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【発明の名称】 自動緊塞ガスケット
【発明者】 【氏名】秋 山 聡

【氏名】山 中 幸

【氏名】西 田 隆 仁

【氏名】金 田 清 一

【要約】 【課題】相手部材を傷付けず、相手部材とのなじみも得られやすく、しかも、治具と治具との隙間に膨張黒鉛からなるガスケット本体のはみ出しや、酸化に起因するガスケット本体の体積の減少を抑えるため、シール性に優れしかも長期安定したシール性能が得られるガスケットを提供する。

【解決手段】膨張黒鉛からなるガスケット本体の軸方向両端面に、少なくとも炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸を編組または縒って構成したひも状パッキン層を形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 リング形状の自動緊塞ガスケットであって、膨張黒鉛からなるガスケット本体の軸方向両端面に、少なくとも炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸を編組または縒って構成したひも状パッキン層を形成したことを特徴とする自動緊塞ガスケット。
【請求項2】 前記ガスケット本体の軸方向端面のいずれか一方のひも状パッキン層が、複数のひも状パッキン層から構成されていることを特徴とする請求項1に記載の自動緊塞ガスケット。
【請求項3】 前記ガスケット本体の軸方向端面のひも状パッキン層が、内外径方向両端部の厚さが中央部分の厚さよりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の自動緊塞ガスケット。
【請求項4】 前記ガスケット本体の軸方向端面のひも状パッキン層が、ガスケット本体の軸方向端面の隅角部に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の自動緊塞ガスケット。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主に高温高圧用バルブのボンネット部などのシール材として使用される自動緊塞ガスケットに関する。
【0002】
【従来の技術】本発明が、主に用いられる高温高圧用バルブは、従来より、例えば、図13に示したような構造のものが用いられている。すなわち、高温高圧用バルブ200は、圧力配管などに接続される開口部202、204を有するバルブ本体206を備えており、このバルブ本体206には、弁箱208が形成されている。この弁箱208には、弁座210が形成されており、この弁座210には、上下動する弁体212が着座することにより、弁座210に形成された開口部214を閉止することによって、開口部202、204の間を流れる流体を遮断するように構成されている。
【0003】そして、この弁体212には、弁体212を上下動するための弁棒214が接続されており、この弁棒214は、弁箱208の上方に装着されたボンネット216の内周側に形成されたグランドパッキンなどの軸シール219にてシールされている。また、弁棒214の上方部分には、螺子溝218が形成されており、弁棒214の上端に接続されたハンドル220を操作することによって、この螺子溝218が、弁箱208の上部に装着されたヨーク222の上端に形成されたネジ部224と螺合することによって弁棒214が上下動するようになっている。ところで、このボンネット216の下端と、ヨーク222の下端、ならびに弁箱208との間には、外部に流体が漏洩しないように、図13に示したように、自動緊塞ガスケット301が装着されている。このガスケット301は、いわゆる自動緊塞形のシール材であり、その内周側下端が切欠かれて内側テーパ面302が形成してある。この内側テーパ面302は、図14の拡大図に示すように、このガスケット301が、バルブ200のボンネット部216に装着される際に、このボンネット部216の外周に形成された外側テーパ面217に圧接するようになっている。
