| 【発明の名称】 |
ロックアップクラッチ付きトルクコンバータ |
| 【発明者】 |
【氏名】井上 英司
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| 【要約】 |
【課題】この発明は、クラッチピストンの助走期間中にアプライ圧力を高めのプリチャージ圧力に設定することにより助走時間の短縮を図るロックアップクラッチ付きトルクコンバータを提供する。
【解決手段】トロイダル型無段変速機の上流側に配設されるトルクコンバータのロックアップクラッチを作動させるため、クラッチピストンが助走する当初の所定期間(プリチャージ時間Tp)にわたって、クラッチピストンに加えられるアプライ圧力を、クラッチ係合開始後の中間圧力Piよりも高いプリチャージ圧力Ppに設定する。クラッチピストンの助走期間に移動は高速となりクラッチ係合の応答性が向上する。プリチャージ時間Tpは、作動油の油温により変更可能である。また、中間圧力Piは、車両の積載状態に応じて変更可能である。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 車両に搭載されたエンジンの出力軸に連結されたフロントカバー、前記フロントカバーに取り付けられたポンプインペラ、前記ポンプインペラとの間でオイルを介して動力伝達を行うタービン、作動油のアプライ圧力に基づいて作動され前記フロントカバーと前記タービンとを連結可能なロックアップクラッチ、前記車両の運転状態を検出する検出手段、及び前記検出手段からの検出信号に基づいて前記ロックアップクラッチを非係合状態から締結圧力で係合する係合状態に移行させると共に、前記ロックアップクラッチをスリップ係合状態を経て前記係合状態に移行させるため前記アプライ圧力を前記締結圧力よりも低い中間圧力に制御するコントローラを具備し、前記コントローラは、前記スリップ係合状態が開始される当初の所定期間において前記アプライ圧力を前記中間圧力よりも高いプリチャージ圧力に設定することから成るロックアップクラッチ付きトルクコンバータ。 【請求項2】 前記検出手段は前記作動油の温度を検出する温度検出手段を含んでおり、前記コントローラは、前記作動油の粘性の変化に起因して前記係合状態への移行が遅れるのを回避するため、前記温度検出手段が検出した前記作動油の温度に応じて前記プリチャージ圧力の設定を変更することから成る請求項1に記載のロックアップクラッチ付きトルクコンバータ。 【請求項3】 車両に搭載されたエンジンの出力軸に連結されたフロントカバー、前記フロントカバーに取り付けられたポンプインペラ、前記ポンプインペラとの間でオイルを介して動力伝達を行うタービン、作動油のアプライ圧力に基づいて作動され前記フロントカバーと前記タービンとを連結可能なロックアップクラッチ、前記車両の運転状態を検出する検出手段、及び前記検出手段からの検出信号に基づいて前記ロックアップクラッチを非係合状態から締結圧力で係合する係合状態に移行させると共に、前記ロックアップクラッチをスリップ係合状態を経て前記係合状態に移行させるため前記アプライ圧力を前記締結圧力よりも低い中間圧力に制御するコントローラを具備し、前記検出手段は前記車両の積載状態を検出する積載状態検出手段を含み、前記コントローラは、前記積載状態の変化に起因して前記係合状態への移行時間が変動するのを回避するため、前記積載状態検出手段が検出した前記積載状態に応じて前記中間圧力の設定を変更することから成るロックアップクラッチ付きトルクコンバータ。 【請求項4】 前記積載状態検出手段が検出する前記積載状態は車両総重量であり、前記コントローラは、前記積載状態検出手段が検出した前記車両総重量が重いほど前記中間圧力を高い圧力に設定することから成る請求項3に記載のロックアップクラッチ付きトルクコンバータ。 【請求項5】 前記コントローラは、前記スリップ係合状態が開始される当初の所定期間において前記アプライ圧力を前記中間圧力よりも高いプリチャージ圧力に設定することから成る請求項3又は4に記載のロックアップクラッチ付きトルクコンバータ。 【請求項6】 前記検出手段は前記作動油の温度を検出する温度検出手段を含んでおり、前記コントローラは、前記作動油の粘性の変化に起因して前記係合状態への移行が遅れるのを回避するため、前記温度検出手段が検出した前記作動油の温度に応じて前記プリチャージ圧力の設定を変更することから成る請求項5に記載のロックアップクラッチ付きトルクコンバータ。 【請求項7】 前記タービンの後続には、前記タービンの出力軸に連結された入力ディスク、前記入力ディスクと対向して配設された出力ディスク、及び前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に圧接状態に配設され傾転軸回りの傾転量に応じて前記入力ディスクの回転を出力ディスクに無段階に変速して伝達するパワーローラを備えたトロイダル型無段変速機が接続されていることから成る請求項1〜6に記載のロックアップクラッチ付きトルクコンバータ。 