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【発明の名称】 メカニカルシール
【発明者】 【氏名】藤永 繁行

【要約】 【課題】2つ割り構造のシールリングの各分割部品間に軸方向のズレが生じるのを抑えて、安定したシールが維持されるメカニカルシールを提供する。

【解決手段】2つ割り構造の回転環12に径大部12aを設け、この径大部12aの軸方向両側にOリング26・27を巻装し、かつ、回転環12が収納保持されるリングリテーナ13の開口端側にアダプタリング25を取付けて、このアダプタリグ25と、リングリテーナ13の底壁部13aとの間で、Oリング26・27を介して回転環12の径大部12aを軸方向に挟持して固定する。回転環12の各分割部品に軸方向のズレが生じることが抑えられ、これによって、より安定したシール性が維持される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 軸方向に相対向するシール面が相互に接するように被軸封機器の回転軸とハウジングとに各々取付けられる一対のシールリングを備え、これらシールリングの少なくとも一方の特定シールリングを周方向に複数に分割形成すると共に、この特定シールリングを径方向外方から囲う囲壁部と、特定シールリングの反シール面側の端面に軸方向に対面する底壁部とを有するリング保持体を設け、リング保持体の上記囲壁部の内周面とこの囲壁部内に挿入された特定シールリングの外周面との間に弾性体から成る環状の第1シール部材を介装させることによって特定シールリングを環状に保持して成るメカニカルシールであって、特定シールリングに第1シール部材の内径よりも外径が大きな径大部を第1シール部材の介装位置よりも反シール面側に設けると共に、第1シール部材を上記径大部の端面に軸方向に当接させて押圧すべくリング保持体の囲壁部の開口端側に固定されるアダプタリングを設けていることを特徴とするメカニカルシール。
【請求項2】 特定シールリングにおける上記径大部よりも反シール面側に径大部よりも外径が小さな端部突出部を設け、この端部突出部の外周に弾性体から成る環状の第2シール部材を巻装し、上記アダプタリングをリング保持体に固定することによって、第2シール部材が径大部および端部突出部間の段差面とリング保持体の底壁部との間で軸方向に押圧されるように形成していることを特徴とする請求項1のメカニカルシール。
【請求項3】 アダプタリングにおける第1シール部材に接する側とは反対側の端面に、このアダプタリングを軸方向に引き出すための引き出し具が螺着されるネジ穴を形成していることを特徴とする請求項1又は2のメカニカルシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被軸封機器の回転軸とハウジングとに各々取付けられたシールリングの各端面を相互に摺動接触させて軸封を行うメカニカルシールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】上記のようなメカニカルシールの例が例えば実公平8−3765号公報に記載されている。その装置は、図3(a)に示すように、被軸封機器の回転軸51の外周面に、軸方向に相対向する回転環52と固定環53との一対のシールリングを設けて構成され、回転環52は、その機内X側を回転側リング保持体54に挿入され保持されている。
【0003】この回転側リング保持体54よりも機内X側にはスプリングリテーナ55が回転軸51に固定され、このスプリングリテーナ55と回転側リング保持体54との間に縮装されたスプリング56によって、回転側リング保持体54および回転環52は機外Y側に押圧付勢されている。
【0004】一方、被軸封機器のハウジング57に取付けられたフランジ部材58の内面に、Oリング59を介して固定側リング保持体60が固定されている。この固定側リング保持体60に、前記固定環53が機内X側から挿入されて保持されている。この固定環53と、回転環52との軸方向に相互に対面するシール面53s・52sが、上記スプリング56によって相互に当接した状態で保持され、回転軸51が駆動されるときには、上記シール面53s・52sが相互に密着した状態で摺動することによって軸封される。
【0005】ところで、上記のようなシール面53s・52sは運転時間の経過に伴って徐々に磨耗する。したがって、所定の限度まで磨耗を生じると、回転環52や固定環53を交換する作業が必要となる。このような交換作業を容易にするために、上記装置では、回転環52と固定環53とを2つ割り構造とし、回転側リング保持体54や固定側リング保持体60の各円筒部54a・60aの内周面と、回転環52・固定環53の各外周面との間に、それぞれ一対のOリング61・61、62・62を巻装して、これらOリングの径方向内方への締付け力によって、2つ割り構造の各回転環52・固定環53が各々環状に保持されるように構成されている。
