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【発明の名称】 ベーンシール
【発明者】 【氏名】水谷 正彦

【氏名】水谷 環

【要約】 【課題】シール面の精度が向上でき、優れた液漏れ防止効果が得られ、また円滑な摺動が行えるベーンシールを提供する。

【解決手段】このベーンシール30は、エンジンのバルブタイミング調整装置におけるハウジング4とベーン部材1間の回転摺動部に設けられる。ベーンシール30は、樹脂製のベーンシール本体31の単独部品、またはこのベーンシール本体31に板ばねを装着した組立部品とされる。ベーンシール本体31は、シール面30aが、長手方向に垂直な断面において円弧状を成す。ベーンシール本体31の反シール面側に、長手方向に延びる補強用リブ34を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ハウジングとベーン部材間の回転摺動部に設けられて回転中心と平行な方向に延びるベーンシールにおいて、ベーンシール本体の摺接面となるシール面が、長手方向に垂直な断面において円弧状をなし、前記ベーンシール本体の反シール面側に、長手方向に延びる補強用リブを形成したことを特徴とするベーンシール。
【請求項2】 前記ベーンシール本体が合成樹脂製であって、シール面に所望の圧接力を付与する金属製の板ばねを反シール面側に装着した請求項1に記載のベーンシール。
【請求項3】 前記ベーンシール本体が、ガラス繊維10〜50%を含むポリアミド樹脂からなる請求項2に記載のベーンシール。
【請求項4】 前記ベーン部材に取付けられて前記ハウジングの内径面に摺接するベーンシールであって、前記シール面が、前記ハウジングの内径面の曲率半径より僅かに小さい円弧状に形成されている請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のベーンシール。
【請求項5】 前記ベーンシール本体が合成樹脂の射出成形品であって、反シール面側が開口した中空形状とされ、前記補強用リブは、長手方向に沿う両側の側壁の間に、これら側壁と平行に設けられ、この補強用リブと側壁との間に形成される中空部の底面に、ベーンシール本体の射出成形の突き出しピンを配置した請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のベーンシール。
【請求項6】 前記ベーンシールは、エンジンのバルブタイミング調整装置に用いられるものとした請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のベーンシール。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、エンジンのバルブタイミング調整装置等において、ハウジングとベーン部材間の回転摺動部に設けられるベーンシールに関する。
【0002】
【従来の技術】エンジンのバルブタイミング調整装置は、自動車等のエンジンの吸気弁や排気弁の開閉のタイミングを、運転状況に応じて変更するための装置である。この種のバルブタイミング装置は、エンジンのクランクシャフトと、吸気弁や排気弁を駆動するカムシャフトとの間の駆動伝達系に設けられ、カムシャフトに結合されたベーンロータと、クランクシャフトから回転伝達されるシューハウジングとで構成される。ベーンロータは、ハウジング内に所定回転角度内で相対回転自在に収容され、ハウジングに対するベーンロータの位相差が、ハウジング内に供給される圧油により制御される。このようなバルブタイミング装置において、ハウジング内のベーンを収容した油圧室の油漏れを防ぐために、ハウジングおよびベーンに、樹脂製等のベーンシールが装着されている。また、このベーンシールを押し付けてシール効果を発揮させるように、板ばねやゴム等の弾性体が、シールの入る溝の中にシールと共に挿入される。