【請求項8】 前記作動油は、前記トロイダル型無段変速機において圧接状態に置かれる前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に供給するのに用いられるトラクション油であることから成る請求項7に記載のロックアップクラッチ付きトルクコンバータ。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、ロックアップクラッチで直結されるトルクコンバータを備えた無段変速機に関する。 【0002】 【従来の技術】従来、無段変速機として、入力軸により駆動される入力ディスク、前記入力ディスクに対向して配置され且つ出力軸に連結された出力ディスク、及び両ディスクに摩擦接触するパワーローラからなるトロイダル変速部を同一軸上に一組又は複数組配置したトロイダル型無段変速機が知られている。このトロイダル型無段変速機においては、パワーローラの傾転角度を変えることによって、入力ディスクの回転を、無段階に変速して出力ディスクに伝達することができる。 【0003】図6には、トロイダル型無段変速機を後続に配設したトルクコンバータの概略が示されている。図6に示すトロイダル型無段変速機は、2組のトロイダル変速部1,2を主軸3上に並べて配置した、所謂、ダブルキャビティ式トロイダル型無段変速機であり、トロイダル変速部1は、入力ディスク4と、入力ディスク4に対向して配置された出力ディスク5と、入力ディスク4と出力ディスク5との間に配置され且つ両ディスク4,5のトロイド曲面に摩擦係合する一対のパワーローラ6から構成されている。トロイダル変速部2もトロイダル変速部1と同様に、入力ディスク7と、入力ディスク7に対向して配置された出力ディスク8と、入力ディスク7と出力ディスク8との間に配置され且つ両ディスク7,8のトロイド曲面に摩擦係合するパワーローラ9とから構成されている。パワーローラ6,9は、それぞれ自己の回転軸線10の周りに回転自在であり、且つ回転軸線10に直交する傾転軸11(紙面に垂直)の周りに傾転運動をする。 【0004】エンジンからの動力は、トルクコンバータ13及びローディングカム12を介して主軸3に入力される。ローディングカム12は、伝達されるトルクの大きさに応じてトロイダル変速部1のパワーローラ6を押圧し、その反作用としてローディングカム12は主軸3を介してトロイダル変速部2において主軸3と一体回転可能な入力ディスク7をパワーローラ9に押圧する。従って、主軸3は、入力ディスク4,7に対して入力軸となっている。ローディングカム12による押付け力(スラスト力)は、入力ディスク4,7と出力ディスク5,8との間でパワーローラ6,9を挟み付け、伝達トルクの大きさに応じた摩擦係合力を与える。 【0005】トロイダル変速部1,2において、入力ディスク4,7の回転は、傾転軸11の周りに傾転可能なパワーローラ6,9を介して出力ディスク5,8に無段階に変速されて伝達される。パワーローラ6,9は、トラニオン(図示せず)に対して回転自在に且つ揺動自在に支持されており、押付け力に応じて生じる主軸3の軸方向変位に対応することができる。 【0006】パワーローラ6,9の回転軸線10が主軸3の軸線と交差している中立位置では、変速比はパワーローラ6,9の傾転角に応じた値に保持される。トルク伝達中に、トラニオンをそれに伴ってパワーローラ6,9を傾転軸11の軸方向に移動させると、パワーローラ6,9と入力ディスク4,7及び出力ディスク5,8との接触位置が変位し、パワーローラ6,9は、両ディスクから傾転力を受けて、傾転軸11における移動方向と移動量に応じた方向と速さで傾転軸11を中心とした傾転をする。このような傾転が生じると、パワーローラ6,9と入力ディスク4,7及び出力ディスク5,8との摩擦接触点が描く両半径の比が変化することによって無段変速が行われる。パワーローラ6,9の傾転制御は、コントローラによって、目標変速比が達成されるように、油圧アクチュエータ(図示せず)の作動を介してトラニオンの傾転軸方向変位が制御される。 【0007】出力ディスク5,8は、一体回転できるように背面同士を連結軸16上にスプライン嵌合等で連結されている。連結軸16は主軸3に相対回転可能に嵌合された中空軸である。出力ディスク5,8は、連結軸16を介してスラスト方向及びラジアル方向の荷重を支持する軸受(図示せず)によってケーシング22に支持されている。出力ディスク5,8に伝達された動力はチェーン伝動装置17を介して主軸3に平行に配設されているカウンタ軸21に取り出される。チェーン伝動装置17は、連結軸16の中間部とカウンタ軸21の一端にそれぞれ一体的に配設されたスプロケット18,19と、スプロケット18,19に巻き掛けられたチェーン20から構成されている。 