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【発明の名称】 シール装置
【発明者】 【氏名】田中 敦士

【要約】 【課題】高温下において安定したシール効果を得ることができるシール装置を提供することを目的とする。

【解決手段】シール装置1は、板部材2と、この板部材2の一端2aを第1部材B1に離間しつつ取り付ける取付部3とを備えている。板部材2は筒状の第1部材B1及び第2部材B2の内周面に沿ってセグメント状に複数配置されたものなので、高温下において使用される場合においても、各板部材2どうしの隣接部分の空間が熱による変形を吸収するので、安定したシール効果が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 筒状に形成された第1部材と第2部材との端部どうしの接合部分をシールするシール装置において、一端が前記第1部材に取り付けられ他端が前記第2部材に当接しつつ前記接合部分に沿って環状に複数配置される板部材を備えることを特徴とするシール装置。
【請求項2】 請求項1に記載のシール装置において、前記それぞれの板部材の一端を、前記第1部材と離間させつつ取り付ける取付部を備えることを特徴とするシール装置。
【請求項3】 請求項1又は2に記載のシール装置において、前記取付部は、前記板部材の変形を吸収するための空間部を備えることを特徴とするシール装置。
【請求項4】 請求項1〜3のいずれかに記載のシール装置において、前記板部材に設けられ、この板部材の振動を低減するための防振部材を備えることを特徴とするシール装置。
【請求項5】 請求項1〜4のいずれかに記載のシール装置において、前記第2部材と板部材との当接面に、この板部材の摩耗を防止するための摩耗防止部材を備えることを特徴とするシール装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、2つの部材の端部どうしの接合部分をシールするシール装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】例えば図6に示すようなガスタービンエンジン30において、空気取入口31から取り入れられた空気は圧縮機32によって高圧の圧縮空気に変換されたあと燃焼室に送られ、噴射された燃料とともに燃焼されて高温高圧ガスとなる。燃焼室を出た高温高圧ガスはタービンに送られ、タービンはこの高温高圧ガスを膨張させ、その熱エネルギーを出力部35などを駆動するための機械仕事として取り出す。このようなガスタービンエンジン30において、圧縮機32からの圧縮空気A1と燃焼室からの燃焼空気A2とは、スクロール(第1部材)61によって仕切られている。
【0003】図7はスクロール61部分(すなわち符号C部分)の拡大図である。図7において、第1部材61は筒状に形成されたものであり、有底筒状に形成された第2部材62の端部とその一部を重ね合わせるように配置されている。第1、第2部材61、62によって形成される内側の空間S1には圧縮機によって生成された高圧の圧縮空気A1が満たされており、外側の空間S2には燃焼室によって生成された燃焼空気A2が満たされている。このとき、内側空間S1の温度は例えば約300〜400度、外側空間S2の温度は例えば約1100〜1200度であり、内側空間S1の温度は外側空間S2の温度より低く、内側空間S1の圧力は外側空間S2の圧力より高い。
【0004】第1部材61の端部と第2部材62の端部との接合部分には、内側空間S1と外側空間S2との空気の出入りを規制するシール部材63が設けられている。このシール部材63は円環状に一体的に形成された板部材であって、一端63aは第1部材61の内周面に固定されており、他端63bは第2部材62の内周面に当接可能に自由端となっている。そして、他端63bが第2部材62の内周面に当接されることにより、内側空間S1の圧縮空気A1の外側空間S2への流入が防止されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】このとき、第1部材61は燃焼空気A2の影響を直接受けるので、シール部材63のうち第1部材61に固定されている一端63a側の温度は他端63b側の温度に比べて高くなる。したがって、シール部材63には熱分布の差による熱応力が発生する。シール部材63はこの熱応力によって変形するので、安定したシール効果を得られない。
【0006】一方、このシール部材63にスリットを形成することによってシール部材63に作用する熱応力を吸収する方法があるが、自励振動が発生するなど、安定したシール効果が得られない場合が多い。
