トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 リップ型シール
【発明者】 【氏名】早川 尚樹

【要約】 【課題】回転軸2の外周面に対する合成樹脂製シール部材13のシールリップ132の面圧を良好に維持して、優れた密封性能を確保する。

【解決手段】ハウジング1の内周に固定される外環11と、この外環11の円筒部111の内周に嵌着固定された内環12と、これら外環11及び内環12のフランジ部112,122の間に外径部131,141が互いに密接状態に挟持されたシール部材13及び環状板ばね14とを備える。シール部材13は、内周に軸方向へ略円筒状に突出して内周面全面が回転軸2の外周面と密封的に摺接されるシールリップ132が形成された断面略L字形をなし、シールリップ132と外径部131との境界の屈曲部133が盗み溝133aによって薄肉に形成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 内周に軸方向へ略円筒状に突出して回転軸の外周面と密封的に摺接されるシールリップが形成された断面略L字形のシール部材と、前記シールリップを縮径方向に付勢するばね部材とを備え、前記シール部材は、前記シールリップと外径部との境界の屈曲部を薄肉にする溝が形成されたことを特徴とするリップ型シール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種回転機器を軸封するリップ型シールに関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、図3に示されるようなリップ型シール100が知られている。この種のリップ型シール100は、外環101と、この外環101の円筒部101aの内周に嵌着固定された内環102と、これら外環101及び内環102のフランジ部101b,102aの間に外径部103bが密接状態に挟持され、その内周側から密封空間側となる図中右側へ湾曲部103cを介してテーパ状に延びるシールリップ103aが形成されたPTFE等の合成樹脂からなるシール部材103とを備える。
【0003】すなわち上記リップ型シール100は、外環101が、ハウジング1の内周面に密封的に嵌着され、シール部材103のシールリップ103aの内周面が、回転軸2の外周面と適当な締め代をもって密封的に摺接されることによって、密封空間Aの流体を密封するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来のリップ型シール100においては、合成樹脂からなるシール部材103は、テーパ状に形成されたシールリップ103aの先端部分が、回転軸2の外径より小径となっており、回転軸2の外周への装着時に、シールリップ103aが拡径されることによって、回転軸2の外周面に対する初期締め代を付与している。また、シール部材103は湾曲部103cを有するため、密封空間Aの高い圧力が作用した時の変形代が大きい。したがって、初期摺動トルクが大きく、シール部材103には、回転軸2の外周面との摺動に伴う発熱や、密封空間Aが圧力上昇等によって、前記シールリップ103aが円筒状となるような永久変形(ヘタリ)が起こる。
【0005】この状態では、シールリップ103aは内周面全体が回転軸2の外周面にベタ当たりとなるため、密封空間Aが高圧である場合は、この圧力が回転軸2に対するシールリップ103aの密接力を高めて良好な密封性が維持されるが、シールリップ103a自体の有する緊迫力は上記永久変形によって著しく小さくなっているため、密封空間Aが比較的低圧の時には、回転軸2の外周面に対する密封面圧が不足し、漏れを発生しやすいといった問題が指摘される。
【0006】本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたもので、その主な技術的課題とするところは、回転軸外周面に対する合成樹脂製シール部材のシールリップの面圧を良好に維持して優れた密封性能を確保することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した技術的課題は、本発明によって有効に解決することができる。すなわち、本発明に係るリップ型シールは、内周に軸方向へ略円筒状に突出して回転軸の外周面と密封的に摺接されるシールリップが形成された断面略L字形のシール部材と、前記シールリップを縮径方向に付勢するばね部材とを備え、前記シール部材は、前記シールリップと外径部との境界の屈曲部を薄肉にする溝が形成されたものである。
【0008】先に説明したように、従来構造ではシール部材を断面が湾曲した形状とすることによってシールリップ自体に軸に対する締め代を与えていたが、高圧条件では圧力と温度の影響でヘタリが発生し、断面L字形に変形してシールリップの内周面全面が回転軸外周面にベタ当たりした状態となってしまう。しかし、高圧条件では、このようなベタ当たりの状態でも漏れが発生していないのも事実である。そこで本発明においては、シール部材を予め回転軸外周面にベタ当たりする円筒状に形成し、高圧条件での変形代の極小化を図ったものである。この構成によれば、円筒状のシールリップはその内周面全面が回転軸の外周面に接触し、屈曲部への溝の形成によって軸変位に対する追随性が確保され、ばね部材によって、低圧時におけるシールリップの緊迫力が補償される。
【0009】