【0003】図8および図9は、このようなベーンシールの一例を示す。このベーンシール50は、シール面50aと反対側に溝状の中空部55を有する中空形状とされ、長手方向の中央に、長手方向と直交する補強用のリブ54が設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このように長手方向の中央にリブ54を設けた場合、ベーンシール50を射出成形等による樹脂成形品とする場合、「ひけ」と呼ばれる成形収縮が、厚肉となったリブ54の付近で、他の部分よりも大きく生じる。このひけにより、シール面50aの中央部、つまりリブ54を設けた部分が、微小に凹むことになって、平面度が低下する。そのため、ベーンシール50によるオイル漏れ防止特性、特に初期のオイル漏れ防止特性を、十分に得ることが難しい。
【0005】また、上記のようにベーンシール50とその押し付け用の板ばね(図示せず)とをシール溝に組み込む構造であると、組込み工程において、ベーンシール50と板ばねとをセットしながら組み込まなくてはならない。そのため、自動組立ができない。また、ベーンシールと板ばねとが別体であるため、板ばねの組み込み忘れ等の不良が発生する恐れがあり、不良が発生している場合でも、ベーンシール50が組み込まれていれば、板ばねが組み込まれているか否かが目視で確認できない。そのため、最終アセンブリ過程で、機能的な評価を実施しなくては不良を発見することができず、検査に時間がかかる。さらに、従来、ベーンシール50の射出成形時のゲートは、裏面に配置されているが、そのゲート跡(図示せず)がベーンシールの裏面にピン状に突出して残ることがある。そのため、ベーンシール50の付勢用の板ばねが、撓みに伴ってベーンシール50の裏面を摺動するときに、ゲート跡に引っ掛かり、円滑な撓みが阻害されることがある。このような板ばねの撓みの阻害は、ベーンシール50をハウジング等に強く押しつけることになり、ベーン部材の円滑な回転が阻害されたり、ベーンシール50の摩耗を早めたりする。
【0006】この発明の目的は、シール面の精度が向上でき、優れた液漏れ防止性能が得られ、また円滑な摺動が行えるベーンシールを提供することである。この発明の他の目的は、シールの組付け作業を簡易化し、組付けの自動化を図り易くすることである。この発明のさらに他の目的は、ベーンシールの耐摩耗性の向上を図ることである。この発明のさらに他の目的は、円滑な摺接と共に、ベーンシールが傾いても液漏れ防止性が損なわれないようにすることである。この発明のさらに他の目的は、射出成形により生じるゲート跡が、シール付勢用の板ばねの円滑な摺動や撓みを阻害しないようにすることである。この発明のさらに他の目的は、エンジンのバルブタイミング調整装置におけるベーンシールにおいて、上記の各目的を達成することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】この発明のベーンシールは、ハウジングとベーン部材間の回転摺動部に設けられて回転中心と平行な方向に延びるベーンシールにおいて、ベーンシール本体の摺接面となるシール面が、長手方向に垂直な断面において円弧状をなし、前記ベーンシール本体の反シール面側に、長手方向に延びる補強用リブを形成したことを特徴とする。このように、補強用リブを設けることで、ベーンシールの軽量化、材料の節減を図りながら、ベーンシールの強度や剛性を確保することができる。この補強用リブは、ベーンシール本体の長手方向に延びて設けたため、シール面が長手方向の一部で局部的に成形収縮を生じることがなく、シール面の平面度の精度が向上する。そのため、シール面による液漏れ防止特性、特に初期の液漏れ防止特性が向上する。また、シール面は、断面が円弧状に形成されているため、円滑な摺接が行われる。