【0007】本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、高温下において安定したシール効果を得ることができるシール装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の課題を解決するため、本発明のシール装置は、筒状に形成された第1部材と第2部材との端部どうしの接合部分をシールするシール装置において、一端が前記第1部材に取り付けられ他端が前記第2部材に当接しつつ前記接合部分に沿って環状に複数配置される板部材を備えることを特徴とする。
【0009】本発明によれば、シール部材を複数の板部材によって構成することにより、高温下で使用される場合においても、各板部材どうしの隣接部分の空間が熱による板部材の変形を吸収するので、各板部材は大きな熱応力を生じることなく安定したシール効果を得られる。
【0010】請求項2に記載のシール装置は、請求項1に記載のシール装置において、前記それぞれの板部材の一端を、前記第1部材と離間させつつ取り付ける取付部を備えることを特徴とする。
【0011】本発明によれば、板部材と第1部材とを離間させつつ取り付けることにより、例えば、第1部材が高温度となってもその熱は直接板部材に伝達されない。したがって、板部材の熱による変形は抑えられるので、安定したシール効果が得られる。
【0012】請求項3に記載のシール装置は、請求項1又は2に記載のシール装置において、前記取付部は、前記板部材の変形を吸収するための空間部を備えることを特徴とする。
【0013】本発明によれば、板部材を取り付ける取付部に空間部を設けることにより、熱による板部材の変形はこの空間部に吸収されるので、板部材に生じる熱応力は低減される。したがって、安定したシール効果が得られる。
【0014】請求項4に記載のシール装置は、請求項1〜3のいずれかに記載のシール装置において、前記板部材に設けられ、この板部材の振動を低減するための防振部材を備えることを特徴とする。
【0015】本発明によれば、板部材に防振部材を設けることにより、振動による板部材の劣化などは防止される。したがって、板部材は安定したシール効果を発揮する。
【0016】請求項5に記載のシール装置は、請求項1〜4のいずれかに記載のシール装置において、前記第2部材と板部材との当接面に、この板部材の摩耗を防止するための摩耗防止部材を備えることを特徴とする。
【0017】本発明によれば、第2部材と板部材との当接面に摩耗防止部材を設けることにより、板部材と第2部材との摩耗は防止されるので、板部材の劣化は抑えられる。したがって板部材は安定したシール効果を発揮する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施形態によるシール装置を図面を参照して説明する。図1は本発明のシール装置の一実施形態を示す側方断面図であり、図2は平面図であり、図3は正面図である。この場合シール装置1は、例えば図6に示す符号C部分に設けられるものである。
【0019】これらの図において、シール装置1は、板部材2と、この板部材2の一端2aを第1部材(スクロール)B1に取り付けるための取付部3とを備えている。第1部材B1は筒状に形成されており、この第1部材B1の端部は有底筒状に形成された第2部材B2の端部と重ね合うように配置されている。
【0020】これら各第1、第2部材B1、B2は、例えばガスタービンエンジンにおける圧縮機と燃焼室とを仕切るための部材である。すなわち、これら第1、第2部材B1、B2によって形成された内側の空間S1には圧縮機によって生成された高圧の圧縮空気A1が満たされており、外側の空間S2には燃焼室によって生成された燃焼空気A2が満たされている。このとき、内側空間S1の温度は例えば約300〜400度、外側空間S2の温度は約1100〜1200度であって、内側空間S1の温度は外側空間S2の温度より低いとともに、内側空間S1の圧力は外側空間S2の圧力より高い。また、筒状に形成された第1部材B1の端部は、第2部材B2の端部より半径方向外方(すなわち図1中、上側)に配置されている。
【0021】板部材2は、一端2aを取付部3によって第1部材B1の内周面に取り付けられ、他端2bを第2部材の内周面に対向するように延出しており、弾性変形することによって他端2bが第2部材B2の内周面の一部に当接可能に設けられている。そして、この板部材2は、第1、第2部材B1、B2の接合部分に沿って環状に複数(例えば30枚)配置されている。
【0022】取付部3は板部材2の一端2aを第1部材B1の内周面と離間させつつ取り付けるものである。この取付部3は、ボルト5と、台座6と、ナット7と、ブシュ8と、抑え板9とを備えている。取付部3は1つの板部材2に対して2つずつ設けられており、図2、4、5に示すように2種類の第1取付部3aと第2取付部3bとからなっている。この場合、第1取付部3aと第2取付部3bとはブシュ8の形態が異なっており、第1取付部3aは第1ブシュ8aを、第2取付部3bは第2ブシュ8bを備えている。