【0006】この構成によれば、同図(b)に示すように、フランジ部材58を固定側リング保持体60および固定環53と共に機外Y側に移動させ、回転環52と固定環53との間に、これらを各リング保持体54・60から軸方向に引き抜けるだけの作業空間を形成すれば、2つ割り構造の回転環52や固定環53は上記作業空間領域で径方向外方に取り外すことが可能となる。
【0007】すなわち、回転環52や固定環53が環状に一体形成されたものでは、これを回転軸51から外すためには回転軸1の軸端まで移動させることが必要となり、このためには被軸封機器の解体作業等を伴うものとなる。これに対し、上記ではこのような煩雑な作業を行うことなく、2つ割り構造の回転環52および固定環53を容易に交換し得るようになっている。なお、Oリング61・62の交換も併せて行う場合には、これらOリングとして1箇所がカットされたものが使用され、装着組立の際にこれらOリングはカット面を連結させたのみの状態で組付けられる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公報記載のメカニカルシールにおいては、2つ割り構造の例えば回転環52を構成する2つの分割部品は、軸方向には相互に固定された構造にはなっていない。このため、例えばシール面52sでの磨耗の進行に伴い、回転環52が回転側リング保持体54と共にスプリング56により押動されて軸方向に変位する際等に、2つの分割部品間に軸方向のズレが生じるおそれがある。これに伴って、回転環52と固定環53との各シール面52s・53sでの全周にわたる一様な押圧接触状態が損なわれ、この結果、安定したシール性を必ずしも充分には確保し難いという問題を有している。
【0009】本発明は、上記した従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、より簡素な構成で安定したシール性を確保し得るメカニカルシールを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】そこで請求項1のメカニカルシールは、軸方向に相対向するシール面が相互に接するように被軸封機器の回転軸とハウジングとに各々取付けられる一対のシールリングを備え、これらシールリングの少なくとも一方の特定シールリングを周方向に複数に分割形成すると共に、この特定シールリングを径方向外方から囲う囲壁部と、特定シールリングの反シール面側の端面に軸方向に対面する底壁部とを有するリング保持体を設け、リング保持体の上記囲壁部の内周面とこの囲壁部内に挿入された特定シールリングの外周面との間に弾性体から成る環状の第1シール部材を介装させることによって特定シールリングを環状に保持して成るメカニカルシールであって、特定シールリングに第1シール部材の内径よりも外径が大きな径大部を第1シール部材の介装位置よりも反シール面側に設けると共に、第1シール部材を上記径大部の端面に軸方向に当接させて押圧すべくリング保持体の囲壁部の開口端側に固定されるアダプタリングを設けていることを特徴としている。
【0011】このような構成によれば、第1シール部材が、特定シールリングの外周面と共に、径大部の端面にも全周にわたって軸方向から当接し、これによって、複数に分割形成されている特定シールリングの各分割部品は、第1シール部材が軸方向に当接する端面が相互に面一状になるように保持される。すなわち、各分割部品の軸方向位置が第1シール部材によって規制されて軸方向にズレが生じることが抑えられるので、より安定したシール性が維持される。
【0012】しかも上記では、特定シールリングの外周に巻装されてこのリングを環状に保持する機能を有する第1シール部材に、各分割部品の軸方向のズレを規制する機能を兼用させた構成で、このような軸方向位置を規制するための専用の部材を別途設ける必要がないので、全体の構成がより簡素なものとなる。
【0013】請求項2のメカニカルシールは、請求項1のメカニカルシールにおいて、特定シールリングにおける上記径大部よりも反シール面側に径大部よりも外径が小さな端部突出部を設け、この端部突出部の外周に弾性体から成る環状の第2シール部材を巻装し、上記アダプタリングをリング保持体に固定することによって、第2シール部材が径大部および端部突出部間の段差面とリング保持体の底壁部との間で軸方向に押圧されるように形成していることを特徴としている。
