| 【発明の名称】 |
自動変速機の制御装置 |
| 【発明者】 |
【氏名】七尾 勇一郎
【氏名】黒岩 弘
【氏名】野田 淳一
【氏名】高萩 直矢
【氏名】有原 儀信
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| 【要約】 |
【課題】速度段変更時の前後における変速機構の入力軸トルクに大きな変化がある場合においても、摩擦部材の変速開始時に要する作用圧を達成し、変速機構の出力軸に生ずる変速ショックを抑制させることができる自動変速機の制御装置を提供する。
【解決手段】エンジンの出力軸側に設けられ、遊星歯車装置及び摩擦部材からなる変速機構を備え、前記摩擦部材に作用する作用圧を変更して該摩擦部材の締結若しくは解放により前記変速機構の求める速度段を達成させる自動変速機の制御装置であって、該制御装置は、エンジントルクの操作信号の変化量に基づいてトルク操作量を算出する操作量算出手段と、該操作量算出手段の出力信号に基づいて前記作用圧を補正する作用圧補正手段とを備え、前記速度段変更時における前記変速機構の入力軸トルクと変速開始時の前記入力軸トルクとの間に大きな変化がある場合にも、前記変速機構の出力軸の変速ショックを低減させてなる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 エンジンの出力軸側に設けられ、遊星歯車装置及び摩擦部材からなる変速機構を備え、前記摩擦部材に作用する作用圧を変更して該摩擦部材の締結若しくは解放により前記変速機構の求める速度段を達成させる自動変速機の制御装置において、該制御装置は、エンジントルクの操作信号の変化量に基づいてトルク操作量を算出する操作量算出手段と、該操作量算出手段の出力信号に基づいて前記作用圧を補正する作用圧補正手段とを備え、前記速度段変更時における前記変速機構の入力軸トルクと変速開始時の前記入力軸トルクとの間に大きな変化がある場合にも、前記変速機構の出力軸の変速ショックを低減させることを特徴とする自動変速機の制御装置。 【請求項2】 前記作用圧補正手段は、前記操作量算出手段によるトルク操作量が負の場合には、前記作用圧を減少補正することを特徴とする請求項1記載の自動変速機の制御装置。 【請求項3】 前記制御装置は、前記入力軸トルクを検出する入力トルク検出手段と、前記速度段を判定する速度段判定手段と、前記入力トルク検出手段及び前記速度段判定手段の出力信号に基づいて前記摩擦部材に作用する作用圧を算出する作用圧算出手段とを備えていることを特徴とする請求項1又は2記載の自動変速機の制御装置。 【請求項4】 前記制御装置は、前記操作量算出手段の出力信号に基づいて前記作用圧の伝達経路の切替時期を遅延補正する切替時期補正手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動変速機の制御装置。 【請求項5】 前記制御装置は、前記入力軸トルクを検出する入力トルク検出手段と、前記速度段を判定する速度段判定手段と、前記入力トルク検出手段及び前記速度段判定手段の出力信号に基づいて前記摩擦部材に作用する作用圧の伝達経路の切替時期を算出する切替時期算出手段とを備えていることを特徴とする請求項4記載の自動変速機の制御装置。 【請求項6】 前記操作量算出手段は、速度段変更時の直前までの所定時間におけるトルク操作信号の変化量に基づいて、前記トルク操作量を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動変速機の制御装置。 【請求項7】 前記操作量算出手段は、速度段変更時から所定時間におけるトルク操作信号の変化量に基づいて、前記トルク操作量を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動変速機の制御装置。 【請求項8】 前記操作量算出手段は、速度段変更時の前後の所定時間におけるトルク操作信号の変化量に基づいて、前記トルク操作量を算出することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動変速機の制御装置。 【請求項9】 前記操作量算出手段は、スロットル開度の変化量に基づいて前記トルク操作量を算出していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の自動変速機の制御装置。 【請求項10】 前記操作量算出手段は、吸入空気量の変化量に基づいて前記トルク操作量を算出していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の自動変速機の制御装置。 