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【発明の名称】 シリンダヘッドガスケット
【発明者】 【氏名】宮應 芳男

【要約】 【課題】セミクローズドデッキタイプエンジンに使用するシリンダヘッドガスケットにおいて、ボア穴用シール手段から漏出したガスをシリンダヘッドガスケットのガス逃がし部から外部に案内して逃がし、万一ボア穴用シール手段からガスが漏出しても、水穴に入らないようにすることができるシリンダヘッドガスケットを提供する。

【解決手段】多気筒のセミクローズドデッキタイプエンジンのボア穴12の周囲に配置された一連の水穴13を囲んでシールする水穴用シール手段23を、前記ボア穴12側とガスケット10の外部に連通し前記ボア穴12から僅かに漏出する燃焼ガスを外部に流すガス逃がし部17を一か所だけ設けて形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 多気筒のセミクローズドデッキタイプエンジンのボア穴の周囲に配置された一連の水穴を囲んでシールする水穴用シール手段を、前記ボア穴側とガスケットの外部に連通し前記ボア穴から僅かに漏出する燃焼ガスを外部に流すガス逃がし部を一か所だけ設けて形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】 多気筒のセミクローズドデッキタイプエンジンのボア穴の周囲に配置された水穴を二群に分けると共に、この各群の前記水穴をそれぞれ囲んでシールする第1及び第2の水穴用シール手段を、前記ボア穴側とガスケットの外部に連通し、前記ボア穴から僅かに漏出する燃焼ガスを外部に流すガス逃がし部を二か所だけ設けて形成したことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】 前記ガス逃がし部を前記シリンダヘッドガスケットの長手方向の端側に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項4】 前記水穴用シール手段を、ハーフ又はフルのビードで形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項5】 前記水穴用シール手段であるビードのボア側の強度を外側の強度より強く形成したことを特徴とする請求項4記載のシリンダヘッドガスケット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関のシリンダヘッドとシリンダブロックの二部材の間に装着されるヘッドガスケットに関するものであり、より詳細には、多気筒のセミクローズドエンジンの水穴用ビードとガス逃がし部を有するシリンダヘッドガスケットに関する。
【0002】
【従来の技術】自動車用のエンジンに使用されるシリンダヘッドガスケットには、その用途に応じて、ボア穴、水穴、オイル穴、ボルト穴等が形成されており、それぞれのシール対象穴に対して様々なシール手段が設けられている。
【0003】このシリンダヘッドガスケットは、シリンダブロックの形状に合わせて製造されるが、このシリンダブロックには、シリンダを冷やすために設けられているウォータージャケットの形態により、オープンデッキタイプとクローズドデッキタイプとその中間のセミクローズドデッキタイプとがある。
【0004】オープンデッキタイプは、シリンダヘッドとの接合面においてボア穴の周囲にウォータージャケットに連通する冷却水通路が開口しているおり、冷却性能が良く、コンパクトで、シリンダブロックの製造も容易な構造である。
【0005】一方、クローズドデッキタイプは、シリンダヘッドとの接合面においてボア穴周囲には冷却通路がなく、ウォータージャケットはこの接合面のシリンダブロック部分で閉じており、開口部が無いので、高い剛性を確保でき、変形が少なく、高出力向きのエンジンに適している構造となる。しかし、開口部が無いため製造及び加工が複雑となり生産コストの面で不利となる。
【0006】そのため、セミクローズドデッキタイプでは、ウォータージャケットの開口部を部分的に塞いで、ボア周辺のウォータージャケットの上部をボアの周囲方向に関して部分的に閉じて、シリンダの剛性を確保すると共に、ウォータージャケットに連通する冷却水通路である開口部を有しているので、冷却性能が良く、また、製造も容易な構造となる。