【0008】カウンタ軸21の他端に設けられている出力歯車23は、出力軸24に回転可能に配設されている中間歯車25と噛み合い、出力軸24と中間歯車25との間には前進クラッチ26が配設されている。主軸3の出力軸24側には、遊星歯車機構27が配設されている。遊星歯車機構27は、主軸3に設けられたサンギヤ28、出力軸24に一体的に設けられているリングギヤ29、サンギヤ28とリングギヤ29との間においてそれぞれ噛合状態に係合する状態でキャリヤ31によって回転自在に支持された遊星ギヤ30から構成されている。ケーシング22とキャリヤ31との間には、後進時に締結作動される後進クラッチ32が配設されている。前進走行時には、前進クラッチ26をオン作動とし後進クラッチ32をオフ作動とするので、主軸3の回転は、トロイダル変速部1,2で逆回転に変換された後、カウンタ軸21を経て、再度、正回転に変換され、前進クラッチ26を経て出力軸24に伝達される。また、後進走行時には、前進クラッチ26をオフ作動とし、後進クラッチ32をオン作動とするので、主軸3の正回転は、そのまま遊星歯車機構27に入力され、逆回転がリングギヤ29から出力軸24に取り出される。 【0009】トロイダル型無段変速機のような無段変速機において、発進時のように高いトルクを必要とする場合には、発進クラッチを特別に設けることもあるが、エンジンと無段変速機との間にトルクコンバータを配設して、エンジンの回転数を下げることなく無段変速機の出力を低回転数・高トルクとするものがある。即ち、図6に示すように、無段変速機の前段にトルクコンバータ13を用いる場合、所定の車速以下で走行するとき、即ち、発進時等の非ロックアップ時には、エンジンからトルクコンバータ13に入力された動力は、トルクコンバータ13のフロントカバー34からポンプインペラ35に入力され、トルクコンバータ13内のオイルを介してタービン36へ伝達されて、無段変速機へ出力される。 【0010】しかし、常時、エンジンからの動力を流体を介して伝達していたのでは、動力伝達の効率が悪く、燃費や騒音を悪化させるので、所定の車速以上で走行するとき、即ち、加速走行等の所定の条件を満足する車両運転領域では、トルクコンバータ13内に配設されたロックアップクラッチ37を締結させてトルクコンバータのフロントカバー34とタービン36とを直結状態にし、動力伝達を、トルクコンバータ13内のオイルを介することなく、フロントカバー34からタービン36に直接伝達して、伝達効率を向上し、燃費や加速性能させることが広く行われている。 【0011】ロックアップクラッチ37の締結時の応答性を向上し締結ショックの改善を図るため、従来のロックアップクラッチの締結動作はロックアップクラッチ付きトルクコンバータの作動特性を示すグラフ図7に示すように行われる。即ち、時刻t0 において、ロックアップ制御弁の働きによりリリース室39内のリリース圧を開放してアプライ室38内のアプライ圧力を中間圧力Piまで加圧(プリチャージ)し、 アプライ圧力とリリース圧力との差圧によってロックアップピストンをフロントカバー34に押し付ける方向にストロークを開始させ、ピストンを助走させる。アプライ圧力が高まるクラッチピストンの助走領域では、ロックアップピストンがストローク開始後フロントカバーに押し付けられる時(時刻t3 )までの助走に要する時間を短縮することができる。ロックアップピストンのストロークは、時刻t3 までに飽和して増加しなくなるが、フェーシングがフロントカバー34へ接触し、係合を開始することで、クラッチの同期作用が開始され、トルクコンバータ13の入力回転数は、ロックアップクラッチ37の締結が進むに従って減少し、時刻t3 においてフェーシング部における相対回転が無くなったところでアプライ圧を中間圧力Piよりも高い締結圧力Pcに昇圧することでフロントカバー34がタービン36と直結され、ロックアップクラッチ37が完全に締結される。アプライ圧力の中間圧力Piへの加圧制御は、スムーズロックアップ制御と称され、クラッチ係合が急激に行われるときのショックが大きくなり過ぎるのを防止するための制御である。 【0012】しかしながら、トルクコンバータのロックアップクラッチについては、ロックアップピストンは、自動変速機内の他のクラッチピストンと比較して、受圧面積が広く、中間圧力ではロックアップピストンのストロークに要する助走時間が長くなる。特に、無段変速機では、従来の自動変速機と比較して低い車速(即ち、低速段)でロックアップクラッチを係合するので、ロックアップクラッチ係合動作中にあっても車速変化が大きく、助走時間が長いとエンジン回転の吹き上がり感等の違和感を運転者に感じさせる。また、中間圧力を高めに上げると、締結時のショックが大きくなるが、無段変速機の場合には低速段であるため、従来の自動変速機よりもショックが顕著に表れる。 