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【発明の名称】 トロイダル無段変速機の変速比制御方法
【発明者】 【氏名】ヨアヒム バムベルガー

【氏名】ペーター ミヒャウ

【氏名】ヨアヒム ホルン

【要約】 【課題】トロイダル無段変速機において、パワーローラの制御品質を改善する。

【解決手段】旋回支承装置の保持力Fやその変位距離zの調節により目標変速比に関連づけてフィードバック制御するメカニズムに基づき、変速比制御回路の入力側12へ実際変速比をフィードバックすることにで、変速比nueを制御する。この場合、保持力Fを、トーラス状ディスク1,3に加わるトルクM1,M2ならびにパワーローラ6,7の傾斜位置に依存して予備制御する。あるいはこのパワーローラ6,7の旋回支承装置8の変位距離zを、スタティックまたはダイナミックに制御回路にフィードバックする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 トロイダル無段変速機に、入力ディスク(1)および出力ディスク(3)を備えた少なくとも1つのトーラス状ディスクペアと、力を伝達するよう該トーラス状ディスクペア(1,3)と接触している少なくとも1つのパワーローラ(6,7)が設けられており、該パワーローラ(6,7)は、変速機内で変位可能な旋回支承装置(8)に配置されていて、入力ディスクと出力ディスク(1,3)との間で無段階に変更可能な傾斜位置(α)により変速比を変えることができ、前記旋回支承装置の保持力(F)および/またはその変位距離(z)の調節により目標変速比に関連づけて閉ループ制を行うメカニズムに基づき、変速比(nue)制御回路の入力側(12)へ実際変速比をフィードバックすることにより変速比(nue)を制御する形式の、トロイダル無段変速機の変速比制御方法において、前記保持力(F)を、トーラス状ディスク(1,3)に加わるトルク(M1,M2)ならびにパワーローラ(6,7)の傾斜位置に依存して予備制御し、および/または該パワーローラ(6,7)の旋回支承装置(8)の変位距離(z)を、スタティックまたはダイナミックに制御回路にフィードバックすることを特徴とする、トロイダル無段変速機の変速比制御方法。
【請求項2】 定常的な保持力(F)を式F =M1/R01+M2/R02に依存して予備制御し、ここでM1は入力ディスク(1)におけるトルクであり、M2は出力ディスク(3)におけるトルクであり、R01は入力ディスク(1)上でのパワーローラ(6,7)のころがり半径、R02は出力ディスク(3)上でのパワーローラ(6,7)のころがり半径である、請求項1記載の方法。
【請求項3】 複数のトーラス状ディスクペアをもつトロイダル変速機では定常的な保持力(F)を式F =(M1/R1+M2/R2)(NT・NZ)
に依存して予備制御し、ここでM1は入力ディスク(1)におけるトルクであり、M2は出力ディスク(3)におけるトルクであり、R01は入力ディスク(1)上でのパワーローラ(6,7)のころがり半径、R02は出力ディスク(3)上でのパワーローラ(6,7)のころがり半径、NTはトロイダル装置の個数、NZは各トロイダル装置におけるパワーローラの個数である、請求項1記載の方法。
【請求項4】 前記パワーローラ(6,7)の変位距離(z)の時間微分(dz/dt)をフィードバックする、請求項1から3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】 フィードバックした値を所定の増幅係数と乗算する、請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、トロイダル無段変速機の変速比制御方法に関する。この場合、トロイダル無段変速機に、入力ディスクおよび出力ディスクを備えた少なくとも1つのトーラス状ディスクペアと、力を伝達するよう該トーラス状ディスクペアと接触している少なくとも1つのパワーローラが設けられており、該パワーローラは、変速機内で変位可能な旋回支承装置に配置されていて、入力ディスクと出力ディスクとの間で無段階に変更可能な傾斜位置により変速比を変えることができ、前記旋回支承装置の保持力および/またはその変位距離の調節により目標変速比に関連づけて閉ループ制御を行うメカニズムに基づき、変速比制御回路の入力側へ実際変速比をフィードバックすることにより変速比を制御する。