【請求項11】 前記操作量算出手段は、燃料噴射弁による燃料噴射量の変化量に基づいて前記トルク操作量を算出していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の自動変速機の制御装置。 【請求項12】 前記操作量算出手段は、点火プラグによる点火時期の変化量に基づいて前記トルク操作量を算出していることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の自動変速機の制御装置。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、自動変速機の制御装置に係り、特に、変速開始時の摩擦部材に作用する作用圧を制御する自動変速機の制御装置に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に、自動変速機は、トルクを増大させるトルクコンバータと、指定のシフト位置に自動的に変更・保持する変速機構とを組み合わせたものであり、該変速機構には、複数の遊星歯車と、油圧制御によって作動される複数の摩擦部材(例えば、クラッチ、バンドブレーキ)とが備えられ、変速操作は、シフト位置及びエンジン負荷等に応じた出力回転速度となる速度段(ギア段)が決定された後、前記複数の摩擦部材のうち、前記速度段に応じて適宜組み合わされた摩擦部材に作用圧(ライン圧)を供給し、前記速度段が達成されている。 【0003】ここで、この変速操作が瞬時に行われると、変速前後のトルク段差によって変速ショックが発生するが、この変速操作が長い時間をかけて行われると、前記摩擦部材の滑り時間が長くなり、該摩擦部材の摩耗が生ずるとともに、変速の間延び感による運転フィーリングに影響を与えることになる。 【0004】そのため、これらの問題を解決するために、変速機構の入力軸トルクの瞬時値を検出し、追随性を良くする変速制御の技術が提案され(例えば、特許第2518270号公報参照)、さらに、前記摩擦部材に対する作用圧の応答遅れによる影響を考慮した自動変速機の制御装置の技術が各種提案されている(例えば、特開昭63−270971号公報等参照) 【0005】 【発明が解決しようとする課題】ところで、前記従来技術のうち、特許第2518270号公報所載の変速制御の技術は、変速時に、推定若しくは検出した変速機構の入力軸トルクに応じた作用圧の制御及び変速時期の制御等を行って、所定時間内における変速ショックを低減させるものであるが、前記作用圧の応答遅れについては考慮されていないものである。そして、特開昭63−270971号公報所載の制御装置の技術は、現在の速度段から次の速度段に変わる直前の変速機構の入力軸トルクに基づいて作用圧を算出し、変速制御中に変速後のトルク状態を予測しており、前記作用圧の応答遅れによる影響が考慮されている。 【0006】しかし、変速操作に際して前記入力軸トルクに大きな変化がない場合には、摩擦部材の締結に要する作用圧(締結作用圧)を達成し、作用圧の応答遅れが存在しても、変速機構の出力軸の変速ショックを低減させることができるが、前記直前の入力軸トルクに基づいて変速制御を行うことは、速度段変更時の前後の入力軸トルクに大きな変化がある場合には、速度段変更時のトルクと変速開始時のトルクとの誤差が大きくなり、変速ショックが生じて適正な変速制御が行えないという問題がある。 【0007】この速度段変更時の前後における入力軸トルクに大きな変化がある場合、例えば、アクセルを戻しながらシフトアップを行う等のときには、特に問題が生ずることになる。すなわち、アクセルを戻しながらのシフトアップは、変速開始時の入力軸トルクが小さくなるために、締結作用圧を小さくして変速を開始しなければならないものである。 【0008】図8は、前記従来技術における変速制御のタイミングチャートであり、一例として、所定スロットル開度の走行からアクセルを戻して2速から3速にシフトアップさせたときを示している。2速走行において、アクセルの戻しに伴ってスロットル開度TVOが閉じられると、a時点で2−3速度段が判定され、該a時点以降における変速機構の入力軸トルクTtに基づいた摩擦部材の締結に要する作用圧PLaが算出・出力される。そして、作用圧伝達経路の切替指令は、2−3速度段が判定された前記a時点から切替時期TMaを算出し、b時点にて出力される。 【0009】ここで、該作用圧PLaは、アクセルの戻し、変速機構の入力軸トルクTtの低下に伴って徐々に低下するが、油圧切替指令時たる変速開始時の実作用圧は、作用圧PLaの低下に対して遅れを持って低下する。