【0013】ロックアップクラッチの締結時に、締結開始までを短時間とし、応答遅れを少なくして締結ショックを防止する目的で、初期のスリップ係合移行時の所定時間においてロックアップ制御弁の作動をデューティ比100%とすることが提案されている(特開平5−296337号公報、特開平7−91533号公報、特開平8−170725号公報)。 【0014】また、一般に、トロイダル型無段変速機ではトラクション油と呼ばれる特殊な油が使用されるが、トラクション油は、従来の自動変速機に用いられているATFに比べて粘度の温度依存性が大きい。トルクコンバータ用のロックアップクラッチは、一般に、ピストン径及びクラッチの非締結時のクリアランスが発進クラッチと比較して大きく、非締結状態から締結状態に移行するのに大量のオイルを供給する必要があり、発進クラッチに比べてオイルの粘度の影響が大きい。 【0015】このため、図6に示すように、トロイダル型無段変速機にトルクコンバータを配設する場合に、ロックアップクラッチの作動油としてトロイダル型無段変速機に用いられているトラクション油を用いると、ロックアップクラッチ制御弁からトルクコンバータまでのアプライ圧力及びリリース圧力回路の流路抵抗がトラクション油の温度によって大きく変化し、ロックアップクラッチのピストンの助走に要する時間も変化する。例えば、油温が低温であるほどトラクション油の粘度が増加するので、プリチャージ時間(助走時間)が長くなり、油温が高温になるほどトラクション油の粘度が低下して助走時間が短くなる。逆に、ロックアップクラッチのピストンの助走に要するプリチャージ時間を一定にしようとすると、高温時には、アプライ圧力が低過ぎるために締結時のショックが大きくなり、低温時には、アプライ圧力が高くなり過ぎて、中間圧力を設けるロックアップ制御自体の意義が薄れてしまう。 【0016】自動変速機に設けられている発進クラッチへの供給圧力を制御するものであって、停車状態から走行状態への切換えに応答して、エンジン回転数とタービン回転数との回転数差が所定値に達するまで、当初はライン圧力をそのまま供給して半クラッチ状態に早く移行し、その後、係合締結直前の状態を保つようにクラッチ締結圧力を減圧することでクリープ防止を図る自動変速機のクリープ防止装置が開示されている(特開昭62−18336号公報)。走行状態への移行時に当初のライン圧力の発進クラッチへの供給をタイマで一律的に設定している場合と比較して、回転数差の上記所定値をトランスミッションオイルの作動油温度に応じて設定することにより、プリチャージ時間を油温に応じて適切に制御することを図っている。なお、この油温制御をするオイルは、通常の発進クラッチに用いられるオイルであって、温度・粘性の変化が大きいトラクション油ではない。 【0017】また、トルクコンバータのロックアップクラッチのフェーシングの摩擦係数が作動油の温度が高温になると低下する特性を示す場合のように、作動油温度により締結時の油圧特性を変更する(即ち、作動油の温度が高温になるときには、レリース室内の油圧を急速に低下させてロックアップクラッチの締結を急速に行うことで、クラッチ締結要素の摩擦特性を実質的に補正する)ロックアップクラッチの制御装置が開示されている(特開昭63−172058号公報)。このロックアップクラッチの制御装置は、締結要素の摩擦特性を油温で補正するものであるが、締結要素同士が初期隙間分を移動するのに必要な時間を制御するものではない。 【0018】トルクコンバータ付きトロイダル型無段変速機は、例えば、特開平2−245565号公報に開示されているように、良く知られている。トルクコンバータに用いる潤滑油と、トロイダル型無段変速機のトロイダル変速部に供給される潤滑油とを同一のオイルを用いると、油温が変動することによる、トルクコンバータの引きずり等の不具合が生じることが指摘されている。 【0019】更に、商用車のように積載量が大きく変化する車両では、空車に合わせて中間圧力を設定すると、積車状態ではロックアップクラッチの係合完了までに必要以上の時間がかかり過ぎ、クラッチフェーシング部に発熱、摩耗等が発生し、ロックアップクラッチの耐久性を損なうという問題点がある。 【0020】ロックアップクラッチと積車状態との関係については、特定の領域にて、ロックアップクラッチの滑り量を継続的に制御するスリップ制御に関するものであり、スリップを負荷に応じて制御するものである。即ち、スリップ領域では、車両重量や勾配変化等で走行負荷が重くなるほど、ロックアップクラッチへの圧油供給を行う弁のデューティ比を下げて締結圧力を低下させることにより、トルクコンバータのスリップ量を大きくして伝達トルクを減少し、それに対応してエンジン回転数を上昇させることで加速感を出す制御を行うものが提案されている(特開平2−212668号公報)。 