【0023】第1部材B1の内周面には、溶接によって固定される複数のボルト5が環状に配置されている。このボルト5には、リング状に形成された台座6が嵌め込められている。そして、ブシュ8と台座6との間には台座6側から、防振板(防振部材)10、板部材2、抑え板9が配されている。
【0024】台座6は溶接によってボルト5及び第1部材B1の内周面に固定されており、板部材2はこの台座6によって第1部材B1から離間するように取り付けられる。また、それぞれの板部材2の第1部材B側の面には、防振板10が互いの板面を当接させるように設置されている。すなわち、防振板10はそれぞれの板部材2と対応するように複数枚、第1、第2部材B1、B2の接合部分に沿うように環状に配置されている。この防振板10は、内側空間S1を流れる圧縮空気A1の作用によって生じる板部材2の振動を低減するためのものであり、板部材2の一端2aから他端2bに向かう途中位置まで延出するように設けられている。
【0025】抑え板9は1つの環状に形成された部材であり、第1部材B1の内周面に配された複数のボルト5に対応する複数の貫通穴を備えている。すなわち、例えばボルト5が第1部材B1の内周面に60個設置されている場合には抑え板9は60個の貫通穴を備えている。この抑え板9の断面形状は、板部材2の一端2a側部分である第1端部9aを第1部材B1に向かうように円弧状に折り曲げられ、他端2b側部分である第2端部9bを板部材2から離れるように円弧状に折り曲げれられている。このとき、第1端部9aと第1部材B1との離間距離が小さく設けられるので、この部分においてもシール効果が得られるようになっている。また、第2端部9bが板部材2から離れるように円弧状に折り曲げられていることにより、圧縮空気A1の作用により振動する板部材2と抑え板9との干渉が低減されるようになっている。
【0026】図4に示す第1ブシュ8aは、防振板10及び板部材2及び抑え板9を台座6との間において固定するものであり、抑え板9側に対向する側の一端面は平面状に形成されている。一方、図5に示す第2取付部3bの第2ブシュ8bは断面上向き凸状に形成されており、その凸状部分の径は、防振板10、板部材2、抑え板9に設けられている穴の径より小径に形成されている。そして、この第2ブシュ8bは、その凸状部分の端面が台座6に当接するようにナット7によって固定される。
【0027】すなわち、第2ブシュ8bの凸状部分において、板部材2と取付部3との間には空間部11が形成されている。このとき、第2取付部3bは板部材2を第1部材B1に固定しておらず、板部材2は第1取付部3aのみによって第1部材B1に固定されている。なお、この空間部11は防振板10、板部材2、抑え板9のそれぞれに形成された穴のうち、第2取付部3bに対応する穴を第1取付部3aに対応する穴より大径に形成することによっても設けることができる。
【0028】板部材2のうち、他端2bの第2部材B2の内周面と当接される部分には摩耗防止部材12が設けられている。この摩耗防止部材12は、例えば鉄などの金属によって形成される板状のものであり、それぞれの板部材2に対応するように設けられている。なおこの摩耗防止部材12の表面に摩耗防止剤をコーティングすることが可能である。
【0029】このようなシール装置1を第1部材B1に設置するには、まず、筒状に形成されている第1部材B1の内周面に沿って、ボルト5及び台座6を溶接によって固定する。このとき、台座6にはボルト5を係合するための座ぐりが形成されているので、ボルト5と台座6とは安定して一体的に固定される。
【0030】第1部材B1の内周面に固定されたボルト5には防振板10に形成されている穴がそれぞれ挿通され、この防振板10を挿通したボルト5に対して、板部材2に形成されている穴が挿通される。次いで、抑え板9に形成されている穴がそれぞれのボルト5に挿通される。
【0031】第1取付部3aによって板部材2を固定する場合、第1ブシュ8aがボルト5の先端側から挿入される。このとき、第1ブシュ8aの一端面は平面状に形成されており、この一端面全面が抑え板9に当接される。そして、ナット7をボルト5に挿通させて締め付けることにより、板部材2及び防振板10は、第1取付部3aによって1箇所において第1部材B1に固定される。
【0032】一方、第2取付部3bを板部材2に取り付ける場合、第2ブシュ8bがボルト5の先端側から挿入される。このとき、板部材2、防振板10、抑え板9のうち第2取付部3b側に対応する穴の径は大径に形成されており、第2ブシュ8bの凸状部分はその端面を台座6に当接するまで挿入される。そして、ナット7をボルト5に挿入して締め付けることにより、第2ブシュ8bは固定される。
【0033】このとき、第2ブシュ8bと板部材2及び防振板10との間には空間部11が形成される。この空間部11は、例えば板部材2が熱によって変形される場合においてこの変形分を吸収する。