【0002】
【従来の技術】トロイダル無段変速機は、ころがり接触における摩擦力によりトーラス状の駆動側ディスクから介在ローラつまりパワーローラを介してトーラス状の被駆動側ディスクへパワーを伝達する。トーラス状ディスクは、いわゆる「ハーフトロイダル型」または「フルトロイダル型」をとることができる。
【0003】トーラス状ディスクペアの各ディスク間における少なくとも1つのパワーローラは、変位可能な旋回支承装置ないしは傾転支承装置を介して保持されている。この場合、パワーローラを傾けることにより、そのころがり半径がトーラス状ディスクにおいて変化し、そのことで変速比の変化が生じる。なお、摩擦力の伝達に必要とされる垂直力は、トーラス状ディスクを軸線方向に押し当てることで形成される。
【0004】変速比のための従来の閉ループ制御システムは、たとえばPIDコントローラによってパワーローラの角度を慣用のやり方で制御することに基づいている。その際、パワーローラ角度は、変速機内でパワーローラを支持している旋回支承装置のスタティックな保持力および/またはその変位距離の調節により行われる。この場合、閉ループ制御ないしはフィードバック制御のために、実際の変速比が閉ループ制御システムにおける制御回路の入力側に加えられ、目標変速比との関連づけが行われる。閉ループ制御技術において一般的であるように、パワーローラのスタティックな保持力および/または変位距離の操作量に対する介入により変速比が閉ループ制御される。
【0005】このような慣用の閉ループ制御システムによるアプローチであると、制御ダイナミクスの改善が必要であることがわかった。このため、変速機の特別な構造が提案されている。その場合、いわゆる「ケーシング角度(Gehaeuse-Winkel)」の導入によりたとえば制御の安定領域が広がるけれども、これはたとえば前進走行の場合だけというように、変速機の一方の回転方向についてしかあてはまらない。
【0006】なお、Prof. P. Tenberge による文献 "Toroidgetriebe mit verbesserten Kennwerten", VDI-Berichte No. 1393, 1998, p. 703 - 724 には、トロイダル型におけるトラクション伝動を効率、制御、設置スペースならびに馬力荷重に関して構想的、構造的に最適化することについての概論が示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、パワーローラの慣用の閉ループ制御を制御品質について改善することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明によればこの課題は、保持力を、トーラス状ディスクに加わるトルクならびにパワーローラの傾斜位置に依存して予備制御し、および/または該パワーローラの旋回支承装置の変位距離を、スタティックまたはダイナミックに制御回路にフィードバックすることより解決される。
【0009】
【発明の実施の形態】このように請求項1の特徴部分に記載の構成によれば、標準的なフィードバック制御メカニズムを2つの付加的な成分によって補うことにより達成される。つまり上述のように、一方では保持力をトーラス状ディスクに加わるトルクならびに介在ローラつまりパワーローラの傾斜位置に依存して予備制御し、他方ではパワーローラの旋回支承装置の変位距離を制御回路にフィードバックする。これら2つの成分により慣用の制御コンセプトが著しく拡張され、このことで様々な利点を達成することができる。つまり保持力の予備制御により、パワーローラの目下の傾転角を考慮しながら変速機の駆動部および被駆動部におけるトルク変化の影響が制御回路から分離される。保持力を予備制御しないと変速比コントローラは、トルク変化の作用を目標変速比の外乱の原因として考慮するのではなく、はじめにそれに対して応答することになる。
【0010】パワーローラ位置を別個にまたは保持力予備制御と組み合わせて使うことのできるフィードバックによって、変速比の時間経過中の振動をコントロールするために有効なシステム変量が得られる。たとえばこれによって、振動を効果的に減衰できるようになる。