【0021】また、ロックアップクラッチの締結状態を維持するのに必要な最低限の圧力に制御するものとして、車両の上下方向の加速度を検出して路面勾配を求める等の手段により、走行抵抗を求め、走行抵抗に基づいて予め記憶させておいたロックアップクラッチの締結状態を維持するのに必要な最低限の圧力(デューティ比による)を求めるものが提案されている(特開平5−248535号公報)。 【0022】 【発明が解決しようとする課題】ロックアップクラッチの締結条件が満たされたときに、クラッチピストンが移動を開始してからフロントカバーに係合開始するまでの助走期間中は、クラッチピストンを高速でストロークさせて、係合開始までの時間を一層短縮し、クラッチ係合の遅れを少なくして、ロックアップクラッチのスムーズな係合を可能にする点で解決すべき課題がある。また、ロックアップクラッチの作動油として、トロイダル型無段変速機に使われているトラクション油を使用している場合等においては、作動油の温度が変化しても、ロックアップクラッチ締結過程におけるクラッチピストンの助走時間を幅広い油温領域で短縮して、ロックアップクラッチの締結時のショックを軽減することが好ましい。更に、クラッチの助走領域ではアプライ圧力を高め(プリチャージ)て、助走に要する時間を短縮し、クラッチ係合が開始してから係合完了までの間にクラッチに作用される油圧の中間圧力を車両の積載状態に応じて変化させることで、耐久性を犠牲にすることなく、ロックアップクラッチの締結時のショックを改善することが好ましい。 【0023】 【課題を解決するための手段】この発明の目的は、トロイダル型無段変速機の上流に配設されているロックアップクラッチ付きのトルクコンバータにおいて、クラッチピストンが後退した非係合位置から進出した係合位置に向かって移行するときに、クラッチピストンの移行開始からクラッチフェージングの係合開始までのロストストロークに要する時間を短くすることにより、クラッチ係合に要する時間を短縮することができるロックアップクラッチ付きトルクコンバータを提供することである。また、クラッチピストンの移行開始からクラッチフェージングの係合開始までにクラッチピストンに作用させる作動油の油圧を、作動油の温度に応じて制御することにより、作動油の粘性の変化があっても応答遅れを防止することができるロックアップクラッチ付きトルクコンバータを提供することである。更に、スリップ係合時において、車両の積載状態に応じてアプライ圧力を制御して耐久性を損なうことなく締結時のショックを緩和させることができるロックアップクラッチ付きトルクコンバータを提供することである。 【0024】この発明は、車両に搭載されたエンジンの出力軸に連結されたフロントカバー、前記フロントカバーに取り付けられたポンプインペラ、前記ポンプインペラとの間でオイルを介して動力伝達を行うタービン、作動油のアプライ圧力に基づいて作動され前記フロントカバーと前記タービンとを連結可能なロックアップクラッチ、前記車両の運転状態を検出する検出手段、及び前記検出手段からの検出信号に基づいて前記ロックアップクラッチを非係合状態から締結圧力で係合する係合状態に移行させると共に、前記ロックアップクラッチをスリップ係合状態を経て前記係合状態に移行させるため前記アプライ圧力を前記締結圧力よりも低い中間圧力に制御するコントローラを具備し、前記コントローラは、前記スリップ係合状態が開始される当初の所定期間において前記アプライ圧力を前記中間圧力よりも高いプリチャージ圧力に設定することから成るロックアップクラッチ付きトルクコンバータに関する。 【0025】このロックアップクラッチ付きトルクコンバータによれば、ロックアップクラッチがスリップ係合状態を開始する当初の所定期間において、ロックアップクラッチを作動させるための作動油のアプライ圧力を中間圧力よりも高いプリチャージ圧力に設定するので、ロックアップクラッチのクラッチピストンは、非係合状態に対応した後退位置から係合状態に至る進出位置に至るまでの助走期間中は、高いプリチャージ圧力に押されて高速で移動し、助走時間の短縮が図られ、ロックアップクラッチの締結が完了するまでに、エンジン回転が吹き上がるのが回避される。 【0026】前記検出手段は前記作動油の温度を検出する温度検出手段を含んでおり、前記コントローラは、前記作動油の粘性の変化に起因して前記係合状態への移行が遅れるのを回避するため、前記温度検出手段が検出した前記作動油の温度に応じて前記プリチャージ圧力の設定を変更する。作動油の粘性はロックアップクラッチの非係合状態から係合状態への移行時間に影響を与えるので、温度検出手段によって作動油の温度を検出し、検出された作動油の温度によってプリチャージ圧力の設定を変更することにより、ロックアップクラッチの応答遅れが回避される。 