【0004】従って、流体圧が矢印A方向にボンネット部216に作用すれば、外側テーパ面217を介して、B方向にガスケット301に力が作用し、ガスケット301には、弁箱208の内壁208aにC方向の力が作用するとともに、ヨーク222の下端222aの受金227、当て金228にD方向の力が作用するようになっている。これによって、矢印A方向に示す、ボンネット部216に作用する流体圧が大きくなればなるほど、ガスケット301は、受圧板として作用するボンネット部216と、押さえ治具として作用する当て金228と、外径側治具として作用する弁箱208との間の隙間を埋めるため、良好なシールが得られ、いわゆる自動緊塞作用をなすようになっている。
【0005】この他にも、図示しないが、ガスケットにテーパがついていない形状の例もある。ただその場合でも、流体圧が大きくなればなるほど、ガスケットにかかる力が大きくなり、自動緊塞作用をなすようになっている(なお、以下においては、説明の便宜上、内周側下端にテーパ面が形成されたガスケットを例にして説明する。)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】このような自動緊塞作用をなすガスケット301として、従来から、金属製のガスケットが使用されている。しかしながら、金属製のガスケットを使用した場合には、ガスケットが装着され力が作用する相手部材であるボンネット部216の外側テーパ面217、弁箱208の内壁208a、ならびに当て金228なども金属製である。そのため、高圧下で金属部材同士が接触することになり、かみ込みが起こり、相手部材であるボンネット部216の外側テーパ面217、弁箱208の内壁208aを傷付けるおそれがあるとともに、その部分でのシール性が著しく低下するおそれがあった。
【0007】この場合、傷によってシール性が低下しないようにするために、ガスケットを交換する際に、相手部材であるボンネット部216の外側テーパ面217などのシール面を再仕上げ加工しなければならず、煩雑な作業が必要でメンテナンスコストが高くなっていた。従来より、このような傷の発生を防止するために、ガスケットの表面に、例えば、銀、銅、アルミニウムなどの軟質金属で被覆することも行われている。しかしながら、このような軟質金属を被覆するために、工程が増加し、しかも被覆のためにコストが高くなる。
【0008】このため、最近では、相手部材であるシール面を傷つけることがなく、しかもシール面へのなじみが、金属に比べて小さな応力で得られるなどの理由から、膨張黒鉛製のガスケットが多く用いられるようになっている。このような膨張黒鉛を用いたガスケットとしては、ガスケット全体を膨張黒鉛単体とする場合の他、図15に示したように、膨張黒鉛製のガスケット本体401の内部に、金属製の編物または金属製のシートからなる補強部材402が組み込まれた構造のものが使用されている。なお、このガスケット本体401の内部組み込まれた補強部材402は、ガスケットの形状保持性や可搬性を向上するためのものである。
【0009】しかしながら、このような膨張黒鉛製のガスケット400では、図16に示したように、締め付け時または内圧負荷時に、矢印Dで示したように、それぞれ、受圧板216と押さえ治具228との間、押さえ治具228と外径側治具208との間、外径側治具208と受圧板216との間の隙間から、膨張黒鉛がはみ出してしまうことがある。このような膨張黒鉛のはみ出し現象は、使用する流体の圧力が高くなればなるほど顕著に発生する。
【0010】従って、このようにガスケット全体を膨張黒鉛製としたガスケット400では、はみ出し現象によってガスケット本体401の体積が減少することになり、その結果、シール性能が低下することが懸念された。このような膨張黒鉛のはみ出しを防止するために、従来から、図17に示したように、ガスケット本体501の軸方向の端面の隅角部に沿って、金属板からなる補強材502、504を装着したガスケット500が用いられている。なお、図17および図18では、ガスケットにテーパがついていない形状について図示したが、テーパが形成されているものであっても同様である。