【0011】請求項2および3には、保持力予備制御に関する関数関係が示されている。これによれば定常的な保持力F は式F =M1/R01+M2/R02に従って予備制御され、ここでM1は駆動側ディスクすなわち入力ディスクにおけるトルクであり、M2は被駆動側ディスクすなわち出力ディスクにおけるトルクであり、R01は入力ディスク上でのパワーローラのころがり半径、R02は出力ディスク上でのパワーローラのころがり半径である。
【0012】これは、1つのパワーローラをもつ1つのトーラス状ディスクペアに対する基本的な関係である。
【0013】請求項3によればこの関係が、トロイダル装置ごとに複数のトーラス状ディスクペアと複数のパワーローラを備えたトロイダル変速機のために拡張されている。これに従い定常的な保持力F が式F =(M1/R1+M2/R2)(NT・NZ)
に依存して予備制御され、ここでM1は入力ディスクにおけるトルクであり、M2は出力ディスクにおけるトルクであり、R01は入力ディスク上でのパワーローラのころがり半径、R02は出力ディスク上でのパワーローラのころがり半径、NTはトロイダル装置の個数、NZは各トロイダル装置におけるパワーローラの個数である。
【0014】さらに請求項4および5には、微分されたかたちでのパワーローラのフィードバックについて記載されている。これによれば、パワーローラの変位距離の時間微分(dz/dt)がフィードバック量として用いられる。このようにフィードバックされる量を、有利には所定の増幅係数と乗算することができる。
【0015】
【実施例】図1に概略的に示されているように、トロイダル無段変速機の最も重要な部材はエンジントルクを受け取る駆動側ディスクつまり入力ディスク1であり、このディスクは軸2および通例はクラッチもしくはトルクコンバータ(図示せず)を介して、エンジン駆動部と結合されている。入力ディスク1は、やはり軸2′を有する被駆動側ディスクつまり出力ディスク3とともにトーラス状ディスクペアを成している。この場合、互いに対向する接触面4,5がいっしょになって、1つのトロイダル面を形成している。
【0016】これら両方のトーラス状ディスク1と3の間に、少なくとも1つのしかし一般には2つから3つの介在ローラつまりパワーローラ6,7が配置されており、これは半径R をもち、図1ではシンボリックにしか示されていない旋回支承装置8に、傾斜可能に、また、固有の軸を中心に旋回可能に懸架されている。この場合、支承点は中央の軸から間隔R を有している。パワーローラ6,7はそれらの周囲面9,10において、トーラス状ディスク1,3の接触面4,5ところがり摩擦接触しており、したがってトルクM1をもつ入力ディスク1の回転運動W1が、角速度W2とトルクM2をもつ出力ディスク3の回転運動に変換される。
【0017】図2および図3には、トロイダル変速機にとって代表的な相応の量が示されている。個々のパワーローラ(図3では1つのパワーローラ6しか示されていない)の傾転角α(図3)によって、入力ディスク1ないしは出力ディスク3においてこのパワーローラのころがり半径R01もしくはR02が決まる。角度α=0のとき、変速比は1:1となる。図3に示されているようにR01<R02のとき、ディスク1,3の角速度についてW2<W1という関係が成り立つ。
【0018】周知のようにトロイダル変速機の場合には構造的な特性に起因して、パワーローラ6,7の旋回支承装置8により、z方向における保持力(図2参照)を生じさせなければならない。また、傾転角αを調節するためにさらに、パワーローラ6,7を旋回支承装置8の相応の旋回によりz方向で位置を変えることができる。図2に示されているように、パワーローラ6の位置を値zだけずらすと、ローラ接点K1がローラ接点K2まで変化し、このローラ接点K1はころがり半径R01よりも大きい半径R1をもつ。
【0019】傾斜運動のダイナミクスつまり傾転角αの時間経過特性とz方向でのパワーローラの位置変化のダイナミクスを、関連する運動方程式を立てて調べる場合、通常の最適化された境界条件や無視操作たとえば変速機における軸受摩擦の算入しないことなどをふまえ、旋回支承装置8において動作条件が一定であっても保持力F を取り込む必要がある。この保持力はたとえば式F −M1/R01−M2/R02=0で十分である。
【0020】この関係を、請求項に記載されているように保持力の予備制御に利用することができる。
【0021】次に図4を参照しながら、本発明による閉ループ制御方法のためのシミュレーションモデルの相応のダイアグラムに基づき最適化された閉ループ制御方法について説明する。