【0007】本発明はこのセミクローズデッキタイプのエンジンに関係するものであり、このエンジンの場合には、図5に示すように、シリンダブロック30側のシリンダヘッドとの接合面31にウォータージャケットに連通する冷却水通路の開口部としての水穴33が各気筒のボア32の両側に円弧状に分割形成され、連続してボア32の周囲を囲んで配置されている。
【0008】従って、図6に示すように、シリンダヘッドガスケット40においても、構成板41に円弧状の水穴43が、ボア穴42の周囲に連続して配置されることになる。これらのボア穴42や水穴43やオイル穴45等の周囲にはそれぞれシール手段52,53,55が設けられ、それぞれのシールを確保している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、シリンダボアには、エンジンの作動時に、高圧高温状態の燃焼ガスが発生し、ボア穴42の周囲に設けたビード等で形成されるボア穴用シール手段52に作用する上に、エンジンが振動し、シリンダヘッドガスケット40に多様な変形が繰り返し発生するので、ボア穴42から燃焼ガスがボア穴用シール手段52を抜けて極僅かながらであるが漏出する場合がある。
【0010】この燃焼ガスの漏出が生じた場合に、漏出ガスの逃げ場が無く、しかも、水穴43の水穴用シール手段53部分のシール性能が劣化等により不充分になると、漏出ガスがこの水穴43を経由してウォータージャケット内に流入してガス溜まりを形成してしまうという問題がある。
【0011】このガス溜まりは、極少量ではあるが、局部的に冷却水が通過できない部分を形成してエア噛みを生じるため、このエア噛みの結果、冷却水の流通が制限され最悪の場合にはオーバーヒートとなるという問題がある。
【0012】また、ボア穴42からの極微小量の燃焼ガスがガスケット40の外部に漏出する際に、エンジンの機器や周辺機器に漏出ガスが接触すると、劣化させたり、機能に影響を与えたりする可能性があるので、出来るだけ漏出ガスがこれらの機器に接触しないようにする必要があるが、従来技術のガスケットでは、この漏出ガスがどこに漏れるが特定できないという問題もあった。
【0013】本発明はこれらの問題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、セミクローズドデッキタイプエンジンに使用するシリンダヘッドガスケットにおいて、ボア穴用シール手段から漏出したガスをシリンダヘッドガスケットのガス逃がし部から外部に案内して逃がし、万一ボア穴用シール手段からガスが漏出しても、水穴に入らないようにすることができるシリンダヘッドガスケットを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明に係るシリンダヘッドガスケットは、次のように構成される。
1)多気筒のセミクローズドデッキタイプエンジンのボア用シール穴の周囲に配置された一連の水穴を囲んでシールする水穴用シール手段を、前記ボア用シール穴側とガスケットの外部に連通し前記ボア用シール穴から僅かに漏出する燃焼ガスを外部に流すガス逃がし部を一か所だけ設けて形成する。
2)あるいは、多気筒のセミクローズドデッキタイプエンジンのボア用シール穴の周囲に配置された水穴を二群に分けると共に、この各群の前記水穴をそれぞれ囲んでシールする第1及び第2の水穴用シール手段を、前記ボア用シール穴側とガスケットの外部に連通し、前記ボア穴用シール手段から僅かに漏出する燃焼ガスを外部に流すガス逃がし部を二か所だけ設けて形成する。
【0015】つまり、一つ又は二つの水穴用シール手段で複数の水穴を囲んで、水穴のシールを行うと共に、この水穴用シール手段のボア側部分に、ボア穴用シール手段から僅かに漏出する燃焼ガスをシリンダヘッドガスケットの外側に導く案内路の役割を果させ、水穴用シール部の切れ目であるガス逃がし部を設け、このガス逃がし部から外部へ漏出ガスを逃がす。
【0016】従って、ボア穴用シール手段から僅かに漏出する燃焼ガスを、水穴用シール手段のボア側で案内してこのガス逃がし部から外部に排出することができるので、この漏出ガスが水穴用シール手段を通過して水穴を経由で水ジャケット内の冷却水側に流入することを防止できる。