【0011】しかしながら、この場合、補強材502、504によって、膨張黒鉛のはみ出しは防止することができるが、高圧下で使用した場合には、この補強材502、504の金属板と、金属製の受圧板216などのシール面との間において、前述したように、かみ込みが起こり、相手部材であるシール面を傷付けるおそれがあるとともに、その部分でのシール性が著しく低下するおそれがあった。
【0012】さらに、このような膨張黒鉛のはみ出し、ならびにシール面への損傷を防止するために、図18に示したように、ガスケット本体601の軸方向の端面に、金属細線製の編物からなる補強材602を装着したガスケット600が用いられている。しかしながら、この場合、補強材602を金属細線製の編物とすることによって、金属板と比較すれば、相手部材のシール面に与える傷などの損傷の影響はある程度軽減されると考えるが、損傷を与える可能性は十分に残る。しかも、金属細線製の編物には、隙間が存在するため、流体の圧力が高い場合には、これらの隙間から膨張黒鉛がはみ出してしまうおそれがある。そのため、使用条件が比較的低圧に制限されることになっていた。
【0013】また、このような金属細線製の編物からなる補強材602は、その厚さが1mm程度以下と薄いものであり、しかも、比較的剛直であるので、流体圧が負荷された場合に、補強材602自体の内外径方向への変形は小さいものである。従って、治具と治具との間の隙間が大きいバルブでは、膨張黒鉛からなるガスケット本体601の部分のみが内外径方向に変形して、これらの隙間からはみ出しが生じるおそれがある。そのために、治具と治具との間の隙間公差を厳しくして、精密な加工が要求されることになり、その作業が煩雑で、コストとも高価となっている。
【0014】さらに、膨張黒鉛の耐熱温度は400℃程度であるが、400℃程度以上の高温条件でバルブを用いる場合には、図18の構造では、金属細線製の編物の隙間から大気中の酸素が進入し、ガスケット本体601を構成する膨張黒鉛が酸化されることによって、ガスケット本体601の体積が減少することになり、その結果、シール性能が低下することになると考えられる。
【0015】本発明は、このような現状に鑑み、相手部材を傷付けず、相手部材とのなじみも得られやすく、しかも、治具と治具との隙間に膨張黒鉛からなるガスケット本体のはみ出しや、酸化に起因するガスケット本体の体積の減少を抑えるため、シール性に優れしかも長期安定したシール性能が得られるガスケットを提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、前述したような従来技術における課題を考慮し、目的を達成するために発明なされたものであって、本発明の自動緊塞ガスケットは、リング形状の自動緊塞ガスケットであって、膨張黒鉛からなるガスケット本体の軸方向両端面に、少なくとも炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸を編組または縒って構成したひも状パッキン層を形成したことを特徴とする(図1)。
【0017】このように構成することによって、流体圧(内圧)が負荷されるとガスケット本体では、膨張黒鉛が軸方向への変形とともに、内外径方向への変形を生じて、ガスケット外径側の治具端面およびガスケット内径側のテーパ面、すなわち受圧板のテーパ面に張り出すことによって、外径側治具と内径側の受圧板との間でシールを達成することができる。
【0018】そして、ガスケット本体の軸方向両端面にひも状パッキン層が形成されているので、形成されたひも状パッキン層は、流体圧が負荷されると軸方向への変形とともに、内外径方向への変形を生じて、治具と治具との隙間にひも状パッキン層が入り込むことができるが、このひも状パッキン層は、少なくとも炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸を編組または縒って構成したものであるため、かみ込みが起こらない。また強固かつ柔軟性があり、さらに金属細線編物より緻密で十分な厚みを有しているので、ほぼ原形のままこのような隙間に入り込んだ位置に留まることができるため、ガスケット本体の膨張黒鉛がこのような隙間にはみ出すのを有効に防止することができる(図2)。