したがって、前記実作用圧は、前記変速開始時には未だ実作用圧cという大きな値であり、これに伴って前記締結作用圧も、dに示すような大きな値になり、前記摩擦部材は、急激な締結を始めて変速機構の出力軸に変速ショックが生じてしまう。なお、変速機構の入力軸トルクTtが増加する場合でも、その勾配によって同様の現象が発生する。 【0010】このように、前記従来技術は、前記作用圧の応答遅れについて考慮されていない、若しくは前記作用圧の応答遅れを考慮しても、前記速度段変更時直前の入力軸トルクに基づいて変速制御を行っており、例えば、アクセルを戻しながらのシフトアップのように、速度段変更時の前後における変速機構の入力軸トルクに大きな変化がある場合には、変速開始時の実作用圧が大きくなって変速ショックを防ぐことができず、この点については格別な配慮がなされていないものである。 【0011】本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、速度段変更時の前後における変速機構の入力軸トルクに大きな変化がある場合においても、摩擦部材の変速開始時に要する作用圧を達成し、変速機構の出力軸に生ずる変速ショックを抑制させることができる自動変速機の制御装置を提供することにある。 【0012】 【課題を解決するための手段】前記目的を達成すべく、本発明に係る自動変速機の制御装置は、基本的には、エンジンの出力軸側に設けられ、遊星歯車装置及び摩擦部材からなる変速機構を備え、前記摩擦部材に作用する作用圧を変更して該摩擦部材の締結若しくは解放により前記変速機構の求める速度段を達成させ、前記制御装置は、エンジントルクの操作信号の変化量に基づいてトルク操作量を算出する操作量算出手段と、該操作量算出手段の出力信号に基づいて前記作用圧を補正する作用圧補正手段とを備え、前記速度段変更時における前記変速機構の入力軸トルクと変速開始時の前記入力軸トルクとの間に大きな変化がある場合にも、前記変速機構の出力軸の変速ショックを低減させることを特徴としている。 【0013】前記の如く構成された本発明の自動変速機の制御装置は、変速機構の入力軸トルクに影響を与えるエンジントルクの操作信号の変化量に基づいてトルク操作量を算出し、該トルク操作量に基づいて摩擦部材に作用する作用圧を補正するので、現在の速度段から次の速度段に変わる変速機構の入力軸トルクと、変速開始時の入力軸トルクとの間に大きなトルク変化がある場合においても、摩擦部材の変速開始時に要する作用圧を達成でき、変速機構の出力軸に生ずる変速ショックを抑制して車両の信頼性を高めることができる。 【0014】また、本発明に係る自動変速機の制御装置の具体的態様は、前記作用圧補正手段は、前記操作量算出手段によるトルク操作量が負の場合には、前記作用圧を減少補正すること、又は前記制御装置は、前記入力軸トルクを検出する入力トルク検出手段と、前記速度段を判定する速度段判定手段と、前記入力トルク検出手段及び前記速度段判定手段の出力信号に基づいて前記摩擦部材に作用する作用圧を算出する作用圧算出手段とを備えていることを特徴としている。 【0015】さらに、本発明に係る自動変速機の制御装置の具体的態様は、前記操作量算出手段の出力信号に基づいて前記作用圧の伝達経路の切替時期を遅延補正する切替時期補正手段を備えること、又は前記入力軸トルクを検出する入力トルク検出手段と、前記速度段を判定する速度段判定手段と、前記入力トルク検出手段及び前記速度段判定手段の出力信号に基づいて前記摩擦部材に作用する作用圧の伝達経路の切替時期を算出する切替時期算出手段とを備えていることを特徴としている。 【0016】前記の如く構成された本発明の自動変速機の制御装置は、トルク操作量に基づいて摩擦部材に作用する作用圧の伝達経路の切替時期を遅延補正するので、前記補正された作用圧と相俟って、変速開始時に要する作用圧をより精度良く達成することができ、変速機構の出力軸に生ずる変速ショックの一層の抑制を図ることができる。 【0017】さらに、本発明に係る自動変速機の制御装置の他の具体的態様は、前記操作量算出手段は、速度段変更時の直前までの所定時間におけるトルク操作信号の変化量、若しくは速度段変更時から所定時間におけるトルク操作信号の変化量、又は速度段変更時の前後の所定時間におけるトルク操作信号の変化量に基づいて前記トルク操作量を算出することを特徴としている。 【0018】また、本発明に係る自動変速機の制御装置のさらに他の具体的態様は、前記操作量算出手段は、スロットル開度の変化量、吸入空気量の変化量、燃料噴射弁による燃料噴射量の変化量、又は点火プラグによる点火時期の変化量に基づいて前記トルク操作量を算出していることを特徴としている。 