トップ :: F 機械工学 照明 加熱 武器 爆破 :: F16 機械要素または単位;機械または装置の効果的機能を生じ維持するための一般的手段




【発明の名称】 樹脂歯車及びその製造法
【発明者】 【氏名】沢井 昭治

【氏名】田原 伸一

【要約】 【課題】リング状補強繊維基材の繊維方向を歯車の全周に亘って、歯の強度を大きくする方向に揃え、各歯の強度を大きく均一にする。また、リング状補強繊維基材を構成するときに、端材ができないようにする。

【解決手段】所定幅で長尺の繊維基材11(アラミド繊維からなるフェルト)を、螺旋巻きにより積層してリング状に整えリング状補強繊維基材1とする。リング幅は長尺の繊維基材11の幅に相当し、リング厚さは長尺の繊維基材11の積層量によって決まる。このリング状補強繊維基材1を金属製ブッシュと共に成形金型に収容し、液状樹脂を注入して一体成形する。リング状補強繊維基材1を含む樹脂成形品の周囲に切削加工により歯を形成し、樹脂歯車を完成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】樹脂を含浸したリング状補強繊維基材の成形品を歯部構成体とし、歯部構成体の中心には金属製ブッシュをインサート成形してなる樹脂歯車において、前記リング状補強繊維基材が、所定幅で長尺の繊維基材を螺旋巻きにより積層してリング状に整え、前記所定幅をリング幅とした構成であることを特徴とする樹脂歯車。
【請求項2】所定幅で長尺の繊維基材が、織布、抄造不織布、フェルトから選ばれた繊維基材である請求項1記載の樹脂歯車。
【請求項3】所定幅で長尺の繊維基材が、織布、抄造不織布、フェルトから選ばれた繊維基材であって、その長手方向を折目として折畳むことにより所定幅としたものであることを特徴とする請求項1記載の樹脂歯車。
【請求項4】所定幅で長尺の繊維基材をその折目を内周側にして螺旋巻きしたものである請求項3記載の樹脂歯車。
【請求項5】所定幅で長尺の繊維基材が、筒状の織物又は編物を扁平にしたもの、中実の紐から選ばれた繊維基材である請求項1記載の樹脂歯車。
【請求項6】所定幅で長尺の繊維基材に予め樹脂を保持させ、これを螺旋巻きにより積層してリング状に整え、前記所定幅をリング幅としたリング状補強繊維基材とその中央に配置した金属製ブッシュとを成形金型に収容し、加熱加圧成形によりリング状補強繊維基材を金属製ブッシュと一体成形し、前記リング状補強繊維基材を含む樹脂成形品に歯を形成することを特徴とする樹脂歯車の製造法。
【請求項7】所定幅で長尺の繊維基材を螺旋巻きにより積層してリング状に整え、前記所定幅をリング幅としたリング状補強繊維基材とその中央に配置した金属製ブッシュとを成形金型に収容し、成形金型に注入した液状樹脂をリング状補強繊維基材に浸透させてリング状補強繊維基材を金属製ブッシュと一体成形し、前記リング状補強繊維基材を含む樹脂成形品に歯を形成することを特徴とする樹脂歯車の製造法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リング状に整えられた補強繊維基材を歯部構成体とする樹脂歯車及び樹脂歯車の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】樹脂歯車の歯部を、次のようなリング状補強繊維基材により構成することが提案されている。図3(a)に示したものは、フェノール樹脂を含浸し乾燥した織布をリング状に打ち抜き、これを所定枚数積層したリング状補強繊維基材1である。また、同(b)に示したものは、フェノール樹脂を含浸し乾燥した織布を扇形に打ち抜き、これを組合せてリング状にし所定枚数積層したリング状補強繊維基材1である。樹脂歯車は、これらのリング状補強繊維基材と当該補強繊維基材の中央に配置した金属製ブッシュとを成形金型に収容し、加熱加圧成形により補強繊維基材を金属製ブッシュと一体成形し、前記補強繊維基材を含む樹脂成形品の周囲に切削加工により歯を形成して完成する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】リング状補強繊維基材の繊維方向は、歯車の全周に亘って、歯の強度を最も大きくする方向に揃えられていることが望まれる。例えば、平歯車では、リング状補強繊維基材を構成している織布の縦糸又は横糸が、全ての歯において歯の高さ方向と一致していること、すなわち、放射状に配列されることが望まれる。しかし、図3(a)に示したリング状補強繊維基材を用いた場合、縦糸又は横糸の方向が歯の高さ方向と一致する歯は、全周のごく一部に限られる。図3(b)に示したリング状補強繊維基材を用いた場合にも、縦糸又は横糸の方向が歯の高さ方向と一致する歯は(a)の場合より多少増えるだけで、未だ不十分である。このような構成では、各歯の強度にバラツキができてしまう。また、織布をリング状又は扇形に打ち抜くと多くの端材ができ無駄である。