【0027】また、この発明は、車両に搭載されたエンジンの出力軸に連結されたフロントカバー、前記フロントカバーに取り付けられたポンプインペラ、前記ポンプインペラとの間でオイルを介して動力伝達を行うタービン、作動油のアプライ圧力に基づいて作動され前記フロントカバーと前記タービンとを連結可能なロックアップクラッチ、前記車両の運転状態を検出する検出手段、及び前記検出手段からの検出信号に基づいて前記ロックアップクラッチを非係合状態から締結圧力で係合する係合状態に移行させると共に、前記ロックアップクラッチをスリップ係合状態を経て前記係合状態に移行させるため前記アプライ圧力を前記締結圧力よりも低い中間圧力に制御するコントローラを具備し、前記検出手段は前記車両の積載状態を検出する積載状態検出手段を含み、前記コントローラは、前記積載状態の変化に起因して前記係合状態への移行時間が変動するのを回避するため、前記積載状態検出手段が検出した前記積載状態に応じて前記中間圧力の設定を変更することから成るロックアップクラッチ付きトルクコンバータに関する。 【0028】このロックアップクラッチ付きトルクコンバータによれば、コントローラは、積載状態検出手段が検出した車両の積載状態に応じて中間圧力の設定を変更するので、車両の積載状態の変化が生じても、ロックアップクラッチは非係合状態から係合状態への移行時間が変動することがなく、車両の積載状態に関わらずロックアップクラッチは安定して作動する。 【0029】前記積載状態検出手段が検出する前記積載状態は車両総重量であり、前記コントローラは、前記積載状態検出手段が検出した前記車両総重量が重いほど前記中間圧力を高い圧力に設定する。車両が空積載状態であればロックアップクラッチは係合完了までの時間が短く、車両が満載状態に近いほどロックアップクラッチは係合完了までの時間が長くなる。コントローラは、積載状態検出手段が検出した車両総重量が重いほど中間圧力を高い圧力に設定するので、車両総重量の大きさに関わらずロックアップクラッチの係合完了までの時間の変動が抑えられる。 【0030】車両の積載状態に応じて中間圧力の設定を変更する場合において、更に、前記コントローラは、前記スリップ係合状態が開始される当初の所定期間において前記アプライ圧力を前記中間圧力よりも高いプリチャージ圧力に設定する。ロックアップクラッチのクラッチピストンは、助走期間中は、高いプリチャージ圧力に押されて高速で移動するので、助走時間の短縮が図られ、ロックアップクラッチの締結が完了するまでにエンジン回転が吹き上がるのが回避される。また、更に、前記検出手段は前記作動油の温度を検出する温度検出手段を含んでおり、前記コントローラは、前記作動油の粘性の変化に起因して前記係合状態への移行が遅れるのを回避するため、前記温度検出手段が検出した前記作動油の温度に応じて前記プリチャージ圧力の設定を変更するので、作動油の粘性に起因したロックアップクラッチの応答遅れが回避される。 【0031】前記タービンの後続には、前記タービンの出力軸に連結された入力ディスク、前記入力ディスクと対向して配設された出力ディスク、及び前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に圧接状態に配設され傾転軸回りの傾転量に応じて前記入力ディスクの回転を出力ディスクに無段階に変速して伝達するパワーローラを備えたトロイダル型無段変速機が接続されている。車両の走行速度が発進のように一定以下のときにはトルクコンバータはオイルを介して動力伝達が行われ、トロイダル型無段変速機における発進クラッチの機能を奏する。車両の走行速度が一定以上であれば、トルクコンバータはロックアップクラッチを係合状態として直結状態となり、トロイダル型無段変速機で変速が行われる。 【0032】前記作動油は、前記トロイダル型無段変速機において圧接状態に置かれる前記入力ディスクと前記出力ディスクとの間に供給するのに用いられるトラクション油である。トラクション油は、普通の自動変速機に用いられるオイルと比較して粘性に対する温度の影響が大きい。ロックアップクラッチの作動油として、トラクション油を用いるときには、この発明によるプリチャージ時間を制御する温度補償を機能させると有利である。 【0033】 【発明の実施の形態】以下、添付図面を参照しつつ、この発明のロックアップクラッチ付きトルクコンバータの実施例を説明する。図1はこの発明によるロックアップクラッチ付きトルクコンバータの作動特性を示すグラフ、図2はこの発明によるロックアップクラッチ付きトルクコンバータにおいて行われる作動油の油温に応じたアプライ圧力制御の内容を示すフローチャート、図3はこの発明によるロックアップクラッチ付きトルクコンバータにおいて行われる積載状態に応じたアプライ圧力制御の内容を示すフローチャート、図4は油温とプリチャージ時間との間に設定される関係を示すグラフ、図5は車両重量と目標中間圧力との間に設定される関係を示すグラフである。なお、この発明におけるロックアップクラッチ付きトルクコンバータの構造及びトルクコンバータに関連して接続されるトロイダル型無段変速機については、図6に示したトルクコンバータ及びトロイダル型無段変速機をそのまま適用可能であるので、図6に示した構成要素については図6と同様の符号を用いることで重複した説明を省略する。 