【0019】 【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明に係る自動変速機の制御装置の実施形態を詳細に説明する。図1は、本実施形態の自動変速機の制御装置を備えた変速システムの全体構成図である。 【0020】該システムは、4気筒のエンジン1、自動変速機(AT)2、差動装置4、前記自動変速機2の制御装置たるコントロールユニット(ATCU)7、前記エンジン1のコントロールユニット(ECU)8等からなり、前記自動変速機2は、トルクコンバータ14と変速機構15とから構成され、エンジン1の出力軸にはトルクコンバータ14が、該トルクコンバータ14の出力軸には変速機構15がそれぞれ連結されており、駆動輪5は、前記変速機構15のプロペラシャフト(出力軸)3から差動装置4を介して駆動される。 【0021】前記エンジン1のエアークリーナ9から導入された空気は、スロットル制御器11及び吸入マニホールド12を介して、各燃料噴射弁(インジェクタ)13から噴射された燃料と混合されて各気筒に供給される。また、前記吸入マニホールド12の上流には、吸入空気量Qaを検出するエアフロセンサ10、スロットル開度TVOを検出するスロットルセンサ17が、各々の適宜位置に配設されている。なお、アイドルスピードコントロールバルブ(ISCバルブ)18は、前記スロットル制御器11をバイパスする通路に設けられ、空気量を調整する。 【0022】前記エアフロセンサ10、前記スロットルセンサ17、及び適宜位置に配設されるクランク角センサ20からの各出力信号は、前記ECU8に取り込まれ、エンジン回転数Ne等が計算され、前記各インジェクタ13及び前記ISCバルブ、並びに各点火プラグ(図示省略)に、開弁駆動信号、点火信号の各駆動信号を出力し、インジェクタパルス幅Ti及び補正空気量、並びに点火時期等が制御される。また、前記ECU8と前記ATCU7とは、信号線でつながれており、相互に信号のやりとりが行われている。 【0023】前記自動変速機2には、該変速機構15の入力軸回転数でもあるトルクコンバータ14のタービン回転数Ntを検出するタービン回転数センサ16aと、前記変速機構15の出力軸回転数Noを検出する出力軸回転数センサ16bとが各々の適宜位置に配設されており、前記タービン回転数センサ16a、前記出力軸回転数センサ16b、及び自動変速機2内の油圧温度Tafを検出するAT油温センサ21からの各出力信号は、前記ATCU7に取り込まれ、さらに、該ATCU7には、前記ECU8からのエンジン回転数Ne、スロットル開度TVO等による車両状態の各種情報が取り込まれ、これらに基づいて後述する諸演算が実行され、最適なギアを選択し、前記自動変速機2の作用圧伝達経路である油圧回路6(作用圧伝達経路)の切替電磁弁19aに開弁駆動信号を、前記油圧回路6の制御ソレノイド19bに制御信号を各々出力し、前記摩擦部材を締結若しくは解放させるための作用圧を制御し、変速機構15の速度段を達成させる。 【0024】図2は、前記変速機構15の構成を示したものである。なお、本実施形態のギア構成は、最も基本的な前進1〜4速を実現する構成を示しており、後退及びエンジンブレーキ用のクラッチ等については省略する。前記変速機構15は、2つの遊星歯車装置と、4つの摩擦部材とから構成されている。前記変速機構15の入力軸には、摩擦部材の一つであるハイクラッチ22と、リヤ側サンギア23とが各々接続され、一体的に回転する。前記ハイクラッチ22の逆側には、フロント側ピニオンギア24と、摩擦部材の一つであるローワンウェイクラッチ25と、摩擦部材の一つであるフォワードワンウェイクラッチ26とが各々接続されている。なお、前記ローワンウェイクラッチ25は、ハイクラッチ22側から正転(入力軸の回転と同一方向)のトルクが発生すると締結状態となり、結果的に回転停止状態となる。 【0025】また、該フォワードワンウェイクラッチ26の逆側には、リヤ側インターナルギア27が接続されており、前記リヤ側サンギア23と、リヤ側ピニオンギア31と、前記リヤ側インターナルギア27とで遊星歯車装置を形成し、一方、前記フロント側サンギア32と、前記フロント側ピニオンギア24と、フロント側インターナルギア30とで他の遊星歯車装置が形成される。前記フロント側サンギア32は、ブレーキドラム28に接続され、該ブレーキドラム28は、摩擦部材の一つであるバンドブレーキ29の締結により、回転停止状態となる。