【0019】なお、図2のように、内周側下端にテーパ面が形成された場合に限定されるものではなく、図3や図4のような形状のものであってもよい(このことは、以下においても同様である)。また、ひも状パッキンを本体部の膨張黒鉛を覆うように形成することで、膨張黒鉛のはみ出しを防止できるとともに、ガスケット本体部の膨張黒鉛と大気との接触を遮断することができるため、酸化雰囲気下での膨張黒鉛の耐熱温度である400℃程度以上の高温条件下においても、膨張黒鉛の酸化が抑制され、本体部膨張黒鉛の体積減少から生じるシール性能低下を防止できる。
【0020】すなわち、相手部材を傷付けず、相手部材とのなじみも得られやすく、しかも、治具と治具との隙間に膨張黒鉛からなるガスケット本体のはみ出しや、酸化に起因するガスケット本体の体積の減少を抑えたため、シール性に優れしかも長期安定したシール性能が得られる。また、本発明の自動緊塞ガスケットは、前記ガスケット本体の軸方向端面のいずれか一方のひも状パッキン層が、複数のひも状パッキン層から構成されていることを特徴とする(図5)。
【0021】これにより、流体圧が負荷されると、複数のひも状パッキン層の間にガスケット本体の膨張黒鉛が進入して、ひも状パッキン層には、内外径方向へ移動しようとする力が働き、ひも状パッキンの内外径方向への張り出しが大きくなり、本体部の膨張黒鉛のはみ出しを防止する効果が高まる(図6)。さらに、本発明の自動緊塞ガスケットは、前記ガスケット本体の軸方向端面のひも状パッキン層が、内外径方向両端部の厚さが中央部分の厚さよりも大きいことを特徴とする(図7、図9)。
【0022】これにより、流体圧が負荷されると、ひも状パッキン層の内外径方向両端部の厚さが大きくなった部分が、内外径方向へ変形しようとするガスケット本体の膨張黒鉛に押されて、ひも状パッキン層に内外径方向へ移動しようとする力が働き、ひも状パッキンの内外径方向への張り出しが大きくなり、本体部の膨張黒鉛のはみ出しを防止する効果が高まる(図8、図10)。
【0023】また、本発明の自動緊塞ガスケットは、前記ガスケット本体の軸方向端面のひも状パッキン層が、ガスケット本体の軸方向上端面の隅角部に形成されていることを特徴とする(図11)。これにより、流体圧が負荷されると、隅角部ひも状パッキン層が、内外径方向へ変形しようとするガスケット本体の膨張黒鉛に押されて、ひも状パッキン層に内外径方向へ移動しようとする力が働き、ひも状パッキンの内外径方向への張り出しが大きくなり、体部の膨張黒鉛のはみ出しを防止する効果が高まる(図12)。
【0024】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。図1は、本発明の自動緊塞ガスケットの第1の実施例の部分拡大断面図、図2は、図1の自動緊塞ガスケットの使用状態を説明する断面図である。10は、全体で本発明の自動緊塞ガスケット(以下、単に「ガスケット」と言う。)を示している。ガスケット10は、膨張黒鉛からなりリング形状に形成されたガスケット本体11を備えている。このガスケット本体11の内周側下端には、テーパ面12が形成されている。
【0025】この場合、ガスケット本体11は、膨張黒鉛シートを渦巻き状に巻き加圧成形したものである。なお、図1に示したように、ガスケット本体11内部に、ガスケットの形状保持性や可搬性を向上するために、金属製の編物または金属製のシートからなる補強部材13が組み込まれた形状のものでも良く、その場合には、金属製の編物または金属製のシートと膨張黒鉛シートを渦巻き状に巻き加圧成形したものである。この場合には、膨張黒鉛と金属の重量比としては、膨張黒鉛4〜5に対して、金属製の編物または金属製のシートが1程度の割合であり、膨張黒鉛密度は、d=1.4g/cm3程度である。
【0026】一方、ガスケット本体11の軸方向上端面14には、ひも状パッキン層15が形成されている。また、ガスケット本体11の軸方向下端面16にも、ひも状パッキン層17が形成されている。これらのひも状パッキン層15、17は、炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸を編組または縒って構成したものである。この場合、無機繊維としては、セラミック製やシリカ製などが使用可能である。有機繊維としては、アラミド繊維などが使用可能である。また、その編組方法としては、袋編み、格子編み、八つ編みなどが採用可能である。また、単に繊維を縒るだけのものも採用可能である。なお、ひも状パッキン層15、17には、このように炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸の他に、例えば、金属繊維などの糸を含んでいても構わない。