【0034】図2に示すフローチャートの実行が開始すると、運転状態検出手段が検出した車両の運転状態、例えば、車速やエンジン回転数等の運転状態が入力される(ステップ1)。車両の走行速度が発進後において所定の走行速度以上になっているか否か等の、ロックアップクラッチ37のロックアップ(L/Uで略す)開始条件が満足しているか否かが判定される(ステップ2)。ロックアップ開始条件が満たされていなければ、フローチャートの実行は終了する。ロックアップ開始条件が満足していると、その時のロックアップクラッチ37のクラッチピストンを作動させる作動油の油温θが検出される(ステップ3)。検出した油温θに基づいて予め決められたマップ(又は関数f)によりアプライ圧力が当初において高められるプリチャージ時間Tp[=f(θ)]が決定される(ステップ4)。 【0035】ステップ4で決定されたプリチャージ時間Tpに渡って、アプライ圧力をプリチャージ圧力Ppとするプリチャージ圧力信号が出力される(ステップ5)。プリチャージ圧力信号の出力が開始されてから、プリチャージ時間Tpが経過したか否かが判定される(ステップ6)。プリチャージ時間Tpが経過していなければ、プリチャージ時間Tpが経過するまでこの判定を繰り返すが、プリチャージ時間Tpが経過したことに対応してロックアップクラッチ37のアプライ圧力をプリチャージ圧力Ppよりも減圧した中間圧力Piに設定し、設定した中間圧力信号を出力する(ステップ7)。ロックアップクラッチ37は中間圧力Piに基づいて係合を開始し、係合時間Tiが経過したか否かが判定される(ステップ8)。係合時間Ti中は、ロックアップクラッチ37がスリップ係合状態にある期間である。係合時間Tiが経過した場合には、最終的な締結圧力Pcによる締結圧力信号が出力される(ステップ9)。なお、作動油の温度θによるプリチャージ時間Tpの変更を行わない場合には、ステップ2から直接にステップ5へ移行し、プリチャージ時間Tpは予め定められた期間に設定される。 【0036】図1のグラフに示すように、コントローラがロックアップをさせる必要があると判断したときには、時刻t0 においてロックアップクラッチ37のアプライ圧力を中間圧力Piよりも高いプリチャージ圧力Ppに設定する。作動油の油圧は、図示しないロックアップ制御弁によりリリース室39内のリリース圧力を開放すると同時にアプライ室38内のアプライ圧力を上昇させることによって得られる。ロックアップクラッチ37の作動油の圧力は、少なくともロックアップクラッチ37のクラッチピストンがクラッチフェーシングをフロントカバー34に摺接させるまで、即ち、非係合状態から係合開始までの助走期間をストロークする間(時刻t1 まで)は、プリチャージ圧力Ppに維持される。したがって、クラッチピストンは、図1のピストンストロークのグラフに示すように、プリチャージ圧力Ppを受けて高速で移動し、クラッチの非係合状態からスリップ係合状態が開始されるまでの助走期間が短縮化される。 【0037】ロックアップクラッチ37のクラッチフェーシングがフロントカバー34へ接触開始した後、係合終了まではアプライ圧力をプリチャージ圧力Ppから中間圧力Piまで軽減してクラッチを滑らかに係合させている。クラッチピストンの押付け力が小さくなるので、フェーシングとフロントカバー34とが緩やかに接触してスリップ係合を開始することで、ロックアップクラッチ37の同期作用が開始される。同期が進み、スリップ係合状態の係合期間Tiが終了してフェーシングとフロントカバー34との相対回転が無くなった時刻t2 において、アプライ圧力を中間圧力Piよりも高い締結圧力Pcに昇圧することで、ロックアップクラッチ37の確実なクラッチ係合が得られ、クラッチ係合動作が終了する。 【0038】プリチャージ時間Tpは、図4に示すグラフのように終了時間t1 をta 又はtb に示すように変更することにより、油温θの高さに応じて決定される。トルクコンバータ13の作動油をトロイダル型無段変速機に使用されるトラクション油を兼用する場合のように、作動油の粘性が温度によって大きく影響されるときには、作動油の油温θが低いほど作動油の粘性が高くなってロックアップクラッチ37のクラッチ作動が緩慢になるので、プリチャージ時間Tpは長く設定される。トラクション油の油温θは、一般には、オイルパン内或いは冷却回路中に配置されている油温センサにより検出される。プリチャージ時間Tpは、コントローラに予め記憶されているプリチャージ時間決定手段により決定される。従って、作動油の幅広い温度領域でロックアップクラッチ37のクラッチピストンの助走時間を短縮し、且つロックアップ締結時のショックの悪化が防止される。 【0039】次に、この発明によるロックアップクラッチ付きトルクコンバータにおいて行われる積載量補償を伴うアプライ圧力制御を、図3に示すフローチャートを参照して説明する。