【0014】この場合には、径大部を軸方向に挟む両側に巻装された第1・第2シール部材が、さらに、径大部の両側の各軸方向端面にそれぞれ当接して軸方向の位置を規制するので、特定シールリングの各分割部品間の軸方向のズレがさらに確実に抑えられ、これによって、さらに安定したシール性を維持することができる。
【0015】請求項3のメカニカルシールは、請求項1又は2のメカニカルシールにおいて、アダプタリングにおける第1シール部材に接する側とは反対側の端面に、このアダプタリングを軸方向に引き出すための引き出し具が螺着されるネジ穴を形成していることを特徴としている。
【0016】この構成によれば、特定シールリングが保持されているリング保持体が、例えば被軸封機器のハウジングに囲われる奥まった位置で回転軸に外嵌されているような構成の場合でも、アダプタリングのネジ穴に機外側から例えばボルトなどから成る引き出し具の先端を螺着させて引くことで、アダプタリングと共にリング保持体をハウジング内から機外側へ引き出すことが可能となる。そして、機外側の位置で、リング保持体からアダプタリングを外し、次いで、特定シールリングを外すことによって、この特定シールリングの交換を容易に行うことができる。
【0017】
【発明の実施の形態】次に、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。図2に、本実施形態に係るメカニカルシールの全体構成を示している。同図において、1は被軸封機器の回転軸で、2はハウジングである。このハウジング2の端面に、回転軸1を囲う環状のフランジ部材3がボルト・ナット4a・4bによって固定され、このフランジ部材3の内周面に、後述する固定環11が取付けられている。
【0018】回転軸1の外周面には、フランジ部材3を貫通して機外A側から機内B側に向かって延びるスリーブ5が外嵌されている。このスリーブ5における機外A側の端部内周面と、回転軸1の外周面との間にキー6が介装されて、このスリーブ5は回転軸1と一体的に回転するようになっている。なお、回転軸1の外周面には、スリーブ5よりも機外A側にストッパリング7がさらに螺着されている。スリーブ5は、機外A側の端面をこのストッパリング7に当接させて、このストッパリング7に止めネジ8によって固定されている。
【0019】フランジ部材3における機外A側の端部内周面には、例えばカーボン製の環状ブッシュ9が嵌着されている。そして、この環状ブッシュ9よりも機内B側におけるフランジ部材3及びハウジング2の各内周面と、スリーブ5の外周面との間に、機外A側から順次、固定環(シールリング)11・回転環(特定シールリング)12・リングリテーナ(リング保持体)13・ドライブカラー14・スプリングリテーナ15が配置されている。これらは、それぞれスリーブ5を囲うリング状に形成されているが、このうち固定環11と回転環12とは、それぞれ、半円状の2部材を相互に当接させて全体としてリング状となるような2つ割り構造で形成されている。
【0020】次に、これら各部品の取付け構造について、図1を参照して説明する。同図(a)(b)は、図2における回転軸1を挟んで上部側の断面図と下部側の断面図との各拡大図である。
【0021】図1(a)に示すように、固定環11はフランジ部材3の内面に2個のOリング16・17を介して固定されている。すなわち、フランジ部材3の内周面に各Oリング16・17を装着した状態で、これらOリング16・17に所定の弾性変形(以下、締代という)を与えながら、これらOリング16・17を通して固定環11を機内B側から挿入することにより、この固定環11がフランジ部材3に組付けられている。これによって、固定環11が両Oリング16・17の締代によってフランジ部材3内面に固定されると共に、2つ割り構造のこの固定環11が全体として環状の組付状態で保持されている。
【0022】なお、固定環11は、機外A側の端部に、機内B側の嵌挿主部11aよりも外径を径小にした小径部11bを設けて形成されている。一方、フランジ部材3の内面も、機内B側から、上記嵌挿主部11aが嵌合する第1周面3aと、小径部11bが嵌合する第2周面3bとが段差状に連なる形状に形成されている。図において右側のOリング17は、第1周面3aに形成されている環状溝に装着されている。一方、図において左側のOリング16は、第1周面3aと固定環11における小径部11bの外周面との間に介装され、このOリング16は、軸方向には第1・第2周面3a・3b間の段差面と、嵌挿主部11aおよび小径部11b間の段差面とで挟まれた組付状態となっている。
【0023】この構造においては、固定環11を機内B側からフランジ部材3内に挿入して組付ける際、固定環11とフランジ部材3との上記した各段差面が、Oリング16の軸方向両側にそれぞれ当接した状態になるまで固定環11が挿入され、この軸方向位置で固定環11が固定保持される。
