| 【発明の名称】 |
密封装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】田島 英児
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| 【要約】 |
【課題】構成の複雑化を伴うことなく、シール性の向上を図る。
【解決手段】車軸軸受の密封装置等に応用される。内輪11と外輪12の間の端部環状空間Sを密封するものであって、第1および第2のシール板1,2と、弾性体3とを有する。第1および第2のシール板1,2は、いずれもリング状であって、各々円筒部1b,2bと立板部1a,2aとでなる断面L字状に形成され、互いに対向するように設けられる。第1のシール板1は、外輪12の端面側に立板部1aを位置させる。この立板部1aの先端面と第2のシール板2の円筒部2bの間にラビリンスシール4を構成する。立板部2aの外方の側面Bは、第2のシール板2の円筒部2bの端面Aよりも内方に、所定の後退量Lだけ後退させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内輪と外輪間の端部環状空間で、これら内外輪のいずれか一方および他方に各々取付けられた第1および第2の環状のシール板と、シールリップとを備え、両シール板は、各々円筒部と立板部とでなる断面L字状に形成されて互いに対向するものとした密封装置において、第1のシール板は、内外輪の端面側に立板部を位置させ、この立板部の先端と第2のシール板の円筒部とを僅かな径方向隙間をもって対峙させると共に、この立板部の外方の側面を、第2のシール板の円筒部の端面よりも内方に後退させたことを特徴とする密封装置。 【請求項2】 上記第2のシール板にリールリップを設けた請求項1に記載の密封装置。 【請求項3】 上記シールリップとして、第1のシール板の立板部に摺接するサイドリップと、円筒部に摺接するラジアルリップとを設けた請求項2に記載密封装置。 【請求項4】 第2のシール板の円筒部における内外輪との嵌合面に、少なくとも先端部においてゴムを加硫接合させた請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の密封装置。 【請求項5】 第1のシール板をステンレス鋼で形成した請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の密封装置。 【請求項6】 第1のシール板を内輪の外径面に、第2のシール板を外輪の内径面に取付けた請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の密封装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、相対回転する内外輪の間、例えば転がり軸受における内外輪や、回転軸およびハウジングとなる内外輪の間に配置されて、両輪間の内部空間と外部環境との間を密封する密封装置に関し、詳しくはスリンガ等のシール板とシールリップとを組み合わせた密封装置の改良に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、この種の密封装置として、図3に示すものが使用されている。これは、内周側のシール板51と外周側のシール板52とを、互いに対向する断面L字状のものとし、外周側のシール板52に一体化させたゴム等の弾性体53に、シールリップとしてサイドリップ53aと2枚のラジアルリップ53b,53cとを設けたものである。サイドリップ53aおよびラジアルリップ53b,53cは、内周側のシール板51の立板部51aおよび円筒部51bに各々摺接する。内周側のシール板51の立板部51aは、外周側のシール板52の円筒部52bと僅かな径方向隙間をもって対峙し、ラビリンスシール54を構成する。内周側のシール板51の立板部51aの外側の側面Cは、外周側のシール板52の円筒部52bの端面Aと同一平面内に設定されている。ここで言う端面Aは弾性体53を含む端面のことである。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】上記の外周側シール板52の端面Aと、内周側シール板51の側面Cとは、そのデータムにおいて、すなわち理論的に正確な幾何学的基準として、略同一平面に設定されている。ここで、端面Aと側面Cの実際の製品に生じる段差を考えると、シール板51,52の板厚等から、製造組み込み上のばらつきと、設計公差とを勘案して、最悪、側面Cは端面Aよりも外側(図の右側)へ飛び出すことになる。この密封装置は、3枚のリップ53a,53b,53cと共に、泥水浸入防止性を確保しているシール手段として、ラビリンスシール54がある。このラビリンスシール54は、内周側シール板51の立板部51aの先端面bと、外周側シール板52の円筒部52bの内周面aとの間で構成される。しかし、上記のように、側面Cが端面Aよりも外側へ飛び出すと、ラビリンスシール54の軸方向幅が減少し、泥水浸入の防止性が低下する。 【0004】この発明の目的は、構成の複雑化を伴うことなく、シール性の向上が図れる密封装置を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段】この発明の密封装置は、内輪と外輪間の端部環状空間で、これら内外輪のいずれか一方および他方に各々取付けられた第1および第2の環状のシール板と、シールリップとを備え、両シール板は、各々円筒部と立板部とでなる断面L字状に形成されて互いに対向するものとした密封装置を前提とする。