【0004】本発明が解決しようとする課題は、リング状補強繊維基材の繊維方向を歯車の全周に亘って、歯の強度を大きくする方向に揃え、各歯の強度を大きく均一にすることである。また、リング状補強繊維基材を構成するときに、端材ができないようにすることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を達成するために、本発明に係る樹脂歯車は、リング状補強繊維基材として、次のような構成を採用する。すなわち、所定幅で長尺の繊維基材を螺旋巻きにより積層してリング状に整え、前記所定幅をリング幅とした構成である。
【0006】このような樹脂歯車の製造は、まず、所定幅で長尺の繊維基材に予め樹脂を保持させ、これを螺旋巻きにより積層してリング状に整え、前記所定幅をリング幅としたリング状補強繊維基材を準備する。そして、このリング状補強繊維基材とその中央に配置した金属製ブッシュとを成形金型に収容し、加熱加圧成形によりリング状補強繊維基材を金属製ブッシュと一体成形し、前記リング状補強繊維基材を含む樹脂成形品に歯を形成する。別の製造法では、まず、所定幅で長尺の繊維基材を螺旋巻きにより積層してリング状に整え、前記所定幅をリング幅としたリング状補強繊維基材を準備する。そして、このリング状補強繊維基材とその中央に配置した金属製ブッシュとを成形金型に収容し、成形金型に注入した液状樹脂をリング状補強繊維基材に浸透させてリング状補強繊維基材を金属製ブッシュと一体成形し、前記リング状補強繊維基材を含む樹脂成形品に歯を形成する。
【0007】本発明においては、上記の螺旋巻きによる積層構成を採用することにより、長尺の繊維基材の繊維方向を歯車の全周に亘って揃えることができる。例えば、長尺の繊維基材が織布の場合、その横糸は歯車の径方向に放射状に配列し、縦糸は歯車の周方向に同心円状に配列するので、歯車の強度を確保する上で都合のよい繊維の配列となる。このことは、長尺の繊維基材が抄造不織布やフェルトの場合にも同様に言える。長尺の繊維基材の繊維方向を歯の強度を大きくする方向に揃えておけば、その繊維方向が上記の螺旋巻きによる積層構成にそのままもち込まれ、歯車の全周に亘って、歯車の強度を確保する上で都合のよい方向に繊維を揃えることができる。所定幅で長尺の繊維基材を螺旋巻きにより積層するので、端材も発生しない。
【0008】尚、本発明においては、リング状補強繊維基材のリング幅が歯車の外径や歯の高さに関係する。従って、歯車の外径や歯の高さに応じて長尺の繊維基材の幅を選定することになる。一方、長尺の繊維基材の螺旋巻きによる積層量(積層厚さ)が歯車の歯幅に関係する。従って、歯幅に応じて螺旋巻きによる積層量(積層厚さ)を調整することになる。長尺の繊維基材の繊維は、積層の全ての層において同じ方向に揃っている。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明において、所定幅で長尺の繊維基材は、織布、抄造不織布、フェルトから選ぶことができる。さらには、筒状の織物又は編物を扁平にしたもの、中実の紐から選ぶことができる。抄造不織布は繊維を水中に分散してシート状に抄造したものであり、フェルトは繊維を気中散布して集積し厚さ方向にニードリングを施して繊維同士を結着したものである。
【0010】これら長尺の繊維基材は、樹脂歯車に高強度と耐久性を付与するために、パラ系アラミド繊維で構成するのが好ましい。パラ系アラミド繊維で構成すると、樹脂歯車の強度は大きくなる一方で、歯車の歯を形成するときの切削加工性は低下する。歯車の用途に応じて、パラ系アラミド繊維とこれより低強度の有機繊維、例えば、メタ系アラミド繊維やポリエステル繊維を適宜併用する。長尺の繊維基材が織布、筒状の織物又は編物、中実の紐の場合は、パラ系アラミド繊維とこれより低強度の有機繊維の混紡糸を用いてこれらを構成する。混抄不織布やフェルトの場合は、パラ系アラミド繊維とこれより低強度の有機繊維を混合使用する。発明の実施の形態は、パラ系アラミド繊維(繊維長50mm,繊維径16μm)とメタ系アラミド繊維(繊維長50mm,繊維径16μm)の混紡糸(パラ系アラミド繊維混紡量:45質量%)を用いる。糸の太さは20番手前後である。また、これら繊維をパラ系アラミド繊維が45質量%になるように混合して混抄不織布やフェルトを構成する。