【0008】この発明において、前記ベーンシール本体が合成樹脂製であって、シール面に所望の圧接力を付与する金属製の板ばねを反シール面側に装着されたものとしても良い。このようにベーンシール本体に板ばねを一体に装着した場合、この板ばねでシール面にシール圧を付与することができる。そのため、ベーン部材とハウジング間の回転摺動部の確実な液漏れ防止が行える。また、このようにベーンシール本体に板ばねを一体に固着して一つの組立部品のベーンシールとしたため、ベーンシールと板ばねとを別々に組み込む必要がなく、一つのベーンシールを組み込むだけで済む。そのため、ベーンシールの組付け作業が簡素化され、ベーンシール組付けの自動化も容易となる。また、板ばねの組立不良が無くなる。
【0009】この発明において、前記ベーンシール本体は、ガラス繊維10〜50%を含むポリアミド樹脂からなるものであっても良い。このように強化材となるガラス繊維入りとすることにより、耐摩耗性が向上する。この耐摩耗性の向上効果は、ガラス繊維の含有量が少ないと実効が低く、10%以上含むことで、効果的に得られる。50%を超えると、樹脂の流動性が低下し、所望の寸法精度が得られない。
【0010】この発明の前記各構成のものにおいて、ベーンシールが、ベーン部材に取付けられてハウジングの内径面に摺接するものである場合に、前記シール面が、前記ハウジングの内径面の曲率半径より僅かに小さい円弧状に形成されているものとしても良い。このように、シール面が、ハウジング内径面の曲率半径より僅かに小さい円弧状であると、円滑な摺接が得られ、またベーンシールが傾いてもシール性が損なわれない。
【0011】この発明の前記各構成のものにおいて、ベーンシール本体が合成樹脂の射出成形品であって、反シール面側が開口した中空形状とされ、前記補強用リブは、長手方向に沿う両側の側壁の間に、これら側壁と平行に設けられ、この補強用リブと側壁との間に形成される中空部の底面に、ベーンシール本体の射出成形の突き出しピンが配置されたものとしても良い。ベーンシールの付勢用の板ばねが、撓みに伴ってリブ上を摺動する際に、その板ばね摺接箇所に突き出しピン跡が突出していると引っ掛かりが生じるが、このように中空部の底面に突き出しピンを配置することで、板ばねが突き出しピン跡に干渉することが回避される。そのため、突き出しピン跡が突出していても、板ばねの摺動ないし撓みに影響を及ぼさない。
【0012】この発明の前記各構成のベーンシールは、エンジンのバルブタイミング調整装置に用いられるものであっても良い。エンジンのバルブタイミング調整装置は、ベーンシールに液漏れ防止性能や、耐摩耗性、組立性等の各機能が厳しく要求されるが、この発明のベーンシールによると、このような厳しい各種要求を満足させることができる。
【0013】
【発明の実施の形態】この発明の一実施形態を図1ないし図3と共に説明する。図1は、この実施形態にかかるベーンシールを用いたエンジンのバルブタイミング調整装置の一例を示す。このエンジンのバルブタイミング調整装置は、ベーン部材1と、このベーン部材1を所定角度範囲内で相対回転可能に収容する液圧室3を形成したハウジング4と、このハウジング4と別体に形成されかつこのハウジング4に結合された回転伝達部材5とを備える。これらベーン部材1とハウジング4との各回転摺動部にはベーンシール30が各々設けられる。これらベーンシール30は、金属製の板ばね32で付勢される。板ばね32は、ベーンシール30の樹脂製のベーンシール本体31に一体に装着されたものであっても良い。各液圧室3に対しては、オイル等の作動液を給排してベーン部材1のハウジング4に対する位相差を調整するための液路21,22が設けられる。また、ベーン部材1とハウジング4との間には、相対回転をロックする回転ロック機構15が設けられている。
【0014】ベーン部材1は、ボス部1aの外周に複数(図示の例では4枚)のベーン1bを設けたベーンロータからなり、カムシャフト6の先端にボルト等の結合具7で固定状態に結合されている。カムシャフト6は、自動車エンジンの吸気弁および排気弁(図示せず)の両方またはいずれか一方を開閉駆動するものである。