そして、前記フロント側インターナルギア30は、前記リヤ側ピニオンギア31と一体的に回転する前記変速機構15の出力軸3に接続されている。 【0026】図3は、前記ATCU7の変速制御ブロック図である。該ATCU7は、速度段が変わる前後の変速機構15の入力軸トルク、すなわち速度段変更時のトルクと変速開始時のトルクとの間に大きな差がある場合に生ずる出力軸3の変速ショックを抑制させるため、前記各摩擦部材に供給される作用圧(ライン圧)を適正値にするように作用圧の補正及び切替電磁弁19aによる切替時期の補正を行うものであり、基本的には、前記ECU8からのエンジン回転数Ne及びタービン回転数センサ16aによるタービン回転数Ntに基づいて、前記変速機構15の入力軸トルクであるタービントルクTtを演算推定する入力トルク検出手段301と、前記ECU8からのスロットル開度TVO及び車速VSPに基づいて、現在の走行状態に応じた速度段判定値GpNxtを予め設定された各変速線テーブルから検索する速度段判定手段302と、前記入力トルク検出手段301のタービントルクTt及び前記速度段判定手段302の速度段判定値GpNxtに基づいて、前記作用圧PLaを算出する作用圧算出手段303と、前記タービントルクTt及び前記速度段判定値GpNxtに基づいて前記摩擦部材の締結に要する作用圧に対する油圧回路6の切替時期TMaを算出する切替時期算出手段304等とから構成されている。なお、前記作用圧算出手段303は、次の式(1)に基づいて前記作用圧PLaを算出する。 【0027】 【数1】PLa=K×Tt+k×Ne (1) 【0028】ここで、K及びkは、各速度段、言い換えると締結される前記摩擦部材の種類又は組み合わせにより決定される作用圧換算係数である。なお、該作用圧換算係数は、本実施形態では実機により試験的に求めているが、前記摩擦部材の動摩擦特性から理論的に算出することもできる。 【0029】そして、前記ATCU7は、変速操作による現在の速度段判定値GpNxtが前記速度段判定手段302で判定された時点から所定時間内に、エンジントルクの操作信号の一つである前記スロットル開度TVOの変化量に基づいて応答性良くトルク操作量dTVOを算出する操作量算出手段305と、該操作量算出手段305のトルク操作量dTVOに基づいて、前記作用圧算出手段303の前記作用圧PLaを減少・増加補正する作用圧補正手段306と、該操作量算出手段305のトルク操作量dTVO及び速度段判定手段302の速度段判定値GpNxtに基づいて、前記切替時期算出手段304の前記切替時期TMaを遅延補正する切替時期補正手段307とを備えており、前記作用圧補正手段306による前記作用圧PLaの補正により、前記各摩擦部材の締結に要する作用圧を達成する。そして、前記切替時期補正手段307による前記切替時期TMaの遅延補正と相俟って、油圧切替指令時たる変速開始時の実作用圧を適正値にし、前記各摩擦部材の締結に要する作用圧を一層精度良く達成している。なお、前記作用圧補正手段306は、前記操作量算出手段305によるトルク操作量が負の値、すなわちトルク減少傾向の場合には前記作用圧PLaを減少させるように補正し、一方、前記トルク操作量が正の値すなわちトルク増加傾向のときには前記作用圧PLaを増加させるように補正する。 【0030】図4は、前記入力トルク検出手段301によるタービントルクTtの演算推定の制御ブロック図である。前記入力トルク検出手段301のブロック401では、前記ECU8からのスロットル開度TVOとエンジン回転数Neの入力情報に基づいて、予め記憶させておいたエンジントルク特性マップからエンジントルクTeを求める。なお、前記ブロック401によるエンジントルクTeの演算は、エンジン吸入空気量Qaとエンジン回転数Neとの関係、又は、インジェクタパルス幅Tiとエンジン回転数Neとの入力情報からも求めることできる。ブロック402では、前記変速機構15の入力軸トルクであるタービン回転数Ntを前記ECU8からのエンジン回転数Neで除し、式(2)に示すように、トルクコンバータ14のスリップ比eを求める。 【0031】 【数2】e=Nt/Ne (2) 【0032】ブロック403では、前記スリップ比eに基づいて、予め記憶させておいたトルクコンバータ14のトルク比t特性(e−t特性)からトルク比tを求め、ブロック404では、該トルク比tと前記ブロック401のエンジントルクTeとに基づいて、式(3)に示すように、エンジンタービントルクTteを求める。 