【0034】一方、板部材2は第1取付部3aにより1箇所のみで固定されるので、第1取付部3aを中心に水平方向に回転する場合があるが、第2取付部3bのうち第2ブシュ8bの凸状部分と板部材2の穴とが干渉するすることにより、過剰な回転が防止されるようになっている。
【0035】このようなシール装置1による、第1部材(スクロール)B1と第2部材B2との端部どうしの接合部分のシール効果について説明する。内側空間S1に300〜400度程度の温度を有する高圧の圧縮空気A1が満たされ、外側空間S2に1100〜1200度程度の温度を有する低圧の燃焼空気A2が満たされている場合、内側空間S1の圧縮空気A1は第1部材B1と第2部材B2との間から外側空間S2に流出しようとする。このとき、各板部材2は圧縮空気A1の圧力によってそれぞれの他端2bを第2部材B2の内周面に押し付けるように変形される。板部材2は弾性変形可能であるため、他端2bは第2部材B2の内周面に安定して当接される。したがって、内側空間S1の圧縮空気A1の外側空間S2側への流出は防止される。また、板部材2は弾性変形可能であるため、例えば第2部材B2が熱により変形した場合においても、その変形分を吸収できるため、第2部材B2には熱応力が生じない。
【0036】このとき、板部材2の他端2bには摩耗防止部材12が設けられているので、圧縮空気A1の作用などによって板部材2が振動される状態においても板部材2の他端2bの摩耗は防止される。したがって、板部材2の劣化は防止されるので、安定したシール効果が得られる。
【0037】板部材2は、第1、第2部材B1、B2の内周面に沿うようにセグメント状に複数配置したものであり、ガスタービンエンジンにおける圧縮機と燃焼室との仕切部分など、高温下において使用される場合においても、各板部材2どうしの隣接部分の空間が熱による各板部材2の変形を吸収するので、板部材2は大きな熱応力を作用されることなく安定したシール効果を得ることができる。
【0038】また、取付部3に台座6を設けたことにより、板部材2は第1部材B1に対して離間するように取り付けられる。したがって、第1部材B1が燃焼空気A2の影響によって高温度になっても、この第1部材B1の熱は直接板部材2に伝達されないので、板部材2に作用する熱は低減される。そのため、板部材2の熱による変形は低減されるとともに、熱分布の差が小さくなるので熱応力の作用を抑えることができる。したがって、安定したシール効果が得られる。
【0039】熱によって生じる板部材2の変形は第2取付部3bの空間部11により吸収されるので、板部材2への熱応力の作用は防止される。したがって、安定したシール効果が得られる。また、板部材2は第1取付部3aにより1箇所において固定されるため水平方向に回転される場合があるが、この回転は第2ブシュ8bの凸状部分によって防止されるので、シール効果は損なわれない。なお、第2ブシュ8bのフランジ部分によって、板部材2及び防振板10は第2取付部3bから抜け出てしまうことがない。
【0040】そして、板部材2に防振板10を設けたことにより、板部材2は振動による劣化や破損は防止される。したがって、板部材2は安定した効果を得ることができる。
【0041】
【発明の効果】本発明のシール装置は、以下のような効果を有するものである。請求項1に記載の発明によれば、シール部材を複数の板部材によって構成することにより、高温下で使用される場合においても、各板部材どうしの隣接部分の空間が熱による板部材の変形を吸収するので、各板部材は大きな熱応力を生じることなく安定したシール効果を得られる。
【0042】請求項2に記載の発明によれば、板部材と第1部材とを離間させつつ取り付けることにより、例えば、第1部材が高温度となってもその熱は直接板部材に伝達されない。したがって、板部材の熱による変形は抑えられるので、安定したシール効果が得られる。
【0043】請求項3に記載の発明によれば、板部材を取り付ける取付部に空間部を設けることにより、熱による板部材の変形はこの空間部に吸収されるので、板部材に生じる熱応力は低減される。したがって、安定したシール効果が得られる。
【0044】請求項4に記載の発明によれば、板部材に防振部材を設けることにより、振動による板部材の劣化などは防止される。したがって、板部材は安定したシール効果を発揮する。
【0045】請求項5に記載の発明によれば、第2部材と板部材との当接面に摩耗防止部材を設けることにより、板部材と第2部材との摩耗は防止されるので、板部材の劣化は抑えられる。したがって板部材は安定したシール効果を発揮する。
【出願人】 【識別番号】000000099
【氏名又は名称】石川島播磨重工業株式会社
【出願日】 平成11年9月7日(1999.9.7)
【代理人】 【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武 (外1名)
【公開番号】 特開2001−74141(P2001−74141A)
【公開日】 平成13年3月23日(2001.3.23)
【出願番号】 特願平11−253645