【0027】また、これらのひも状パッキン層15、17をガスケット本体11の軸方向端面14、16に形成する方法としては、種々の方法が採用可能であるが、例えば、一体成形する方法が採用可能であり、一体成形するには、加圧成形すればよい。また、加圧成形する前にひも状パッキンと本体部の膨張黒鉛とを接着剤などで仮止めしても構わない。
【0028】さらに、この場合、ひも状パッキン層15、17の厚さとしては、流体圧(内圧)が負荷された場合に、軸方向への変形とともに、内外径方向への変形を生じるためには、2mm以上、望ましくは、5mm以上とするのが好ましい。このように構成される本発明のガスケット10は、図2に示したように、高温高圧用バルブなどにおいて、弁箱である外径側治具18と、ボンネット部である受圧板19と、当て金である押さえ治具20との間に装着されて、いわゆる自動緊塞作用をなすようになっている。
【0029】すなわち、矢印A方向に流体圧が、受圧板19に作用すれば、受圧板19の外側テーパ面19aを介して、B方向にガスケット10に力が作用する。ガスケット10には、外径側治具18の内壁18aにC方向の力が、押さえ治具20にD方向の力が、それぞれ作用するようになっている。これによって、矢印A方向に示す、受圧板19に作用する流体圧が大きくなればなるほど、ガスケット10は、受圧板19と押さえ治具20と外径側治具18と間の隙間を埋めるため、良好なシールが得られ、いわゆる自動緊塞作用をなすようになっている。
【0030】そして、この場合、ガスケット本体11の軸方向両端面14、16に形成されたひも状パッキン層15、17は、図2に示したように、流体圧が負荷されると軸方向への変形とともに、内外径方向への変形を生じる。その結果、治具と治具との隙間、すなわち、ガスケット本体11の軸方向下端面16に接する側において、受圧板19と外径側治具18の内壁18aとの隙間21、ガスケット本体11の軸方向上端面14に接する側において、外径側治具18と押さえ治具20との隙間22、押さえ治具20と受圧板19との隙間23に、ひも状パッキン層15、17が入り込むことができる。
【0031】このひも状パッキン層15、17は、少なくとも炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸を編組または縒って構成したものであるため、かみ込みが起こらない。また強固かつ柔軟性があり、さらに、金属細線編物より緻密で十分な厚みを有しているので、ほぼ原形のままこのような隙間に入り込んだ位置に留まることができるため、ガスケット本体の膨張黒鉛がこのような隙間にはみ出すのを有効に防止することができる。
【0032】また、ひも状パッキンを本体部の膨張黒鉛を覆うように形成することで、膨張黒鉛のはみ出しを防止できるとともに、ガスケット本体部の膨張黒鉛と大気との接触を遮断することができるため、酸化雰囲気下での膨張黒鉛の耐熱温度である400℃程度以上の高温条件下においても、膨張黒鉛の酸化が抑制され、本体部膨張黒鉛の体積減少から生じるシール性能低下を防止できる。
【0033】すなわち、相手部材を傷付けず、相手部材とのなじみも得られやすく、しかも、治具と治具との隙間に膨張黒鉛からなるガスケット本体のはみ出しや、酸化に起因するガスケット本体の体積の減少を抑えたため、シール性に優れしかも長期安定したシール性能が得られる。なお、上記実施例では、内周側下端にテーパ面が形成されている例を示したが、本発明は、何らこの形状に限定されるものではなく、図3に示したように断面が略矩形状や、図4に示したように、内径側がテーパ形状のものであってもよい(このことは、以下の実施例においても同様である)。