図3に示すアプライ圧力制御は、図2に示すアプライ圧力制御と比較して、ステップ13,14における制御内容が異なる以外、実質的な差はないので、図2に示す各ステップの番号を10番台に変えて対応させることにより、重複する説明を省略する。ステップ12においてロックアップ開始条件が満足されると、車両の積載状態を検出する積載状態検出手段によって、車両の積載量を反映した車両重量W(車両総重量)が検出される(ステップ13)。車両重量の検出は、プレーキの前後輪の液圧配分に使用する後軸重センサ(車体フレームに配置)のような安価な積載センサ等から直接検出する方法の他に、荷台等に高精度で検出可能な専用の荷重計を用いたり、発進時において基準となる車両重量で期待される加速度と車速センサ等から検出された加速度との比較により車両重量を間接的に類推することでも行われる。コントローラは、予め関数g(又はマップ)として記憶されている中間圧力決定手段により、積載状態検出手段が検出した車両重量Wに応じた目標中間圧力Pitを決定する(ステップ14)。 【0040】ステップ15及びステップ16におけるプリチャージ制御でクラッチピストンを高速でストロークさせた後、コントローラは、ロックアップクラッチ制御弁によってリリース室39の圧力を回復させると同時にアプライ室38内の圧力を減圧することによりアプライ圧力をプリチャージ圧力Pp及び締結圧力Pcよりも低い目標中間圧力Pitに応じた中間圧力Piに減圧制御する。車両重量Wと目標中間圧力Pitとの関係を定めたグラフが図5に示されている。図5に示すように、一般には、目標中間圧力Pitは、車両重量Wが増加するほど高くなるように設定されている。クラッチピストンの押付け力は車両重量Wに応じて制御されるので、ロックアップクラッチ37は滑らかに係合を開始し、フェーシングとフロントカバー34の回転が同期して行くが、必要以上に係合完了までに要する時間が延びることもない。クラッチの同期が進み、フェーシングとフロントカバー34との相対回転がなくなったところで、アプライ圧力を所定の締結圧力Pcに昇圧して制御が完了する。ロックアップクラッチ37の作動特性は、図1に示すように、車両重量wに応じて中間圧力PiをPia、Pibに示すように変更して設定される。中間圧力Piを車両重量wに応じて変更することにより、車両の積載状態の変化に起因してロックアップクラッチ37が締結状態へ移行するまでの時間が変動することがない。 【0041】 【発明の効果】この発明によるロックアップクラッチ付きトルクコンバータは、以上のように構成されているので、ロックアップクラッチの締結条件が満たされると、ロックアップクラッチのアプライ圧力が中間圧力よりも高いプリチャージ圧力に制御され、クラッチピストンは係合開始まで高速でストロークされ助走期間が短縮される。その後、アプライ圧力は中間圧力に減圧されるので締結ショックの悪化も防止される。トルクコンバータの後続に配設される無段変速機の低速段でロックアップクラッチを締結する場合においても、クラッチの係合遅れがなく、且つクラッチ係合をスムーズにし、低コストでフィーリングの良いロックアップクラッチ付きトルクコンバータが得られる。また、ロックアップクラッチにプリチャージ圧力が供給されるプリチャージ時間を作動油の油温に応じて設定することにより、ロックアップクラッチの締結過程におけるクラッチピストンの助走時間を幅広い油温領域で短縮することができ且つロックアップクラッチの締結時のショックを緩和することができる。更に、ロックアップクラッチ締結過程の中間圧力を車両重量等の積載状態に応じて設定することにより、締結ショック及び係合時間を車両重量によらずに適正に維持することができ、耐久性のあるトルクコンバータを提供することができる。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000000170 【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
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| 【出願日】 |
平成12年1月17日(2000.1.17) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100108567 【弁理士】 【氏名又は名称】加藤 雅夫
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| 【公開番号】 |
特開2001−200928(P2001−200928A) |
| 【公開日】 |
平成13年7月27日(2001.7.27) |
| 【出願番号】 |
特願2000−7860(P2000−7860) |
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