【0024】なお、固定環11は、例えば超硬合金または炭化珪素で形成されている。このような固定環11に対し、フランジ部材3内面とは軸方向にも弾性体からなるOリング16を介在させた構成することで、固定環11に例えば機外A側に向けて衝撃力が作用する場合でもこの衝撃力は上記Oリング16で緩和され、これによって、固定環11に欠け等が生じることが防止される。上記固定環11における嵌挿主部11aの外周面には、フランジ部材3における第1周面3aが開口する端面よりも機内B側に、固定環取出し用の環状溝11cが形成されている。
【0025】一方、上記のように固定された固定環11から、所定寸法だけ機内B側に離れた位置に、前記したスプリングリテーナ15が、止めネジ21によってスリーブ5の外周に固定されている。このスプリングリテーナ15と固定環11との間に、機外A側から、前記した回転環12とリングリテーナ13とドライブカラー14とが、軸方向移動可能に配置されている。ドライブカラー14とスプリングリテーナ15との間には、回転軸1の回りに複数の圧縮コイルバネ(付勢手段)22がそれぞれ軸方向に縮装されている。
【0026】これらコイルバネ22のバネ力によって、ドライブカラー14とリングリテーナ13とを介して回転環12が機外A側に押圧され、これによって、この回転環12の機外A側端面と、固定環11の機内B側端面との各シール面12s・11sが相互に密着した状態で保持されるように構成されている。
【0027】ドライブカラー14には、リングリテーナ13における機内B側端面に植設された係合ピン23が嵌入する係合孔14aと、同図(b)に示すように、スプリングリテーナ15を軸方向に貫通して延びるドライブピン24の機外A側端部が螺着される雌ネジ14bとが形成されている。これにより、回転軸1が駆動されると、これと一体的に回転するスプリングリテーナ15から、ドライブピン24・ドライブカラー14・係合ピン23を介してリングリテーナ13に回転力が順次伝達されて、これらドライブカラー14およびリングリテーナ13も回転軸1と一体的に回転する。
【0028】なお、ドライブピン24には、その機内B側の端部に、やや径大な頭部24aが設けられている。後述するように、固定環11と回転環12との各シール面11s・12sとが相互に摺接する状態で回転軸1が回転駆動されると、その運転時間の経過に伴って回転環12のシール面12sが次第に磨耗し、その磨耗量に応じてこの回転環12の軸方向長が短くなる。これに伴い、圧縮コイルバネ22によって機外A側に押圧されているドライブカラー14がドライブピン24と共に機外A側に移動する。そして、回転環12のシール面12sの磨耗量が所定の限界量に達した時には、ドライブカラー14の頭部14aがスプリングリテーナ15のストッパ座15aに当接し、これによって、回転環12やリングリテーナ13・ドライブカラー14の機外A側への移動がそれ以上は生じないようになっている。
【0029】上記リングリテーナ13は、同図(a)に示すように、ドライブカラー14が機内B側から密着する外周円形状の底壁部13aと、この底壁部13aにおける径方向外方端から機外A側に延びる円筒状の囲壁部13bとを有する略カップ状に形成されている。回転環12は、機内B側に、外径寸法をリングリテーナ13の囲壁部13bに内嵌される寸法として形成された嵌合部(径大部)12aが、所定の軸方向長にわたって形成されている。
【0030】また、この嵌合部12aの軸方向両側には、嵌合部12aよりも後述する第1-Oリング(第1シール部材)26・第2-Oリング(第2シール部材)27の各太さ寸法に応じて外径寸法を径小にし、かつ、軸方向長も各Oリング26・27の太さ寸法に見合う長さで形成された第1-・第2-Oリング巻装部12b・12cが設けられている。そして、図において左側の第1-Oリング巻装部12bよりも機外A側には、外径寸法をさらに径小としたシール部12dが設けられて、このシール部12dの機外A側端面が前記シール面12sとして形成されている。
【0031】一方、リングリテーナ13の囲壁部13bにおける機外A側の端部領域内面に、アダプタリング25がさらに取付けられている。回転環12は、嵌合部12aを挟んで機外A側の第1-Oリング巻装部12bと、第2-Oリング巻装部(端部突出部)12cとに、それぞれ第1-Oリング26・第2-Oリング27を巻装し、第2-Oリング27がリングリテーナ13の底壁部13に当接するまで機外A側から囲壁部13b内に挿入することで、このリングリテーナ13に組付けられる。その後、上記アダプタリング25がリングリテーナ13の囲壁部13b内に機外A側から挿入され、そして、このアダプタリング25の機外A側の端面がリングリテーナ13の端面とほぼ面一状になる位置で、囲壁部13bを通して皿小ネジ28がアダプタリング25に螺着されて、このアダプタリング25がリングリテーナ13に固定されている。