この前提構成において、第1のシール板は、内外輪の端面側に立板部を位置させ、この立板部の先端と第2のシール板の円筒部とを僅かな径方向隙間をもって対峙させると共に、この立板部の外方の側面を、第2のシール板の円筒部の端面よりも内方に後退させたことを特徴とする。この後退は、設計公差内での製造誤差や組立誤差があっても、生じるように後退量を設定する。この構成によると、第1のシール板の立板部の先端と、第2のシール板の円筒部とが僅かな径方向隙間をもって対峙する空間でラビリンスシールが構成され、このラビリンスシールとシールリップによる接触とで、泥水の浸入等に対するシール性が得られる。この場合に、第1のシール板の立板部の外方側面を、第2のシール板の円筒部の端面よりも内方に後退させたため、第1シール板の立板部と第2シール板の円筒部との間で、常に、所定軸方向幅のラビリンスシールが維持され、シール性が向上する。また、第1シール板の立板部を後退させるだけで良いため、シール板に複雑な形状の加工を施すことが不要で、シール板の形状が簡素なもので済み、また密封装置の配置空間を大きくすることなく、シール性を向上させることができる。 【0006】この発明において、リールリップは第2のシール板に設けても良い。このシールリップとして、第1のシール板の立板部に摺接するサイドリップと、円筒部に摺接するラジアルリップとを設けても良い。このようにサイドリップおよびラジアルリップを設けた場合、上記ラビリンスシールと共に、これらサイドリップおよびラジアルリップとで、多重のシールが行え、より一層シール性能が向上する。また、サイドリップとラジアルリップとがあるため、第1のシール板と第2のシール板とに、アキシャル方向やラジアル方向の変位が生じても、アキシャルかラジアル方向のいずれかの方向のシールリップでシール性を確保することができる。 【0007】この発明の上記各構成のものにおいて、第2のシール板の円筒部における内外輪との嵌合面に、少なくとも先端部においてゴムを加硫接合しても良い。このゴムは、例えばシールリップを一体に設けたものである。このように第2のシール板の円筒部の先端にゴムを設けることで、第2のシール板の円筒部2bからの泥水侵入を抑え、シール性をさらに確保することができる。また、このゴムは、加硫接合するため、第2のシール板に対する固着が簡単に、かつ確実に行える。 【0008】この発明の上記各構成の場合に、第1のシール板をステンレス鋼で形成しても良い。第1のシール板は、外部に露出する部品であるため、このようにステンレス鋼製とすることで、泥水のかかる環境下で使用されても、腐食することが防止される。 【0009】この発明の上記各構成の場合に、第1のシールを内輪の外径面に、第2のシール板を外輪の内径面に取付けても良い。このように第1,第2のシール板を設けた場合、ラビリンスシールの構成される箇所が外径側となり、遠心力の作用が大きくなって、シール性能が向上すると共に、この密封装置内のラビリンスシールからシールリップまでの空間に泥水等が浸入したとしても、回転に伴って容易に排出される。 【0010】 【発明の実施の形態】この発明の一実施形態を図1と共に説明する。この密封装置は、相対回転する内輪11と外輪12の間の端部環状空間Sを密封するものであって、第1および第2のシール板1,2と、第2のシール板2に一体化された弾性体3とを有する。第1および第2のシール板1,2は、いずれもリング状であって、各々円筒部1b,2bと立板部1a,2aとでなる断面L字状に形成され、互いに対向するように設けられる。第1のシール板1は、内輪11の外径面に圧入嵌合で取付けられ、第2のシール板2は外輪12の内径面に圧入嵌合で取付けられている。 【0011】第1のシール板1は、内外輪11,12の端面側に立板部1aを位置させてある。この立板部1aの先端面と第2のシール板2の円筒部2bの内径面とは、僅かな径方向隙間をもって対峙させ、この径方向隙間でラビリンスシール4を構成している。この立板部2aの外方の側面Bは、第2のシール板2の円筒部2bの端面Aよりも内方に、所定の後退量Lだけ後退させている。なお、この実施形態のように、円筒部2bを弾性体3が覆っている場合は、ここで言う第2のシール板2の円筒部2bの内径面および先端面Aは、いずれも弾性体3を含めた部分についての面を意味する。 【0012】弾性体3は、ゴムまたは合成樹脂製のものであり、シールリップとして、第1のシール板1の立板部1aに摺接するサイドリップ3aと、円筒部1bに摺接する2枚のラジアルリップ3b,3cとを一体に有している。サイドリップ3aは、第2のシール板2の立板部2aの先端付近から斜め外径側へ延びている。2枚のラジアルリップ3b,3cは、立板部2aの先端付近から、軸方向の内側および外側へ各々斜めに延びている。弾性体3は、L型断面となった第2のシール板2の内側の全体を覆うように設けられ、その一部の部分3dで、円筒部2bにおける先端部2baの外径側を覆っている。円筒部2bの先端部2baは、若干内径側へ絞ってあり、これにより弾性体3の円筒部覆い部分3dは、その外径面が円筒部2bの外径面よりも僅かに大径となる程度の外径としながら、外輪2に対する圧入嵌合に適切な肉厚を得ている。 【0013】弾性体3は、第2のシール板2と一体に固着されており、弾性体3をゴムとする場合は、第2のシール板2と加硫接合によって一体化させられる。第1,第2のシール板1,2は、いずれも金属板であり、例えば鋼板製とされる。第1のシール板1は、ステンレス鋼製であることが好ましく、その場合、第2のシール板2は、ステンレス鋼製としても良く、鋼板製としても良い。 【0014】内輪11および外輪12は、それぞれ転がり軸受の内輪および外輪であっても良く、また、種々の機器のハウジングおよび軸であっても良い。 