先端リップ部102aが内径側へ変形され、回転軸2の外周面との摺動負荷が増大することが避けられない。上記従来構造のリップ型シール100では、使用可能な圧力条件は約7kg/cm2G(0.7MPa)までであり、機内空間S1がそれ以上の圧力になると、エラストマ製リップ部材102の先端リップ部102aが摺動面積の増大による摺動発熱量の増大や潤滑不足の発生を来して早期に損耗し、その結果、軸停止時の密封機能を奏し得なくなるといった問題が指摘される。 【0005】本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、その主な技術的課題とするところは、軸回転時に密封空間が高圧になっても、エラストマ製リップ部材の先端リップ部の摺動負荷が増大せず、軸停止時の密封性能を長期間維持することが可能なリップ型シールを提供することにある。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明は、軸回転時に、エラストマ製リップ部材の背面の圧力を正面側から作用する密封空間の圧力と拮抗させることによって、上述した技術的課題を有効に解決するものである。 【0007】すなわち、本発明に係るリップ型シールは、密封空間側へ延びる内径側の先端リップ部が回転軸の外周面と密封的に摺接されるエラストマ製リップ部材と、その背面側に配置され密封空間側へ延びる内径側の先端リップ部が前記エラストマ製リップ部材の先端リップ部より反密封空間側で前記回転軸の外周面と密封的に摺接される合成樹脂製リップ部材とを備え、前記エラストマ製リップ部材の先端リップ部内周面に軸回転時に漏れ方向のポンピング作用を生じるポンピング螺子が形成され、前記合成樹脂製リップ部材の先端リップ部内周面に軸回転時に漏れと反対方向のポンピング作用を生じるポンピング螺子が形成されたものである。なお、ここでいう「背面」とは密封空間とは反対側の面のことである。 【0008】 【発明の実施の形態】図1は、本発明に係るリップ型シールの好適な実施形態を示すもので、(A)は機器への未装着状態、(B)は装着状態を示すものである。この図において、参照符号1は流体圧縮機の軸受部のハウジング、2は前記ハウジング1の内周に挿通され軸心Oを中心にして回転される回転軸、10はこの実施形態に係るリップ型シールである。 【0009】リップ型シール10は、密封空間である機内空間S1と、反密封空間である大気S2側との間で回転軸2を軸封するもので、金属製の筒状ケース11と、この筒状ケース11の内周にそれぞれ外周部が保持されたエラストマ製のリップ部材12、金属製の内側バックアップリング13、PTFE製のリップ部材14、金属製の外側バックアップリング15及び金属製のプルリング16とを備えている。 【0010】筒状ケース11は、機内空間S1側の端部に内周側へ凹んだ形状に形成され円周方向に連続したOリング装着部111と、そこから大気S2側に延びる円筒状本体部112と、この円筒状本体部112の大気S2側の端部に内径側へ屈曲形成されたカシメ部113とを有する。そしてこの筒状ケース11は、前記Oリング装着部111に装着したOリング3を介してハウジング1の内周面1aに圧入されると共に、前記内周面1aに形成された環状溝1bに嵌着したスナップリング4によって前記ハウジング1の段差面1cとの間で軸方向に対して拘束されるようになっている。 【0011】エラストマ製リップ部材12は、断面略L字形を呈する金属製の補強環122が埋設された外径基部121と、この外径基部121から内径側かつ機内空間S1側へ湾曲して延びる本体部分123と、内径縁124aが回転軸2の外周面と摺接される先端リップ部124とを有する。 【0012】鋼板等の金属板からなる内側バックアップリング13は、エラストマ製リップ部材12の背面に沿って湾曲した形状に成形されており、内径側へ屈曲した先端部13aは、前記エラストマ製リップ部材12の先端リップ部124の背面に達している。すなわち、この内側バックアップリング13は、エラストマ製リップ部材12における外径基部121から本体部分123にかけての部分を背面側から支承し、機内空間S1の流体圧力によるエラストマ製リップ部材12の変形を規制しているものである。 【0013】PTFE製リップ部材14は、エラストマ製リップ部材12の外径基部121及び内側バックアップリング13の外径部と外側バックアップリング15とで挟持された外径部141の内周から機内空間S1側へ湾曲して延びる形状を呈し、その先端リップ部143の内周面が、前記内側バックアップリング13の先端部13aより大気S2側へ適宜後退した位置で、回転軸2の外周面と摺接されるようになっている。 【0014】外側バックアップリング15は、このPTFE製リップ部材14の外径部141及び湾曲部142をその背面側からバックアップするものであり、プルリング16は、当該リップ型シール10をハウジング1の内周から外側へ引き抜いて取り外す際に引き抜き用治具を引掛けるためのものである。 【0015】エラストマ製リップ部材12、内側バックアップリング13、PTFE製リップ部材14、外側バックアップリング15及びプルリング16は、各外径部同士が互いに軸方向に密接された状態で、筒状ケース11におけるOリング装着部111とカシメ部113との間に固定されている。そしてエラストマ製リップ部材12の外径基部121は、筒状ケース11の円筒状本体部112の内周面に適当な圧縮状態で密接されることによって、筒状ケース11とエラストマ製リップ部材12の間の気密性を保持するガスケット部として機能している。 