3)上記シリンダヘッドガスケットにおいて、前記ガス逃がし部を前記シリンダヘッドガスケットの長手方向の端側に設ける。
【0017】つまり、二つの水穴用シール手段を使用する場合には、シリンダガスケットに対して各気筒の中心線を結んだ長手方向の直線に対して、両側に別れて、各気筒の片側の長手方向に並んだ水穴を連続してシールする第1及び第2の水穴用シール手段を設ける。
【0018】そして、長手方向の両端側に漏出ガスを導出することにより、漏出ガスの他の物に対する影響を少なくすることができ、また、ボルトでシリンダヘッドを締結した時に、この両端側の締め付け圧が発生し難いので、逃がし通路に適しているこの端部を漏出ガスのガス逃がし部として利用できる。
4)上記シリンダヘッドガスケットにおいて、前記水穴用シール手段を、ハーフ又はフルのビードで形成する。
【0019】この水穴用シール手段は、周知のシール手段で形成してよいが、ビードで形成すると容易に形成できる。また、水穴とボア穴との間が狭く、この部分にボア穴用シール手段と水穴用シール手段を配置する必要があるので、水穴用シール手段をハーフビードで形成するのが好ましい。
5)上記シリンダヘッドガスケットにおいて、前記水穴用シール手段であるビードのボア側の強度を外側の強度より強く形成して構成する。
【0020】従って、燃焼ガスに接し易く、高圧を受ける側の強度が強く、シール面圧を高く維持できるようになるので、より効率的に漏出ガスを外部へ誘導できる。
【0021】このビードの強度は、ビードの幅や高さ等を変化させることにより容易に変化することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】次に、図面を参照して本発明のシリンダヘッドガスケットの実施の形態について説明する。
【0023】図5に示すように、本シリンダヘッドガスケットが対象とする、多気筒のセミクローズドデッキタイプのシリンダブロック30はボア穴32の周囲に、ウォータージャケットに連通する円弧状等の水穴33や締結ボルト用のボルト穴34を有している。
〔第1の実施の形態〕そして、本発明の第1の実施の形態のシリンダヘッドガスケットは、図1に示すように、ガスケット10の構成板11に設けたボア穴12の周囲に、ビードやグロメット等の周知のシール技術であるボア穴用シール手段22が設けられる。
【0024】このボア穴用シール手段22の外側に配置された円弧状等の形状をした水穴13を一つの連続する水穴用シール手段23で囲む。
【0025】この水穴用シール手段23は、水穴13と共に、ボア穴12の周囲も囲むことになるが、ボア穴12の全周囲を完全に囲わずに、一か所だけにおいてボア穴12側とガスケット10の外側とが連通するガス逃がし部17を設けて形成する。
【0026】そして、シリンダヘッドガスケット10Aの長手方向の端部は、ボルトでシリンダヘッドを締結した時に締付圧が小さくなり易いので、この端部にガス逃がし部17を設けるのが良い。
【0027】この構成によれば、水穴用シール手段23のボア穴12側の水穴用シール手段23aと外側の水穴用シール手段23bとがその端の2か所で接続して一つに連なった水穴用シール手段23として形成されることになる。
〔第2の実施の形態〕また、本発明に係るシリンダヘッドガスケットの第2の実施の形態は、図2に示すように、ボア穴12の周囲に配置された水穴13を二つの連続する水穴用シール手段23A,23Bで囲む。
【0028】即ち、ボア穴12の周囲に配置された水穴13を、ボア穴12の中心を結ぶ直線Lに対して両側に配置された二群に分け、この直線Lに対してそれぞれ片側に配置される各群の水穴13をそれぞれひとまとめに囲んでシールする第1及び第2の水穴用シール手段23A,23Bを形成する。
【0029】従って、第1水穴用シール手段23Aと第2水穴用シール手段23Bは、ボア穴12の中心を結ぶ直線Lに対して両側に配置される。
【0030】そして、この水穴用シール手段23A,23Bの第1水穴用シール手段23Aと第2水穴用シール手段23Bとで、水穴13と共に、ボア穴12の周囲も囲むことになるが、ボア穴12の全周囲を囲んでしまわずに、第1水穴用シール手段23Aの端部と第2水穴用シール手段23Bの端部とが向かい合う二か所だけにおいて、ボア穴12側とガスケット10Aの外部に連通し、ボア穴12から僅かに漏出する燃焼ガスを外部に流すガス逃がし部17A,17Bを設ける。