【0015】回転伝達部材5は、エンジンのクランクシャフト(図示せず)からギヤ列等の伝達機構(図示せず)を介して回転伝達されるリング状の部材であり、外周にギヤ部5aを有している。回転伝達部材5は、鉄系等の金属製とされている。回転伝達部材5は、カムシャフト6の先端の嵌合軸部6aに回転自在に嵌合し、嵌合軸部6aに隣接して設けられた鍔部6bに片方の幅面が係合している。回転伝達部材5およびハウジング4は、図1(A)の矢印X方向から見て時計方向に回転する。この回転方向を進角方向aとする。
【0016】ハウジング4は、周壁部となるハウジング本体4aと、側壁部となる一対の側壁材4b,4cとでなる。両側壁材4b,4cは、各々中央孔を有する円板状の部材であり、外径部がハウジング本体4aの両側面に重ねられ、ハウジング本体4aに結合具8で結合されている。結合具8は、ハウジング4と回転伝達部材5とを結合する手段を兼ねていて、ハウジング本体4aと、両側壁材4b,4cと、回転伝達部材5との4者を、一体に固定状態に結合する。結合具8は、ボルトからなり、ハウジング4にその各構成部材4a〜4cにわたって設けられたボルト挿通孔9に挿通されて、先端が回転部材5のねじ孔に螺合している。ボルト挿通孔9は、後に説明するハウジング4の各シュー10に設けられている。ハウジング4の外径は、回転伝達部材5の外径よりも大きくても小さくても良いが、この例では回転伝達部材5の外径と略等しく形成されている。ハウジング4の回転伝達部材5側の側壁材4cは、内径面がカムシャフト6の嵌合軸部6aに回転自在に嵌合している。また、この側壁材4cのハウジング外側の側面は、中心部側が突出する段付き面に形成されていて、回転伝達部材5の段付き面とされた側面と嵌合し合っている。
【0017】ハウジング4は、その周壁となるハウジング本体4aの内周に、複数のシュー10が形成されたシューハウジングからなり、隣合うシュー10間で形成された扇状の空間部が、各ベーン1bを収容する前記の液圧室3となる。この液圧室3内でベーン1bが回転可能な角度が、ハウジング4に対してベーン部材1の相対回転が可能な所定角度範囲である。ハウジング4の両側壁となる側壁材4b,4cの内径は、シュー10の先端位置よりも小径とされていて、ベーン部材1のボス部1aの両側面はハウジング側壁材4b,4cの内面に接触し、各液圧室3は閉鎖空間となっている。各液圧室3はベーン1bで仕切られていて、ベーン1bよりも進み角方向aの後方の液圧室部分が遅角液圧室3aであり、前方向の液圧室部分が進角液圧室3bである。
【0018】ハウジング4の周壁部であるハウジング本体4aは、耐熱性合成樹脂製、または軽量合金等の金属製とされている。側壁材4b,4cの材質は、軽量合金等の金属製であっても良く、またハウジング本体4aと同じく耐熱性合成樹脂製としても良い。ベーン部材1の材質も、耐熱性合成樹脂製、または軽量合金等の金属製とされている。
【0019】ハウジング4の各シュー10の先端面は円筒面状に形成され、ベーン部材1のボス部1aの外径面に相対回転可能な程度の微小隙間を介して対面する。このシュー10の先端面には、軸方向に延びるシール溝12が形成され、ベーン部材1のボス部1aの外径面に密接するベーンシール30が嵌合している。シール溝12は例えば矩形断面の溝とされている。ベーン部材1の各ベーン1bの先端面は円筒面状に形成され、ハウジング4の内径面に相対回転可能な程度の微小隙間を介して対面する。また、各ベーン1bの先端面には、軸方向に延びるシール溝13が設けられ、ハウジング4の内径面に密接するベーンシール30が嵌合している。シール溝13は、例えば矩形断面の溝とされている。
【0020】ハウジング4の各シュー10に設けたベーンシール30と、ベーン部材1の各ベーン1bに設けたベーンシール30とは、全く同じものであっても良く、また寸法が異なっていて、同様な材質、形状のものであっても良い。