【0016】エラストマ製リップ部材12において回転軸2の外周面との摺動部となる先端リップ部124の内径縁124aの背面側に形成されたテーパ状内周面には、回転軸2の回転によって漏れ方向、すなわち機内空間S1側の流体をエラストマ製リップ部材12の先端リップ部124の背面空間S3へ送り込むポンピング作用を生じる方向性の螺子溝125が形成されている。また、PTFE製リップ部材14において回転軸2の外周面との摺動部となる先端リップ部143の内周面には、回転軸2の回転によって漏れ遮断方向、すなわち前記背面空間S3から大気S2側への漏れ圧力と対抗するポンプ圧力を生じる方向性の螺子溝144が形成されている。 【0017】以上の構成において、圧縮機の駆動時(軸回転時)には、機内空間S1の圧力がエラストマ製リップ部材12に作用するが、このエラストマ製リップ部材12の外径基部121から本体部分123にかけての部分は、内側バックアップリング13によって背面側から支承されているので、前記圧力による内径方向への変形が規制される。 【0018】エラストマ製リップ部材12の先端リップ部124は、内側バックアップリング13による支持を受けていないが、軸回転時は、エラストマ製リップ部材12の先端リップ部124に形成された螺子溝125の漏れ方向ポンピング作用によって機内空間S1から空間S3へ流体が積極的に導入されるので、前記先端リップ部124における回転軸2との摺動部に厚い潤滑膜が形成される。また、空間S3から大気S2側への流体の漏洩は、PTFE製リップ部材14の先端リップ部143に形成された螺子溝144による前記螺子溝125とは逆方向のポンピング作用によって遮断される。 【0019】しかも、エラストマ製リップ部材12の螺子溝125の漏れ方向ポンピング作用と、PTFE製リップ部材14の螺子溝144の漏れ遮断方向ポンピング作用によって、エラストマ製リップ部材12の背面空間S3内は機内空間S1と拮抗する圧力となる。したがって、機内空間S1の圧力によるエラストマ製リップ部材12の先端リップ部124の縮径変形が抑えられる。 【0020】また、軸停止時は、PTFE製リップ部材14の先端リップ部143に形成された螺子溝144による漏れ遮断方向のポンピング作用は失われるが、エラストマ製リップ部材12の先端リップ部124に形成された螺子溝125の漏れ方向ポンピングも行われなくなるので、空間S3には機内空間S1と拮抗する圧力を生じない。このため、機内空間S1の圧力及びエラストマの有する弾性によって、エラストマ製リップ部材12の先端リップ部124が回転軸2の外周面と密接状態になり、機内空間S1から空間S3への密封対象流体の漏洩を遮断する。 【0021】図2は、図1に示す上記実施形態によるリップ型シール10(実施例1,2)と、先に説明した図4に示された従来のリップ型シール100による漏洩試験を、次の試験条件において実施した結果を示すものである。 [試験条件] 試験機・・・・・・・・・・・・・・単体回転試験機 回転軸の回転数・・・・・・2000rpm 密封空間の圧力・・・・・・20kgf/cm2G(N2ガス加圧) 密封液の温度・・・・・・・・100℃ 密封液の種類・・・・・・・・PAG油 試験時間・・・・・・・・・・・・100時間【0022】この試験結果から明らかなように、本発明に係る実施例1,2のリップ型シールでは、100時間運転しても油の漏洩が全く認められず、しかも20kgf/cm2G(2MPa)の高圧条件でもエラストマ製リップ部材の摩耗が従来例に比較して著しく小さいことが確認された。 【0023】なお、本発明は図1に示された実施形態に限らず、例えば図3に示された他の実施形態のように、筒状ケース11に一体的に加硫成形されたエラストマ製リップ部材12の外径基部121aがハウジングの内周面との密封手段として機能し、図1(B)のようなOリング3の装着を不要にしたものにも適用することができる。すなわちエラストマ製リップ部材12及びその背面側に配置された合成樹脂製リップ部材14が一体的に保持された基本構造を有するものであれば実施可能である。 【0024】 【発明の効果】本発明のリップ型シールによると、軸回転時にエラストマ製リップ部材の背面の圧力が正面側から作用する密封空間の圧力と拮抗することによって、このエラストマ製リップ部材の良好な潤滑状態が維持されると共に摺動負荷が抑制されるので、先端リップ部の早期摩耗が防止され、優れたシール性及び耐久性を発揮することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000101879 【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年9月3日(1999.9.3) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100071205 【弁理士】 【氏名又は名称】野本 陽一
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| 【公開番号】 |
特開2001−74143(P2001−74143A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月23日(2001.3.23) |
| 【出願番号】 |
特願平11−249655 |
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