【0022】ここで前提とする区間モデル11は、モデリングに即してまえもって定められた量および様々なシステム方程式(ここで詳しく説明する必要はない)を表している。区間モデル19により、出力量としてたとえば入力ディスク1の角速度11、パワーローラの傾転角α、変速比nue、車輛速度V、出力ディスク3のトルクM2、パワーローラ6のころがり半径R01,R02がトーラス状ディスク1,3から送出される。この区間モデルの入力量は、入力ディスク1のトルクM1ならびに保持力F である。
【0023】入力側では閉ループ制御システムに対し目標変速比が入力側12に入力され、この目標変速比と区間モデル11のそのつどの実際変速比nueが加算器13において比較される。制御偏差を表す差信号がコントローラ14に供給され、このコントローラはそれに応じた制御信号をその出力側から送出する。シミュレーションの実例として、制御パラメータP=−200およびD=−50をもつPDコントローラを用いた。その際、加速過程をシミュレートした。
【0024】区間モデル11により出力信号として生成されるようなパワーローラ6の変位距離zを、フィードバック分岐15を介してフィードバックすることができる。この場合、微分素子17により変位距離zが時間的に微分され(dz/dt)、ついで18において所定の増幅係数と乗算される。この信号はコントローラ14の出力信号に加算される(参照符号16)。さらにその信号に対し、相応の計算素子20からの予備制御信号として定常的な保持力が与えられる(参照符号19)。計算素子20は入力量として、ころがり半径R01およびR02ならびに出力ディスク3のトルクM2をもっている。その際、入力ディスク1のトルクM1が区間モデル11の入力側から取り出される。商形成素子21,22においてM1とR01もしくはM2とR02からそれぞれ商が形成され、その結果が加算器23において加算され、これが求めていた保持力予備制御を表すことになる。
【0025】このシミュレーション例において、様々なモデル定数を実例として決めた。つまりたとえば入力ディスク、出力ディスクならびにパワーローラの質量をそれぞれ1kgとし、これらの部材の慣性トルクをそれぞれ0.05kg/m 、パワーローラ6の傾斜軸とトーラス状ディスク1,3の軸との間隔を0.05m、パワーローラの半径を0.07m、車両の質量を1,200kg、ローラ抵抗係数を4.9515Ns/m、cw値を0.4828Ns/m 、車輪半径を0.288m、トロイダル変速機に対応づけられている差動歯車機構の変速比を0.2727とした。
【0026】図5〜図13にはシミュレーションの結果が示されている。図5には、シミュレートされた車両加速過程における速度経過が、変速段ごとに次第に平坦になっていく様子が示されている。図6には入力ディスクの角速度W1が示されており、そこに示されている典型的な値は1つの変速段において上昇し続け、変速段が変わると跳躍的に下降している。図7および図8には、変速比特性曲線(図7)と傾転角特性曲線(図8)の逆対称の経過特性によって、これら両方の量の相関関係が示されている。この場合、個々の変速段において、変速機の変速比と傾転角が一定に保たれている。
【0027】図9には、やはり個々の変速段と相関づけられている旋回支承装置に関する保持力F の経過特性が示されている。
【0028】さらに、図10〜図13によるパワーローラの変位距離を表すダイアグラムに示されているように、対応するシフト過程は著しく短くかつ著しくはっきりした傾斜ローラの位置移動により引き起こされる。
【出願人】 【識別番号】390039413
【氏名又は名称】シーメンス アクチエンゲゼルシヤフト
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS AKTIENGESELLSCHAFT
【出願日】 平成13年2月8日(2001.2.8)
【代理人】 【識別番号】100074147
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 崇
【公開番号】 特開2001−241538(P2001−241538A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2001−32902(P2001−32902)