【0021】図2(A),(B)は、各々ベーンシール30を表側から見た斜視図および裏向けて示す斜視図であり、図3(A),(B)は各々ベーンシールの正面図および底面図である。これらの図に示すように、ベーンシール30は、合成樹脂製の単独部品のベーンシール本体31で形成されていて、シール面30aは、断面円弧状に形成されている。ベーンシール30のうち、ベーン部材1側に取付けられるものは、円弧状とされたシール面30aの曲率半径が、ハウジング4の内径面の曲率半径より僅かに小さく設定されている。シール面30aは、図2の例では段部36を介して周囲部よりも突出しているが、この段部36は、図4の例のように無くしても良い。
【0022】ベーンシール本体31は、反シール面側が開口した中空形状とされている。すなわち、ベーンシール本体31は、シール面30aの成形部となる天井壁31bと、その長手方向に沿う両側の側壁31c,31cと、両端の端部壁31a,31aとを有し、両側の側壁31c,31cの間に、補強リブ用34が設けられている。補強用リブ34は、天井壁31bから続いて設けられたものであって、ベーンシール本体31の長手方向に沿って延び、両端が端部壁31aに続いている。したがって、補強用リブ34とその両側の側壁31c,31cとの間に溝状の中空部35が形成されている。両側の側壁31c,31cと補強用リブ34の底面は、略、互いに同一の平面または円筒面上に位置している。端部壁31a,31aは、側壁31cおよび補強用リブ34の底面よりも突出しており、その突出部分は座用の突部となっている。ベーンシール本体31は、射出成形品であって、その射出成形のゲート36は、端部壁31aの底面に配置されている。
【0023】ベーンシール本体31の材質例を説明すると、例えば、ガラス繊維30%を含むポリアミド樹脂とされている。このように強化材となるガラス繊維入りとすることにより、ベーンシール本体31の耐摩耗性が向上する。この耐摩耗性の向上効果は、ガラス繊維の含有量が少ないと実効が低く、10%以上含むことで、効果的に得られる。また、50%以上を超えると樹脂の流動性が低下し、所望の寸法精度が得られない。ベーンシール本体31の合成樹脂としては、この他に、ポリアミド(PA66,PA6,PA12)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、またはポリイミド(PI)等のうちの任意の樹脂を用いても良く、これらの樹脂に、ガラス繊維(GF)、炭素繊維(CF)、チタン酸カリウムのうちのいずれかを混合させたものとしても良い。
【0024】図3(A)に示すように、板ばね32は、例えば、ベーンシール30の長手方向に沿って延びるものであって、長手方向の中央部がベーンシール30を押し付けるように弓形に湾曲したものとされる。
【0025】この構成のベーンシール30によると、補強用リブ34を設けたため、ベーンシール30を中空形状として、軽量化、材料の節減を図りながら、ベーンシール30の強度や剛性を確保することができる。この補強用リブ34は、ベーンシール本体31の長手方向に延びて設けたため、シール面30aが長手方向の一部で局部的に成形収縮を生じることがなく、シール面30aの精度が向上する。そのため、シール面30aによる液漏れ防止特性、特に初期の液漏れ防止特性が向上する。また、シール面30aは、断面を円弧状に形成したため、円滑な摺接が行われる。特に、ベーン部材1に取付けられてハウジング4の内径面に摺接する方のベーンシール30は、シール面30aが、ハウジング4の内径面の曲率半径より僅かに小さい円弧状に形成されているため、円滑な摺接が得られるうえ、ベーンシール30が傾いてもシール性が損なわれない。
【0026】ベーンシール本体31は、射出成形品とする場合に、その中空部35の底面に突き出しピン36を配置したため、板ばね32が突き出しピン跡に干渉することが回避される。そのため、突き出しピン跡が突出していても、板ばね32の摺動ないし撓みに影響を及ぼさない。
【0027】なお、前記実施形態では、ベーンシール30は、ベーンシール本体31の単独部品で形成されるものとしたが、ベーンシール30は、例えば図5や、図6(A),(B)、図7に各種の例を各々示すように、金属製の板ばね32を反シール面側に装着したものであっても良い。板ばね32の形状、および板ばね32のシール本体31に対する取付構造は、任意の構成が採用できる。