【0033】 【数3】Tte=t×Te (3) 【0034】一方、ブロック405では、前記スリップ比eに基づいて、予め記憶させておいたトルクコンバータ14のポンプ容量特性からポンプ容量係数τを求め、ブロック406では、該ポンプ容量係数τと前記ブロック403のトルク比tとエンジン回転数Neの2乗値とに基づいて、式(4)に示すように、トルクコンバータタービントルクTttを求める。 【0035】 【数4】Ttt=t×τ×Ne×Ne (4) 【0036】そして、ブロック407では、運転状態に応じて、前記ブロック404のエンジンタービントルクTteと前記ブロック406のトルクコンバータタービントルクTttのうち、変速機構15の入力軸トルクであるタービントルクTtとして採用すべきかをエンジントルク発生領域であるか否かによって適宜選択し、前記作用圧算出手段303及び前記切替時期算出手段304に出力する。なお、トルクコンバータ14は、エンジン1よりも経時劣化し難く、一般的には、トルクコンバータ14のトルク特性が保たれるため、ある運転領域においては、前記ブロック404のエンジンタービントルクTteと前記ブロック406のトルクコンバータタービントルクTttとが一致するように、前記ブロック401のエンジントルク特性マップを修正することで、エンジン1の経時劣化によるトルク特性のずれを修正することも可能である。 【0037】図5は、前記速度段判定手段302による変速線の一例を示したものである。該変速線は、スロットル開度TVOと車速VSPとで表わされるものであり、本図では、2速から3速に変速される2−3変速線及び3速から2速に変速される3−2変速線のみ記載し、他の変速線を省略しているが、実際には、変速機構15に備えられた速度段の数にしたがって、隣り合う速度段について各変速線が各々存在する。 【0038】このうち、シフトアップ(2−3変速線)については、スロットル開度TVO及び車速VSP車速がともに比較的大きい場合に、前記速度段判定手段302で速度段判定値GpNxt=2が判定される走行状態(図中Xで示す。)からスロットル開度TVOの閉じる方向に移ると(図中Yで示す。)、前記2−3変速線を横切って前記速度段判定値GpNxt=3が判定され、そして、油圧回路6を介して2速から3速への変速動作が開始される(いわゆるアクセル足戻し時のシフトアップ状態)。なお、スロットル開度TVO及び車速VSP車速がともに大きい場合において、前記3−2変速線を横切ると、急加速運転時のいわゆるキックダウンになる。 【0039】図6は、前記変速機構15における各変速段の前記摩擦部材の組み合わせを示したものであり、前記速度段判定手段302の速度段判定値GpNxtに基づいて、ハイクラッチ22、ローワンウェイクラッチ25、フォワードワンウェイクラッチ26、バンドブレーキ29の各摩擦部材を適宜組み合わせ、これらの各状態が前記ATCU7から油圧回路6に出力され、前記切替電磁弁19aを介して組み合わされた前記各摩擦部材に作用する作用圧が変更され、速度段が達成される。以上のように、本発明の前記実施形態は、上記の構成によって次の機能を奏するものである。 【0040】すなわち、前記自動変速機の制御装置7は、エンジントルクの操作信号の一つであるスロットル開度TVOの変化量に基づいてトルク操作量dTVOを算出する操作量算出手段305と、該トルク操作量dTVOに基づいて、作用圧算出手段303による前記摩擦部材に作用する作用圧PLaを補正する作用圧補正手段306と、前記トルク操作量dTVO及び速度段判定値GpNxtに基づいて、切替時期算出手段304による前記作用圧の伝達経路の切替時期TMaを遅延補正する切替時期補正手段307とを備えているので、図7に示すように、速度段変更時と変速開始時とにおける変速機構15の各入力軸トルクに大きな変化がある場合にも、出力軸3の変速ショックを低減させ、前記各摩擦部材の締結をスムーズに開始することができる。 【0041】図7は、前記ATCU7による変速制御のタイミングチャートであり、一例として、所定スロットル開度の走行からアクセルを戻して2速から3速にシフトアップさせた場合を示している。2速走行において、アクセルの戻しに伴ってスロットル開度TVOが閉じられると、速度段判定手段302では、a時点で2−3速度段が判定され、作用圧算出手段303では、該a時点から速度段変更時、及び前記a時点以降の各入力軸トルクTtに基づいた作用圧PLaが算出・出力される。そして、切替時期算出手段304では、前記a時点から油圧回路6の切替時期TMaが算出される。 【0042】一方、操作量算出手段305は、前記a時点からA時点間(スロットル開度計測期間)のスロットル開度TVOの減少量を測定してトルク操作量dTVOとする。