【0034】図5は、本発明の自動緊塞ガスケットの第2の実施例の部分拡大断面図、図6は、図5の自動緊塞ガスケットの使用状態を説明する断面図である。図1及び図2の第1の実施例のガスケットと同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。この実施例では、ガスケット本体11の軸方向上端面14のひも状パッキン層15が、複数(本実施例では3つ)のひも状パッキン層15a〜15cから構成されている。
【0035】この実施例のガスケット10では、流体圧が負荷されると、図6に示したように、複数のひも状パッキン層15a〜15cの間にガスケット本体11の膨張黒鉛が進入して、内外径方向両端部のひも状パッキン層15a、15cに、内外径方向へ移動しようとする力が働き、ひも状パッキンの内外径方向への張り出しが大きくなり、本体部の膨張黒鉛のはみ出しを防止する効果が高まる。
【0036】なお、この実施例では、3つのひも状パッキン層を形成したが、複数箇であれば、特に限定されるものではない。図7は、本発明の自動緊塞ガスケットの第3の実施例の部分拡大断面図、図8は、図7の自動緊塞ガスケットの使用状態を説明する断面図である。図1及び図2の第1の実施例のガスケットと同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。
【0037】この実施例では、ガスケット本体11の軸方向上端面14のひも状パッキン層15の内外径方向の両端部15d、15eの厚さが、中央部分の厚さよりも大きく形成されている。すなわち、ひも状パッキン層15の中央部分には、断面が矩形状の凹溝15fが形成されており、この凹溝15fにガスケット本体11の一部が嵌合した構成となっている。
【0038】この実施例のガスケット10では、流体圧が負荷されると、図8に示したように、凹溝15fに嵌合したガスケット本体11の一部11aが内外径方向へ変形しようとする。その結果、ひも状パッキン層の内外径方向両端部の厚さが大きくなった部分、すなわち、両端部15d、15eが、凹溝15fに嵌合したガスケット本体11の一部11aに押されて、ひも状パッキン層に内外径方向へ移動しようとする力が働き、ひも状パッキンの内外径方向への張り出しが大きくなり、本体部の膨張黒鉛のはみ出しを防止する効果が高まる。
【0039】なお、この実施例では、ひも状パッキン層15の中央部分に、断面が矩形状の凹溝15fを形成することによって、ガスケット本体11の軸方向上端面14のひも状パッキン層15の内外径方向の両端部15d、15eの厚さが、中央部分の厚さよりも大きく形成したが、この凹溝15fは、図9の第4の実施例に示したように、略弧状の断面を有するようにしても、図10に示したように、同じ作用が得られる。
【0040】図11は、本発明の自動緊塞ガスケットの第5の実施例の部分拡大断面図、図12は、図11の自動緊塞ガスケットの使用状態を説明する断面図である。図1及び図2の第1の実施例のガスケットと同じ構成部材には、同じ参照番号を付してその詳細な説明を省略する。この実施例では、ガスケット本体11の軸方向上端面14のひも状パッキン層15が、内外径方向の隅角部に形成した2つのひも状パッキン層15g、15hから構成されている。
【0041】すなわち、ガスケット本体11の軸方向上端面14は、図12に示したように、押さえ治具20が装着された状態で使用されるため、ガスケット本体11からの膨張黒鉛のはみ出しは、押さえ治具20と接するガスケット本体11の軸方向上端面14の中央部分からは起こることはなく、軸方向端面14の内外径方向の両方の隅角部からのみ発生する。
【0042】従って、本実施例では、ひも状パッキン層を軸方向端面14の内外径方向の両方の隅角部に配置したものである。この場合、軸方向端面14の中央部分は膨張黒鉛11aであるが、圧力負荷時に、図12の矢印E方向に、ひも状パッキン層15g、15hが、内外径方向へ変形するような力は得られる。従って、この場合においても、ガスケット本体11の膨張黒鉛のはみ出しを防止することができる。
【0043】以上の実施例のように、本発明のガスケットによれば、ひも状パッキンを本体部の膨張黒鉛を覆うように形成することで、膨張黒鉛のはみ出しを防止できるとともに、ガスケット本体部の膨張黒鉛と大気との接触を遮断することができるため、酸化雰囲気下での膨張黒鉛の耐熱温度である400℃程度以上の高温条件下においても、膨張黒鉛の酸化が抑制され、本体部膨張黒鉛の体積減少から生じるシール性能低下を防止できる。結果として、長期間安定したシール性能を得ることができる。