【0032】このような組立状態において、各Oリング26・27はその内外面が回転環12の各Oリング巻装部12b・12cの外面と囲壁部13bの内面とに密着し、また、軸方向にも、第1-Oリング26はアダプタリング25と嵌合部12aとの各端面に、第2-Oリング27は嵌合部12aと底壁部13aとの各端面にそれぞれ密着して、径方向と共に軸方向にも所定の締代が付与された介装状態となっている。
【0033】これにより、回転環12はこれらOリング26・27の締代によって環状に保持されてリングリテーナ13内に固定され、このリングリテーナ13が前記のように回転軸1と共に回転するときには、この回転環12も一体的に回転する。なお、上記アダプタリング25には、同図(b)に示すように、機外A側の端面から軸方向に延びる引き出し用ネジ穴(係合部)25aが、周方向に適当な間隔で複数穿設されている。
【0034】回転環12は例えばSiC,超硬合金またはカーボン製であり、これが、前記した超硬合金、または炭化珪素から成る固定環11に、圧縮コイルバネ22のばね力と、被軸封機器内に導入される流体の液圧とが作用して強く押し付けられ、回転軸1の回転駆動時にも、両シール面11s・12sとが相互に密着した状態を保持して各シール面11s・12sが相対的に摺接することで、軸封が達成される。
【0035】なお、機内B側の二次シールとして、上記した各Oリング16・17・26・27以外にも、回転軸1とスリーブ5との間、スリーブ5とリングリテーナ13の底壁部13a内面との間、ハウジング2とフランジ部材3との間にそれぞれOリング31〜33が介装されている。
【0036】また、フランジ部材3には、図2において回転軸1よりも下側の断面図に示しているように、外周面から前記環状ブッシュ9と固定環11との間の空間に通ずる第1冷却用流体通路3cが形成されている。この通路3cを通して冷却液を循環させて、固定環11と回転環12とを冷却するようになっている。また、このフランジ部材3には、同図において回転軸1よりも上側の断面図に示しているように、固定環11と回転環12との外側の空間に通ずる第2冷却用流体通路3dがさらに設けられている。この通路3dを通して機内に供給される流体を循環させて、固定環11と回転環12との冷却を行えるようにもなっている。
【0037】上記構成のメカニカルシールは、回転軸1の回転に伴い、固定環11と回転環12との各シール面11s・12sとが次第に磨耗する。特に上記では、固定環11は超硬合金または炭化珪素製、回転環12はカーボン製であり、このような組合せにおいては、回転環12のシール面12sの磨耗が選択的に進行する。そして、この回転環12の磨耗量が前記した限界量に達する前に、この回転環12を交換する作業が行われる。この交換作業の手順について説明する。
【0038】まず、ストッパリング7にスリーブ5を固定している止めネジ8を外し、次いで、回転軸1に螺着されているストッパリング7を緩めて回転軸1から外して、これを、機外A側へと回転軸1に沿って移動させる。次いで、フランジ部材3をハウジング2に固定しているナット4bを外すことによって、フランジ部材3も、機外A側へと回転軸1に沿って移動させる。このとき、固定環11もフランジ部材3と一体的に移動する。これにより、固定環11を回転環12から離間させて、両者間に、回転環12をリングリテーナ13から機外A側へと軸方向に引き出し得る作業空間を形成する。
【0039】その後、皿小ネジ28を外してアダプタリング25をリングリテーナ13から取り外すことで、このリングリテーナ13から回転環12を軸方向に引き出すことが可能となる。したがって、以降は、前記図3(b)を参照して説明した従来例とほぼ同様に、回転環12をリングリテーナ13から引き出し、Oリング26・27を外せば、2つ割り構造のこの回転環12は、上記の作業空間の領域で、回転軸1から径方向外方へと取り外すことができる。
【0040】次いで、新たな2つ割り構造の回転環12を回転軸1の回りに外嵌させる。そして、周方向1箇所がカットされている新たなOリング26・27を上記回転環12の各Oリング巻装部12b・12cに各々巻き付けた状態として、この回転環12をリングリテーナ13内に軸方向に挿入する。そして、前述したように、アダプタリング25をリングリテーナ13の開口端に内嵌させ、このアダプタリング25を所定の位置まで押し込んで、皿小ネジ28でアダプタリング25をリングリテーナ13の開口端側に固定することで、新たな回転環12のリングリテーナ13への組付けが終了する。