【0015】図2は、この実施形態の密封装置10を用いた自動車のホイール軸受、つまり車軸軸受を示す。この軸受20は、複列の玉軸受、詳しくは内輪分割型のアンギュラ玉軸受からなり、内輪21と、外輪22と、保持器23に保持された2列の転動体24,24とで構成される。内輪21は、固定側の軌道輪となり、非回転の車軸(図示せず)に取付けられる。外輪22は、回転側の軌道輪となるものであり、ハブ25が一体に形成され、ハブ25に車輪(図示せず)がハブボルト26で取付けられる。この軸受20の内輪21と外輪22との間の一端(ハブ25と反対側の端部)の環状空間に、図1の実施形態にかかる密封装置10が設けられる。 【0016】この構成の密封装置10によると、第1のシール板1の立板部1aの先端と、第2のシール板2の円筒部2bとが対峙する空間でラビリンスシール4が構成され、このラビリンスシール4と各シールリップ3a〜3cによる接触とで、泥水の浸入等に対するシール性が得られる。この場合に、第1のシール板1の立板部1bの外方側面Bを、第2のシール板2の円筒部2bの端面Aよりも内方に後退させたため、つまりL>0としたため、第1シール板1の立板部1aと第2シール板2の円筒部2bとの間で、常に、所定軸方向幅を有するラビリンスシール4が維持される。そのため、シール性が向上する。また、第1シール板1の立板部1aを後退させるだけで良いため、シール板1,2に複雑な形状の加工を施すことが不要で、シール板1,2の形状が簡素なもので済み、また密封装置10の配置空間を大きくすることなく、シール性を向上させることができる。 【0017】第2のシール板2には、サイドリップ3aおよびラジアルリップ3b,3cを設けたため、ラビリンシール4と共に、多重のシールが行え、より一層シール性能が向上する。例えば、外部からの泥水の浸入や、内部空間からの軸受グリースの外部への漏れを、確実に防止できる。また、サイドリップ3aとラジアルリップ3b,3cとがあるため、第1のシール板1と第2のシール板2とに、アキシャル方向およびラジアル方向のいずれの変位が生じても、いずれかの方向のシールリップ3a〜3cでシール性を確保することができる。第2のシール板2の円筒部2bには、ゴム製等の弾性体3の先端覆い部3dを設けたため、第2のシール板2の外輪12の円筒部2bからの泥水侵入を抑え、シール性をさらに確保することができる。この弾性体3を加硫接合する場合は、第2のシール板2に対する固着が簡単に、かつ確実に行える。 【0018】第1のシール板1は、外部に露出する部品であるため、ステンレス鋼製とすることで、車軸軸受等のように、泥水のかかる環境下で使用されても、腐食することが防止される。 【0019】なお、前記実施形態は、第1のシール板1を内輪11に取付け、第2のシール板2を外輪12に取付けるようにしたが、これとは逆に、第1のシール板1を外輪11に取付け、第2のシール板2を内輪11に取付けるようにしても良い。その場合、第1のシール板1は円筒部1bから内径側に立板部1aが延び、第2のシール板2は円筒部2bから外径側に立板部2aが延びるものとされる。 【0020】 【実施例】図1の実施形態にかかる密封装置(実施例)と図3の従来例(比較例)とにつき、泥水耐久性試験を行った結果を表1に示す。比較例は、第1のシール板51の側面Cが第2のシール板52の端面Aから突出する凸量が0.2mmのものを用いた。実施例は凸量が零である。試験個数は各2個である。試験方法は、泥水浴中で、所定時間の定速回転の運転と所定時間の停止とを1サイクルとして、泥水が浸入するまで上記サイクルを繰返し、運転延べ時間を比較することで行った。比較例と実施例とは、試験回転数、および1サイクルにおける運転時間と停止時間の割合が若干異なるが、運転延べ時間で比較すると、同表の結果から、実施例の方が比較例よりもシール性が一段と向上していると判断できる。 【0021】 【表1】
【0022】 【発明の効果】この発明の密封装置は、内輪と外輪間の端部環状空間で、これら内外輪のいずれか一方および他方に各々取付けられた第1および第2の環状のシール板と、シールリップとを備え、両シール板は、各々円筒部と立板部とでなる断面L字状に形成されて互いに対向するものとした密封装置において、第1のシール板は、内外輪の端面側に立板部を位置させ、この立板部の先端と第2のシール板の円筒部とを僅かな径方向隙間をもって対峙させると共に、この立板部の外方の側面を、第2のシール板の円筒部の端面よりも内方に後退させたものであるため、構成の複雑化を伴うことなく、シール性の向上が図れる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000102692 【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
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| 【出願日】 |
平成11年8月31日(1999.8.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100086793 【弁理士】 【氏名又は名称】野田 雅士 (外1名)
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| 【公開番号】 |
特開2001−65704(P2001−65704A) |
| 【公開日】 |
平成13年3月16日(2001.3.16) |
| 【出願番号】 |
特願平11−245305 |
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