【発明の実施の形態】図1は本発明に係るリップ型シールの一実施形態を、軸心を通る平面で切断して示す半断面図である。このリップ型シール10は、外環11と、この外環11の円筒部111の内周に嵌着固定された内環12と、これら外環11及び内環12のフランジ部112,122の間に外径部131,141が互いに密接状態に挟持されたシール部材13及び環状板ばね14とを備える。
【0010】外環11及び内環12は、共に金属からなるものであって、それぞれ円筒部111,121及びその大気B側となる図中左端部から内周側へ延びるフランジ部112,122からなる断面略L字形を呈する。内環12は、その円筒部121が外環11の円筒部111の内周に嵌着されると共に、外環11の円筒部111の先端に形成されたカシメ部111aによって抜け止め固定されている。
【0011】シール部材13は、PTFE等の低摩擦の合成樹脂材料で成形されたものであって、外環11のフランジ部112と内環12のフランジ部122との間に環状板ばね14と共に挟持された円盤状の外径部131と、その内周から密封空間A側となる図中右側、すなわち外環11のフランジ部112と反対側へ軸方向に略直角に屈曲して延びる円筒状のシールリップ132からなる。
【0012】シール部材13における外径部121とシールリップ132との境界である屈曲部133の密封空間A側の面には、円周方向に連続した盗み溝133aが形成されている。また、前記シールリップ132の先端近傍の内周面には、軸回転時に流体力学的な作用によって流体を密封空間A側へ押し出すポンプ力を生じる螺旋状の溝132aが形成されている。
【0013】環状板ばね14は、鋼材等の金属からなるものであって、外環11のフランジ部112と内環12のフランジ部122との間にシール部材13の外径部131と共に挟持された円盤状の外径部141と、その内周から密封空間A側となる図中右側、すなわち外環11のフランジ部112と反対側へテーパ状に延びる板ばね本体部142とからなる。
【0014】図2の斜視図に一層明確に示されるように、環状板ばね14は、板ばね本体部142がスリットによって円周方向に多数のばね片142aに分割された形状を有し、単体では、図2に示された状態よりも板ばね本体部142の軸心に対する傾斜角度が大きくなっている。このため、前記各ばね片142aの先端側がシール部材13におけるシールリップ132の外周面に適当な荷重で接触し、当該リップ型シール10の未装着状態においては、前記シールリップ132は先端が回転軸2の外径よりも僅かに小径となるテーパ状となっている。
【0015】以上のように構成されたリップ型シール10は、図1に二点鎖線で示されたハウジング1とその内周に挿通された回転軸2との間で密封を行うものである。ハウジング1の内周部には、密封空間A側が大径となる環状のシール装着段部1aが形成されており、その大径側の内周面に、Oリング装着溝1b及びスナップリング装着溝1cが形成されている。そして当該リップ型シール10は、外環11が、前記シール装着段部1aの大径側の内周面に、前記Oリング装着溝1bに装着したOリング3を介して圧入されると共に、前記スナップリング嵌合溝1cに嵌合したスナップリング4によって、前記シール装着段部1aとの間で軸方向に対して拘束される。
【0016】一方、合成樹脂製シール部材13のシールリップ132は、回転軸2の挿通によって、図1に示された緩やかなテーパ状からほぼ円筒状に拡径変形され、その内周面は全面が回転軸2の外周面と摺接される。すなわち上記装着状態では、シール部材13は当初からシールリップ132が回転軸2の外周面に対してほぼベタ当たり状態で摺接する。
【0017】シールリップ132は、原形が回転軸2とほぼ同径の円筒状を呈するものであるため、回転軸2の外周面に対するシールリップ132自体の緊迫力は小さく、したがってベタ当たり状態であっても初期摺動トルクは小さいものとなる。しかも盗み溝133aの形成によって屈曲部133の肉厚が減少して自由度が大きくなっているため、回転軸2の偏心に対する良好な追随性が確保される。
【0018】密封空間Aの圧力は、シールリップ132に対して縮径方向に作用するので、前記圧力が上昇した場合は回転軸2の外周面に対するシールリップ132の面圧が増大する。シールリップ132は円筒状であるため、圧力による変形代が小さいが、内周面全面が摺動しているので摺動面の軸方向幅が大きく、漏れを確実に防止する。また、上述のようにシールリップ132自体の緊迫力は小さいが、この緊迫力は環状板ばね14の付勢力によって補償されているため、密封空間Aが低圧になった場合も、所要のシール面圧が確保され、しかも軸回転時は、シールリップ132の内周面に形成された螺旋状の溝132aが流体力学的な作用によって流体を密封空間A側へ押し出すポンプ力を生じるため、良好な密封性能を奏することができる。
【0019】
【発明の効果】以上説明したように、本発明のリップ型シールによると、合成樹脂材からなるシール部材のシールリップ内周面のほぼ全面を回転軸外周面に密接させ、シールリップを円筒状としたことによる面圧不足をばねで補償し、屈曲部を薄肉にすることによって軸偏心に対する自由度を確保したため、優れた密封性能を実現することができる。
【出願人】 【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
【出願日】 平成11年8月24日(1999.8.24)
【代理人】 【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
【公開番号】 特開2001−65703(P2001−65703A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−236386