作用圧補正手段306は、該トルク操作量dTVOに基づいて作用圧PLaの補正量γを設定するとともに、油圧回路6の切替指令が出力されるまで前記作用圧PLaを減少補正(PLa−γ)して補正後の作用圧PLbを求める。また、切替時期補正手段307は、前記トルク操作量dTVOに基づいて切替電磁弁19aの切替時期TMaの補正量βを設定するとともに、該切替時期TMaを遅延補正(TMa+β)して補正後の切替時期TMbを求める。 【0043】なお、本実施形態の前記スロットル開度計測期間(a〜A)は、速度段判定手段302の速度段判定値GpNxtが以前の速度段から現在の速度段になった時点からの所定時間とし、経験則により求められている。また、本実施形態の前記補正量γ及び補正量βは、前記トルク操作量dTVOの絶対値が所定値以上になり、前記足戻し時のシフトアップが判定された場合に用いられ、予め設定されているものであるが、前記トルク操作量dTVOの値に応じてそれぞれ算出してもよいものである。 【0044】そして、前記作用圧補正手段306による補正後の作用圧PLbは、油圧の応答遅れが存在しても、補正前の作用圧PLaよりも小さくなり、変速開始時の入力軸トルクが小さくなるアクセルを戻しながらのシフトアップ時にも、従来の実作用圧cに比して小さな値にすることができる。さらに、前記切替時期補正手段307による補正後の切替時期TMbは、補正前の切替時期TMaよりも遅い時点Bになり、該遅延補正後の切替時期TMbと前記減少補正後の作用圧PLbとが相俟って、油圧回路6の切替指令時たる変速開始時の実作用圧Cは、従来の実作用圧cに比して一層小さくなり、前記各摩擦部材の締結に要する作用圧を一層小さな値に達成させることができるので、前記摩擦部材の急激な締結開始による変速機構15の出力軸3の変速ショックを防ぎ、速度段変更時と変速開始時の変速機構15の各入力軸トルクに大きな変化がある場合にも対応することができる。以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱することなく、設計において種々の変更ができるものである。 【0045】例えば、前記操作量算出手段305は、前記a時点からA時点の間、すなわち速度段判定手段302による速度段判定値GpNxtが、速度段変更時点a以降の所定時間におけるスロットル開度TVOの変化量を測定してトルク操作量dTVOとしているが、これに限られず、速度段変更時点aの直前までの所定時間、若しくは速度段変更時点aを挟んだ前後の所定時間におけるスロットル開度TVOの変化量に基づいてトルク操作量を算出する、又は前記トルク操作量を所定時間毎に常時算出しておき、速度段判定手段302による速度段判定値GpNxtが現在の速度段から変わった時点aで前記トルク操作量としても良く、これらの場合にも前記実施形態と同様の効果を得ることができる。 【0046】また、前記操作量算出手段305は、前記スロットル開度TVOの変化量のほか、エンジントルクの操作信号である吸入空気量Qa、インジェクタパルス幅Ti、又は点火時期等の各変化量を測定してトルク操作量を算出しても良く、これらの場合にも前記実施形態と同様の効果を得ることができる。 【0047】 【発明の効果】以上の説明から理解されるように、本発明に係る自動変速機の制御装置は、現在の速度段から次の速度段に変わる前後に急激なトルク変化が発生した場合でも、変速開始時における摩擦部材の締結に要する作用圧を達成し、変速ショックの抑制を図ることができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000005108 【氏名又は名称】株式会社日立製作所 【識別番号】000232999 【氏名又は名称】株式会社日立カーエンジニアリング
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| 【出願日】 |
平成12年2月28日(2000.2.28) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100091096 【弁理士】 【氏名又は名称】平木 祐輔
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| 【公開番号】 |
特開2001−241539(P2001−241539A) |
| 【公開日】 |
平成13年9月7日(2001.9.7) |
| 【出願番号】 |
特願2000−51960(P2000−51960) |
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