【0041】なお、図1(a)(b)に示されているように、本実施形態では、皿小ネジ28がハウジング2の端面近くに位置する構造となっている。この場合、アダプタリング25の前記した引き出し用ネジ穴25aにボルト(図示せず)を螺着させ、このボルトを機外A側に引くことで、アダプタリング25と共にリングリテーナ13・回転環12をハウジング2内から機外A側に移動させることができる。これにより、皿小ネジ28に径方向外方からドライバを係合させてアダプタリング25の取り外しや取付け作業を行う場合も、ハウジング2に干渉されることなく容易に行うことができる。
【0042】さらに、例えばリングリテーナ13と回転環12との全体がハウジング2の端面よりも機内B側に位置するように構成されている場合でも、フランジ部材3をハウジング2から外して機外A側へと移動させ、ハウジング2との間に作業空間を形成した後に、上記同様にアダプタリング25の引き出し用ネジ穴25aにボルト等を螺着させて機外側に引くことで、リングリテーナ13と回転環12とを上記作業空間に引き出すことができるので、この場合も回転環12の交換作業を容易に行うことができる。
【0043】しかも、上記のようなネジ穴25aは、例えばステンレス鋼等なら成るアダプタリング25に容易に形成することができ、また、引き出し具として上記のようにボルト等を使用することが可能で、特殊な形状の引き出し具を別途作製する必要がないので、全体の製作費をより安価なものとすることができる。
【0044】前記のように回転環12の交換が行われる際、固定環11の交換も必要に応じて行われる。この固定環11は、本実施形態においては、フランジ部材3の機内B側端面よりも奥まった位置に固定されていることから、例えば先端が鉤状に形成された引き出し用工具(図示せず)を用い、この引き出し用工具を固定環11の機内B側端部外周に形成されている前記環状溝11cに引っ掛けて、軸方向に引き出すことによって行われる。
【0045】そして、新たな固定環11への交換も終了すると、前記とは逆の手順で、被軸封機器のハウジング2へのフランジ部材3の固定、回転軸1の雄ねじ部へのストッパリング7の締め込み、ストッパリング7への止めネジ8によるスリーブ5の固定を順次行うことで、図1に示す組立状態に復帰される。
【0046】このような組立状態において、前記したように、固定環11と回転環12との各シール面11s・12sとが相互に当接し、回転軸1の駆動時にはこれらシール面11s・12sが相互に摺動接触状態となって軸封が得られるが、特に上記では、2つ割り構造の回転環12には、これに外周から径方向内方への締め付け力を作用させて環状に保持するための一対のOリング26・27が、回転環12の嵌挿部12aを軸方向両側から押圧する構成ともなっている。
【0047】すなわち、2つ割り構造の回転環12は、アダプタリング25とリングリテーナ13の底壁部13aとの軸方向に相対向する端面間でOリング26・27を介して軸方向に挟持されて固定されているので、回転環12のシール面12sの磨耗が進行してこの回転環12がリングリテーナ13と共に軸方向に移動する場合でも、各分割部品間に軸方向のズレが生じるようなおそれがなく、これによって、シール面12sでは固定環11のシール面11s側への押圧力の作用状態が全周にわたって一様な状態が維持され、安定した軸封状態が確保される。
【0048】さらに上記では、回転環12を固定環11と共回りさせることなく、リングリテーナ13と一体回転させるためのいわゆる回り止めは、各Oリング26・27のリングリテーナ13への接触面、および回転環12への接触面での各摩擦力によって与えられるが、この摩擦力は、各Oリング26・27におけるリングリテーナ13および回転環12への各径方向の接触面に加え、軸方向の接触面でも生じるようになっているので、リングリテーナ13への回転環12の固定保持力がより大きなものとなる。
【0049】この結果、回転環12とリングリテーナ13との間に、周方向に係合する係合ピンのような回り止めを別途設けて連結するような構成にせずとも、回転環12とリングリテーナ13との一体回転状態が確保される。これにより、全体の構成をより簡素にすることが可能となっている。また、上記のように係合ピンを設けて回り止めを行う構成では、シール面12sに作用する固定環11からの周方向の力が、各分割部品に係合ピン回りの回転モーメントとして作用し、これによって、各分割部品の割り部が相互に開くような挙動が生じてシール性の低下に繋がるおそれがある。これに対し、本実施例では、2本のOリング26・27により、上記したように全周にわたって一様な回り止め力が付与されているので、分割部品が相互に開くような挙動も生じず、これによっても安定したシール性が維持される。