【0011】このように構成した所定幅で長尺の繊維基材11を、図1(a)に示したように、螺旋巻きにより積層してリング状に整えたリング状補強繊維基材1とする。リング状補強繊維基材1のリング幅は長尺の繊維基材11の幅に相当し、リング状補強繊維基材1のリング厚さは長尺の繊維基材11の積層量によって決まる。リング状の整形は、二重円筒の型内で長尺の繊維基材11の螺旋巻き積層を実施することにより行なう。長尺の繊維基材11は、これを長手方向を折目として折畳むことにより所定幅としたり、筒状の織物又は編物を扁平にして所定幅とすることができる。この場合、折目を内周側にして上記の螺旋巻きを行なうと、折目が骨となって螺旋巻きを良好に行なうことができリング状に整える作業もしやすい。図1(b)は、折目を内周側にして螺旋巻きを実施する様子を示している。
【0012】長尺の繊維基材11の螺旋巻きによる積層は、その後の成形の仕方によって次の手段を適宜選択することができる。一つ目は、所定幅で長尺の繊維基材を、これに予め樹脂を保持させてから、螺旋巻きにより積層するものである。二つ目は、所定幅で長尺の繊維基材を、これに樹脂を保持させないで、螺旋巻きにより積層するものである。リング状補強繊維基材1は、螺旋巻きにより積層しただけでは嵩張っている。そこで、前記一つ目の場合は螺旋巻きによる積層後に温金型でプレスして仮成形し、二つ目の場合は螺旋巻きによる積層後に冷金型又は温金型でプレスして仮成形し、嵩張りを取ってから歯車の成形に供する。所定幅で長尺の繊維基材に予め樹脂を保持させる方法は、液状樹脂を含浸し乾燥してプリプレグにする方法、抄造不織布やフェルトを製造する段階で粉末状ないし粒状樹脂を混入する方法である。
【0013】図2は、リング状補強繊維基材1と金属製ブッシュ2を一体に成形する様子を示している。リング状補強繊維基材1を成形金型3内で2段に重ね、中央に金属製ブッシュ2を配置して成形金型3を閉じる。リング状補強繊維基材1が、既に樹脂を保持させたものである場合には、加熱加圧成形により樹脂を一旦溶融させその後硬化させる。リング状補強繊維基材1が、樹脂を保持させたものでない場合には、成形金型3を閉じるときの圧力でリング状補強繊維基材1を圧縮変形させて金属製ブッシュ2の形状になじませる。そして、成形金型内を減圧状態(1300Pa)にし、液状樹脂(架橋ポリアミノアミド、エポキシ樹脂、ポリイミドなど)を注入してリング状補強繊維基材1に浸透させ加熱硬化させる。補強繊維基材1を含む樹脂成形品の周囲に切削加工により歯を形成し、樹脂歯車を完成する。
【0014】
【実施例】上記のパラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維を混合して長尺のフェルト(幅2m,密度130g/cm3)を準備した。このフェルトは、大半の繊維が幅方向に揃えられており、厚さ方向にニードリングを処理を施して繊維同士の結着を高めたものである。前記フェルトを15mm幅で長手方向に裁断し、これをリング状に整えながら螺旋巻き積層し、成形金型にそのまま収容できる厚さになるように、温金型でプレスし仮成形した。このリング状補強繊維基材を2個用い、上記発明の実施の形態で説明した液状樹脂を成形金型に注入する方法により、リング状補強繊維基材を金属製ブッシュと一体成形した。リング状補強繊維基材に浸透させる液状樹脂として架橋ポリアミノアミドを用いた。リング状補強繊維基材を含む樹脂成形品の寸法は、外径90mm,内径60mm,厚さ14mmである。
【0015】従来例上記実施例と同配合のパラ系アラミド繊維とメタ系アラミド繊維の混紡糸を用いて織った織布を準備し、これを図3(a)を参照して説明したようにリング状に打ち抜き加工し所定枚数積層したリング状補強繊維基材とした。この補強繊維基材を用い、実施例と同様に成形した。尚、リング状に打ち抜き加工してできた無駄な端材は、材料の64%を占める。
【0016】上記実施例と従来例のリング状補強繊維基材を含む樹脂成形品の周囲に切削加工により歯を形成し、これから45°間隔で切り出した各試料の曲げ強度を測定した。表1には測定した曲げ強度の最大値と最小値、平均値を示す。
【0017】
【表1】

【0018】
【発明の効果】上述のように、本発明に係る樹脂歯車は、歯の強度を全周に亘って大きく且つ均一にすることができる。リング状補強繊維基材を構成するに当たり、端材も殆ど発生しない。
【出願人】 【識別番号】000001203
【氏名又は名称】新神戸電機株式会社
【出願日】 平成12年2月28日(2000.2.28)
【代理人】
【公開番号】 特開2001−241535(P2001−241535A)
【公開日】 平成13年9月7日(2001.9.7)
【出願番号】 特願2000−50379(P2000−50379)