【0031】このシリンダヘッドガスケット10Aの長手方向の端側は、ボルトでシリンダヘッドを締結した時に、この端側の締付圧が小さくなり易いので、逃がし通路に適しており、ガス逃がし部17A,17Bをこの部分に設けるのが良い。
〔水穴用シール手段〕以上の第1、第2の実施の形態のガスケット10,10Aに使用される水穴用シール手段23,23A,23Bとしては、図3及び図4に示すように、ハーフビード23a,23bやフルビード31a,31b等周知のシール手段やその組み合わせを使用することができるが、ハーフビード23a,23bは狭い部分に形成するのが容易であるので、このハーフビード23a,23bを採用するとコンパクトなエンジンに対しても適用できる。
【0032】そして、ガスケットの構成によっては、図4(g)に示すように、ビード37a,37b部分に積層板38,39が設けられていてもよく、また、この積層板は片側のみでも、両側でももよく、また一枚に限られず複数枚であってもよい。
【0033】そして、ハーフビードやフルビード等で形成される水穴用シール手段23,23A,23Bのボア穴12側の面圧に対する強度(剛性)を外側の強度より強く形成する。この強度の変化は、ボア穴12側のビード23aの幅Waを外側のビード23bの幅Wbよりも狭く形成したり、ボア穴12側のビード23aの高さHaを外側のビード23bの高さHbより高く形成することにより達成できる。
〔効果〕以上の構成のガスケット10,10Aによれば、次のような効果を奏することができる。
【0034】水穴用シール部23,23A,23Bで複数の水穴13を囲んで、水穴13のシールを行うと共に、ボア穴用シール手段22を抜けて漏れ出てきた燃焼ガスを、この水穴用シール手段23,23A,23Bのボア穴12側の部分23a,23Aa,23Baでガス逃がし部17,17A,17Bに案内して、シリンダヘッドガスケット10,10Aの外側に導くので、漏出ガスが水穴13を経由して水ジャケット内の冷却水側に流入することを防止できる。
【0035】また、シリンダヘッドガスケット10,10Aの長手方向の両端側に漏出ガスを導出することにより、漏出ガスが他の機器類に及ぼす影響を少なくすることができる。
【0036】更に、水穴用シール部23,23A,23Bのボア側即ち内側のビード23a,23Aa,23Baの強度を外側のビード23b,23Ab,23Bbより強く形成することにより、燃焼ガスに接し易く、高圧を受ける側のシール面圧を高く維持できるので、より水穴13への漏出ガスの侵入を防止できる。
【0037】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のガスケットによれば、次のような効果を奏することができる。
【0038】水穴用シール手段で複数の水穴を囲んで水穴のシールを行うと共に、ボア用シール部から極僅かであるが漏出する燃焼ガスを、この水穴用シール部のボア側部分でガス逃がし部に案内して、シリンダヘッドガスケットの外部に導くことができるので、漏出ガスが水穴を経由して水ジャケット内の冷却水側に流入することを防止でき、エンジンの冷却を良好な状態に維持できる。
【0039】シリンダヘッドガスケットの長手方向の片側端部又は両側端部に漏出ガスを導出することにより、漏出ガスの他の機器類の及ぼす影響を少なくすることができる。
【0040】水穴用シール部のボア側のビード、即ち燃焼ガスに接し易く、高圧を受ける側の強度を外側より強く形成することにより、シール面圧を高く維持できるので、水穴への漏出ガスの侵入防止効果を更に向上することができる。
【出願人】 【識別番号】000198237
【氏名又は名称】石川ガスケット株式会社
【出願日】 平成11年9月8日(1999.9.8)
【代理人】 【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一 (外2名)
【公開番号】 特開2001−74142(P2001−74142A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−253882