【0050】以上にこの発明の具体的な実施形態について説明したが、この発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更することが可能である。例えば上記形態では、超硬合金や炭化珪素製の固定環11とカーボン製の回転環12とを設け、この場合に、選択的に磨耗が進行する回転環12を特定シールリングとし、これを、開口端にアダプタリング25が取付けられるリングリテーナ13内に保持固定して分割部品の軸方向のズレを抑える構成としたが、例えば固定環11側に磨耗が選択的に進行するような材質の組合せの場合には、この固定環11を特定シールリングとして上記同様に構成することも可能である。また、回転環12と固定環11との両者が互いに同等に磨耗していくような場合等には、これら双方を特定シールリングとし、それぞれを、アダプタリングが取付けられるリングリテーナに保持固定するような構成とすることも可能である。
【0051】また上記実施形態では、回転環12側に圧縮コイルバネ22を設けてこの回転環12を軸方向移動可能にした回転形メカニカルシールを例に挙げて説明したが、固定環を軸方向移動可能に構成した静止形メカニカルシール等の他の形式のメカニカルシールにも本発明を適用することが可能である。
【0052】また上記では、特定シールリングとしての回転環12を2つ割り構造とした例を挙げたが、3つ以上に分割形成したシールリングを設けて構成することも可能である。また、回転環12の外周に巻装するシール部材をOリング26・27で形成した例を挙げたが、例えばVリングなどのその他の弾性シール部材を用いて構成することも可能である。
【0053】さらに上記では、回転環12の嵌挿部(径大部)12aの軸方向両側にOリング26・27を各々介装して、これらOリング26・27で嵌挿部12aを軸方向に挟持する構成を例に挙げたが、請求項1の範囲では、例えば回転環12の反シール面側の端面をシールリング13の底壁部13aに直接接触させ、或いは弾性体から成るシートを介して接触させた状態とし、径大部12aの開口端側の端面とアダプタリング25との間でのみ、シール部材を軸方向に押圧させた構成等とすることも可能である。
【0054】
【発明の効果】以上のように、本発明の請求項1のメカニカルシールにおいては、周方向に複数に分割形成された特定シールリングに径大部を設け、この特定シールリングの外周に巻装される第1シール部材を上記径大部の端面に軸方向に当接させて押圧すべく、リング保持体の開口端側に固定されるアダプタリングを設けているので、特定シールリングの各分割部品に軸方向のズレが生じることが抑えられ、これによって、より安定したシール性が維持される。しかも上記第1シール部材に、特定シールリングの各分割部品を環状に保持する機能と共に、軸方向のズレを規制する機能を兼用させた構成となっているので、このような軸方向位置を規制するための専用の部材を別途設ける必要がなく、これによって、全体の構成をより簡素なものとすることができる。
【0055】請求項2のメカニカルシールにおいては、特定シールリングにおける上記径大部よりも反シール面側に径大部よりも外径が小さな端部突出部を設け、この端部突出部の外周に巻装される第2シール部材も、径大部および端部突出部間の段差面とリング保持体の底壁部との間で軸方向に押圧されるように構成されているので、特定シールリングの各分割部品間の軸方向のズレがさらに確実に抑えられ、これによって、さらに安定したシール性を維持することができる。
【0056】請求項3のメカニカルシールにおいては、アダプタリングにおける第1シール部材に接する側とは反対側の端面に、このアダプタリングを軸方向に引き出すための引き出し具が螺着されるネジ穴が形成されているので、リング保持体が被軸封機器のハウジングに囲われる奥まった位置で回転軸に外嵌されているような構成の場合でも、上記ネジ穴に機外側から例えばボルトなど先端を螺着させて引くことで、アダプタリングと共にリング保持体をハウジング内から機外側へ引き出すことが可能となって、特定シールリングの交換を容易に行うことができる。
【出願人】 【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
【出願日】 平成11年9月1日(1999.9.1)
【代理人】 【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
【公開番号】 特開2001−65706(P2001−65706A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−247668