【0028】図5および図6(A),(B)のいずれの例のベーンシール30も、ベーンシール本体31を射出成形するときに、金型内に板ばね32を挿入し、板ばね32をベーンシール本体31と一体成形したものである。図5のベーンシール30、および図6(A)のベーンシール30は、いずれもベーンシール本体31に対して板ばね32の一端のみを一体成形で固着し、成形後に板ばね32を湾曲状態に曲げて弾性を持たせたものである。このうち図5の例は、板ばね32としてベーンシール本体31の全長に近い長さのものを用い、ベーンシール本体31の一端に固着している。図6(A)の例は、板ばね32としてベーンシール本体31の略半分程度の長さのものを用い、ベーンシール本体31の両端に各々基端を固着して先端をベーンシール本体31の中央側へ曲げてある。図6(B)の例は、予め湾曲状態に曲げられた板ばね32が両端でベーンシール本体31に固着されたものである。
【0029】板ばね32のベーンシール本体31への固定構造は、この他に、例えば図7に一例を示すように、ベーンシール本体31に設けた突起33に、板ばね32に設けた孔34を嵌合させ、嵌合後に突起33を熱等により潰して抜け止めしても良い。
【0030】なお、この発明のベーンシールを装着したバルブタイミング装置は、例えば、ベーン部材と、このベーン部材を所定角度範囲内で相対回転可能に収容する液圧室を形成したハウジングと、前記液圧室に作動液を給排して前記ベーンの前記ハウジングに対する位相差を調整するための液路とを備え、エンジンのクランクシャフトと、エンジンの吸気弁および排気弁の両方またはいずれか一方を駆動するカムシャフトとの間に設けられて、前記両シャフトのいずれか一方のシャフトと共に前記ハウジングが回転し、他方のシャフトと共に前記ベーン部材が回転するものであり、前記ハウジングとベーン部材間の回転摺動部にベーンシールが設けられる。
【0031】
【発明の効果】この発明のベーンシールは、ベーンシール本体の摺接面となるシール面が、長手方向に垂直な断面において円弧状をなし、前記ベーンシール本体の反シール面側に、長手方向に延びる補強用リブを形成したものであるため、シール面の平面度の精度が向上し、優れた液漏れ防止効果が得られ、また円滑な摺動が行える。前記ベーンシール本体が合成樹脂製であって、シール面に所望の圧接力を付与する金属製の板ばねを反シール面側に装着した場合は、シールの組付け作業が簡易であり、組付けの自動化が図り易い。ベーンシール本体がガラス繊維10〜50%を含むポリアミド樹脂からなる場合は、耐摩耗性が向上する。このベーンシールが、ベーン部材に取付けられてハウジングの内径面に摺接するものである場合に、前記シール面が、ハウジングの内径面の曲率半径より僅かに小さい円弧状に形成されているときは、円滑な摺接が行え、またベーンシールが傾いても液漏れ防止性が損なわれない。ベーンシール本体が合成樹脂の射出成形品であって、その中空部の底面に、ベーンシール本体の射出成形の突き出しピンを配置した場合は、射出成形により生じる突き出しピン跡が、シール付勢用の板ばねの円滑な摺動や撓みを阻害しない。また、この発明のベーンシールは、エンジンのバルブタイミング調整装置に用いられても、その液漏れ防止性能や、耐摩耗性、組立性等の各種の厳しい要求を満足させることができる
【出願人】 【識別番号】000102692
【氏名又は名称】エヌティエヌ株式会社
【出願日】 平成11年8月27日(1999.8.27)
【代理人】 【識別番号】100086793
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅士 (外1名)
【公開番号】 特開2001−65702(P2001−65702A)
【公開日】 平成13年3月16日(2001.3.16)
【出願番号】 特願平11−240954