【0044】また、本発明において、はみ出し防止のために、ガスケット本体の軸方向両端面に形成するひも状パッキンは、下記のように、各温度条件によって使いわけすることができる。すなわち、炭素繊維本来の耐熱温度は、大気中で400℃程度であるが、その他の含有物の影響により、その耐熱温度が300℃程度に制限されているものもある。
【0045】従って、ひも状パッキンを炭素繊維からなる糸を編組または縒って構成した場合には、このような温度条件下で使用するようにすればよい。また、本発明のガスケットは、条件によっては、蒸気下で580℃程度の高温領域で使用されることがあるが、このように、ひも状パッキンを炭素繊維からなる糸を編組または縒って構成した場合には、はみ出し防止のために形成したひも状パッキン自体が酸化によって消失してしまい、本来の性能を発揮できなくなる可能性がある。
【0046】従って、このような高温条件下で用いる場合には、ひも状パッキンを無機繊維からなる糸を編組または縒って構成すればよい。すなわち、無機繊維の耐熱温度は、その材質により連続使用において1000℃まで使用可能なものがあり、炭素繊維に比較してより高温での使用が可能となる。逆に、本発明のガスケットが、無機繊維や炭素繊維ほどの耐熱性を要求されない比較的低温度の箇所に用いられるときは、ひも状パッキンを有機繊維からなる糸を編粗または縒って構成することも可能である。
【0047】さらに、本発明のガスケットにおける炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸を編組または縒って構成したひも状パッキン層は、締めつけ時の内外径方向への変形量は、従来の金属細線製の編物に比較して大きい。従って、従来の金属細線製の編物の場合、治具と治具の隙間が、0.1〜0.12mm程度で使用されているのに対して、本発明のひも状パッキンの場合では、実測試験を行ったところ、治具と治具との隙間を0.5mm(径方向の隙間1mm)として十分に使用可能であった。このため、本発明のガスケットによれば、バルブ側の治具と治具との隙間の公差を従来のように金属細線製の編物のときほど厳しくする必要がなくなる。
【0048】
【発明の効果】本発明の自動緊塞ガスケットによれば、ガスケット本体の軸方向両端面にひも状パッキン層が形成されているので、形成されたひも状パッキン層は、流体圧が負荷されると、軸方向への変形とともに、内外径方向への変形を生じて、治具と治具との隙間にひも状パッキン層が入り込むことができる。このひも状パッキン層は、少なくとも炭素繊維、若しくは無機繊維、若しくは有機繊維からなる糸を編組または縒って構成したもので、強固であり、ほぼ原形のままこのような隙間に入り込んだ位置に留まることができるため、ガスケット本体の膨張黒鉛がこのような隙間にはみ出すのを防止することができる。
【0049】また、ひも状パッキンを本体部の膨張黒鉛を覆うように形成することで、膨張黒鉛のはみ出しを防止できるとともに、ガスケット本体部の膨張黒鉛と大気との接触を遮断することができるため、酸化雰囲気下での膨張黒鉛の耐熱温度である400℃程度以上の高温条件下においても、膨張黒鉛の酸化が抑制され、本体部膨張黒鉛の体積減少から生じるシール性能低下を防止できる。
【0050】従って、相手部材を傷付けず、相手部材とのなじみも得られやすく、しかも、治具と治具との隙間に膨張黒鉛からなるガスケット本体のはみ出しや、酸化に起因するガスケット本体の体積の減少を抑えたため、シール性に優れしかも長期安定したシール性能が得られる。
【出願人】 【識別番号】000229564
【氏名又は名称】日本バルカー工業株式会社
【出願日】 平成11年7月7日(1999.7.7)
【代理人】 【識別番号】100081994
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊一郎 (外3名)
【公開番号】 特開2001−21044(P2001−21044A)
【公開日】 平成13年1月26日(2001.1.26)
【出願番号】 特願平11−193248